うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

文字の大きさ
81 / 660

装備のおねだり

しおりを挟む
東京へと帰るべく、レンタカーで海辺のワインディングロードをゆっくりと走る。

助手席に座る瑠羽も、後部座席の瀬来さん仁菜さんも現在はスヤスヤと就寝中。ホテルで用意された朝食を食べると、疲れたのか彼女らはすぐに眠い目をし始めたのだ。

なぜならステータスで職業なんて未知のモノを取得したもんだから、無事ホテルへ戻ってからもキャッキャッとその話題で盛り上がっていたから。

ああ、シャークとは着替えて海の家を出た後。家の近くだという場所までみんなで送って別れた。

ちなみにシャークとは瀬来さんが連絡先を交換し合っていて、オレはしていない。シャークはオレとも連絡先を交換したそうにしていたが、彼女である瑠羽の前で他の女性と連絡先を交換するのはノーマナーだと感じたから。

うむ、少なくともオレは、瑠羽がほかの男性と連絡先を交換しているのをみたら決して面白くはない。だから自分がして欲しくないことは、自分もしちゃいけないのだ。

(ふふ、それにしても、みな可愛い寝顔だ…)

横にいる瑠羽も、バックミラーに映る仁菜さんも瀬来さんも、安心しきった表情で眠っている。しかしそんな彼女たちが全員オレの生徒、いや特待生だというのだから驚きだ。

なにか身体に異常や変化は無かったか確認したところ、瀬来さんは『師匠の声が前よりもハッキリと聞こえる気がするのと、話している言葉がスッと頭に入ってくる感じがする』と言っていた。どうやら教師と生徒という職業を持つ関係の者同士だと、そういう効果があるらしい。

しかし具体的な部分では、まだまだ謎で不明な点が多い。

でもきっと教師であるオレが指導することで、生徒である彼女達のレベルアップに必要な経験値が減少したり、能力値の向上なんかにもプラス補正が働きそうで、期待ができそうだ。

『キミたちは腐ったミカンじゃない!キュートでぷりてぃーなピーチだッ!!』
『『『キャーッ!せんせぇ~!』』』

なんてな…ムフフ。

「ン…んぅ…。あ、コーチ?」

おっと、オレの妄想をふくらませた含み笑いで、瑠羽を起こしてしまったようだ。

「起きたのか瑠羽、でもまだ寝てていいぞ…。あ、いや、せっかくだからアソコにみえるバイク用品店に寄って、すこし覗いてみようか」
「バイク用品店…、にですか?」

寝起きで目をくしくしと擦っている瑠羽が、『なぜ?』と問いたげに首を傾げる。

「ああ。瑠羽たちがいつも身に着けてる防具があるだろ。アレもまぁ悪くはないが…どうしてもオレから見ると、すこし不安なんだ。それにバイク用のプロテクターは丈夫で、ダンジョンでも十分使えそうなモノも多い。だから今すぐ揃えなくても、こういうのもあるって知っておいて損はないだろ?」
「そういうことですか、わかりました。なら見てみたいです」

「よし、じゃあ寄ってみよう」


バイク用品店の駐車場に車を停めると、エンジンが止まったことを不思議に思ったのか瀬来さんと仁菜さんも眼を覚ました。

「ん…んんぅ~~ッ!ここ…ドコ?」
「なぁに…、休憩なん~?」

「うん、ちょっと休憩。で、休憩がてら少しバイク用品店で防具になりそうなモノを瑠羽と見て来るよ。ふたりはどうする?」

「あ、なら私もいく!」
「そうなんやぁ~。ほな、うちはもすこし寝させてもらうわぁ~」

「よし、じゃあ三人でいくとするか」
「「はぁ~い♪」」


ここは国道沿いの、高速に乗る為のジャンクションにほど近い所に建つバイク用品店。

近くには幾つもカーショップが並んでいて、この地域のそういう場所のようだ。建物は二階建て。間取りも広くて隣に作業を行うためのガレージも併設されている。よくボッチでこんなバイク用品店に足を運んだ時は、彼女連れのヤツを見かけてはリア充爆発しろ!と強く念じたものだ。

そんなオレが、右手に瀬来さん、左手に瑠羽と両手に華で自動ドアを潜る。もしかつてのオレが見ていたなら、きっとコイツ大爆発しろッ!と念じていたことだろう。

「わぁ、私こういうお店って初めて入ったかも~」

うんうん、瀬来さんは楽しそうでなにより。まぁ普通に生活してたらバイクに触れない限り立ち寄るお店じゃないよね。

「へぇ~…、珍しいモノがたくさんありますね。でも、なんだか臭いが独特です…」

一方で瑠羽は若干のトーンダウン。匂いがお好みではなかったご様子。

うん、隣がガレージで、近いからオイルやらガソリンの臭いがするからね。店内にもパーツなんかの金属製品やタイヤなんかのゴム製品。それにオイル類も置いてい在るから、こういうお店の臭いって独特なんだ。オレはこの匂いを嗅ぐと、ちょっとワクワクするんだけどなぁ。

「じゃあ二階に行ってみよう。ライダージャケットやブーツなんかは、二階で売っているみたいだから」

グローブやプロテクターなんかも、恐らくその辺りに陳列されているはずだ。


「…おわっ!?」
「あ、すみませ~ん」

階段をタタタと軽やかに登っていく瀬来さんに、上から降りてきたライダー風の男性がギョッとたじろいて道を空ける。うん、その気持ちは解る。

だって今日の瀬来さん。

またあの胸元空きのチェリーキラーニットを着てるんだもの。オレも見るとメデューサに睨まれたかの如く視線が胸に釘付けになってしまうので、なるべく瀬来さんの顔から下は見ないようにしている。

その一方でオレの後ろをついてくる瑠羽は軽やかで涼しげなワンピース姿。でもなぜか色は軍艦色というか、灰色に青を混ぜたようなくすんだ色合い。なんて色なのか訊いてみたら、グレープルという返事が返ってきた。うん、まったく知らない色だ。

瑠羽は可愛いんだから、もっと明るい色の服も似合うと思うよ。

「わぁ、なにコレ!かっこいい!」

ウェアコーナーに着くと、真っ先に瀬来さんがバトルグローブを手にとる。黒くて厚手の皮のグローブに、アルミ合金のプレートが鋲で張りつけてある非常にゴツくて威圧感のあるグローブは確かに目を引く。

「ああ、それね。ダンジョンに潜る人で結構そういうの付けてる人は多いよ。ただ値段が結構するのと、金属は一度曲がったりすると戻すのが大変だから。その点でいえば樹脂製のプロテクターグローブの方がお求めやすいし、そうそう変形する心配もないよ」
「そっかぁ~。でもカッコイイのになぁ~」

まぁその点は同意だ。

瀬来さんがそんなバトルグローブをつけたら、FFの〇ィファみたいだな。いや…どっちかっていうと、瀬来さんは〇フィって感じか。うん…そうだな。それでいくと仁菜さんがバトルグローブをつけたら、〇ィファのイメージにピッタリかもしれない。

ほかにも試着できるものは試着して、わーきゃー愉しんでいる瀬来さん。でも瑠羽がちょっと大人し過ぎるかな?どうしたんだろう。海底ダンジョンではあんなに張り切ってたのに。

「瑠羽、どうかした?」

ちょっと前屈みになって瑠羽の顔を覗きこんでみる。こうしないと同じ目線の高さにならないのだ。

「わたし…。どれかって言われたら、ここに売ってるモノよりも、コーチと同じのがいいです…」
「エッ?」

なに、どういうこと?

「だってコーチの着ている防具は、スライムの攻撃も平気なんですよね?だったら、わたしもコーチと同じがいいです」
「あ、ああ。蟲王スーツのことか…」

「ハイハイッ!それなら私もぉ!!あんなの他のお客さんで見たことないし、どうせアレって師匠が作ったんでしょ?なら私たちにも同じの作ってよ♪あ…でもやっぱりおんなじじゃなくて、もう少しカワイイ感じで!」

おいおい瀬来さん、そう簡単に言わないで。

蟲王スーツはオレが寝食を忘れて没頭しても、作成に二週間もかかったんだぞ。いや…、でもしかし、瑠羽や瀬来さんが大怪我をすることを考えれば、彼女たちにもスーツを作ってやるべきなのか。

「むぅ、うむむぅ…」
「難しいですか、コーチ…?」



「あ、え~と、材料の事とかもあるしすぐに返事は無理だけど、一応考えてみるよ…」
「「やったぁ!キャーッ!」」

いや、あの…ふたりとも?まだ造るって完全に決めた訳じゃないからね!?
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

処理中です...