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決心
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――ドサドサドサッ!と抱えていた荷物を玄関に下ろした。
「これで全部よね?」
「はい。ありがとうございます」
雪ちゃんが持っていてくれた、ボストンバッグを受け取る。
「それにしても、多くなっちゃったわね」
「そうですね……」
ボストンバッグ2個、リュック1個、ハンドバッグ6個(会社用含む)。
ちょっと荷物を取りに行っただけなのに、予想外の大荷物になってしまった。
何がかさ張るって、メイク道具や服類。
「メイク道具は貸してあげるって言ったのに」
「そうは行きませんよ。私と雪ちゃんじゃ、使っているファンデーションの色が違ったじゃないですか」
雪ちゃんの方が少し濃い色合いのファンデーションを使っていて、私には合わなかった。
「これはキッチンに運べば良い?」
パンパンに膨らんでいるリュックを指差す。
メイク道具・服と同じ位……いや、それ以上にかさ張った物。
「あ、はい。お願いします」
私は、それとは別の荷物達を部屋へと運ぶ。
「よっ……と!」
雪ちゃんがリュックを持ち上げた拍子に、ガチャン!と音がして、「わっ!何か割れた!?」と慌てている。
「いえ、その中に割れ物は入っていません。多分、ケーキの型がガチャガチャ言ってるだけだと思います」
「あ、そうなの。良かった……」
雪ちゃんがホッと胸を撫で下ろす。
私の大切な、調理器具。
「これだって、新しく買えばって言ったのに……」
雪ちゃんが、唇を尖らせて言う。
「なんでもかんでも買っちゃえば良いって、雪ちゃんの悪い癖ですよ。それに、長年使っていて愛着があるんです。その道具じゃなきゃ駄目なんですよ」
「ふ~ん。そんなもん?」
「はい。そんなもんです」
イマイチ理解が出来ないのか、まだブツブツ何かを言いながら、それでもキッチンへ運んでくれる。
私は、ふふっと笑った。
なんだかんだ言って、優しい。
さっきアパートに着いた時だって、お姫様を守る護衛の如くアパートの周りに何もないか、部屋に侵入された形跡はないかを率先して調べてくれた。
そのお陰?か、不審な人物はいなかったし郵便受けに変な物も入っていなかったし、部屋の中を荒らされた形跡もなかった。
まあ、部屋を荒らされていたら警察沙汰になっちゃうんだけど。
ボディガードの様に守ってくれる雪ちゃんはかっこよくて、なんだかお姫様みたいになった気分だった。
そんな事にもトキめいちゃって、頭を抱えたけど。
その抱えた頭の中で「これ以上好きになっちゃダメ」と何回唱えたか。
(でもなぁ……こんなに近くに居たら、止められないよなぁ……)
ドキドキとズキズキが入り混じった心臓を、ギュッと抑える。
「江奈~?」
「あ、はーい!」
キッチンから雪ちゃんの声がして、返事をする。
慌ててリビングへ向かおうとすると、コツンと何かを蹴飛ばした。
「ん?あ……」
そこには、ハート型のクッキー型がコロンと転がっていた。
さっき雪ちゃんが荷物を持ちあげた時に一個だけ落ちてしまったんだろう。
(よりにもよってハート型……)
拾い上げ、自嘲気味にふふと笑う。
そうだ。
午後から雪ちゃんと一緒にクッキーを作ろう。
恋人になれないなら、一番の友達になればいい。
そして、時間が解決してくれる事を願おう。
「江奈ってば~!」
「はーい、今行きまーす!」
そう気持ちを新たに、キッチンへと向かった。
――あ、ちなみに。
雪ちゃんにお菓子作りの才能は全く無く、9割方私が作る羽目になったんだけどね。
「これで全部よね?」
「はい。ありがとうございます」
雪ちゃんが持っていてくれた、ボストンバッグを受け取る。
「それにしても、多くなっちゃったわね」
「そうですね……」
ボストンバッグ2個、リュック1個、ハンドバッグ6個(会社用含む)。
ちょっと荷物を取りに行っただけなのに、予想外の大荷物になってしまった。
何がかさ張るって、メイク道具や服類。
「メイク道具は貸してあげるって言ったのに」
「そうは行きませんよ。私と雪ちゃんじゃ、使っているファンデーションの色が違ったじゃないですか」
雪ちゃんの方が少し濃い色合いのファンデーションを使っていて、私には合わなかった。
「これはキッチンに運べば良い?」
パンパンに膨らんでいるリュックを指差す。
メイク道具・服と同じ位……いや、それ以上にかさ張った物。
「あ、はい。お願いします」
私は、それとは別の荷物達を部屋へと運ぶ。
「よっ……と!」
雪ちゃんがリュックを持ち上げた拍子に、ガチャン!と音がして、「わっ!何か割れた!?」と慌てている。
「いえ、その中に割れ物は入っていません。多分、ケーキの型がガチャガチャ言ってるだけだと思います」
「あ、そうなの。良かった……」
雪ちゃんがホッと胸を撫で下ろす。
私の大切な、調理器具。
「これだって、新しく買えばって言ったのに……」
雪ちゃんが、唇を尖らせて言う。
「なんでもかんでも買っちゃえば良いって、雪ちゃんの悪い癖ですよ。それに、長年使っていて愛着があるんです。その道具じゃなきゃ駄目なんですよ」
「ふ~ん。そんなもん?」
「はい。そんなもんです」
イマイチ理解が出来ないのか、まだブツブツ何かを言いながら、それでもキッチンへ運んでくれる。
私は、ふふっと笑った。
なんだかんだ言って、優しい。
さっきアパートに着いた時だって、お姫様を守る護衛の如くアパートの周りに何もないか、部屋に侵入された形跡はないかを率先して調べてくれた。
そのお陰?か、不審な人物はいなかったし郵便受けに変な物も入っていなかったし、部屋の中を荒らされた形跡もなかった。
まあ、部屋を荒らされていたら警察沙汰になっちゃうんだけど。
ボディガードの様に守ってくれる雪ちゃんはかっこよくて、なんだかお姫様みたいになった気分だった。
そんな事にもトキめいちゃって、頭を抱えたけど。
その抱えた頭の中で「これ以上好きになっちゃダメ」と何回唱えたか。
(でもなぁ……こんなに近くに居たら、止められないよなぁ……)
ドキドキとズキズキが入り混じった心臓を、ギュッと抑える。
「江奈~?」
「あ、はーい!」
キッチンから雪ちゃんの声がして、返事をする。
慌ててリビングへ向かおうとすると、コツンと何かを蹴飛ばした。
「ん?あ……」
そこには、ハート型のクッキー型がコロンと転がっていた。
さっき雪ちゃんが荷物を持ちあげた時に一個だけ落ちてしまったんだろう。
(よりにもよってハート型……)
拾い上げ、自嘲気味にふふと笑う。
そうだ。
午後から雪ちゃんと一緒にクッキーを作ろう。
恋人になれないなら、一番の友達になればいい。
そして、時間が解決してくれる事を願おう。
「江奈ってば~!」
「はーい、今行きまーす!」
そう気持ちを新たに、キッチンへと向かった。
――あ、ちなみに。
雪ちゃんにお菓子作りの才能は全く無く、9割方私が作る羽目になったんだけどね。
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