うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

文字の大きさ
114 / 660

【女】

しおりを挟む
オレは勝った。圧勝だ。あの蠅の女王に完全勝利。左足は失ってしまったが、キングゴキに続いて現れたこのダンジョンのボス級モンスター『蠅の女王』に勝利したのだ。

五体には女王のエナジーが満ち満ちて、身体が燃えているかのようだ。

だが、油断はできない。

『いくさ場では敵を倒し、手柄首を獲っているところが一番危険』という話をなにかで読んだ記憶がある。ここは早々に引き揚げたほうがいいだろう。

…。

『ギギィ…ガシャン!』
「ふぅ~~ッ。ただいま、オヤッさん!」

地下10層から1層までを一気に駆け抜け、オレの癒し空間ダンジョン前室に戻ってきた。戻ってこれた…。

オヤッさんと名付けた簡易拠点に敷いてあるダンボールも血で汚れ、床もだいぶ汚くなってしまった。が、壁に並んだいくつものアニメポスターや美少女フィギュアたちを見るとホッとする。

帰ってこれた。ああ、こんなに嬉しい事はない。

「さて…ステータスの確認は後のお愉しみにとっておいて、まずはシャワーを浴びてサッパリするかな」

ふふふ…、きっと能力値は凄い事になっているだろう。

帰路、五体に溢れかえっていたエナジーは、時間が経つにつれ馴染むように身体のなかに溶け込んでいった。すると身に溢れていたパワーが、今度は研ぎ澄まされたように馴染んでいくのが感じられるようになった。

今までよりも、より一段も二段も知覚も思考もシャープかつクリヤーになったとでもいえば良いだろうか。

『がちゃ…シャーッ…』
「ん…むおっ!?」

浴室に入りシャワーがお湯になるまで待っている間に何気なく覗いた鏡。そこには当然オレが映っている。だが別に片眉が無くて驚いたわけではない。あれは新陳代謝が向上しているせいか、三日ほどで元に戻ったから。

「オレ…なんかすごいイケメンになってないか??」



鏡に映るのは、間違いなくオレ。

何日も髭を剃っていないので、無精ひげだって伸びている。だというのに雰囲気が、『おまえ誰だよ!』っていうくらい匂いたつようなワイルドイケメンだったのだ。

「すごい…、これもレベルアップの恩恵なのか…!」

そうなるともう我慢できなくなって、ついお愉しみにととっておいたステータスの確認をシャワーを浴びながら視はじめてしまう。


      現在   前回
レベル   40    38 
種族:人間
職業:教師

能力値
筋力:   500   245
体力:   500   250
知力:   500   246
精神力:  500   271 
敏捷性:  500   248 
運:    486   166 
やるせなさ:656   356

加護:
【塩の加護】

技能:
【強酸】2・【俊敏】・【病耐性】6・【簒奪】・【粘液】5・【空間】4・【強運】1.4・【足捌】・【瞑想】・【塩】5・【図工】・【】・【

称号:
【蟲王】・【ソルトメイト】・【しょっぱい男】・【】・【


「ふぁッ…!?(ガタッ!)」

レ、レベル40で筋力から敏捷性がオール500だとッ??

『シャーーー…』

あ、あれか…。もしかしてキャップってこと?能力値は500までで、オレはその上限に到達したという事か…。

ん、運は486…か。

まぁ元々運は悪かった方だし、これでも劇的な上昇だ。他と比べるとすこし物足りなくも感じるが、今までより数倍幸運になったのは確か。

そしてやるせなさは656…って、おまえだけキャップ外れとるやんけ!

ん?でも前にステータスに出てきたエロさも1825だったから、『やるせなさ』とか『エロさ』は、キャップの対象外ということなのか?なんだそれ、むむむ…。

「しかしすごいな…、キングゴキの時はレベルが10上がって能力値は100の上昇だったはず。それが蠅の女王では2レベルアップで250近い上昇とは…1レベルあたりの上昇値がとんでもないぞ…」

あ…でもそういえば蠅の女王は地獄からやって来たような巨大蛆を、大量に召喚して津波を生み出していた。あの巨大蛆からも生命エナジーを吸収出来ていたとすると、この上昇幅も頷けるのか…。

『シャーーー…』
「まぁ、それは一旦おいておこう。で、スキルは【蛆】に…なッ!?お、あ、【女】だとッ!?(ガタタ!)」

スキル【蛆】は、恐らく蠅の女王がしていたように蛆が召喚できるのだろう。

(…ハッ!ということはスキル【女】は!?)

ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。


………。


ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…。

『シャーーー…』

オレはシャワーを浴びたまま動けずに、硬直していた。

「(ごくり…ッ)」

そう…オレの推理が正しければ、全てはそういう事だ…。

つまり…、オレは女性が召喚できる!

ひ、独り暮らしを始めた頃は、出張してくれるエッチなお姉さんを頼もうかどうしようかと折に触れ思い悩んだ。なんかポストのなかにそういうチラシが、捨てても捨てても入っていたのだ。

まぁ結局そうして悩んでいる間に部屋が完全なるオタ部屋になってしまい、恥ずかしくて呼ぶに呼べなくなってしまったのだが。その後も風俗にはとても興味を惹かれつつも、未だに行った経験がない。

だが!今!そんなオレの手に遂にスキル【女】がッ!!

それはつまり、高額な金銭を対価として用意せずとも、魔力で女性が召喚できるという事ではないか!

「ムハッ!ならばこれを使わないという手はないッ!今のオレには、かつてないほどの魔力すら生み出せる力があるのだからなッ!(ダッ!)」

さっそく浴室から飛び出すと、冷蔵庫にダイブイン。

「そ…そうだ!は、初めて使うスキルだからなァ!何が起こるか解らん…。し、しっかりと防備も整えて…」

年甲斐もなく、またレベルが上がったことで強まった精神力も働かずに、沸き上がる興奮に手足が震えて止まらない。

でもだってそうだろう。

オレが召喚した女性は、オレだけのモノ。自身の溜めこんだリビドーの全てをぶつけられる相手と、もうすぐ出会える。イエス!ボクと握手!そう思えば、この興奮もやむを得ないのではないだろうか。

「瑠羽や瀬来さんなんてリアルの女性は、すぐに!簡単にオレから離れていく!こんなに悲しいならば、もはや愛などいらぬッ!ならば欲望を満たす相手を、自らの手で生み出すまでの事ッ!」

オレは両手を掲げ、ダンジョンの青白い天井を見上げた。

「エロイノキボンヌ…エロイノキボンヌ…我は求め訴えたりッ!さぁこい!今こそいでよ我が理想のマイハニーよッ!スキル【女】発動ッ!!(カッ!!)」

『ぴしゃーーッ!!』
「ぐわぁぁぁぁ~ッ!?(ビリビリビリ…ッ!)」

スキル【女】が発動した。

だがなぜかその瞬間、雷に打たれたような痛みが全身を駆け抜け、意識が遠のいていくのだった。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

処理中です...