14 / 24
14
しおりを挟む
……パタン……
「いや~みんな、お疲れだったね」
「…社長、この度は…」
「ああ!冬木くん。そんなのはいいから。君の処分も、金本くんの処分も、特に考えていないよ」
「ですが」
「まぁまずはさ、山色くんの話を聞こうじゃないか。………ねぇ?山色くん」
「え?」
開口一番に頭を下げた冬木部長がこちらを見て、山崎課長や沖田部長までもが不思議そうに私を見つめるので、今日何度目か分からないため息が出た。
「…そのニタニタ顔やめてもらえますか?」
「いやぁ?君があんな風に笑うの、久しぶりに見たからさ、ついね」
あの目が合った時のことを言っているんだろうけれど、確かに笑った自覚はあるがこんなにニタニタしていなかったはずだ。多分。
「…商店街の福引が当たったんですよ」
「私にはお気に入りの俳優に出会えた輝きが見えたけどね」
「そんな宝物見つけたわけじゃないですよ」
「私にとっては利益を生むものならなんでも宝物だよ」
「だから、それも…ねぇ?」なんて顎を触り、私のポケットを指さす社長にイラッとして思わず舌を出した。こんなことをしても許される程には、私たちは親密なビジネスの関係を結んでいる。
「社長、話が見えないのですが…」
「ほら、沖田くんも困ってるから。早く喋っちゃって」
そう言われて、私は個人PCを社長のデスクに置いて開き、全員が画面に注目する中で一つのファイルを開いた。
「これが、今回のUSBにハッキングソフトを仕込んだ人物です。居住はドイツで、おっきな企業でゲームアプリ開発をやってます」
「ゲームアプリ?ゲーム会社ってこと?」
社長が訝しげに画面を見つめる。企業サイトはドイツ語だが、資本金額を見るにこの国でも相当な大手企業であることが分かる。
「彼が個人的に売りに出してるそのソフトが入ったUSBを、ここ最近海外通販サイトから購入した日本人がいると界隈で騒がれていたのですが、それというのがこの人……豊田謙太郎、通所"トヨケン"です」
「っ!あの、金本さんが言ってた?」
「よくその人にたどり着いたね!」と沖田部長が驚きの声を上げた。私もまさか昨日ナンパしてきて一晩共に過ごした男の子たちから情報を得ましたなんてことを馬鹿正直に言えるはずもなく。まぁカラオケオールでひたすらソースコードやプログラミングの話をし続けたのはなかなかしんどかったが、彼らに出会えたのは今日というこの日、"トヨケン"のためだったのかもしれないと思うと、この出会いには感謝しかない。
「"トヨケン"は元フリーのシステムエンジニアで、今は私立大学の外部講師をしています。実際にその大学に通う子に聞いたので間違いないかと」
「へーえー、山色くんには珍しい知り合いだね」
山崎課長がにっこりと微笑んでいるがあれは「山色くん、友だちいたんだ~」という微笑ましい視線であり、その生暖かさが今は少し辛い。
「それと、これはとある筋の、信頼の置ける人間から得た情報ですが…"トヨケン"の友人がある商社の社員で、その会社は△△会社と長年契約を結んでいましたが、最近△△会社からの契約解除の動きがあるとか」
「△△会社って、今僕たちが契約を結ぼうとしている…」
「はい。蒼汰くんが血反吐を吐きながらシステム組んでる案件ですね。その友人とやらが勤める商社についてはあまり聞いたことのない会社ですが…」
冬木部長も額に手を当て考え込んでいる。まさかここで△△会社の名が出てくるとは思わなかったんだろう。顎に手を当てて考え込んでいた山崎課長も、沖田部長と一緒に難しい顔をして話し出す。
「つまり、契約解除になるのを恐れて、ライバル社になり得るうちをハッキングした、ってこと?」
「そのために、その辺に詳しい友人"トヨケン"を頼って、頼られた"トヨケン"がこのUSBを手に入れた、のか?」
「そのUSBが、偽名を使ってまで我が社員に近づいた人間によって、彼女の元へとたどり着いたって?」
三人が繋げていく推理に、「おそらく」と頷きを返す。全ては断片的な情報を元にした推測でしかないが、これ以上踏み込むには法の力を借りなければならないので、素人の推理ではここら辺が潮時だろう。
「我HM社のウェブページにうちの電話番号も載ってるんですから、調べて嘘の身分名乗って営業して、契約を結ばせようとUSBを渡すなんて、猿でもできることです」
「はーっはっは!なるほど、これで全てが繋がったね」
じっと全員の会話を聞いていた社長が机を叩いて笑った。まさかここまで巡り巡って起きたこととは、全員の想定の範囲外だった。
「…で、山色くん。どうしたらいいかな?」
悪い顔でこちらを見つめる社長に、なんと返そうものかと考えながら、
「まぁ損害賠償を請求するにせよ、金本さんにこのUSBを渡した偽名の男を特定する必要がありますよね」
「その"トヨケン"の友人とやらが本当に金本さんに接触したかも分からないしね」
「あとは"トヨケン"が買ったUSBのロット番号とここにあるUSBが同じである裏取りをしないといけませんが…まぁそれはこちらでもすぐにできます」
「ほほぅ」
「ただ今回のは普通に詐欺案件なので、やはりまずは警察に相談するのがいいかと」
「やっぱり最後は警察かぁ~」とうなだれる社長はちっとも可愛くないなと思いながら画面をめくる。
「それと、ドイツの彼は…個人的には触れない方がいいかと」
「ん~?なぜ?」
「喧嘩売るには会社が大きいし、もともと彼はうちに危害を加えたかったわけではなく、自分の開発したソフトを売って稼いでいただけなので、相手どるにはこちらの負担が大きすぎるかと」
「なるほど」
「まぁどうしてもと言うなら手として…彼はその近辺でなかなか荒稼ぎしてるみたいなので、被害にあった企業に彼の個人情報売るか、ですね」
「個人情報あるの?」
「氏名年齢住所電話番号、それからスリーサイズまでなら」
「はっはっは!上等じゃないか!」
社長が大笑いをかます中、沖田部長が若干引いた目線で見てくるのでいたたまれない。普段楓先輩や蒼汰くんと会話をしているとどうも偏った人間性になってしまうのかもしれない。気をつけなければ。
「…でも、どう考えても後が面倒です。危険はあれどうちの利が少なすぎる」
「なぁに、私もそこまでするつもりはないよ。けど…うん、なるほどねぇ。話が見えてきたよ。よくやったね、山色くん」
「いえ。…あの、私はもう退室しても?」
「うん。あとの事はこちらで相談するよ」
「では後処理が残っているので失礼します。…課長、また後で」
「うん。お疲れ様。冷蔵庫にエクレア入れてあるから、みんなで食べてね」
処分だとか責任だとかの話は私には関係のないものだ。そういうのは"大人たち"がやってくれればいい。社長室の重たいドアを開けてから振り返り、一礼して退出する。冬木部長の顔は見ないようにして。
時計を見ると、社長室に入ってから20分が経過していた。後処理をしようと急いで企画開発部のフロアに戻ろうとして、ふと手にあるUSBを見る。これが一時界隈では、非常に巧妙なハッキングソフトが作られたと話題になったあのUSBだろう。どこの誰が作っているのか、その背景は全て謎であったが、一度侵入したら最後、ものの数分で全てのデータが書き換えられ、なによりその速さが問題なのだと激震が走った。私ももちろん興味を持っていて、何かあったときのためにと対抗しうるソフトを用意していたのだが、それでも書き換えを停止に至らせるまでにはいかなかったことは、私を大いに興奮させた。犠牲になったデータはあれど、このソフトが"無償"で手に入れられたことは、何にも変え難い価値がある。"トヨケン"がこれにいくら注いだのかは知らないが、別で解析された痕跡も見当たらなかったし、中を見られることなく"新品"の状態でここまで辿り着いたのだろう。その新鮮さにうっとりとする。こんなソフトを作るなんて、一体どんな人物なのか。最近なりを潜めていた私の好奇心がうずうずと蘇ってきた。私はやっぱり、こういう機械相手の方が心穏やかにいられる。彼の暗号でもなく、あの冷えて熱い右手でもなく、きっとこっちの方が……
まずは仕事だと頬を一度叩いた。触れた頬はまだ熱を持っていたが、興奮冷めやらない今の私にとっては特に問題のあるものではない。
だが…意気揚々と辿り着いた企画開発部のフロアで、まさに"蛇に睨まれた蛙"達が青白い顔に半泣きで正座して待っている場面にぶち当たるなんて、この時の私は思いもよらなかった。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「…ちょっと、穂なんか怒ってなかった?」
「冬木サンが怒らせたんですよ」
「はぁ?アンタなにしてくれてんの。普段怒ることない穂を怒鳴らせるなんて、ほんと、このどクズ!!」
「てゆか冬木サン、あの凄まじい集中力で脳使ってハッキング抑えた後の穂先輩によく詰め寄れましたね?時折頭抱えてんの見てなかったんすか?」
「相当頭使ってんのよ!すぐにでも休ませたいのに社長は連れてっちゃうし!!ここは鬼しかいねーな!」
「しかも穂先輩のことコネ入社だなんだって勝手なこと言いやがってこんのモブが」
「なんだなんだ、ここはクズの巣窟か?あんたたち知らないの?穂は社長がストーカーまでして追いかけ回して、頭下げてうちへ来てもらった逸材よ?」
「『MINORU YAMASHIKI』と言えば、世界で三本の指に入るエンジニアですよ。国際コンペでも優勝を飾って、この人に解けないシステムはこの世にないと、世界が認めた人ですよ」
「あんたたちなんて穂に個人情報抜かれて丸裸にされればいいわ!」
「まぁ穂先輩がしなくても、俺が社会的制裁を与えてやってもいいですけどね。こんな奴らどこのセキュリティより弱っちいんで」
「はっ、大人しく私たちの前にひれ伏すがいいわ。正座しろ正座ぁ~」
「深山も横山くんも、いつもこんなにまくしたててやり取りしてるの?これじゃあ穂ちゃん、珍獣使いじゃないか。かわいそうに」
「「お前が言うな、お前が」」
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「……で、もしかしてこの人たちそれから20分も正座してるんですか?」
「当たり前でしょ。足りないくらいよ」
「蒼汰くん、後処理は?」
「そんなもん後ですよ。まずは分からせてやらないと」
「二人ともそこに正座なさい正座」
「「え?」」
「いや~みんな、お疲れだったね」
「…社長、この度は…」
「ああ!冬木くん。そんなのはいいから。君の処分も、金本くんの処分も、特に考えていないよ」
「ですが」
「まぁまずはさ、山色くんの話を聞こうじゃないか。………ねぇ?山色くん」
「え?」
開口一番に頭を下げた冬木部長がこちらを見て、山崎課長や沖田部長までもが不思議そうに私を見つめるので、今日何度目か分からないため息が出た。
「…そのニタニタ顔やめてもらえますか?」
「いやぁ?君があんな風に笑うの、久しぶりに見たからさ、ついね」
あの目が合った時のことを言っているんだろうけれど、確かに笑った自覚はあるがこんなにニタニタしていなかったはずだ。多分。
「…商店街の福引が当たったんですよ」
「私にはお気に入りの俳優に出会えた輝きが見えたけどね」
「そんな宝物見つけたわけじゃないですよ」
「私にとっては利益を生むものならなんでも宝物だよ」
「だから、それも…ねぇ?」なんて顎を触り、私のポケットを指さす社長にイラッとして思わず舌を出した。こんなことをしても許される程には、私たちは親密なビジネスの関係を結んでいる。
「社長、話が見えないのですが…」
「ほら、沖田くんも困ってるから。早く喋っちゃって」
そう言われて、私は個人PCを社長のデスクに置いて開き、全員が画面に注目する中で一つのファイルを開いた。
「これが、今回のUSBにハッキングソフトを仕込んだ人物です。居住はドイツで、おっきな企業でゲームアプリ開発をやってます」
「ゲームアプリ?ゲーム会社ってこと?」
社長が訝しげに画面を見つめる。企業サイトはドイツ語だが、資本金額を見るにこの国でも相当な大手企業であることが分かる。
「彼が個人的に売りに出してるそのソフトが入ったUSBを、ここ最近海外通販サイトから購入した日本人がいると界隈で騒がれていたのですが、それというのがこの人……豊田謙太郎、通所"トヨケン"です」
「っ!あの、金本さんが言ってた?」
「よくその人にたどり着いたね!」と沖田部長が驚きの声を上げた。私もまさか昨日ナンパしてきて一晩共に過ごした男の子たちから情報を得ましたなんてことを馬鹿正直に言えるはずもなく。まぁカラオケオールでひたすらソースコードやプログラミングの話をし続けたのはなかなかしんどかったが、彼らに出会えたのは今日というこの日、"トヨケン"のためだったのかもしれないと思うと、この出会いには感謝しかない。
「"トヨケン"は元フリーのシステムエンジニアで、今は私立大学の外部講師をしています。実際にその大学に通う子に聞いたので間違いないかと」
「へーえー、山色くんには珍しい知り合いだね」
山崎課長がにっこりと微笑んでいるがあれは「山色くん、友だちいたんだ~」という微笑ましい視線であり、その生暖かさが今は少し辛い。
「それと、これはとある筋の、信頼の置ける人間から得た情報ですが…"トヨケン"の友人がある商社の社員で、その会社は△△会社と長年契約を結んでいましたが、最近△△会社からの契約解除の動きがあるとか」
「△△会社って、今僕たちが契約を結ぼうとしている…」
「はい。蒼汰くんが血反吐を吐きながらシステム組んでる案件ですね。その友人とやらが勤める商社についてはあまり聞いたことのない会社ですが…」
冬木部長も額に手を当て考え込んでいる。まさかここで△△会社の名が出てくるとは思わなかったんだろう。顎に手を当てて考え込んでいた山崎課長も、沖田部長と一緒に難しい顔をして話し出す。
「つまり、契約解除になるのを恐れて、ライバル社になり得るうちをハッキングした、ってこと?」
「そのために、その辺に詳しい友人"トヨケン"を頼って、頼られた"トヨケン"がこのUSBを手に入れた、のか?」
「そのUSBが、偽名を使ってまで我が社員に近づいた人間によって、彼女の元へとたどり着いたって?」
三人が繋げていく推理に、「おそらく」と頷きを返す。全ては断片的な情報を元にした推測でしかないが、これ以上踏み込むには法の力を借りなければならないので、素人の推理ではここら辺が潮時だろう。
「我HM社のウェブページにうちの電話番号も載ってるんですから、調べて嘘の身分名乗って営業して、契約を結ばせようとUSBを渡すなんて、猿でもできることです」
「はーっはっは!なるほど、これで全てが繋がったね」
じっと全員の会話を聞いていた社長が机を叩いて笑った。まさかここまで巡り巡って起きたこととは、全員の想定の範囲外だった。
「…で、山色くん。どうしたらいいかな?」
悪い顔でこちらを見つめる社長に、なんと返そうものかと考えながら、
「まぁ損害賠償を請求するにせよ、金本さんにこのUSBを渡した偽名の男を特定する必要がありますよね」
「その"トヨケン"の友人とやらが本当に金本さんに接触したかも分からないしね」
「あとは"トヨケン"が買ったUSBのロット番号とここにあるUSBが同じである裏取りをしないといけませんが…まぁそれはこちらでもすぐにできます」
「ほほぅ」
「ただ今回のは普通に詐欺案件なので、やはりまずは警察に相談するのがいいかと」
「やっぱり最後は警察かぁ~」とうなだれる社長はちっとも可愛くないなと思いながら画面をめくる。
「それと、ドイツの彼は…個人的には触れない方がいいかと」
「ん~?なぜ?」
「喧嘩売るには会社が大きいし、もともと彼はうちに危害を加えたかったわけではなく、自分の開発したソフトを売って稼いでいただけなので、相手どるにはこちらの負担が大きすぎるかと」
「なるほど」
「まぁどうしてもと言うなら手として…彼はその近辺でなかなか荒稼ぎしてるみたいなので、被害にあった企業に彼の個人情報売るか、ですね」
「個人情報あるの?」
「氏名年齢住所電話番号、それからスリーサイズまでなら」
「はっはっは!上等じゃないか!」
社長が大笑いをかます中、沖田部長が若干引いた目線で見てくるのでいたたまれない。普段楓先輩や蒼汰くんと会話をしているとどうも偏った人間性になってしまうのかもしれない。気をつけなければ。
「…でも、どう考えても後が面倒です。危険はあれどうちの利が少なすぎる」
「なぁに、私もそこまでするつもりはないよ。けど…うん、なるほどねぇ。話が見えてきたよ。よくやったね、山色くん」
「いえ。…あの、私はもう退室しても?」
「うん。あとの事はこちらで相談するよ」
「では後処理が残っているので失礼します。…課長、また後で」
「うん。お疲れ様。冷蔵庫にエクレア入れてあるから、みんなで食べてね」
処分だとか責任だとかの話は私には関係のないものだ。そういうのは"大人たち"がやってくれればいい。社長室の重たいドアを開けてから振り返り、一礼して退出する。冬木部長の顔は見ないようにして。
時計を見ると、社長室に入ってから20分が経過していた。後処理をしようと急いで企画開発部のフロアに戻ろうとして、ふと手にあるUSBを見る。これが一時界隈では、非常に巧妙なハッキングソフトが作られたと話題になったあのUSBだろう。どこの誰が作っているのか、その背景は全て謎であったが、一度侵入したら最後、ものの数分で全てのデータが書き換えられ、なによりその速さが問題なのだと激震が走った。私ももちろん興味を持っていて、何かあったときのためにと対抗しうるソフトを用意していたのだが、それでも書き換えを停止に至らせるまでにはいかなかったことは、私を大いに興奮させた。犠牲になったデータはあれど、このソフトが"無償"で手に入れられたことは、何にも変え難い価値がある。"トヨケン"がこれにいくら注いだのかは知らないが、別で解析された痕跡も見当たらなかったし、中を見られることなく"新品"の状態でここまで辿り着いたのだろう。その新鮮さにうっとりとする。こんなソフトを作るなんて、一体どんな人物なのか。最近なりを潜めていた私の好奇心がうずうずと蘇ってきた。私はやっぱり、こういう機械相手の方が心穏やかにいられる。彼の暗号でもなく、あの冷えて熱い右手でもなく、きっとこっちの方が……
まずは仕事だと頬を一度叩いた。触れた頬はまだ熱を持っていたが、興奮冷めやらない今の私にとっては特に問題のあるものではない。
だが…意気揚々と辿り着いた企画開発部のフロアで、まさに"蛇に睨まれた蛙"達が青白い顔に半泣きで正座して待っている場面にぶち当たるなんて、この時の私は思いもよらなかった。
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「…ちょっと、穂なんか怒ってなかった?」
「冬木サンが怒らせたんですよ」
「はぁ?アンタなにしてくれてんの。普段怒ることない穂を怒鳴らせるなんて、ほんと、このどクズ!!」
「てゆか冬木サン、あの凄まじい集中力で脳使ってハッキング抑えた後の穂先輩によく詰め寄れましたね?時折頭抱えてんの見てなかったんすか?」
「相当頭使ってんのよ!すぐにでも休ませたいのに社長は連れてっちゃうし!!ここは鬼しかいねーな!」
「しかも穂先輩のことコネ入社だなんだって勝手なこと言いやがってこんのモブが」
「なんだなんだ、ここはクズの巣窟か?あんたたち知らないの?穂は社長がストーカーまでして追いかけ回して、頭下げてうちへ来てもらった逸材よ?」
「『MINORU YAMASHIKI』と言えば、世界で三本の指に入るエンジニアですよ。国際コンペでも優勝を飾って、この人に解けないシステムはこの世にないと、世界が認めた人ですよ」
「あんたたちなんて穂に個人情報抜かれて丸裸にされればいいわ!」
「まぁ穂先輩がしなくても、俺が社会的制裁を与えてやってもいいですけどね。こんな奴らどこのセキュリティより弱っちいんで」
「はっ、大人しく私たちの前にひれ伏すがいいわ。正座しろ正座ぁ~」
「深山も横山くんも、いつもこんなにまくしたててやり取りしてるの?これじゃあ穂ちゃん、珍獣使いじゃないか。かわいそうに」
「「お前が言うな、お前が」」
++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++
「……で、もしかしてこの人たちそれから20分も正座してるんですか?」
「当たり前でしょ。足りないくらいよ」
「蒼汰くん、後処理は?」
「そんなもん後ですよ。まずは分からせてやらないと」
「二人ともそこに正座なさい正座」
「「え?」」
0
あなたにおすすめの小説
どなたか私の旦那様、貰って下さいませんか?
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
私の旦那様は毎夜、私の部屋の前で見知らぬ女性と情事に勤しんでいる、だらしなく恥ずかしい人です。わざとしているのは分かってます。私への嫌がらせです……。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
政略結婚で、離縁出来ないけど離縁したい。
無類の女好きの従兄の侯爵令息フェルナンドと伯爵令嬢のロゼッタは、結婚をした。毎晩の様に違う女性を屋敷に連れ込む彼。政略結婚故、愛妾を作るなとは思わないが、せめて本邸に連れ込むのはやめて欲しい……気分が悪い。
彼は所謂美青年で、若くして騎士団副長であり兎に角モテる。結婚してもそれは変わらず……。
ロゼッタが夜会に出れば見知らぬ女から「今直ぐフェルナンド様と別れて‼︎」とワインをかけられ、ただ立っているだけなのに女性達からは終始凄い形相で睨まれる。
居た堪れなくなり、広間の外へ逃げれば元凶の彼が見知らぬ女とお楽しみ中……。
こんな旦那様、いりません!
誰か、私の旦那様を貰って下さい……。
愛されないと吹っ切れたら騎士の旦那様が豹変しました
蜂蜜あやね
恋愛
隣国オデッセアから嫁いできたマリーは次期公爵レオンの妻となる。初夜は真っ暗闇の中で。
そしてその初夜以降レオンはマリーを1年半もの長い間抱くこともしなかった。
どんなに求めても無視され続ける日々についにマリーの糸はプツリと切れる。
離縁するならレオンの方から、私の方からは離縁は絶対にしない。負けたくない!
夫を諦めて吹っ切れた妻と妻のもう一つの姿に惹かれていく夫の遠回り恋愛(結婚)ストーリー
※本作には、性的行為やそれに準ずる描写、ならびに一部に性加害的・非合意的と受け取れる表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。
※ムーンライトノベルズでも投稿している同一作品です。
完結【強引な略奪婚】冷徹な次期帝は、婚姻間近の姫を夜ごと甘く溶かす
小木楓
恋愛
完結しました✨
タグ&あらすじ変更しました。
略奪された大納言家の香子を待っていたのは、冷徹な次期帝による「狂愛」という名の支配でした。
「泣け、香子。お前をこれほど乱せるのは、世界で私だけだ」
「お前はまだ誰のものでもないな? ならば、私のものだ」
大納言家の姫・香子には、心通わせる穏やかな婚約者がいた。
しかし、そのささやかな幸福は、冷徹と噂される次期帝・彰仁(あきひと)に見初められたことで一変する。
強引な勅命により略奪され、後宮という名の檻に閉じ込められた香子。
夜ごとの契りで身体を繋がれ、元婚約者への想いすら「不義」として塗り潰されていく。
恐怖に震える香子だったが、閉ざされた寝所で待っていたのは、想像を絶するほど重く、激しい寵愛で……?
「痛くはしない。……お前が私のことしか考えられなくなるまで、何度でも教え込もう」
逃げ場のない愛に心が絡め取られていく中、彰仁は香子を守るため、「ある残酷な嘘」を用いて彼女を試す。
それは、愛するがゆえに彼女を嫉妬と絶望で壊し、「帝なしでは息もできない」状態へ作り変えるための、狂気じみた遊戯だった。
「一生、私の腕の中で溺れていろ」
守るために壊し、愛するために縛る。
冷酷な仮面の下に隠された、
一途で異常な執着を知った時、香子の心もまた甘い猛毒に溶かされていく――。
★最後は極上のハッピーエンドです。
※AI画像を使用しています。
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件
水月
恋愛
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
以後、
寝室は強制統合
常時抱っこ移動
一秒ごとに更新される溺愛
妻を傷つける者には容赦なし宣言
甘さ過多、独占欲過剰、愛情暴走中。
さらにはリーリアを取り戻そうとする実家の横槍まで入り――?
自己評価ゼロの健気令嬢と愛が一分も我慢できなかった最強騎士。
溺愛が止まらない、契約結婚から始まる甘すぎる逆転ラブコメ
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
嫌われ令嬢ですが、最終的に溺愛される予定です
由香
恋愛
貴族令嬢エマは、自分が周囲から嫌われていると信じて疑わなかった。
婚約者である侯爵令息レオンからも距離を取られ、冷たい視線を向けられている――そう思っていたのに。
ある日、思いがけず聞いてしまった彼の本音。
「君を嫌ったことなど、一度もない」
それは誤解とすれ違いが重なっただけの、両片思いだった。
勘違いから始まる、甘くて優しい溺愛恋物語。
各務課長が「君の時間を十分ください」と言った結果
汐埼ゆたか
恋愛
実花子はカフェで恋人と待ち合わせしているが、彼はなかなか来ない。
あと十分でカフェを出ようとしたところで偶然上司の各務と会う。
各務から出し抜けに「君の時間を十分ください」と言われ、反射的に「はい」と返事をしたら、なぜか恋人役をすることになり――。
*☼*――――――――――*☼*
佐伯 実花子(さえき みかこ) 27歳
文具メーカー『株式会社MAO』企画部勤務
仕事人間で料理は苦手
×
各務 尊(かがみ たける) 30歳
実花子の上司で新人研修時代の指導担当
海外勤務から本社の最年少課長になったエリート
*☼*――――――――――*☼*
『十分』が実花子の運命を思わぬ方向へ変えていく。
――――――――――
※他サイトからの転載
※※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
※無断転載禁止。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる