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【番外編】女の戦いはトイレから②
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私が無謀にも先輩との仲をひけらかすような仕草で立ち続けている間も、先輩はその女に誤解を解こうと必死に今日の出来事を話す。けれど女はあたしの思惑通り、ぼーっとした表情であたしの手にあるワイシャツに目をやっていた。
それでいい、と思った。あたしが何も言わなくても勝手に誤解してもらえる。そんな愚かな未来を願い、愚かな行為をする愚かな女に成り下がっていた。それもずっと惨めだと思っていたコーヒーを片手に順番待ちするような女たちよりも、ずっと愚かな女に…
数分後、その女性がしどろもどろになって部屋を出ていくその瞬間まで、あたしは雰囲気に身を任せ続けていた。帰った、ということは、これはつまりあたしの勝ち…
「…何をしている」
聞いたことのないような、地を這う低い声がフロアに響いた。
「っ!せ、んぱい…?」
「何をしているのかと聞いている」
「な、にっ…て…」
愚かな女は間抜けにも、今この時やっと目が覚めたのだ。同時に彼の中における最愛とは何なのかを身に沁みて理解することとなる。
「…それは私のものだ。なぜ手にしている。そしてリビングにいるよう伝えて理解した返事をしたのに、なぜここにいる」
「あ、の先輩、あたし…っ!あたしのせいで、汚れたシャツを、洗いたくて」
「それを求める相手は君ではないし、君に役目が回ってくることは決してない」
雷が落ちた気がした。それくらいすっぱりと否定されたのだ。今まで見てきた数多くの女性たちのように、想いを告げる前に。
先輩は震えるあたしの手からワイシャツを取り上げると、そのまま脱衣所のゴミ箱に捨てた。
「はっきりさせておこう。今回家にあげたのは好意ではなく紛れもない善意だ。君以外の女性でも同じことをしただろう。その意味をはきちがえるな」
「彼女の誤解を解こうとしなかったことについて理由は聞かない聞きたくもない。ただ彼女の信頼を取り戻すために、君を利用させてもらう」
そう言うと脱いであったジャケットの胸ポケットからボールペンを取り出した。あれは、議事録がわりに先輩が使っている録音機…
「証拠保全のために録音する。異論は認めない。今日は雨に濡れた君にタオルを貸すために家にいれた。今はまだ勤務時間内でこれからすぐにでも帰社する予定である。やましいことは何一つない。そうだろう?」
「君と私は上司と部下であり、それ以上になることはこれから先あり得ることはない」
「彼女の誤解が私の言葉で解けきれなかったときは、君に証言を求める。必ず本当のことを言うように。返事は」
「は、はい…」
「それと…家に来たことをセクハラ等で訴えたければ好きにすればいい」
「……え?…」
それは、どういう…
「君が何を言おうが、最終的に家にあげる決断を下したのは私だ。そのことが君に誤解を与えたのなら謝罪する。申し訳ない」
その言葉を聞いてはっとする。そうだこの状況はあたしが望んでわがままを言った結果であるが、下手したら先輩の信用問題に関わってしまうことであり、それはまさしくあたしの態度次第であることを、今になって理解したのだ。
「っ!そ、それは違います!あたしが…っ!あたしが…悪いんです。先輩はエントランスで待つように言ったし、実際そこで待っていても何の支障もなかった…あわよくば、先輩の家に行きたいなんて、あたしの欲が働いて…それに、待っているように言われたリビングから動いたのも、あたしです。あたしが悪いんです…」
決して先輩を陥れたくてやったことではない。ただ、自分の欲望しか考えていなかったことに、今更ながら後悔が襲う。
「それが事実であれ、今回のことは仕事上の君を信用して招いた私の過失です。今後2度とこのようなことがないように、お互い適切な距離感でいきましょう」
「…っ!」
あたしは何をやっているんだろう。「信じている」と言ってくれた先輩の期待を裏切ってまで得たいと思ったポジションは、決して叶うものではなかったし、本当にあたしが望んでいたものは、こんな顔をしてこちらを見つめる先輩ではなかったはずなのに。
「…あの、本当に、すみませんでした。で、でも、あたし!先輩の、ことが…」
「申し訳ありませんが」
洗面台に置いてある時計をちらりと一瞥した先輩があたしの言葉を遮った。
「知っての通りこれから予定があります。共に帰社して報告する予定でしたが、私にその時間は残されていない。君は今すぐ一人で帰社してください。報告は君一人で済むよう、こちらで手配しておきます。時間指定で予約してあるタクシーが下にいる頃ですので、それに乗ってください。今から行けば30分ほどで会社につけるでしょう。それでは、お疲れ様でした」
「せ、んぱい、あの!あたし…」
「君の話を聞いてあげる義理も義務も私にはありません。私的な話をする間柄ではありませんので。業務報告なら受け付けます。…そのタオルはこちらでいただきます」
「っ!いえ!これは、その、使わせていただいたので、ちゃんと洗ってお返し、」
「その必要はありません」
そう言ってあたしの手の中からタオルをそっと抜き取ると、ワイシャツと同じようにゴミ箱へ投げ入れた。
「俺と彼女以外が使ったものを、もう使用することはありませんので、お気になさらず」
徹底的に拒絶されたと感じた。ハイブランドのワイシャツも、手触りで分かる高級なタオルも、ゴミ箱の中に入ってしまえばそれだけで惨めなものに思えた。それはつまりあたしに対する認識もそうであるのだろうと痛感する。
―…横峯さんはね、あれ、だめ。近づいたらだめ。もーね、完膚なきまでに払い落とされるから―
女子トイレで先輩が言ったあのセリフが頭を支配する。どこの大ボスのセリフだよ、なんて思っていた当時の自分をぶんなぐりたい。
それから先はあまり記憶に残っていない。横峯先輩に促されて降りていったエントランスの先には、コンシェルジュがタクシーのドアを開けて待っていた。
言われたとおり30分で着いた会社では、あたしの心とは裏腹に部署内ではいつもどおり淡々と業務が進んでいた。
「おおお!島谷くん!お疲れ様。大雨の中大変だったなぁ」
「…部長、ただいま…もどりました。雨は無事に…あ、横峯先輩からタオルを借りて…」
「あぁ!聞いているよ。横峯くんからも随時連絡を貰っていたから」
「…?随時?」
「横峯くんはね、いつも外回りの際はいつなら連絡が取れて、今どこにいるかをこちらに知らせるために、細かい自身の動きを随時位置情報付きでメールしてくれるんだよ」
「………え?…」
「いやぁ、彼に聞かなきゃ回らない仕事がありすぎてね。昔他社で商談中の彼と1時間連絡が取れなかったときにトラブルが起きて、うちが大損を食らったことがあるんだ」
「そうそう!今となっちゃ懐かしいけど、大変でしたよね」
「その後連絡がついた横峯くんがすぐに動いて事なきを得たんだが、あのまま横峯くんが動かなければ、今うちの会社が存在していてかも怪しい…」
「……は、ぁ…」
「そんなことがあったから、商談等で連絡が取れないときも含めて、立ち寄る場所やその時間まで全て事細かに連絡をくれるんだ」
「プライバシーも何もないなって思うんだが、おかげで守られた取引も数多く存在するため、我々は彼に頭が上がらないんだよ」
「今日、君たちが向こうの会社を出た時間も、横峯くんの家に立ち寄ることになった経緯も、家の中での様子も、一日のやり取りから君がタクシーで帰ってくるその時間まで、うちの部署の人間は全員把握しているんだよ」
―だから、君から改めて報告を受けることはないんだよ。お疲れ様―
そうにっこりと笑顔のまま言われて、背中に悪寒が走る。これは報告を入れたなんて可愛いものじゃない。外堀が完全に埋まっている。
「それから今日の仕事の件も、既に彼から報告を貰っているから。君は取り急ぎ報告書を作り上げてくれ。あの大手企業との取引が成立したそうじゃないか!よくやったな!」
「え?いや…あれは、横峯先輩が…」
「うん?だが君の名前で取った案件だと聞いているよ?向こうの会社も担当者は君だと言っている」
「…は?」
「これで研修ノルマも達成できて、君は晴れて横峯くんから独り立ちだな!横峯くんも君の指導員から外れて通常業務へ戻る!いやぁ、おめでとう!」
「…え?」
「いやぁ、これでようやく例のプロジェクト始動できますね」
「横峯さんいなかったら進まなかったもんな」
「教育係の仕事がない分、こっちに来てもらえる時間増えてありがたいよね」
「横峯さんも島谷さんの研修が早く終わるように、めちゃくちゃサポートしてたもんね」
「取り掛かりたい仕事がたくさんあったんだろうなぁ」
「にしても仕事が動き出すのはなにより、島谷さんが優秀な研修生であったおかげだよ!頑張ったね!お疲れさま!」
「「「お疲れさま!!」」」
完膚なきまでに払い落とされたのは恋心だけじゃなく、未練までもが塵となっていくのを感じた。
「ねぇ律そういえば、あの泥んこになったシャツって汚れ落ちたの?」
「………?あぁ…あの日貴女が帰ってからすぐに捨てました」
「?!すて、た?!なんで?!あれってでもブランド一点物で、確か結構するんじゃ、」
「?覚えていませんが20万ほどであったかと」
「えええええええっと、捨てたの?え?汚れが落ちなかったから?クリーニングとか!!」
「??貴女以外の女が触ったシャツを私が着るとでも?」
「そんな真面目な顔して首かしげて言う内容じゃなくない?!」
それでいい、と思った。あたしが何も言わなくても勝手に誤解してもらえる。そんな愚かな未来を願い、愚かな行為をする愚かな女に成り下がっていた。それもずっと惨めだと思っていたコーヒーを片手に順番待ちするような女たちよりも、ずっと愚かな女に…
数分後、その女性がしどろもどろになって部屋を出ていくその瞬間まで、あたしは雰囲気に身を任せ続けていた。帰った、ということは、これはつまりあたしの勝ち…
「…何をしている」
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「…それは私のものだ。なぜ手にしている。そしてリビングにいるよう伝えて理解した返事をしたのに、なぜここにいる」
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「それを求める相手は君ではないし、君に役目が回ってくることは決してない」
雷が落ちた気がした。それくらいすっぱりと否定されたのだ。今まで見てきた数多くの女性たちのように、想いを告げる前に。
先輩は震えるあたしの手からワイシャツを取り上げると、そのまま脱衣所のゴミ箱に捨てた。
「はっきりさせておこう。今回家にあげたのは好意ではなく紛れもない善意だ。君以外の女性でも同じことをしただろう。その意味をはきちがえるな」
「彼女の誤解を解こうとしなかったことについて理由は聞かない聞きたくもない。ただ彼女の信頼を取り戻すために、君を利用させてもらう」
そう言うと脱いであったジャケットの胸ポケットからボールペンを取り出した。あれは、議事録がわりに先輩が使っている録音機…
「証拠保全のために録音する。異論は認めない。今日は雨に濡れた君にタオルを貸すために家にいれた。今はまだ勤務時間内でこれからすぐにでも帰社する予定である。やましいことは何一つない。そうだろう?」
「君と私は上司と部下であり、それ以上になることはこれから先あり得ることはない」
「彼女の誤解が私の言葉で解けきれなかったときは、君に証言を求める。必ず本当のことを言うように。返事は」
「は、はい…」
「それと…家に来たことをセクハラ等で訴えたければ好きにすればいい」
「……え?…」
それは、どういう…
「君が何を言おうが、最終的に家にあげる決断を下したのは私だ。そのことが君に誤解を与えたのなら謝罪する。申し訳ない」
その言葉を聞いてはっとする。そうだこの状況はあたしが望んでわがままを言った結果であるが、下手したら先輩の信用問題に関わってしまうことであり、それはまさしくあたしの態度次第であることを、今になって理解したのだ。
「っ!そ、それは違います!あたしが…っ!あたしが…悪いんです。先輩はエントランスで待つように言ったし、実際そこで待っていても何の支障もなかった…あわよくば、先輩の家に行きたいなんて、あたしの欲が働いて…それに、待っているように言われたリビングから動いたのも、あたしです。あたしが悪いんです…」
決して先輩を陥れたくてやったことではない。ただ、自分の欲望しか考えていなかったことに、今更ながら後悔が襲う。
「それが事実であれ、今回のことは仕事上の君を信用して招いた私の過失です。今後2度とこのようなことがないように、お互い適切な距離感でいきましょう」
「…っ!」
あたしは何をやっているんだろう。「信じている」と言ってくれた先輩の期待を裏切ってまで得たいと思ったポジションは、決して叶うものではなかったし、本当にあたしが望んでいたものは、こんな顔をしてこちらを見つめる先輩ではなかったはずなのに。
「…あの、本当に、すみませんでした。で、でも、あたし!先輩の、ことが…」
「申し訳ありませんが」
洗面台に置いてある時計をちらりと一瞥した先輩があたしの言葉を遮った。
「知っての通りこれから予定があります。共に帰社して報告する予定でしたが、私にその時間は残されていない。君は今すぐ一人で帰社してください。報告は君一人で済むよう、こちらで手配しておきます。時間指定で予約してあるタクシーが下にいる頃ですので、それに乗ってください。今から行けば30分ほどで会社につけるでしょう。それでは、お疲れ様でした」
「せ、んぱい、あの!あたし…」
「君の話を聞いてあげる義理も義務も私にはありません。私的な話をする間柄ではありませんので。業務報告なら受け付けます。…そのタオルはこちらでいただきます」
「っ!いえ!これは、その、使わせていただいたので、ちゃんと洗ってお返し、」
「その必要はありません」
そう言ってあたしの手の中からタオルをそっと抜き取ると、ワイシャツと同じようにゴミ箱へ投げ入れた。
「俺と彼女以外が使ったものを、もう使用することはありませんので、お気になさらず」
徹底的に拒絶されたと感じた。ハイブランドのワイシャツも、手触りで分かる高級なタオルも、ゴミ箱の中に入ってしまえばそれだけで惨めなものに思えた。それはつまりあたしに対する認識もそうであるのだろうと痛感する。
―…横峯さんはね、あれ、だめ。近づいたらだめ。もーね、完膚なきまでに払い落とされるから―
女子トイレで先輩が言ったあのセリフが頭を支配する。どこの大ボスのセリフだよ、なんて思っていた当時の自分をぶんなぐりたい。
それから先はあまり記憶に残っていない。横峯先輩に促されて降りていったエントランスの先には、コンシェルジュがタクシーのドアを開けて待っていた。
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「おおお!島谷くん!お疲れ様。大雨の中大変だったなぁ」
「…部長、ただいま…もどりました。雨は無事に…あ、横峯先輩からタオルを借りて…」
「あぁ!聞いているよ。横峯くんからも随時連絡を貰っていたから」
「…?随時?」
「横峯くんはね、いつも外回りの際はいつなら連絡が取れて、今どこにいるかをこちらに知らせるために、細かい自身の動きを随時位置情報付きでメールしてくれるんだよ」
「………え?…」
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「……は、ぁ…」
「そんなことがあったから、商談等で連絡が取れないときも含めて、立ち寄る場所やその時間まで全て事細かに連絡をくれるんだ」
「プライバシーも何もないなって思うんだが、おかげで守られた取引も数多く存在するため、我々は彼に頭が上がらないんだよ」
「今日、君たちが向こうの会社を出た時間も、横峯くんの家に立ち寄ることになった経緯も、家の中での様子も、一日のやり取りから君がタクシーで帰ってくるその時間まで、うちの部署の人間は全員把握しているんだよ」
―だから、君から改めて報告を受けることはないんだよ。お疲れ様―
そうにっこりと笑顔のまま言われて、背中に悪寒が走る。これは報告を入れたなんて可愛いものじゃない。外堀が完全に埋まっている。
「それから今日の仕事の件も、既に彼から報告を貰っているから。君は取り急ぎ報告書を作り上げてくれ。あの大手企業との取引が成立したそうじゃないか!よくやったな!」
「え?いや…あれは、横峯先輩が…」
「うん?だが君の名前で取った案件だと聞いているよ?向こうの会社も担当者は君だと言っている」
「…は?」
「これで研修ノルマも達成できて、君は晴れて横峯くんから独り立ちだな!横峯くんも君の指導員から外れて通常業務へ戻る!いやぁ、おめでとう!」
「…え?」
「いやぁ、これでようやく例のプロジェクト始動できますね」
「横峯さんいなかったら進まなかったもんな」
「教育係の仕事がない分、こっちに来てもらえる時間増えてありがたいよね」
「横峯さんも島谷さんの研修が早く終わるように、めちゃくちゃサポートしてたもんね」
「取り掛かりたい仕事がたくさんあったんだろうなぁ」
「にしても仕事が動き出すのはなにより、島谷さんが優秀な研修生であったおかげだよ!頑張ったね!お疲れさま!」
「「「お疲れさま!!」」」
完膚なきまでに払い落とされたのは恋心だけじゃなく、未練までもが塵となっていくのを感じた。
「ねぇ律そういえば、あの泥んこになったシャツって汚れ落ちたの?」
「………?あぁ…あの日貴女が帰ってからすぐに捨てました」
「?!すて、た?!なんで?!あれってでもブランド一点物で、確か結構するんじゃ、」
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