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「まったく、パンツのくだりはマジでいらなかったですけどね」
そう言いながら無事に帰ってきた蒼汰くんに視線を向ける。克己さんとちゃんと話したいが、今は無言電話の件を解決しなければならない。彼もそれは分かっているようで、そっと手を離した。
「蒼汰!よく走ってくれたわね!」
「久しぶりに全力疾走しましたよ。つーか労る気があるならセクハラの謝罪してください」
「セクハラ?なんのこと?」
「パンツの話だよ!聞きたくもないこと聞かせやがって!」
「何勘違いしてるの。いくらあたしでも履いてるわよ流石に。むしろその勘違いの方がセクハラよ。やめてよね。謝って」
「なんでだよ!意味わかんねーよ!」
ほんとに。今回ばかりは蒼汰くんに心から同意する。
「…で?あんた、だれ?」
「っ、お、おおお俺、」
「落ち着けよ、何か事情があったんだろ?楓先輩だもんなぁ、恨みを晴らしたくなる気持ちは分かる」
「おい蒼汰。なんだって?」
捕まえた犯人に蒼汰くんが問いかける。心なしか優しく聞こえる言葉には同情があったらしく、腕を組んでうんうんっと頷いている。
「う、恨みだなんて…!ちがいます!お、おお俺はただ、こないだ参加した飲み会で…」
「…………まさか、食われたのか?!」
「失礼ね!食わないわよ!!」
「す、素敵な人だなぁ、って……」
………時間が止まった気がした。
「…酒が入った楓先輩を素敵だと思えるなんて、お前はほんとに人の子か?」
「何かの見間違いじゃない?楓先輩は確かにすごくきれいだけど…何かの見間違いじゃない?」
「はははっ!君の感性、振り幅バグってるね」
「お前らそこになおれ!特に冬木ぃ!」
息を吹き返したみんなが口々に言いたいことを言うと、楓先輩がびしぃっとこちらを指差した。でも間違ったことは言ってないはず。克己さんは置いといて。
「や、やっぱり!深山さんは、ふ、冬木さんと!で、ででデキてるんですね!」
「「は?」」
無言電話の彼が勢いよくそう言うやいなや、克己さんと楓先輩の息が初めて揃って、そしてその一言でフロア内の空気は凍りダイアモンドダストが吹き荒れた。だめだこれは大変なことになった。
「で、ででデキてるんですよね?!だ、だからそんなに馴れ馴れしく…っ!お、おお俺だって、!深山さんのこと!!ほんとに!っほんきで!!」
「ねぇ、待って!落ち着いて!それ以上はやめて!」
「お前っ!顔!顔を見ろ!二人の!」
「っ、だ!だって!!」
蒼汰くんと二人で彼を止めようとするも、ヒートアップした彼は収まらない。まだ何かを続けようとする彼の口を手で塞ごうかとまで思った時、その手を克己さんにそっと握られた。
「あー、まじさ、悪いんだけど、それ以上口開いたらほんと、何しちゃうか分かんないわ」
「君がそう思った過程については興味ないけど、その頭は飾りなのかな」
「み、深山さん?ふ、冬木さん…?」
「だから口開くなって言ったのよ聞こえた?」
「頭だけじゃなく口までただの飾りにしちゃうよ?」
なんだなんだ、ここは本当に地球か?地球人は言葉一つで氷河期を呼べるのか?知らなかったなぁそんなの。蒼汰くんと二人でどうにもできない現状にため息も出ない。
「まぁ、さ。ほら、なんだ…腐った思考回路でも分かるように言うなら…それは違うから。あり得ないから」
「ははっ、安心してね。僕には愛する人がちゃんといるから。ねぇ?穂ちゃん」
「うえっ、そ、そうね…うん…」
突然こちらに振られて即答できなかったばかりに、克己さんが目をキラリと光らせて私を見る。とばっちりにもほどがある。
「な、なんだ…そうなんだ、よかったぁ…」
「…まぁよくはないけど、全然良くないけどね、この状況」
「無言電話もなかなか迷惑行為でしたしね」
何を思ってよかったなのか、案外鋼の心臓なのかもしれないなと呆れてしまった。
「あ、あの…ほんと、す、すみませんでした…、お、お俺っ!」
「あーいい。いいからそういうの」
本人も現状に気づいたのか、謝ろうと居住まいを正したとき、楓先輩が顔の前で手を降った。
「…?楓先輩?」
「あれ、熱烈な感情でぶちのめすんじゃなかったんですか?」
「こういうのをぶちのめすのはあたしじゃなくて、上の人間でしょ?」
上の人間…?
床に正座する彼に近づいた楓先輩は、その前にしゃがみこんで彼の顔を「ふ~ん…」とじっと見る。
「悪いけど、卑怯な手で迫られる愛には興味ないの。純粋な愛なら受け取ってあげるけど…それでも貴方は2番手ね。1番手はもう埋まってるのよ。可愛がってる子犬がね」
「い、1番って……」
「ふふ、呼んであげましょうか?」
そう言って自分のスマホを取り出した楓先輩は電話をかけ始めた。
「…ねぇ。ちょっとこっちまで来てくれない?……そう、システム開発部…………はぁ?会合なんて後でいいから、今すぐ車から降りて……………ちょっと、このあたしが危機に陥ってるのに、そのオジサンが集まるその会合と、どっちが大事なのよ」
ピッ
「10秒以内に来るわよ」
「いや、楓先輩…まじ傲慢…誰呼びつけたんですか」
「何しても許される楓様だからね」
…タタタッ、…
「っ楓!なにがあった?!」
走ってきたらしいその人は、とても慌てた様子でフロア内に文字通り飛び込んできた。普段のピシリと決めた姿からは想像のつかない乱れようで現れたその人は、
「「しゃ、社長?!」」
私と蒼汰くんと彼の声が重なる。無言電話の彼に至っては突然の人物に驚きの余り声も出ないようだった。相変わらずフロア内の空気はしーんとしている。先に沈黙を破ったのは蒼汰くんだ。
「……楓先輩、なんで隠してたんすか」
「別に隠してないわよ。言ってないだけ」
「言っといてくださいよ!!」
「だって聞かれなかったもの」
べーっと舌を出す楓先輩に蒼汰くんは青筋を立てている
「え、穂先輩も知ってたんですか?」
「いやー、なんとなく?そうかなって」
「も、ももしかして冬木サンも?」
「まぁどことなく空気あったよね」
「な、なな!お、俺だけぇ?!」
「なになに?何の話?ねぇ!私走ってきたけど!」
困惑する蒼汰くんと、未だに息を乱している社長と、事態が把握できたのかただ困惑が解けないのか分からないが固まったまま床に沈む無言電話犯に、もはやなんと声をかけていいのか分からなかった。
「まぁ、ね。本人も反省してるなら、こんなこと二度とないようにね」
「っすん…ぐすん…は、はぃぃ」
緊張のあまり泣き出した無言電話犯を慰めつつ、上に立つ人間として注意喚起をする社長に、ようやく場が落ち着いた。
「あーまぁこれで一件落着だわー!よかったわ!」
「これで楓先輩の叫び声を聞くことはなくなりますね」
「ふふ、みんなのおかげね。ありがとう!」
「あとは俺のプリンですね」
「あぁ、プリン。……そういやそんなのあったわね」
「ちょっと忘れてましたね、蒼汰くんごめんね」
「忘れないでくださいよ!一大事なんですから!」
「横山くんも、そろそろ防犯カメラでも設置したら?」
「あ、それいいかも!俺ネットで買います!」
晴れ晴れとした楓先輩に思わず私も笑顔になるが、そういえば蒼汰くんのプリン盗難事件はまだ解決していないんだった、と思い出す。いそいそとスマホを取り出して検索し始める蒼汰くんに、社長が「ん?」と声を上げた。
「プリンってなんのこと?」
「なんでか、蒼汰くんのプリンが冷蔵庫から消えちゃうんです。駅前の有名菓子のところの限定品なんですけど」
「もう何度目?って話よね。毎回うじうじしちゃってもー仕事にならないのよ」
「失礼な、仕事はしてましたよ!」
糖分が足りないと泣いていた彼を思い出して、ふふっと笑ってしまうと、克己さんがポンポンっと頭を撫でてくれた。『プリン盗賊』なんてかわいい名前をつけたのは彼だったなと二人で思いだしてまた笑った。社長は一人顎に手を当てて考え込んでいる。
「んー?よく分かんないけど、たまに冷蔵庫に入ってたプリンなら私が食べたよ?」
「「「へ?」」」
「真っ赤なパッケージでさ、もうすんごい美味しいの!いつも1個だけ入ってたから、システム開発部の誰かが私用に残しておいてくれたのかなって」
「誰か知らないけどありがとうね」とにっこり笑う社長に全員が言葉を失う。そうだ、新設当初から同じ8階のフロアで仲良く給湯室も共用していたんだった。すっかり失念していた。
横で大きく息を吸う蒼汰くんが叫ぶまで、あと3秒。
「っ!かーーえーーーせーーーーーーー!!!」
時刻は13:00。ちょうど午後始業の時間だ。
「で?穂ちゃん」
「ん?」
「食ったって、なに?」
「っ!だから!食ってないってば!!」
「ほんとに?」
「当たり前でしょ!」
「なら、僕だけだよね?」
「っえ?」
「僕だけって言って」
「っこ、ここで?」
「これからも美味しくいただくのは、克己さんだけって。ほら、言って」
「ほら~言ってあげなさいよ穂」
「言わないと冬木サンうるさそうですよ、ほらほら」
「なんでこうなるの!!!」
本当に言ったかどうかは、また後日改めて。
◇◇◇
ここまで長らくお付き合いいただきありがとうございました。
本編はこれにて完結いたします。
これまでお気に入り登録や感想をいただけましたこと、大変嬉しく励みに思っておりました。本当にありがとうございました。
今後は番外編を不定期ではありますが随時更新していきますので、まだまだ楽しんでいただけましたら幸いです。
そう言いながら無事に帰ってきた蒼汰くんに視線を向ける。克己さんとちゃんと話したいが、今は無言電話の件を解決しなければならない。彼もそれは分かっているようで、そっと手を離した。
「蒼汰!よく走ってくれたわね!」
「久しぶりに全力疾走しましたよ。つーか労る気があるならセクハラの謝罪してください」
「セクハラ?なんのこと?」
「パンツの話だよ!聞きたくもないこと聞かせやがって!」
「何勘違いしてるの。いくらあたしでも履いてるわよ流石に。むしろその勘違いの方がセクハラよ。やめてよね。謝って」
「なんでだよ!意味わかんねーよ!」
ほんとに。今回ばかりは蒼汰くんに心から同意する。
「…で?あんた、だれ?」
「っ、お、おおお俺、」
「落ち着けよ、何か事情があったんだろ?楓先輩だもんなぁ、恨みを晴らしたくなる気持ちは分かる」
「おい蒼汰。なんだって?」
捕まえた犯人に蒼汰くんが問いかける。心なしか優しく聞こえる言葉には同情があったらしく、腕を組んでうんうんっと頷いている。
「う、恨みだなんて…!ちがいます!お、おお俺はただ、こないだ参加した飲み会で…」
「…………まさか、食われたのか?!」
「失礼ね!食わないわよ!!」
「す、素敵な人だなぁ、って……」
………時間が止まった気がした。
「…酒が入った楓先輩を素敵だと思えるなんて、お前はほんとに人の子か?」
「何かの見間違いじゃない?楓先輩は確かにすごくきれいだけど…何かの見間違いじゃない?」
「はははっ!君の感性、振り幅バグってるね」
「お前らそこになおれ!特に冬木ぃ!」
息を吹き返したみんなが口々に言いたいことを言うと、楓先輩がびしぃっとこちらを指差した。でも間違ったことは言ってないはず。克己さんは置いといて。
「や、やっぱり!深山さんは、ふ、冬木さんと!で、ででデキてるんですね!」
「「は?」」
無言電話の彼が勢いよくそう言うやいなや、克己さんと楓先輩の息が初めて揃って、そしてその一言でフロア内の空気は凍りダイアモンドダストが吹き荒れた。だめだこれは大変なことになった。
「で、ででデキてるんですよね?!だ、だからそんなに馴れ馴れしく…っ!お、おお俺だって、!深山さんのこと!!ほんとに!っほんきで!!」
「ねぇ、待って!落ち着いて!それ以上はやめて!」
「お前っ!顔!顔を見ろ!二人の!」
「っ、だ!だって!!」
蒼汰くんと二人で彼を止めようとするも、ヒートアップした彼は収まらない。まだ何かを続けようとする彼の口を手で塞ごうかとまで思った時、その手を克己さんにそっと握られた。
「あー、まじさ、悪いんだけど、それ以上口開いたらほんと、何しちゃうか分かんないわ」
「君がそう思った過程については興味ないけど、その頭は飾りなのかな」
「み、深山さん?ふ、冬木さん…?」
「だから口開くなって言ったのよ聞こえた?」
「頭だけじゃなく口までただの飾りにしちゃうよ?」
なんだなんだ、ここは本当に地球か?地球人は言葉一つで氷河期を呼べるのか?知らなかったなぁそんなの。蒼汰くんと二人でどうにもできない現状にため息も出ない。
「まぁ、さ。ほら、なんだ…腐った思考回路でも分かるように言うなら…それは違うから。あり得ないから」
「ははっ、安心してね。僕には愛する人がちゃんといるから。ねぇ?穂ちゃん」
「うえっ、そ、そうね…うん…」
突然こちらに振られて即答できなかったばかりに、克己さんが目をキラリと光らせて私を見る。とばっちりにもほどがある。
「な、なんだ…そうなんだ、よかったぁ…」
「…まぁよくはないけど、全然良くないけどね、この状況」
「無言電話もなかなか迷惑行為でしたしね」
何を思ってよかったなのか、案外鋼の心臓なのかもしれないなと呆れてしまった。
「あ、あの…ほんと、す、すみませんでした…、お、お俺っ!」
「あーいい。いいからそういうの」
本人も現状に気づいたのか、謝ろうと居住まいを正したとき、楓先輩が顔の前で手を降った。
「…?楓先輩?」
「あれ、熱烈な感情でぶちのめすんじゃなかったんですか?」
「こういうのをぶちのめすのはあたしじゃなくて、上の人間でしょ?」
上の人間…?
床に正座する彼に近づいた楓先輩は、その前にしゃがみこんで彼の顔を「ふ~ん…」とじっと見る。
「悪いけど、卑怯な手で迫られる愛には興味ないの。純粋な愛なら受け取ってあげるけど…それでも貴方は2番手ね。1番手はもう埋まってるのよ。可愛がってる子犬がね」
「い、1番って……」
「ふふ、呼んであげましょうか?」
そう言って自分のスマホを取り出した楓先輩は電話をかけ始めた。
「…ねぇ。ちょっとこっちまで来てくれない?……そう、システム開発部…………はぁ?会合なんて後でいいから、今すぐ車から降りて……………ちょっと、このあたしが危機に陥ってるのに、そのオジサンが集まるその会合と、どっちが大事なのよ」
ピッ
「10秒以内に来るわよ」
「いや、楓先輩…まじ傲慢…誰呼びつけたんですか」
「何しても許される楓様だからね」
…タタタッ、…
「っ楓!なにがあった?!」
走ってきたらしいその人は、とても慌てた様子でフロア内に文字通り飛び込んできた。普段のピシリと決めた姿からは想像のつかない乱れようで現れたその人は、
「「しゃ、社長?!」」
私と蒼汰くんと彼の声が重なる。無言電話の彼に至っては突然の人物に驚きの余り声も出ないようだった。相変わらずフロア内の空気はしーんとしている。先に沈黙を破ったのは蒼汰くんだ。
「……楓先輩、なんで隠してたんすか」
「別に隠してないわよ。言ってないだけ」
「言っといてくださいよ!!」
「だって聞かれなかったもの」
べーっと舌を出す楓先輩に蒼汰くんは青筋を立てている
「え、穂先輩も知ってたんですか?」
「いやー、なんとなく?そうかなって」
「も、ももしかして冬木サンも?」
「まぁどことなく空気あったよね」
「な、なな!お、俺だけぇ?!」
「なになに?何の話?ねぇ!私走ってきたけど!」
困惑する蒼汰くんと、未だに息を乱している社長と、事態が把握できたのかただ困惑が解けないのか分からないが固まったまま床に沈む無言電話犯に、もはやなんと声をかけていいのか分からなかった。
「まぁ、ね。本人も反省してるなら、こんなこと二度とないようにね」
「っすん…ぐすん…は、はぃぃ」
緊張のあまり泣き出した無言電話犯を慰めつつ、上に立つ人間として注意喚起をする社長に、ようやく場が落ち着いた。
「あーまぁこれで一件落着だわー!よかったわ!」
「これで楓先輩の叫び声を聞くことはなくなりますね」
「ふふ、みんなのおかげね。ありがとう!」
「あとは俺のプリンですね」
「あぁ、プリン。……そういやそんなのあったわね」
「ちょっと忘れてましたね、蒼汰くんごめんね」
「忘れないでくださいよ!一大事なんですから!」
「横山くんも、そろそろ防犯カメラでも設置したら?」
「あ、それいいかも!俺ネットで買います!」
晴れ晴れとした楓先輩に思わず私も笑顔になるが、そういえば蒼汰くんのプリン盗難事件はまだ解決していないんだった、と思い出す。いそいそとスマホを取り出して検索し始める蒼汰くんに、社長が「ん?」と声を上げた。
「プリンってなんのこと?」
「なんでか、蒼汰くんのプリンが冷蔵庫から消えちゃうんです。駅前の有名菓子のところの限定品なんですけど」
「もう何度目?って話よね。毎回うじうじしちゃってもー仕事にならないのよ」
「失礼な、仕事はしてましたよ!」
糖分が足りないと泣いていた彼を思い出して、ふふっと笑ってしまうと、克己さんがポンポンっと頭を撫でてくれた。『プリン盗賊』なんてかわいい名前をつけたのは彼だったなと二人で思いだしてまた笑った。社長は一人顎に手を当てて考え込んでいる。
「んー?よく分かんないけど、たまに冷蔵庫に入ってたプリンなら私が食べたよ?」
「「「へ?」」」
「真っ赤なパッケージでさ、もうすんごい美味しいの!いつも1個だけ入ってたから、システム開発部の誰かが私用に残しておいてくれたのかなって」
「誰か知らないけどありがとうね」とにっこり笑う社長に全員が言葉を失う。そうだ、新設当初から同じ8階のフロアで仲良く給湯室も共用していたんだった。すっかり失念していた。
横で大きく息を吸う蒼汰くんが叫ぶまで、あと3秒。
「っ!かーーえーーーせーーーーーーー!!!」
時刻は13:00。ちょうど午後始業の時間だ。
「で?穂ちゃん」
「ん?」
「食ったって、なに?」
「っ!だから!食ってないってば!!」
「ほんとに?」
「当たり前でしょ!」
「なら、僕だけだよね?」
「っえ?」
「僕だけって言って」
「っこ、ここで?」
「これからも美味しくいただくのは、克己さんだけって。ほら、言って」
「ほら~言ってあげなさいよ穂」
「言わないと冬木サンうるさそうですよ、ほらほら」
「なんでこうなるの!!!」
本当に言ったかどうかは、また後日改めて。
◇◇◇
ここまで長らくお付き合いいただきありがとうございました。
本編はこれにて完結いたします。
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ake様。
はじめまして、こんにちは。
感想ありがとうございます。
何度も読み返していただけたとのこと、とっても嬉しいです。
わぁー!楓ですか!私も彼女が大好きでして、実は別の長編にも登場していただいております。それから楓メインの短編もありまして、愛あるあまり多数に出演していただいています。
快活で頼もしい楓には、私も助けられています。
感想をいただけたのが嬉しくて、それらのお話も投稿していこうと思いました!少し時間を要しますが、手直しが済み次第またこちらで投稿していきますね。少し違った楓先輩をお届けできるかと思いますので、そちらも楽しんでいただけたら幸いです。
応援ありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
凄く展開が楽しみです。
前作のあまやどりも3回位読み直してしまいました。
この作品も読める事に感謝です。
素敵な作品をありがとうございます。
すっかりファンです。
これからも1ファンとして読ませて頂きます。
1mol様
はじめまして。こんにちは。
感想ありがとうございます。
前作『あまやどり』も楽しんでいただけたようで、こちらこそ感謝の気持ちでいっぱいです。
今作もまた少し違った性格のヒーローとヒロインでお送りしておりますので、こちらも楽しんでいただけると幸いです。
ファンと言っていただけて嬉しいと同時にとっても励みになりました。これからも頑張ります。
毎日更新しておりますので、よろしくお願いします❀