転生しちゃったよ(いや、ごめん)

ヘッドホン侍

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後日談たち やり残したネタとか消化していきます

152.後日談9 困惑しかありませんっ

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ヒカエオロー。
俺は心の中で思わず呟いた。

「ははーっ!」

目の前に広がるのは壮観な眺め。

「どういう状態だよこれ……」
「ひれ伏す老人たちといった状態であろうな」

つい今の気持ちを端的に表す言葉を口に出していた。返答を求めていた訳ではなかったが、返ってきた言葉にがっくりと肩を落とす。
いや、そうじゃないんだよ……!
ーー何たって目の前には、土下座でひれ伏す老人、老人、老人……。先の副将軍もキメ顔になって、じゃーんじゃじゃじゃーんじゃーんじゃーん!かっかっかっかっかか……ってBGMが鳴り出しちゃうような光景が広がっているのである。……前世では夕方の時代劇が大好きでした。
え?  訳がわからないって?  ……とりあえず、今俺の目の前には土下座の老人の列が並んでいるという状況だということだけ把握してもらえればいい。
そんなのパッと見で分かることだからな!
でも、訳がわからないのはその理由だよ!  部屋に入ったら突然この状況だったんだよ!?
  ホンット、どういうことだつてばよ……。
混乱した頭のまま、クイタさんに視線を向ければ、うむと深く頷かれた。
いや、うむ、じゃなくて!
どういうことなのか教えて欲しいのですけれども!?
視線でそう必死に訴えかければクイタさんから返ってきたのは「やはりな」となぜか確信を持ったお言葉であった。
何で!

「ちょっと、貴方たち頭を上げてください!」

俺は咄嗟に悲鳴のような声で叫んでいた。半ば泣きが入っているから、悲鳴の「ような」ではなく悲鳴かもしれない。
もしかして、これは奴らの陰謀なのか。俺を戸惑わせて隙をつくらせようというのか。
やっとハッとして隙なく奴らをにらみつけ、周囲の気配を探り始めるが、特に不審なことはなかった。
余計に訳がわからない。
そんなことをやっていると、そろそろと前列にいる老人の一人が顔を上げた。

「御許しください!  天の使い様!  儂等が愚かであったのです!」

そしてその老人が俺の顔を凝視するなり、叫んで再びすぐに床に頭をこすりつけた。
もうやめてー!
いいかげん訳を説明してー!

俺は頭を抱えながら、こんなことになる前の、ほんのすこし前のことを思い出していた。





教会に踏み込んだクイタさんと俺は、おとものエイズーム王国黒騎士団情報部隊の皆さんを天井裏やら床下やらに引き連れ、ずんずんと真ん中の通路を進んでいった。
そしてたどり着いたのが、ここ。

「ここですね」
「うむ」

確認の為にクイタさんの方に振り返れば、彼は厳かに頷いた。
ここは、真ん中の通路の先にある、ステージの左奥にある、控え室に続く扉だ。木製のそれは、いかにも歴史を感じさせる風合いをしており、見た感じかなり分厚そうだ。
取っ手も金属製のごっついやつだし、重そう。
そして、その位置が、微妙に高い。
意気揚々と扉を開けようと手を伸ばしかけた俺は微妙な表情で固まってしまった。
なんてこったい。
手がドアノブに届かないじゃないか。……俺がチビだからじゃないぞ、ノブが高すぎるだけだからなっ。
ジャンプして開けるという手段もあるが、それはちょっと格好がつかない。
なので、俺はもう一度向き直ってクイタさんを見上げた。
クイタさんと目が合う。
その目が先に行かないのか?と疑問を携えていたが、俺の強い視線にようやく思い至ったのか、はっとした表情で俺の前に歩み出た。
うむ、何も言わないでくれ。くるしゅうない。

俺は恥ずかしさを誤魔化すため、無駄に偉そうに後ろを歩いた。クイタさんに開けさせたていをとったのであった。
これは逃げではない。
心の防御である。

……しっかし、鍵もかけていないとは少し不用心じゃないかね?
こいつら、要は町の嫌われ者だろ?  命が狙われるとか考えなかったのかな?

「……誰もいませんね?」

部屋を覗き込むと、そこには人影は見えなかった。
まあ、気配がないことはわかってたけども。本当に入り口の部屋に警備も置いてないなんて。
ちょっとあんびりーばぼーだったのである。

「さしずめ彼奴等きゃつらは奥の遊戯室にでもおるのだろう」
「遊戯室……?」

なんだその思いっきり遊びのための部屋っぽい名前。
そんなのが教会にあっていいのか。

「まさか教会に遊楽の部屋があるとは信じられないだろうが、まさかのまさか、そのままの意味だ。彼奴等を聖職者とはよく言ったものよ」

俺の心の声は顔に漏れていたのだろう。クイタさんが、ニコリともせずにさらに奥の扉を見た。
遊戯、ね。何をして遊んでいらっしゃるのか。嫌な予感が募る。
だって、部屋の先には聞いていた話よりもずっと多くの気配があったから。

「何か、机のようなものを取り囲んでいるような気配ですが」
「大方、賭事でもしているのだろうよ」

溜息が吐きたくなってきた。
それでよく聖職者を名乗れたもんだ。
つまり、奴らは住民から巻き上げた金で、昼間から仕事もせず賭事をして、遊んでるっつーわけだ。
まあそらそうだよな。教会に、人いないし。遊べますよね。
俺の、右のこめかみの血管がピクリと動いたような気がした。

「ねぇ、クイタさん」
「何だ?」
「あいつら、ぶっ潰しちゃってもいいんですよね?」
「……むしろ、よろしく頼む」

いい笑顔で尋ねた俺に返ってきたのは、これまたクイタさんのいい笑顔であった。
そのクイタさんの顔、とても悪役臭いです。
あー、でも、俺も同じような顔してるかもなぁ……!

そんなことをぼんやりと考えながらも、俺は全身を魔力で強化して扉に向かって飛び出していた。
一言で言えば、俺は完全にキレていた。
ぷっちーん、である。

「しゃらくせえっ!」

クイタさんの手前、お上品に取り繕っていた口調も忘れて、俺は思い切り扉を蹴り飛ばす。
バコーンと素晴らしく派手な音を立てて扉は崩れた。割れたとか、折れたとかではない。ボロボロな木屑になって崩れた。
俺はそのままの勢いで部屋に飛び込んだ。そして、さらにその勢いのまま、魔力を解放した。

「なんじゃーー……っ!?」
「扉が壊ッ……グアッ!!?」

崩れた扉を認識した途端、一気に騒がしくなりかけたその部屋であったが、俺が魔力を解放したことにより、皆さん動きを止めた。
声も出せなくなっている。
あ、やばい。ちょっとこれは解放しすぎたかもしれない。
気絶させてはいけないのだ、不正を見て現行犯逮捕ならばその場で自供までさせてしまうに限る。
慌てて解放する魔力の量を減らす。それでようやく息を吹き返した遊戯室の住人たちは、にわかにざわめきだした。
俺は、相当な重圧だろうに我先にと逃げ出そうとしている方々がいるのを発見して、冷静に心の中で唱える。

《拘束》
《黙れ》

いつものあれである。ちょうど俺の魔力が部屋いっぱいに漂っているので、拘束するのは容易かった。まあそんなことなくても大丈夫だったろうけど。
だって、方々、かなりご立派な体格であられるし。魔力で強化された身体のいま、普通に走って追いかけても全員捕まえられるだろう。
ともかくもキレている俺にはざわめきもうざったいので、それもシャットアウトさせていただいた。
一気に静まり返った部屋に、こつんこつんと俺の足音だけが響く。
クイタさんが後ろで苦笑している気配がした。

粉砕された扉から出た埃がちょうどスモークのようになって俺の姿を隠している。
耳が、部屋の住民たちの心拍数が高まったのを捉えた。
このまま俺が姿を表せば舐められるんだろうな……頭の片隅でそんなことを考えていたが、もういいや、と放棄した。
人に恐怖を与えるのは、俺の得意技だろう?

「断罪しにきましたよ」

残念ながらアルトの声じゃ脅しにはならないだろうけど。

煙の晴れた部屋で俺はニヤリと笑った。ーーーーここから、嫌というほど俺の恐ろしさは思い知らせてやればいい。





とか、ちょっと前のハードボイルドなこと考えてたのに!!!!

俺の顔を見た途端に老人たちが土下座したんですよ!?
なに、そんなに俺の顔は凶悪だって!?
何を今更だと……うるさい、殴るぞっ。

「御使い様……?」

黙り込んだ俺を気遣うような声色で老人に話しかけられる。俺は俯いたまま、動揺の顔を隠している。

ちょっと助けてよクイタさん!!

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