上 下
63 / 99

誕生日?…忘れてた!!①

しおりを挟む
「う~ん……どうしよう……」

ハナちゃんからスコーンの作り方を教えてもらってから数日。

私は悩んでいた。

別に、「どうしたの?何か悩み?」と声をかけて欲しくてあからさまに悩んでいる訳じゃない。

でも多分、周りの人達は「コイツ『どうしたの?』と声をかけて貰えるのを待ってやがる」と思っているに違いない。

それ位、私は悩んでいた。

「どったの??」

そこに、声をかけてくれる勇者が現れた。

同僚、『咲希子』である。

「ありがとう。勇者よ……」

「は??」

「あ…ごめんごめん、なんでもない」

私は、コホンと咳払いをし、勇者に相談してみる事にした。

「もうすぐ雪ちゃんの誕生日だなぁ、って……」

「ああ、そうだったね。えっと……あ、丁度土曜日じゃない。休みだし、なんかすんの?」

咲希子がカレンダーを指さした。

「……それを悩んでる」

そうなのだ。

今週の土曜日は、雪ちゃんの35回目のバースデー。

『社内人気ダントツNo.1』

である雪ちゃんのバースデーを、社内の人間(特に女子社員)で、知らない人はいない。

もちろん、私も咲希子も、例に漏れず。

ただ色んな事があり過ぎて、もうバースデーが間近に迫っていた事に気が付かなかったのだ。

たまたま女子社員達が話しているのを聞いて「しまった!」と気が付いた。

ちなみに、その女子社員達は雪ちゃんの部署の子達で、近日中に代表者が誕生日プレゼントを買いに行く予定だ、と話をしていた。

彼女(私)がいるからどうする、と悩んでもいたみたいだけど、個人的に渡すんじゃないんだから良いのでは?と言う結論に至ったらしい。

……まあ、正確には彼女でもなんでもないんだけども。

あ。自分で言って、落ち込む。

(今はどうでもいいか……)

どうしたものか頭を抱え悩んでいると、

「『プレゼントは、ワ・タ・シ♡』とかで良いんじゃないの?一緒に住んでる癖に『まだ』なんだし」

咲希子が言った。

「はぁ……」

私の口から、でっかい溜め息が出た。

咲希子が煎餅をボリボリ食べながらお茶をすする。

「なによ。言っとくけど、冗談じゃないわよ」

冗談じゃないのかよっ!

私は再度、頭を抱える。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

巻き込まれ召喚者の異世界のんびり旅行!!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:376pt お気に入り:14

偽聖女はもふもふちびっこ獣人を守るママ聖女となる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,165pt お気に入り:4,031

ただいま冷徹上司を調・教・中!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:389

元喪女に王太子は重責過ぎやしませんかね?

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:113pt お気に入り:901

追放された生活錬金術師は好きなようにブランド運営します!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:475pt お気に入り:570

今更だけど、もう離さない〜再会した元カレは大会社のCEO〜

恋愛 / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:430

処理中です...