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自覚後④

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トボトボとキッチンに向かい、私は雪ちゃんを待っている間におにぎりを作った。

朝食は要らないって言われたし、今見たらお昼ご飯を自分で用意して食べた形跡もなかった。

私もだけど、雪ちゃんも何も食べていないと思う。多分、空腹だろう。

なので、車の中でチャチャッと食べられる様な物を作った。

おにぎりの中身は、昆布、梅干し、鮭フレーク。

おかずは、ウインナーをサッと炒めた物と、玉子焼き。

「うん。良いかな」

これらをお弁当箱に詰めていると、「お待たせ」と言って雪ちゃんがリビングへ入って来た。

「あ、お腹空いてるかと思ってコレ……」

顔を上げて雪ちゃんを見て、言葉に詰まった。

「あ~、ありがとう。朝から何も食べてなかったからお腹空いてたのよね~」

雪ちゃんが、お腹を抑えてこちらへ向かって来る。

「あ…それは、良かったです……」

私は無意識に顔を背ける。

ヤバイ。

直視出来ない。

(なんで今日に限って……!)

メイク無し、黒髪ロングストレートも無し、服もスカートではなく、白シャツにジーンズとラフな格好。

髪型もそのまま無造作ヘアで、セットも何もしていないからただ単に「イケメン」なだけだった。

銀縁のインテリ眼鏡がまたツボで、直視が出来ない。

「…な……え……江奈ってば!」

「はいぃっ!!」

耳元で名前を呼ばれ、私はいつぞやの様に飛び上がった。

「ぼーっとしてどうしたの?行くわよ」

「あ……」

見ると、雪ちゃんはお弁当の袋と車のキーを持って準備万端だった。

「ご、ごめんなさい!」

「全く……」

小言をブツブツ言いながら雪ちゃんが玄関に向かう。

私も後に続き、家を出た。

車に乗込み、チラチラと雪ちゃんを盗み見る。

「江奈」

名前を呼ばれ、またドキッとする。

チラチラ見てたの、バレたかな。

「それ、中身はなぁに?」

持っていたお弁当を指差される。

良かった。違った。

「おにぎりの中身ですか?えっと……梅干しと昆布とサケです。おかずは玉子焼きと、ウインナー」

内容を聞いた雪ちゃんはちょっと考えて、

「昆布のおにぎり頂戴♡」

と言って手を出した。

「あ、はい」

私はガサガサと、昆布と書いたおにぎりを手に取り、アルミホイルを剥いて食べやすい形にしてから、雪ちゃんに手渡した。

「うん。良い塩加減ね。美味しい」

一口食べて、雪ちゃんが頷く。

「良かったです。あ、玉子焼きも食べますか?」

「ええ」

私は雪ちゃんからおにぎりを受け取り、玉子焼きをピックに刺して渡した。

「うん。これも美味しいわね。アタシ玉子焼き大好きなんだけど、甘さが丁度良いわ。江奈が作る物って、アタシの好みピッタリね」

「それは良かったです」

雪ちゃんは美味しいと思ったものはちゃんと褒めてくれるから、凄く嬉しい。

「……なんか、ピクニックみたいで楽しいですね。お天気も良いし」

「あー、ホントね。どうせなら、そこの公園にでも行けば良かったかしら」

雪ちゃんが指さした『そこの公園』とは、昨日出掛けた時にたまたま見付けた公園。

「いえ。私は車の中でも十分です」

「そう?」

「はい」

雪ちゃんにおにぎりを返し、私も『サケ』と書いたおにぎりを食べた。

もう一度、チラッと雪ちゃんを見る。

嬉しそうにおにぎりを食べている。

場所なんて関係ない。どこでも、好きな人と一緒なら楽しいし幸せ。

言葉には出来ないから、そう心の中で呟いた――。
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