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―今すぐ風呂かベッドか、選んでください―
そんなこと言われて、「じゃあベッドで」なんて言える私ではない。仕事を言い訳に逃げようと思ったけど、いつの間にかちゃっかり織田くんと連絡先を交換した律は、私のスケジュールを送ってもらっているため、全てを把握しているのだ。嘘をついてもすぐにばれてしまう。
織田くんも私に送る前に律に送って確認をとってる辺り、横峯律への信用度が図り知れてこちらとしてはいたたまれなくなる。しどろもどろになってお風呂を選んでみたものの、にっこり笑って優しく頬を撫でながら「お先にどうぞ」なんて言われたら、逃亡意欲はすっかり失われてしまった。今はすでに溜まっていたお湯に甘んじて浸かっているところである。
しかし、一緒にソファでぐだぐたしてたはずなのに湯船にお湯がはってあるあたり、どこからなにを考えて先読みした行動をしてるのか、そして私はもしかして読みやすい行動パターンをしているのか、なんて疑問に思いつつ不貞腐れた気持ちで湯舟にぶくぶくと沈んでいた。
だいたい律という男はなんにしても準備が良すぎるのだ。こんな男が企画営業部にいてお客さんと対峙してるっていうんだから、想像しただけで身震いする。優しい顔して逃してくれない相手が営業担当でやってきて、契約せずに帰った人など今までいるのだろうか。
―ガラッ―
「…透。なにを沈んでいるんですか」
「うえええ律!…え、なんで!」
「一緒に済ませた方が楽かと思いまして。嫌ですか?」
「い、やではない、けども…」
そう言うと律は湯船に背中を向けて、体を洗い出した。ただの営業マンがどうしてこんなに背筋がムキムキなのか、ジムでここまで鍛える必要はあるのか、営業マンとか言いながら実はボクサーでしたとか言われても受け入れられるその筋肉をじっと見つめる。私もそろそろ健康のためにもジムに通うべきか、などと思考を膨らませている間に、律は一通り終えたらしく湯舟に入ってくる。端っこで小さくなっていた私を軽々抱き上げ、背中から抱きしめるようにして座った。えぇっと、このパターン知ってるぞ…
「…透…緊張してどうかしましたか?」
「っえ!えーっと、……律…そのぉ……するの?」
「…したいんですか?」
その低音ボイスは今すぐ収めていただきたい。
「なんて、ね。しませんよ。お風呂はリラックスするところですから。だからほら、体の力を抜いて寄りかかってください」
この前の律に言って聞かせたい言葉である。
「…それに…」
「…?」
「今度はじっくり、ベッドの上で…」
今日が私の命日だったかと頭を過ぎると同時に、体中の血が沸騰して茹で蛸が一人できあがった。
「…っん、律…そんな、とこっ!」
「…ん、透…力を抜いて、」
「い、やぁっ!きたないっからぁ!」
「透に汚いところなんてありませんよ」
律は宣言したとおり、ベッドの上でじっくり、ねっとりと私を愛撫する。
仰向けに寝かされたかと思うと足の指の先から太ももにかけて、律の指と舌が踊るように何度も行き来する。それだけでたまらなく体を捩らせてしまう。丁寧にでも大胆に足の上をなぞる律の指は、触れてほしいとうずくところを避けるようにして撫でるので、じれったい快感だけが私を支配する。
「っ!律、律!お、ねがいっ……っもう…!」
「…もう、なんですか?」
「、っ!足ばっか…っん、この…へんた…っ!んああ!」
「貴女限定ですがね」
太ももの際どいところを撫でる指が破れ目をかするだけで、下腹部がずくずくして切ない声を上げてしまう。それでも律の指は意地悪で、ふっと笑うとその指を逃してしまうから、思わず快感を求めて声をあげる。
「あぁ…、!いや、いやなのっ!もう!」
「…透、言ってごらん。どうしてほしいのか」
律の声が頭の中に反響して何も考えられなくなる。目の前の快楽に集中すると、私の欲しいものが明確になってきて自然と求めてしまう。身体の中央で燻る熱は解放したいと蠢くが、僅かに残る頭の端の理性でその溢れ出す衝動を抑えて身体を起こす。それは余裕あふれる律を少しでも崩してやりたいとするかわいい反逆心からだった。
震える腕を自分の足元にいる律へと伸ばして、律の前髪をかきあげてから後頭部を撫でて抱きかかえる。律も私の動きを制することなく、手を止めてなすがままにされているので後はこのまま、囁くだけ…
「…大事なところ…律にだけ触ってほしいところ…律じゃなきゃだめなところ…お願い…触ってぇ…」
「っ!…はっ…思った以上に…くるものがあるっ!」
余裕な顔した彼を焦らすことができたと喜んだのも束の間、起き上がった私の脇に腕を入れて抱き上げた律は、その剛直を私の破れ目にぴたりと添える。
「…ひいやぁっ」
「…今日は優しくしたかったのですが」
「…、!律のそれは、優しさじゃなくて、意地悪でしょっ!」
「…その意地悪が好きなくせに」
律の硬い芯は私に寄り添ったまま、ぴくりとも動かないでいる。左腕で私の身体を固定するから、身を捩ることすら許されない。触れたそこがはくはくと動いて、期待からじわりと滲み出た汁が中から溢れてくる。その上右手は胸の頂きを弄ぶので、堪らない吐息が口をつく。
「、んっはぁ!律ぅ…ん!」
「言われるがまま、触れてますよ。次はどうする」
「んっ…やぁっ、!なんっ…でぇ!」
「透、さっきのお強請りを…もう一度」
「んあっ…そこ…やぁぁ!い、んあああ!」
「私にやってほしいこと、触れてほしいところを教えて」
お強請り、と頭の中で反芻する。律にやってほしいこと、触れてほしいところ。今一番、私が求めるもの。
「…ふ、っん…キス、して…っ!」
「、っ!透…」
「…ずっと、キス、してほし…ぅわっ…ぅん…っんん!」
律が噛み付くようにキスをする。ちゅ、ちゅっと音を鳴らしながらお互いを食べてしまうような貪るキスをした。私は律の首に腕を回すと、そっと唇から離れた律の顔が胸に押し付けられ、その吐息が先端を擦るだけで堪らなくなって身体をのけぞらせてしまう。無自覚に押し出されたその突起を律が噛むので、あられもない声で喘ぐしかなくなる。律の口の中で踊るように転がされるそれに、興奮が抑えられない。
「ああん!ちぎれ、ちゃうよぉ!」
「…もっと、もっと欲しがれ」
「んん、!あっ……っ律が…!律が!っほし…ぃぃいあああああああん!!」
びたりと押し付けられていた剛直が勢いよく割って押し入ってきて、思わずのけぞって絶叫をあげる。ずっと触れてほしくて、その満たされた欲に身体が歓喜したのがわかる。どろりと奥の泉が湧き上がって中を伝うが、律の激しい抽挿に押し戻されて、その度に卑猥な水音が周囲に響き渡る。一気に昂ぶった気は下ることを知らず、勢いのまま気をやってしまった。
「…っあああああ!!………、っはぁ、はぁ、はぁぁ……っん、ぅんああああ!」
「…上手に、いけましたね」
「ま、まって!まだ、いっ…ぁあ…うぅん…っあああん…」
私の力の抜けた静止なんてものともせず、律の激しい動きは止まらない。結合部からは溢れ出る水音と、叩きつける音が鳴り響く。
「やぁっ、ぁああん、や、さしくってぇ、いったぁ、!…うぅ、ふああああん!」
「…煽る方が悪い。それにまだ、私に、付き合ってもらわないと、」
そう言うと、律の舌が私の胸の頂きを捉えた。
「…っん、やあああ!…い、きなりぃ…!」
「…目の前で美味しそうに揺れていたので、思わず」
「…あっああん…美味しそう、ってぇ…っ言わないっで!…ふああ……んっ…」
律は軽く微笑むと、私の後頭部からうなじにかけてを撫で回す。反対の手はお腹を撫でるので、なんとも言い難い気持ちになる。だってそこには、
「…ここ、膨れていますね。なぜですか」
「っ!やぁああ!なでっない…でぇ…っん」
「…っこの形、覚えてくださいね…!」
律の形に膨れ上がった下腹を象るように撫でる指に、たまらなくなって思わずきゅっと力を入れてしまう。すると今度は中で律のその形を感じてしまい、どこにも逃げ場のない快感に溺れるしかないのかと思い知る。
律が激しく奥を突く度に感じさせられるその形に、うっとりとした喘ぎ声が出るのが自分でもわかった。
「……あっ…はぁあん…律、律っ…!」
「…っ、なんですか?」
「、ん!…律、っだけだよ!…あぁん!…ここに入るの、……今も、っんあ……昔もぉ!……」
「っ!そうでしたねっ…ここは、俺しか知らない…っ!」
「…あっあっ…っ!…、お、れって、…っんあ!」
律はたまに、俺と言って少し口が悪くなるときがある。こういう行為の時に出てくるそれは、律も感じてどろどろになってることの合図だと何度も繋がってきた中で知った。
「…っん、ふああんっ…!…り、律もっ…きも、っちい…?」
重たい腕で私の胸に顔を埋める律を抱きしめる。それに気づいた律が顔を寄せて、おでこをこつんと繋げてきた。
「…貴女と交わって、よくなかったことなどないよ」
ーだから今は俺をいっぱい感じて…ー
それを合図に、一層激しく動いた律の腰が私の最奥を貫いた。何度も繰り返されるその動きに体が大きく跳ね上がる。
「んっ…あっ、あっ…っ!ああ、…ああんっ……っん、ああああああああん!!!っはげっしぃぃっ!!あああああああ!!!」
大きな声をあげるしかこの快感をやり逃がす術を知らずに、ただ声を上げ続ける。理性なんてとっくに砕け散った。後は律を心ゆくまで感じるだけ。
「…透、透っ…、!はっ……っ!」
「ああ…っんああああああ!!…ああ…っああん…」
私の奥で脈打つ感覚が広がると同時に私の頭も弾けた。ぴーんっと足の先まで伸び切った力がふと抜けて、座ったまま反り返っていた背中を丸めながら律に向かって倒れ込んだ。律も自身の余韻に浸りながらも、夢中で私を掻き抱いてくれる。
「…律、律ぅ…」
「………どうしました?…」
「ふふふ…律と一緒にいけたの…うれしぃ…」
「っ!」
このままずっと、脱力したまま溶け出してしまいたいなんて思っていたら、中で質量をました気がした。
「んっ…あ、れ?…り、つ……大きくな…っ!ああん!」
「透が悪い。もう少し俺に付き合え」
一度抜かれた硬いままのそれは、素早く律の手で準備を終えたかと思うと、寝かされた私の中に入ってくる。抜かれた時は、はくはくとさせていた入り口も貫かれる芯があまりに中でぴったりとはまるので、歓喜による蜜で溢れかえる。私と律はぴったりなんだと思うと心までも満たされる。
その後も続く律の腰の動きに翻弄されながらも、余裕なさげに、でもにっこりと笑う律に私も思わず笑みが出る。明日の自分を心配しつつも、この快楽に自ら囚われるように集中すれば体中が律を欲しているのも事実で、私は律に身を任せ彼と私の欲の波にまた飲まれていった。
「…入稿まで時間があるのに、また私は屍になってる…」
「…随分幸せそうな屍ですね」
「うぅだって、律がいるから…」
「…あまり可愛いことを言うとまだ続きますよ」
「…それはちょっと…せめて明日に」
ーほう、明日ならいいんですかー
そんな囁きが聞こえたけれど、薄っすら明るくなってきた空に私の眠気は限界で、気を抜けば意識が飛びそうになる。明日の自分に幸あれ、なんて無駄な祈りを捧げていたら優しい口付けが降ってきて、そうそうこれが優しさってもんでしょなんて思ったら、おかしくなってきてくふくふと笑ってしまった。その顔を見て律が何か言った気がして、でも私の意識はすでに夢の中へどっぷりと浸かっていた。
朝の日差しとは思えない窓から射す明るさに、閉じている目が眩んで沈んでいた意識が浮上した。
どうやら律はその後私の身体をきれいにしてくれたらしく、節々の痛みと体のだるさとは裏腹に体はさっぱりしている。
朝、というより昼の燃えたぎる日差しに負けそうになりながら横を見ると、そこには珍しく律が眠っていた。いつもは私が起きる前に身支度を済ませてコーヒーを用意してくれている。それも有り難いけど、こうして隣にいてくれることに幸せを感じるのだ。たまにはこんな日があってもいいでしょう、と寝ている律を起こさないように、けれどお構いなしにその大きな胸にすり寄る。こんなに無防備なのも珍しいなぁと、身じろぎをする律にふふっと笑みが溢れた。そのとき、ふと違和を感じる。なにかがいつもと違う。
「…………あれ?、これ…」
起き上がるまではいかなかった頭が一気に覚醒した。声にならない驚きで固まっていると、ふふっと低い笑い声が聞こえた。
「…いつ気づくのかと…」
「…………起きてたの?」
「えぇ、最初から」
最初ってどこ、なんてつぶやきは律の口の中へ消えていった。ちゅっと軽いリップ音を響かせて離れていく。
「言ったでしょう?ここから先は私がプロデュースしますと」
「…………プロデュース…」
「一大イベントのプロポーズを逃したんですから。これからは私が仕切ります。手始めにこれを…」
そう言って握った私の左手の薬指には今、指輪が光っている。
「……これ…いつ……?」
「貴女が一人覚悟を決めたように、私にも覚悟を決めた日があったんですよ」
なら律も同じ思いで用意をしていたということだろうか。そんな素振り見せなかったのに…
「幸せになりましょう。二人で」
その言葉に涙が滲む。
ー答えはとっくに決まっているのに、言葉が出てこないー
そう言ったあの時の律に、今ならそのとおりだと言ってあげられる。あぁでもこれが…
「………こんなに、幸せな気持ちになるなら、律のプロポーズを待てばよかったかな…」
「貴女が感じた「幸せな気持ち」を、私は先にいただけました。私の一番の人、ありがとう。愛しています」
二人で幸せになろうね。私の一番の人…
これにて本編完結です。
ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。
引き続き番外編(10話ほどあります)も
お楽しみいただけると幸いです。
こしあん
そんなこと言われて、「じゃあベッドで」なんて言える私ではない。仕事を言い訳に逃げようと思ったけど、いつの間にかちゃっかり織田くんと連絡先を交換した律は、私のスケジュールを送ってもらっているため、全てを把握しているのだ。嘘をついてもすぐにばれてしまう。
織田くんも私に送る前に律に送って確認をとってる辺り、横峯律への信用度が図り知れてこちらとしてはいたたまれなくなる。しどろもどろになってお風呂を選んでみたものの、にっこり笑って優しく頬を撫でながら「お先にどうぞ」なんて言われたら、逃亡意欲はすっかり失われてしまった。今はすでに溜まっていたお湯に甘んじて浸かっているところである。
しかし、一緒にソファでぐだぐたしてたはずなのに湯船にお湯がはってあるあたり、どこからなにを考えて先読みした行動をしてるのか、そして私はもしかして読みやすい行動パターンをしているのか、なんて疑問に思いつつ不貞腐れた気持ちで湯舟にぶくぶくと沈んでいた。
だいたい律という男はなんにしても準備が良すぎるのだ。こんな男が企画営業部にいてお客さんと対峙してるっていうんだから、想像しただけで身震いする。優しい顔して逃してくれない相手が営業担当でやってきて、契約せずに帰った人など今までいるのだろうか。
―ガラッ―
「…透。なにを沈んでいるんですか」
「うえええ律!…え、なんで!」
「一緒に済ませた方が楽かと思いまして。嫌ですか?」
「い、やではない、けども…」
そう言うと律は湯船に背中を向けて、体を洗い出した。ただの営業マンがどうしてこんなに背筋がムキムキなのか、ジムでここまで鍛える必要はあるのか、営業マンとか言いながら実はボクサーでしたとか言われても受け入れられるその筋肉をじっと見つめる。私もそろそろ健康のためにもジムに通うべきか、などと思考を膨らませている間に、律は一通り終えたらしく湯舟に入ってくる。端っこで小さくなっていた私を軽々抱き上げ、背中から抱きしめるようにして座った。えぇっと、このパターン知ってるぞ…
「…透…緊張してどうかしましたか?」
「っえ!えーっと、……律…そのぉ……するの?」
「…したいんですか?」
その低音ボイスは今すぐ収めていただきたい。
「なんて、ね。しませんよ。お風呂はリラックスするところですから。だからほら、体の力を抜いて寄りかかってください」
この前の律に言って聞かせたい言葉である。
「…それに…」
「…?」
「今度はじっくり、ベッドの上で…」
今日が私の命日だったかと頭を過ぎると同時に、体中の血が沸騰して茹で蛸が一人できあがった。
「…っん、律…そんな、とこっ!」
「…ん、透…力を抜いて、」
「い、やぁっ!きたないっからぁ!」
「透に汚いところなんてありませんよ」
律は宣言したとおり、ベッドの上でじっくり、ねっとりと私を愛撫する。
仰向けに寝かされたかと思うと足の指の先から太ももにかけて、律の指と舌が踊るように何度も行き来する。それだけでたまらなく体を捩らせてしまう。丁寧にでも大胆に足の上をなぞる律の指は、触れてほしいとうずくところを避けるようにして撫でるので、じれったい快感だけが私を支配する。
「っ!律、律!お、ねがいっ……っもう…!」
「…もう、なんですか?」
「、っ!足ばっか…っん、この…へんた…っ!んああ!」
「貴女限定ですがね」
太ももの際どいところを撫でる指が破れ目をかするだけで、下腹部がずくずくして切ない声を上げてしまう。それでも律の指は意地悪で、ふっと笑うとその指を逃してしまうから、思わず快感を求めて声をあげる。
「あぁ…、!いや、いやなのっ!もう!」
「…透、言ってごらん。どうしてほしいのか」
律の声が頭の中に反響して何も考えられなくなる。目の前の快楽に集中すると、私の欲しいものが明確になってきて自然と求めてしまう。身体の中央で燻る熱は解放したいと蠢くが、僅かに残る頭の端の理性でその溢れ出す衝動を抑えて身体を起こす。それは余裕あふれる律を少しでも崩してやりたいとするかわいい反逆心からだった。
震える腕を自分の足元にいる律へと伸ばして、律の前髪をかきあげてから後頭部を撫でて抱きかかえる。律も私の動きを制することなく、手を止めてなすがままにされているので後はこのまま、囁くだけ…
「…大事なところ…律にだけ触ってほしいところ…律じゃなきゃだめなところ…お願い…触ってぇ…」
「っ!…はっ…思った以上に…くるものがあるっ!」
余裕な顔した彼を焦らすことができたと喜んだのも束の間、起き上がった私の脇に腕を入れて抱き上げた律は、その剛直を私の破れ目にぴたりと添える。
「…ひいやぁっ」
「…今日は優しくしたかったのですが」
「…、!律のそれは、優しさじゃなくて、意地悪でしょっ!」
「…その意地悪が好きなくせに」
律の硬い芯は私に寄り添ったまま、ぴくりとも動かないでいる。左腕で私の身体を固定するから、身を捩ることすら許されない。触れたそこがはくはくと動いて、期待からじわりと滲み出た汁が中から溢れてくる。その上右手は胸の頂きを弄ぶので、堪らない吐息が口をつく。
「、んっはぁ!律ぅ…ん!」
「言われるがまま、触れてますよ。次はどうする」
「んっ…やぁっ、!なんっ…でぇ!」
「透、さっきのお強請りを…もう一度」
「んあっ…そこ…やぁぁ!い、んあああ!」
「私にやってほしいこと、触れてほしいところを教えて」
お強請り、と頭の中で反芻する。律にやってほしいこと、触れてほしいところ。今一番、私が求めるもの。
「…ふ、っん…キス、して…っ!」
「、っ!透…」
「…ずっと、キス、してほし…ぅわっ…ぅん…っんん!」
律が噛み付くようにキスをする。ちゅ、ちゅっと音を鳴らしながらお互いを食べてしまうような貪るキスをした。私は律の首に腕を回すと、そっと唇から離れた律の顔が胸に押し付けられ、その吐息が先端を擦るだけで堪らなくなって身体をのけぞらせてしまう。無自覚に押し出されたその突起を律が噛むので、あられもない声で喘ぐしかなくなる。律の口の中で踊るように転がされるそれに、興奮が抑えられない。
「ああん!ちぎれ、ちゃうよぉ!」
「…もっと、もっと欲しがれ」
「んん、!あっ……っ律が…!律が!っほし…ぃぃいあああああああん!!」
びたりと押し付けられていた剛直が勢いよく割って押し入ってきて、思わずのけぞって絶叫をあげる。ずっと触れてほしくて、その満たされた欲に身体が歓喜したのがわかる。どろりと奥の泉が湧き上がって中を伝うが、律の激しい抽挿に押し戻されて、その度に卑猥な水音が周囲に響き渡る。一気に昂ぶった気は下ることを知らず、勢いのまま気をやってしまった。
「…っあああああ!!………、っはぁ、はぁ、はぁぁ……っん、ぅんああああ!」
「…上手に、いけましたね」
「ま、まって!まだ、いっ…ぁあ…うぅん…っあああん…」
私の力の抜けた静止なんてものともせず、律の激しい動きは止まらない。結合部からは溢れ出る水音と、叩きつける音が鳴り響く。
「やぁっ、ぁああん、や、さしくってぇ、いったぁ、!…うぅ、ふああああん!」
「…煽る方が悪い。それにまだ、私に、付き合ってもらわないと、」
そう言うと、律の舌が私の胸の頂きを捉えた。
「…っん、やあああ!…い、きなりぃ…!」
「…目の前で美味しそうに揺れていたので、思わず」
「…あっああん…美味しそう、ってぇ…っ言わないっで!…ふああ……んっ…」
律は軽く微笑むと、私の後頭部からうなじにかけてを撫で回す。反対の手はお腹を撫でるので、なんとも言い難い気持ちになる。だってそこには、
「…ここ、膨れていますね。なぜですか」
「っ!やぁああ!なでっない…でぇ…っん」
「…っこの形、覚えてくださいね…!」
律の形に膨れ上がった下腹を象るように撫でる指に、たまらなくなって思わずきゅっと力を入れてしまう。すると今度は中で律のその形を感じてしまい、どこにも逃げ場のない快感に溺れるしかないのかと思い知る。
律が激しく奥を突く度に感じさせられるその形に、うっとりとした喘ぎ声が出るのが自分でもわかった。
「……あっ…はぁあん…律、律っ…!」
「…っ、なんですか?」
「、ん!…律、っだけだよ!…あぁん!…ここに入るの、……今も、っんあ……昔もぉ!……」
「っ!そうでしたねっ…ここは、俺しか知らない…っ!」
「…あっあっ…っ!…、お、れって、…っんあ!」
律はたまに、俺と言って少し口が悪くなるときがある。こういう行為の時に出てくるそれは、律も感じてどろどろになってることの合図だと何度も繋がってきた中で知った。
「…っん、ふああんっ…!…り、律もっ…きも、っちい…?」
重たい腕で私の胸に顔を埋める律を抱きしめる。それに気づいた律が顔を寄せて、おでこをこつんと繋げてきた。
「…貴女と交わって、よくなかったことなどないよ」
ーだから今は俺をいっぱい感じて…ー
それを合図に、一層激しく動いた律の腰が私の最奥を貫いた。何度も繰り返されるその動きに体が大きく跳ね上がる。
「んっ…あっ、あっ…っ!ああ、…ああんっ……っん、ああああああああん!!!っはげっしぃぃっ!!あああああああ!!!」
大きな声をあげるしかこの快感をやり逃がす術を知らずに、ただ声を上げ続ける。理性なんてとっくに砕け散った。後は律を心ゆくまで感じるだけ。
「…透、透っ…、!はっ……っ!」
「ああ…っんああああああ!!…ああ…っああん…」
私の奥で脈打つ感覚が広がると同時に私の頭も弾けた。ぴーんっと足の先まで伸び切った力がふと抜けて、座ったまま反り返っていた背中を丸めながら律に向かって倒れ込んだ。律も自身の余韻に浸りながらも、夢中で私を掻き抱いてくれる。
「…律、律ぅ…」
「………どうしました?…」
「ふふふ…律と一緒にいけたの…うれしぃ…」
「っ!」
このままずっと、脱力したまま溶け出してしまいたいなんて思っていたら、中で質量をました気がした。
「んっ…あ、れ?…り、つ……大きくな…っ!ああん!」
「透が悪い。もう少し俺に付き合え」
一度抜かれた硬いままのそれは、素早く律の手で準備を終えたかと思うと、寝かされた私の中に入ってくる。抜かれた時は、はくはくとさせていた入り口も貫かれる芯があまりに中でぴったりとはまるので、歓喜による蜜で溢れかえる。私と律はぴったりなんだと思うと心までも満たされる。
その後も続く律の腰の動きに翻弄されながらも、余裕なさげに、でもにっこりと笑う律に私も思わず笑みが出る。明日の自分を心配しつつも、この快楽に自ら囚われるように集中すれば体中が律を欲しているのも事実で、私は律に身を任せ彼と私の欲の波にまた飲まれていった。
「…入稿まで時間があるのに、また私は屍になってる…」
「…随分幸せそうな屍ですね」
「うぅだって、律がいるから…」
「…あまり可愛いことを言うとまだ続きますよ」
「…それはちょっと…せめて明日に」
ーほう、明日ならいいんですかー
そんな囁きが聞こえたけれど、薄っすら明るくなってきた空に私の眠気は限界で、気を抜けば意識が飛びそうになる。明日の自分に幸あれ、なんて無駄な祈りを捧げていたら優しい口付けが降ってきて、そうそうこれが優しさってもんでしょなんて思ったら、おかしくなってきてくふくふと笑ってしまった。その顔を見て律が何か言った気がして、でも私の意識はすでに夢の中へどっぷりと浸かっていた。
朝の日差しとは思えない窓から射す明るさに、閉じている目が眩んで沈んでいた意識が浮上した。
どうやら律はその後私の身体をきれいにしてくれたらしく、節々の痛みと体のだるさとは裏腹に体はさっぱりしている。
朝、というより昼の燃えたぎる日差しに負けそうになりながら横を見ると、そこには珍しく律が眠っていた。いつもは私が起きる前に身支度を済ませてコーヒーを用意してくれている。それも有り難いけど、こうして隣にいてくれることに幸せを感じるのだ。たまにはこんな日があってもいいでしょう、と寝ている律を起こさないように、けれどお構いなしにその大きな胸にすり寄る。こんなに無防備なのも珍しいなぁと、身じろぎをする律にふふっと笑みが溢れた。そのとき、ふと違和を感じる。なにかがいつもと違う。
「…………あれ?、これ…」
起き上がるまではいかなかった頭が一気に覚醒した。声にならない驚きで固まっていると、ふふっと低い笑い声が聞こえた。
「…いつ気づくのかと…」
「…………起きてたの?」
「えぇ、最初から」
最初ってどこ、なんてつぶやきは律の口の中へ消えていった。ちゅっと軽いリップ音を響かせて離れていく。
「言ったでしょう?ここから先は私がプロデュースしますと」
「…………プロデュース…」
「一大イベントのプロポーズを逃したんですから。これからは私が仕切ります。手始めにこれを…」
そう言って握った私の左手の薬指には今、指輪が光っている。
「……これ…いつ……?」
「貴女が一人覚悟を決めたように、私にも覚悟を決めた日があったんですよ」
なら律も同じ思いで用意をしていたということだろうか。そんな素振り見せなかったのに…
「幸せになりましょう。二人で」
その言葉に涙が滲む。
ー答えはとっくに決まっているのに、言葉が出てこないー
そう言ったあの時の律に、今ならそのとおりだと言ってあげられる。あぁでもこれが…
「………こんなに、幸せな気持ちになるなら、律のプロポーズを待てばよかったかな…」
「貴女が感じた「幸せな気持ち」を、私は先にいただけました。私の一番の人、ありがとう。愛しています」
二人で幸せになろうね。私の一番の人…
これにて本編完結です。
ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。
引き続き番外編(10話ほどあります)も
お楽しみいただけると幸いです。
こしあん
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