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ニュースの時間です
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現在9時40分、昨晩艦長が亡くなってしまった。
ああいや、それは幻視していたエロゲの話だけど。どうもオレはエッチの時に、ついそういったのを思い出してしまうクセがあるようだ。
そこでまだ眠っている彼女らを起こさぬよう静かに起きだすと、顔を洗って湯を沸かしテレビを小さな音量で点ける。そんな風にしてひとり白湯を飲んでいると、しばらくして瀬来さん達も眠そうな眼をこすりながらもそもそと起き出した。
「おはよ…喉かわいた…」
「先に顔洗っておいで、おっと…」
起き出してきた瀬来さんがオレにもたれかかってきて、そのまま手のコップから白湯を飲もうとするので零しそうになってしまう。だがすんでで持ち直し口元に添えてやると、こくこくと飲んでから瀬来さんは浴室へと向かった。
「おはようコォチ、いま何時なん…(こしこし)」
「もうすぐ10時だよ」
「ふわぁ…やっぱりこの布団ええなぁ、ぐっすりとよく眠れたわ…」
仁菜さんは高級羽毛布団が気に入った様子。ふふふ、それは奮発して買った甲斐があったな。
『―という訳で報告の上げられた集計の結果ですが、今回のダンジョンスタンピードで一番大きな被害をもたらしたのは、スライムというモンスターであったということが判明いたしました。それでは専門家の意見をVTRに纏めておりますので、こちらをご覧ください』
うむ、スライムか…。
それは半透明で、弱点の透けて見えているモンスター。だが倒し方のコツを知らないと、意外に厄介な相手でもある。なにせきちんと弱点を狙わないと、叩こうが斬りつけようが不定形の身体にいくら攻撃してもたいしたダメージを与えられないからな。
「ずずぅ~ッ、ほほぅ…」
白湯を飲みつつオレと同じ見解を述べる専門家の意見に頷いていると、顔を洗ってきたふたりが左右に座って朝から幸せのサンドイッチ。
「ふ~ん…、あないカンタンに倒せるモンスターやのにねぇ」
「シズ、『ふ~ん』じゃないって。スライムって身体にピッタリ張り付いてこられると、もうどう攻撃していいか解んなくって、すごく焦るんだよ!」
ああ、そういえば瀬来さんは伊豆海水浴旅行の時に潜った海底ダンジョンで、スライムに襲われたんだったな。あの時はミリオタ女子高生のシャークが勇敢さをみせて、掴んでスライムを引き剥がそうともしたんだった。
『―ということでスライムは不定形で捉えどころのないうえ、その身体は攻撃の際に強い酸性を帯びています。なので素手で引き剥がそうなどとするのは、大変に危険です』
ウンウン、おっしゃる通り。この専門家の人、解ってるね。見た感じ白衣を着ていてメガネの若い医師って感じだけど、これだけモンスターに詳しいのならただの医者って訳でもなさそうだ。
『ええ続きまして、ビーストラットの被害もまた深刻だったということで、こちらは害虫駆除の専門家の方をスタジオにお呼びしております』
ふんふん、獣鼠ねぇ。
ビーストラット。どうもケダモノネズミという意味の呼び名は、海外でつけられたモノのようだ。コイツもスタンピードのあいだ都内をバイクで走っていてよく見かけた。
極めて狂暴で、チワワくらいある大きさの鼠。
痩せギスの身体に下腹部だけがやけにポッコリと膨らんでいて、なんとも気味の悪い姿をしている。というかウチの冷蔵庫ダンジョン地下3層にいる病鼠の健康なヤツだな。
武器である汚らしい黄色い前歯は刃物のように鋭く、動きは俊敏で追いかけても非常に捕まえにくい。なので襲いかかってきたところを、カウンターで巧く倒す必要がある。
オレならば酸の霧で一撃だが、そんなスキルのない一般人には非常に手強い相手となるだろう。スライムなら気付いたら近づかなければそれで済むが、極めて狂暴な性格のビーストラットは自分より大きな人間にも平気で立ち向かってくる。そのうえ複数でいるケースが多いときている。
ああ、ほら。害虫駆除の専門家さんも『暗がりやネズミが潜んでいそうな汚い場所には近付かないように』って注意を促しているし。
「ねぇちょっとシズ聞いた?すみれ荘大ピンチじゃん!」
「万智ぃ、ちょっとそれど~ゆ~意味やの??」
うん、瀬来さんが昨日のウチだけに飽き足らず、仁菜さんの住まいまでディスりだしたな。
「だってさ…すみれ荘って暗いし、部屋の扉だって薄い木製だよ?モンスターのネズミなら、そんなのカンタンに穴くらい開けちゃうじゃない!」
「ホンマにもう…」
確かにビーストラットの件は大きな問題だ。ダンジョンから発生したモンスターが、地上で繁殖してしまう恐れがあるのだから。
駆除活動は現在も続けられている。が、すでに相当数のビーストラットが地上に現れ散ってしまっているので、下水道なんかに潜り込まれたら駆除の仕様がない。
まったく、アレコレと頭の痛くなるような話ばっかりだな。
……。
『さて…、今回ダンジョンから現れたモンスターのなかには、なんと人に極めて近い姿をした存在も確認されております。え~文明社会に生活している我々からするとかなり突拍子もない話なのですが、世界の歴史を紐解くと、ソコここにそういった存在に纏わる伝承が残っているそうです』
と、そんな前振りで司会者が神妙に語りだしたのは、ゴブリンについてだった。
それは報道番組という受け手が不特定多数である場合、人権問題については極めて慎重に扱う必要があるからだろう。
つまり…、肌の色が緑とか焦げ茶色した背の低い二足歩行するモンスター。このゴブリンを人として扱うかモンスターとして扱うかで、世の人権にウルサイ人達が騒いでいるのだとか。
ゴブリンの人権を擁護しようと活動している人達は、まぁそれこそ愚の骨頂だと個人的には思うのだが、『ゴブリンは未開の地に住む人間と同じで、きちんと順を追ったコミュニケーションをとれば対話は可能』と考えているらしい。
ただ、そう訴えていられる人のほとんどは実際にダンジョンにも潜ったことも無く、綺麗なお家に住んでて自身の手の汚れる仕事など一切しないで済むご身分なのだろう。だから机上の空論で、いくらでも綺麗事が並べられるのだとしか思えない。
だが全世界でダンジョンスタンピードが起きたことにより、この風向きは変わるはず。そんな彼らの擁護していたゴブリンがダンジョンから現れて、嬉々として松明片手に放火をして回っていたのだから。
これにより擁護派の勢いは鈍り、排除派は勢いを盛り返すだろう。が、それでも人と似た姿形をしたゴブリンを完全にモンスターと見なして排除する方向にはなかなか向ききらないようだ。
なのでそういった世の人権にウルサイ人達の間で、『特別保護区域を設けて保護するべきでは?』なんて方向の話もあったりするそうな。
「そんなこといったって、私たちもう今までにたくさんゴブリン殺しちゃってるよね…」
「せやなぁ。でもダンジョンやと放っといても向こうから襲いかかってくるんやから、ええんやない?」
「だよね~」
うん、彼女らの言う通りダンジョンではそれがルールだ。
『命のやり取り』という賭けのテーブルに自身の命を載せているのだから、ゴブリンとダンジョンに潜っている者達は、そういった意味では平等であり対等といえる。
そんな感じなのでゴブリンを保護するとかなんとかといった話は国民の納めた大切な税金なんかは一切使わずに、それを言っている人達の私財だけでやっていただきたい。うん、そんなにゴブリンが好きなら、島でも買ってゴブリンたちとなかよく一緒に暮らせばいいと思う。
ただまぁ結論は急がずに、もしこのさき理性的に対話の出来るゴブリンが現れた時にでも、また改めて考えればいいんじゃないかな。
「ふ~ん、こういうのって色々とあるんだねェ~…」
テレビの内容に、瀬来さんがつまらなそうに頬杖をついてボヤく。
そうだね。ゴブリンの人権云々という話をされると、ダンジョンでゴブリンを倒してきた者にとっては「おまえは殺人者だ」と言われてるのと同じこと。そんな気まずくなりそうな気配を感じ、オレはリモコンを操作しチャンネルを変えた。
『―次のニュースです。日本の製薬大手である糖野儀製薬が、このたび世界初であると思われる傷のすぐに治る回復薬の開発に成功したとのコメントを発表致しました』
「「「…ッ!?」」」
なんですとッ!?
「ねぇ江月さん!コレってもしかして…!?」
「(ぽちぽちぽちぃ…!)あ…ホンマや!糖野儀製薬ストップ高しとるやん!」
「なに!それは本当か!?」
仁菜さんが表示させた通信端末の画面を瀬来さんといっしょに覗きこむと、そこには確かにストップ高を示すSのアルファベットが。
「あぁぁ~もぉッ!資金があったらぁ!コレ最高の買い材料やのにぃ~!!」
「お、では少しだけしか買えないが、オレの口座で買い注文を入れてみよう!」
そう言って通信端末を弄り出すと、今度はふたりが顔を寄せ合って端末を覗きこむ。
「へぇ、江月さんも投資やってたんだぁ。ね、幾らくらい買えるの?」
「いや、恥ずかしながら興味を持って始めたものの、損が出たのに嫌気してずっと放置したままなんだ。でも銀行と証券口座は紐づけされてるから、入金しなくて今の価格なら100株は買えるはず!」
「ウン…せやね!大暴落でだいぶ下げとったし、今の価格帯なら上値は充分期待できるやんッ!!」
「よし来た!なら約定する確率を上げるため成り行きで注文しておこう…。(ぽちぽちッ…)よし、これで今日は無理でも、明日か明後日には刺さるはずだ」
「ふふ…コレは楽しみやねぇ!」
「ああ、そうだな!」
手持ちのお金は残り淋しいが、確実に勝てる勝負があるのならそのリスクは背負うべきだろう。なにより大暴落で気落ちしていた仁菜さんが、絶好の買い材料に活き活きとした表情を浮かべた事がなにより嬉しい。
「(ぽちぽちぽち…)あ、ねぇねぇ!ふたりともコレも見て!」
オレの買い注文を見終えた後で自身の通信端末を弄っていた瀬来さんも、なにか見せたいモノがあるらしく通信端末を差し出す。
「ん?これは…モンスターのドロップ品買取の一覧表?」
「そうなんだけどさ、ほらココとココ!もの凄く買取単価があがってるよ!」
指差されてた部分の欄に注目すると、証券口座で株価を見る時の様に前日比が表示されていて、しかもそれが現在進行形で急騰している。
「ムッ…ということは、誰かが買占めに走っているという事か!」
「きっとそうだよ!コレお店で買取価格を調べるのに利用してたシステムだから、間違いないよ!」
「ムムム…おっ、この急騰してるのってスライムのドロップ品か!?ならこんなのダンジョン前室に、山ほど保管してあるぞッ!!」
「「エッ!それほんと!?」」
おお…、なんだか物凄くおもしろくなってきたじゃないか!
ああいや、それは幻視していたエロゲの話だけど。どうもオレはエッチの時に、ついそういったのを思い出してしまうクセがあるようだ。
そこでまだ眠っている彼女らを起こさぬよう静かに起きだすと、顔を洗って湯を沸かしテレビを小さな音量で点ける。そんな風にしてひとり白湯を飲んでいると、しばらくして瀬来さん達も眠そうな眼をこすりながらもそもそと起き出した。
「おはよ…喉かわいた…」
「先に顔洗っておいで、おっと…」
起き出してきた瀬来さんがオレにもたれかかってきて、そのまま手のコップから白湯を飲もうとするので零しそうになってしまう。だがすんでで持ち直し口元に添えてやると、こくこくと飲んでから瀬来さんは浴室へと向かった。
「おはようコォチ、いま何時なん…(こしこし)」
「もうすぐ10時だよ」
「ふわぁ…やっぱりこの布団ええなぁ、ぐっすりとよく眠れたわ…」
仁菜さんは高級羽毛布団が気に入った様子。ふふふ、それは奮発して買った甲斐があったな。
『―という訳で報告の上げられた集計の結果ですが、今回のダンジョンスタンピードで一番大きな被害をもたらしたのは、スライムというモンスターであったということが判明いたしました。それでは専門家の意見をVTRに纏めておりますので、こちらをご覧ください』
うむ、スライムか…。
それは半透明で、弱点の透けて見えているモンスター。だが倒し方のコツを知らないと、意外に厄介な相手でもある。なにせきちんと弱点を狙わないと、叩こうが斬りつけようが不定形の身体にいくら攻撃してもたいしたダメージを与えられないからな。
「ずずぅ~ッ、ほほぅ…」
白湯を飲みつつオレと同じ見解を述べる専門家の意見に頷いていると、顔を洗ってきたふたりが左右に座って朝から幸せのサンドイッチ。
「ふ~ん…、あないカンタンに倒せるモンスターやのにねぇ」
「シズ、『ふ~ん』じゃないって。スライムって身体にピッタリ張り付いてこられると、もうどう攻撃していいか解んなくって、すごく焦るんだよ!」
ああ、そういえば瀬来さんは伊豆海水浴旅行の時に潜った海底ダンジョンで、スライムに襲われたんだったな。あの時はミリオタ女子高生のシャークが勇敢さをみせて、掴んでスライムを引き剥がそうともしたんだった。
『―ということでスライムは不定形で捉えどころのないうえ、その身体は攻撃の際に強い酸性を帯びています。なので素手で引き剥がそうなどとするのは、大変に危険です』
ウンウン、おっしゃる通り。この専門家の人、解ってるね。見た感じ白衣を着ていてメガネの若い医師って感じだけど、これだけモンスターに詳しいのならただの医者って訳でもなさそうだ。
『ええ続きまして、ビーストラットの被害もまた深刻だったということで、こちらは害虫駆除の専門家の方をスタジオにお呼びしております』
ふんふん、獣鼠ねぇ。
ビーストラット。どうもケダモノネズミという意味の呼び名は、海外でつけられたモノのようだ。コイツもスタンピードのあいだ都内をバイクで走っていてよく見かけた。
極めて狂暴で、チワワくらいある大きさの鼠。
痩せギスの身体に下腹部だけがやけにポッコリと膨らんでいて、なんとも気味の悪い姿をしている。というかウチの冷蔵庫ダンジョン地下3層にいる病鼠の健康なヤツだな。
武器である汚らしい黄色い前歯は刃物のように鋭く、動きは俊敏で追いかけても非常に捕まえにくい。なので襲いかかってきたところを、カウンターで巧く倒す必要がある。
オレならば酸の霧で一撃だが、そんなスキルのない一般人には非常に手強い相手となるだろう。スライムなら気付いたら近づかなければそれで済むが、極めて狂暴な性格のビーストラットは自分より大きな人間にも平気で立ち向かってくる。そのうえ複数でいるケースが多いときている。
ああ、ほら。害虫駆除の専門家さんも『暗がりやネズミが潜んでいそうな汚い場所には近付かないように』って注意を促しているし。
「ねぇちょっとシズ聞いた?すみれ荘大ピンチじゃん!」
「万智ぃ、ちょっとそれど~ゆ~意味やの??」
うん、瀬来さんが昨日のウチだけに飽き足らず、仁菜さんの住まいまでディスりだしたな。
「だってさ…すみれ荘って暗いし、部屋の扉だって薄い木製だよ?モンスターのネズミなら、そんなのカンタンに穴くらい開けちゃうじゃない!」
「ホンマにもう…」
確かにビーストラットの件は大きな問題だ。ダンジョンから発生したモンスターが、地上で繁殖してしまう恐れがあるのだから。
駆除活動は現在も続けられている。が、すでに相当数のビーストラットが地上に現れ散ってしまっているので、下水道なんかに潜り込まれたら駆除の仕様がない。
まったく、アレコレと頭の痛くなるような話ばっかりだな。
……。
『さて…、今回ダンジョンから現れたモンスターのなかには、なんと人に極めて近い姿をした存在も確認されております。え~文明社会に生活している我々からするとかなり突拍子もない話なのですが、世界の歴史を紐解くと、ソコここにそういった存在に纏わる伝承が残っているそうです』
と、そんな前振りで司会者が神妙に語りだしたのは、ゴブリンについてだった。
それは報道番組という受け手が不特定多数である場合、人権問題については極めて慎重に扱う必要があるからだろう。
つまり…、肌の色が緑とか焦げ茶色した背の低い二足歩行するモンスター。このゴブリンを人として扱うかモンスターとして扱うかで、世の人権にウルサイ人達が騒いでいるのだとか。
ゴブリンの人権を擁護しようと活動している人達は、まぁそれこそ愚の骨頂だと個人的には思うのだが、『ゴブリンは未開の地に住む人間と同じで、きちんと順を追ったコミュニケーションをとれば対話は可能』と考えているらしい。
ただ、そう訴えていられる人のほとんどは実際にダンジョンにも潜ったことも無く、綺麗なお家に住んでて自身の手の汚れる仕事など一切しないで済むご身分なのだろう。だから机上の空論で、いくらでも綺麗事が並べられるのだとしか思えない。
だが全世界でダンジョンスタンピードが起きたことにより、この風向きは変わるはず。そんな彼らの擁護していたゴブリンがダンジョンから現れて、嬉々として松明片手に放火をして回っていたのだから。
これにより擁護派の勢いは鈍り、排除派は勢いを盛り返すだろう。が、それでも人と似た姿形をしたゴブリンを完全にモンスターと見なして排除する方向にはなかなか向ききらないようだ。
なのでそういった世の人権にウルサイ人達の間で、『特別保護区域を設けて保護するべきでは?』なんて方向の話もあったりするそうな。
「そんなこといったって、私たちもう今までにたくさんゴブリン殺しちゃってるよね…」
「せやなぁ。でもダンジョンやと放っといても向こうから襲いかかってくるんやから、ええんやない?」
「だよね~」
うん、彼女らの言う通りダンジョンではそれがルールだ。
『命のやり取り』という賭けのテーブルに自身の命を載せているのだから、ゴブリンとダンジョンに潜っている者達は、そういった意味では平等であり対等といえる。
そんな感じなのでゴブリンを保護するとかなんとかといった話は国民の納めた大切な税金なんかは一切使わずに、それを言っている人達の私財だけでやっていただきたい。うん、そんなにゴブリンが好きなら、島でも買ってゴブリンたちとなかよく一緒に暮らせばいいと思う。
ただまぁ結論は急がずに、もしこのさき理性的に対話の出来るゴブリンが現れた時にでも、また改めて考えればいいんじゃないかな。
「ふ~ん、こういうのって色々とあるんだねェ~…」
テレビの内容に、瀬来さんがつまらなそうに頬杖をついてボヤく。
そうだね。ゴブリンの人権云々という話をされると、ダンジョンでゴブリンを倒してきた者にとっては「おまえは殺人者だ」と言われてるのと同じこと。そんな気まずくなりそうな気配を感じ、オレはリモコンを操作しチャンネルを変えた。
『―次のニュースです。日本の製薬大手である糖野儀製薬が、このたび世界初であると思われる傷のすぐに治る回復薬の開発に成功したとのコメントを発表致しました』
「「「…ッ!?」」」
なんですとッ!?
「ねぇ江月さん!コレってもしかして…!?」
「(ぽちぽちぽちぃ…!)あ…ホンマや!糖野儀製薬ストップ高しとるやん!」
「なに!それは本当か!?」
仁菜さんが表示させた通信端末の画面を瀬来さんといっしょに覗きこむと、そこには確かにストップ高を示すSのアルファベットが。
「あぁぁ~もぉッ!資金があったらぁ!コレ最高の買い材料やのにぃ~!!」
「お、では少しだけしか買えないが、オレの口座で買い注文を入れてみよう!」
そう言って通信端末を弄り出すと、今度はふたりが顔を寄せ合って端末を覗きこむ。
「へぇ、江月さんも投資やってたんだぁ。ね、幾らくらい買えるの?」
「いや、恥ずかしながら興味を持って始めたものの、損が出たのに嫌気してずっと放置したままなんだ。でも銀行と証券口座は紐づけされてるから、入金しなくて今の価格なら100株は買えるはず!」
「ウン…せやね!大暴落でだいぶ下げとったし、今の価格帯なら上値は充分期待できるやんッ!!」
「よし来た!なら約定する確率を上げるため成り行きで注文しておこう…。(ぽちぽちッ…)よし、これで今日は無理でも、明日か明後日には刺さるはずだ」
「ふふ…コレは楽しみやねぇ!」
「ああ、そうだな!」
手持ちのお金は残り淋しいが、確実に勝てる勝負があるのならそのリスクは背負うべきだろう。なにより大暴落で気落ちしていた仁菜さんが、絶好の買い材料に活き活きとした表情を浮かべた事がなにより嬉しい。
「(ぽちぽちぽち…)あ、ねぇねぇ!ふたりともコレも見て!」
オレの買い注文を見終えた後で自身の通信端末を弄っていた瀬来さんも、なにか見せたいモノがあるらしく通信端末を差し出す。
「ん?これは…モンスターのドロップ品買取の一覧表?」
「そうなんだけどさ、ほらココとココ!もの凄く買取単価があがってるよ!」
指差されてた部分の欄に注目すると、証券口座で株価を見る時の様に前日比が表示されていて、しかもそれが現在進行形で急騰している。
「ムッ…ということは、誰かが買占めに走っているという事か!」
「きっとそうだよ!コレお店で買取価格を調べるのに利用してたシステムだから、間違いないよ!」
「ムムム…おっ、この急騰してるのってスライムのドロップ品か!?ならこんなのダンジョン前室に、山ほど保管してあるぞッ!!」
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