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連載
アルム、頑張る5
しおりを挟む「城」とは拠点であり象徴である。
平時においては権威の象徴であるが、有事においては防御の拠点ともなりうる。
しかしながら人類同士の争いが盗賊のような一部の例を除けば遠い過去となった現代では各地の防御の拠点は砦や町を囲む防御壁となり、城は単純に象徴となった。
しかしそれでも「城」と呼ばれる建築物は「その時代」の産物であることが多く、変わらず堅固な造りとなっている。
……さて、ではザダーク王国ではどうか。
まずアークヴェルムであるが、この街には外壁は無い。
理由としては街の拡大の邪魔であることと、誰も必要としなかった……といった理由がある。
そもそも外壁はザダーク王国ではマイナーなものであり、酔っ払いのドラゴンやゴーレムから自分の作品を守ろうとする南方の職人達が造ったようなものがある程度である。
意外にも便利という事で、その外壁はそのまま南方軍が利用していたりするが……「無ければ無いで別に困らない」ものであったりするので結局広まっていない。
こだわり屋のノルムですら、「外壁」と聞いて首を傾げる者がいるほどだ。
次に「砦」であるが、これはヴェルムドールの旗振りでザダーク王国の各地に作られている。
どちらかというと「詰め所」や「見張り所」としての意味合いが強いが、堅固な建物ではある。
そして最後に「城」だが、実はこれはザダーク王国には三つある。
まず一つ目は、イクスラースが運んできた次元城。
見た目は単なる古城だが、何かとトラブルの種にもなる困った城である。
二つ目は、南方のエルグラッドの街に存在する南方軍副本部。
「城」と銘打たれたわけではないが、見た目は完全に「美しい城」である。
これはエルグラッドのノルム達の技術の結晶でもあり、これを守る為にエルグラッドには堅固な防御壁があったりする。
……まあ、前述したとおり効果に疑問を持つノルムや、そもそも壁を「妙な建築物」としか認識していないノルムも多いのだが、それはさておき。
そして三つ目は、魔王城である。
この魔王城はそもそも朽ちかけていた前魔王の「魔王城」を修復したものであったのだが、イクスラースの襲撃に伴う半壊騒ぎを経て大規模な改修をされている。
その際に魔王城は「巨大な防御拠点」としての側面が強かった「グラムフィアの魔王城」からイクスラースの指揮によって芸術的な価値を高めた魔王城へと変化している。
この辺りのいわゆる「前期型」と「後期型」の差は、質実剛健を是とするヴェルムドールや性能最優先のイチカと、確固たる美意識というものを持ち、それを反映させたイクスラースの差とも言えるだろう。
どちらがより優れているというわけでもないが、ジオル森王国からの観光客を受け入れている現在でより好感をもって受け入れられるのは後者であるだろう。
過度に華美なものは反発を招くが、適切な華美さは「文化の証明」であるからだ。
人類文化を知っているイクスラースの指揮で改装された魔王城は防御というよりは装飾に重点を置かれた門や美しい内装など……「王の住まい」としての方向性を大きく強化された。
人類領域を含め「最新の城」とも言える魔王城は、まさにザダーク王国の「顔」であるのだ。
「と、これが現在の魔王城なんですねー」
「ほー、なるほどのう」
魔王城の正面扉の前で解説していたモカに、アルムが感心したように頷く。
オルエルのほうは興味なさげに耳を搔いているが、モカの解説が終わったのを察するとモカへと視線を戻す。
「んじゃ、そろそろ入ろうぜ。観光はまた今度でいいだろ」
「えー、何言ってんですか。私の観光案内を受けられるなんて、滅多にないですよ? 普段いそがしーんですから」
「つーか俺は毎日来てんだよ」
ノリの悪いオルエルにモカは不満そうな顔をすると、開かれた正面扉の両脇に立っていた魔操鎧のうちの一人の近くへと寄って口を寄せる。
「見ました? あの態度。あんなんだから最古参なのに影薄いんですよねー」
「うるせえなあ、もう……」
別に影が薄いのはオルエルのせいではなくて、諜報部隊寄りの仕事のせいである……と信じている。
「まあまあ。それはそうとアルム様の本日のご訪問の予定については魔王様より伺っております」
モカに絡まれていた魔操鎧とは別の魔操鎧がそう言うと、アルムは頷いてみせる。
今日すぐに来ると決めたのはアルムであるが、別に伝令を送ったわけでもない。
つまりヴェルムドールは「そのうち来るだろう」と考えていると思っていたのだが、魔操鎧は「本日のご訪問の予定」と言った。
それはつまり、ヴェルムドールが「今日アルムが来る」と予測していたということである。
先程のモカの話と合わせて考えても、「確実に来る」と考えていたとみていい。
「わしの行動を読んでいたということかのう……いや、予測が容易な部類には入るか。気の早い奴が多いしのう」
「ん? 何の話ですか?」
「なんでもないわい」
近寄ってくるモカをぐいと押して遠ざけると、アルムは魔操鎧へと向き直る。
「まあ、話が通っているなら楽ですのう。早速通して頂けますかな?」
「ええ、どうぞお通りください」
二体の魔操鎧はそう言うと同時にガシャリと音を立てながら正面へと向き直る。
自分達の仕事はここまでだ、という合図でもあり「通って良し」という合図でもあるそれを受けて、アルム達は魔王城の中へと進んでいく。
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