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リターンオブ聖塩衣
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高速に乗り、一路千葉へとひた走る。
シャークの安否が気にかかるが、さりとてそう心配もしていなかった。それはなぜかというと、シャークという女子高生はチビのくせに胆も根性も異常に据わっている。そんな彼女にオレ自らが粘液トレーニングで身体を鍛え、ダンジョンで戦闘経験を積ませたのだ。
そうしてパワーアップした今のシャークならば、ゴブリンの2匹や3匹を同時に相手にしたとて、決して以前のように後れを取ったりはしないはず…。
『ヴァァアアアアン…!ヴァアアアアアアァ……!!』
高速道に咆哮のようなエギゾーストノートを響かせ、バイクは唸りを上げて加速する。
うん、オタクには、入る瞬間というモノがある。いわゆるドリームシフト的なアレだ。普通の人でも、ふとある瞬間に自分が映画やドラマの主人公にでもなったような気分になる時があるだろう。ようはソレのことだ。
これがオタクの場合、これまた結構な頻度で起きる。
なぜならば、オタクとは身体は大人で中身はお子様のアンバランスな存在だから。要するに、しょちゅうゴッコ遊びに夢中にある子供のように、何かになりきってしまう。
それはオレも例外ではなく、ダンジョンでモンスターと戦う時には大抵そんな風になっている。例えば宇宙帝王とか、一子相伝の拳法家や特撮ヒーローといった気分に浸って。だが、それは何もダンジョンで戦う時だけではない。
オレの場合、こうしてバイクに乗っている時にも起きるのだ。
『ヴァァァァァァワン…!ヴァアアアアァァ…!!』
高速で稼働する内燃機関の発する甲高い音色と震動。目まぐるしく視界から過ぎ去ってゆく景色。アスファルトの僅かな歪みを受けてサスペンションが弾み、タイヤが暴れて跳ねる。
それらが綯交ぜになった世界で、進行方向の一点にだけに神経を集中させバイクを駆る。そこにあるのは、ただただ全開で走るバイクとの一体感。
無我だ、何も考えてはいない。が、とても砥ぎ澄まれゆく濃縮された時間。
そんな一秒が長く引き伸ばされてゆくような世界に浸ると、心が躍る。音や時間を置き去りにしていくような感覚に、精神が高揚し、昂ぶってゆく。
昂ぶるのはなにも背中に感じる瀬来さんのおっぱいの所為だけではないのだ。
すると、オタの性分で無心であった心に様々なキャラクターが降りてくる。バイクに乗っている時は、大抵ロボット物アニメに登場するようなエースパイロットたち。そんな彼らが次々にオレに降りてきては、脳裏に決め顔で名台詞を吐いては消えてゆく。
と、そこでいつもならもっと感じている筈の激しい風圧に、ほとんど曝されていないことに気が付いた。
不審に感じていると、心の中でピクシークィーンの応じる感覚。どうやらオレの精神の高揚に当てられたらしく、彼女らもまやハシャいでいるようだ。
(これは、もしや風の魔法か何かか…?)
張り付くように伏せていた上体を起こしても、やはり風の抵抗が少ない。カウルに身を隠さなくても風圧の抵抗が弱く、なおかつバイク自体の負荷も減っているらしくエンジン音も実に軽やか。
(むむ、これは助かる…!)
幸いにも高速道路は空いていて、周りを気にせずにカッ飛ばせる状態。瀬来さんもバイクの後ろには乗り慣れており、高速で走っていてもまったく動じた様子はない。
よし、ではこのまま一気に目的地まで駆けてしまおう…。
……。
高速を降り市街地を抜け、田畑の散見できる地域から徐々に鬱蒼とした木々の茂る林道を登っていくと、ようやく目当てのサバゲフィールド看板を見つけ脇道へと。
『ヴワァン、ヴワァアン…!ウヴォヴォヴォ…』
舗装されていた林道から入った先の脇道は、登っていく傾斜の砂利道。そこをバランスを崩さぬよう慎重に登っていくと、雑草の茂った路肩沿いに頭を突っ込むようにして何台もの車が停まっていた。
そしてその傍らには、集まって立ち話をする迷彩服姿の男性たち。うん、どうやらここで間違いないようだ。
「お…あれは、お~い!提督ぅ!!」
「む、誰だ…??」
古びたジープの脇で仲間と話していた提督を見つけ、声を掛けてみる。が、すぐに誰かは気付いてもらえなかったようだ。
「ジャングだよ、提督」
「おお、なんだ。ジャングだったか!随分とひさしぶりだな」
ヘルメットを脱いで名乗ると、ようやく怪訝な顔をした提督の顔に笑みがこぼれた。そして垂れ目のいぶし銀なおっさんが、エアガンのライフルを肩に担いで近づいてきた。
「シャークのSOSで来たんだ。今はどういう状況だ?」
「そうだったのか。う~ん、状況は芳しくないな…」
こうしてサバゲサークル・トライデントのリーダーである提督から話を聞くと、今日は朝から山の様子がどこかおかしかったらしい。それでもせっかく集まったのだからとゲームを始めると、いくらもしないうちにアチコチからモンスターが姿を現したのだと。
「へぇ。で、出たのはどんなモンスターだった?」
「アロエだ」
「え、アロエ?アロエというと、あの植物の?」
「そうだ。ヨーグルトとか化粧水に入ってる、あのアロエだ」
いや、なんだソレ?
「うむむ…。それは強いのか?」
「いや、アロエにはガス圧を高めたエアガンの攻撃が通じたんでな。予定を変更して、しばらくは皆で化け物退治に興じてたんだ。だがしばらくすると竹が現れた。その竹が危険だ。エアガンも通じないし攻撃も強力だ。見ろアレを…」
提督が顎をしゃくって視線を向けた先には、フロントガラスのバッカリと砕けた赤い車があった。うぅむ、アレは酷いな、まだ新車じゃないか。アレが竹のモンスターに攻撃されたということか。
「ねぇ、それよりもシャークは!?あの子は無事なのッ!?」
「おっと。君は初めて見る顔だな。シャークが気になっているようだが、奴なら大丈夫だ。今は戦える奴らと一緒にゲートを封鎖しに行っている。もう戻ってくる頃だろう。と…ホラ、姿が視えたぞ」
再び提督が顎をしゃくって視線を坂道の上に向ける。
と、赤土の斜面を迷彩服を着込んだ者達がしきりに後ろを気にしながら小走りに駆け下りてくる。そのなかにシャークの姿をみつけ、瀬来さんが息をついてホッと胸を撫で下ろした。
「かぁ~なんだよアイツめちゃ強ぇ~!参ったぜ。お、ジャング!万智も来てくれたのか!」
迷彩服の仲間達とガッチャガッチャと装備の音を響かせながら下りてきたシャーク。土埃に塗れ、頬には幾筋も切り傷が走り血が滲んでいる。そんなシャークの怪我をしている姿を見て、瀬来さんが心配そうに近づく。
「あ、じゃないわよ!心配したんだから!ああもぅ、ほらアチコチ怪我してるじゃない!」
「痛ッ!ああもう!大丈夫だってこんなの!」
「そんな訳ないでしょ!女の子なのに顔まで怪我して!こんなに土もついて…ばい菌が入ったら化膿しちゃうわよ!」
「………」
瀬来さんはポーチから消毒液を出してガーゼに滲みこませると、それでシャークの頬の傷を拭ってやる。うんうん、仲良きことは美しきかな。
とはいえ探していた植物系モンスターが、こんな所にいたとは。
「で、どうだろうジャング。どうにかできそうか?」
「ん、ああ提督。多分ダンジョンの地下1層から、深くても3層から出てきたモンスターだろう。数にもよるが、オレ達ならそう苦戦することはないと思う」
「なら悪いが、駆除を頼めないだろうか。この場所は俺の友人の所有地でな。安い賃料で使わせてもらってるんだ」
「そうか、まぁいずれにしろオレ達も植物系モンスターには用があるから、そこは安心して良いぞ」
「おお、それは助かる。ここじゃ電波も悪くて警察にも連絡が取れなくてな」
ん、電波が悪い?へぇ、シャークとの通話はよく繋がったな。
「でもよぉ、そんなこと言ってふたりとも何も持ってきてねぇじゃねぇか。武器もないんだろ?丸腰でいったいどうすんだよ?」
瀬来さんからの手当てを受けながらも、オレ達の丸腰な姿を見て口を尖らせるシャーク。
「ふふふ、シャークよ。何もオレの得意なスキルは粘液だけではないぞ…。見よ、藻えよオレのソルト!テックセッターッ!!(びゅきーん!)」
以前であればメディテーションを行ない、塩の精霊とチャンネルを繋げなければ身に纏う事の叶わなかった聖なる塩の衣、聖塩衣。しかし今、オレの心には塩の集合精霊たる塩太郎が宿っている。故にこうして苦も無く聖塩衣を呼び出すことができるのだ。
「アァッ…それってまさか!サンドラさんの着てた鎧ッ!!」
ああ、そういえばあの時以外で、聖塩衣を呼び出したことは無かったな。
「ふふふ…まぁな。ピクシーも聖塩衣も、オレが芽衣に貸したもんだ」
「ふふん。ねぇ師匠、私にも…」
「はいよ…。藻えよオレのソルト!テックセッターッ!!(びゅききーん!)」
「あッ!あッ!?なんだ万智もかよ!ずりぃぞ!!」
オレだけでなく瀬来さんもまた輝く塩の鎧を身に纏うと、シャークが羨ましいと騒ぎ出す。
「ジャング!な、な!アタシにもッ!!」
「シャークはやめておいた方がいいぞ?」
「エェ…!?なんでアタシだけダメなんでだよぉ!!」
「いや、だっておまえ今、傷だらけの上に汗までかいてるじゃないか。この聖塩衣はいっても塩だからな。今の状態で身に着けたりしたら、傷にめちゃくちゃ滲みるぞ?」
「うッ…!?」
そう、聖塩衣は硬く頑丈。だが組成は塩、NaCLだ。故に汗に触れれば僅かに溶け出し、傷に入ればとても滲みる。
「くそぉ…、解ったよ!じゃあもう早く行って倒そうぜ!ファイヤーワンドでバーッと焼き払ってくれよ!」
「いや、ファイヤーワンドも無いぞ。ていうかこんな山林で火炎弾なんかブッ放したらダメだろ。火事になったらどうするんだ」
「えぇ~~っ、じゃあどうするんだよ!カンフーバンブーめちゃ強だぞ!」
「カンフーバンブー?…ああ、竹の植物系モンスターのことか。まぁ武器はモンスターを確認してからで大丈夫だ。じゃ、ともかくモンスターを確認しに行くか」
「えぇ~、ホントに大丈夫かぁ~…??」
うん、シャークには普段料理に使うくらいしか、【塩】のスキルを見ていないからな。
だから【塩】のスキルの恐ろしさを、まだ理解できないのだろう。でも大丈夫。すぐに解るから楽しみにしておいてくれたまえ。ふふふ…。
シャークの安否が気にかかるが、さりとてそう心配もしていなかった。それはなぜかというと、シャークという女子高生はチビのくせに胆も根性も異常に据わっている。そんな彼女にオレ自らが粘液トレーニングで身体を鍛え、ダンジョンで戦闘経験を積ませたのだ。
そうしてパワーアップした今のシャークならば、ゴブリンの2匹や3匹を同時に相手にしたとて、決して以前のように後れを取ったりはしないはず…。
『ヴァァアアアアン…!ヴァアアアアアアァ……!!』
高速道に咆哮のようなエギゾーストノートを響かせ、バイクは唸りを上げて加速する。
うん、オタクには、入る瞬間というモノがある。いわゆるドリームシフト的なアレだ。普通の人でも、ふとある瞬間に自分が映画やドラマの主人公にでもなったような気分になる時があるだろう。ようはソレのことだ。
これがオタクの場合、これまた結構な頻度で起きる。
なぜならば、オタクとは身体は大人で中身はお子様のアンバランスな存在だから。要するに、しょちゅうゴッコ遊びに夢中にある子供のように、何かになりきってしまう。
それはオレも例外ではなく、ダンジョンでモンスターと戦う時には大抵そんな風になっている。例えば宇宙帝王とか、一子相伝の拳法家や特撮ヒーローといった気分に浸って。だが、それは何もダンジョンで戦う時だけではない。
オレの場合、こうしてバイクに乗っている時にも起きるのだ。
『ヴァァァァァァワン…!ヴァアアアアァァ…!!』
高速で稼働する内燃機関の発する甲高い音色と震動。目まぐるしく視界から過ぎ去ってゆく景色。アスファルトの僅かな歪みを受けてサスペンションが弾み、タイヤが暴れて跳ねる。
それらが綯交ぜになった世界で、進行方向の一点にだけに神経を集中させバイクを駆る。そこにあるのは、ただただ全開で走るバイクとの一体感。
無我だ、何も考えてはいない。が、とても砥ぎ澄まれゆく濃縮された時間。
そんな一秒が長く引き伸ばされてゆくような世界に浸ると、心が躍る。音や時間を置き去りにしていくような感覚に、精神が高揚し、昂ぶってゆく。
昂ぶるのはなにも背中に感じる瀬来さんのおっぱいの所為だけではないのだ。
すると、オタの性分で無心であった心に様々なキャラクターが降りてくる。バイクに乗っている時は、大抵ロボット物アニメに登場するようなエースパイロットたち。そんな彼らが次々にオレに降りてきては、脳裏に決め顔で名台詞を吐いては消えてゆく。
と、そこでいつもならもっと感じている筈の激しい風圧に、ほとんど曝されていないことに気が付いた。
不審に感じていると、心の中でピクシークィーンの応じる感覚。どうやらオレの精神の高揚に当てられたらしく、彼女らもまやハシャいでいるようだ。
(これは、もしや風の魔法か何かか…?)
張り付くように伏せていた上体を起こしても、やはり風の抵抗が少ない。カウルに身を隠さなくても風圧の抵抗が弱く、なおかつバイク自体の負荷も減っているらしくエンジン音も実に軽やか。
(むむ、これは助かる…!)
幸いにも高速道路は空いていて、周りを気にせずにカッ飛ばせる状態。瀬来さんもバイクの後ろには乗り慣れており、高速で走っていてもまったく動じた様子はない。
よし、ではこのまま一気に目的地まで駆けてしまおう…。
……。
高速を降り市街地を抜け、田畑の散見できる地域から徐々に鬱蒼とした木々の茂る林道を登っていくと、ようやく目当てのサバゲフィールド看板を見つけ脇道へと。
『ヴワァン、ヴワァアン…!ウヴォヴォヴォ…』
舗装されていた林道から入った先の脇道は、登っていく傾斜の砂利道。そこをバランスを崩さぬよう慎重に登っていくと、雑草の茂った路肩沿いに頭を突っ込むようにして何台もの車が停まっていた。
そしてその傍らには、集まって立ち話をする迷彩服姿の男性たち。うん、どうやらここで間違いないようだ。
「お…あれは、お~い!提督ぅ!!」
「む、誰だ…??」
古びたジープの脇で仲間と話していた提督を見つけ、声を掛けてみる。が、すぐに誰かは気付いてもらえなかったようだ。
「ジャングだよ、提督」
「おお、なんだ。ジャングだったか!随分とひさしぶりだな」
ヘルメットを脱いで名乗ると、ようやく怪訝な顔をした提督の顔に笑みがこぼれた。そして垂れ目のいぶし銀なおっさんが、エアガンのライフルを肩に担いで近づいてきた。
「シャークのSOSで来たんだ。今はどういう状況だ?」
「そうだったのか。う~ん、状況は芳しくないな…」
こうしてサバゲサークル・トライデントのリーダーである提督から話を聞くと、今日は朝から山の様子がどこかおかしかったらしい。それでもせっかく集まったのだからとゲームを始めると、いくらもしないうちにアチコチからモンスターが姿を現したのだと。
「へぇ。で、出たのはどんなモンスターだった?」
「アロエだ」
「え、アロエ?アロエというと、あの植物の?」
「そうだ。ヨーグルトとか化粧水に入ってる、あのアロエだ」
いや、なんだソレ?
「うむむ…。それは強いのか?」
「いや、アロエにはガス圧を高めたエアガンの攻撃が通じたんでな。予定を変更して、しばらくは皆で化け物退治に興じてたんだ。だがしばらくすると竹が現れた。その竹が危険だ。エアガンも通じないし攻撃も強力だ。見ろアレを…」
提督が顎をしゃくって視線を向けた先には、フロントガラスのバッカリと砕けた赤い車があった。うぅむ、アレは酷いな、まだ新車じゃないか。アレが竹のモンスターに攻撃されたということか。
「ねぇ、それよりもシャークは!?あの子は無事なのッ!?」
「おっと。君は初めて見る顔だな。シャークが気になっているようだが、奴なら大丈夫だ。今は戦える奴らと一緒にゲートを封鎖しに行っている。もう戻ってくる頃だろう。と…ホラ、姿が視えたぞ」
再び提督が顎をしゃくって視線を坂道の上に向ける。
と、赤土の斜面を迷彩服を着込んだ者達がしきりに後ろを気にしながら小走りに駆け下りてくる。そのなかにシャークの姿をみつけ、瀬来さんが息をついてホッと胸を撫で下ろした。
「かぁ~なんだよアイツめちゃ強ぇ~!参ったぜ。お、ジャング!万智も来てくれたのか!」
迷彩服の仲間達とガッチャガッチャと装備の音を響かせながら下りてきたシャーク。土埃に塗れ、頬には幾筋も切り傷が走り血が滲んでいる。そんなシャークの怪我をしている姿を見て、瀬来さんが心配そうに近づく。
「あ、じゃないわよ!心配したんだから!ああもぅ、ほらアチコチ怪我してるじゃない!」
「痛ッ!ああもう!大丈夫だってこんなの!」
「そんな訳ないでしょ!女の子なのに顔まで怪我して!こんなに土もついて…ばい菌が入ったら化膿しちゃうわよ!」
「………」
瀬来さんはポーチから消毒液を出してガーゼに滲みこませると、それでシャークの頬の傷を拭ってやる。うんうん、仲良きことは美しきかな。
とはいえ探していた植物系モンスターが、こんな所にいたとは。
「で、どうだろうジャング。どうにかできそうか?」
「ん、ああ提督。多分ダンジョンの地下1層から、深くても3層から出てきたモンスターだろう。数にもよるが、オレ達ならそう苦戦することはないと思う」
「なら悪いが、駆除を頼めないだろうか。この場所は俺の友人の所有地でな。安い賃料で使わせてもらってるんだ」
「そうか、まぁいずれにしろオレ達も植物系モンスターには用があるから、そこは安心して良いぞ」
「おお、それは助かる。ここじゃ電波も悪くて警察にも連絡が取れなくてな」
ん、電波が悪い?へぇ、シャークとの通話はよく繋がったな。
「でもよぉ、そんなこと言ってふたりとも何も持ってきてねぇじゃねぇか。武器もないんだろ?丸腰でいったいどうすんだよ?」
瀬来さんからの手当てを受けながらも、オレ達の丸腰な姿を見て口を尖らせるシャーク。
「ふふふ、シャークよ。何もオレの得意なスキルは粘液だけではないぞ…。見よ、藻えよオレのソルト!テックセッターッ!!(びゅきーん!)」
以前であればメディテーションを行ない、塩の精霊とチャンネルを繋げなければ身に纏う事の叶わなかった聖なる塩の衣、聖塩衣。しかし今、オレの心には塩の集合精霊たる塩太郎が宿っている。故にこうして苦も無く聖塩衣を呼び出すことができるのだ。
「アァッ…それってまさか!サンドラさんの着てた鎧ッ!!」
ああ、そういえばあの時以外で、聖塩衣を呼び出したことは無かったな。
「ふふふ…まぁな。ピクシーも聖塩衣も、オレが芽衣に貸したもんだ」
「ふふん。ねぇ師匠、私にも…」
「はいよ…。藻えよオレのソルト!テックセッターッ!!(びゅききーん!)」
「あッ!あッ!?なんだ万智もかよ!ずりぃぞ!!」
オレだけでなく瀬来さんもまた輝く塩の鎧を身に纏うと、シャークが羨ましいと騒ぎ出す。
「ジャング!な、な!アタシにもッ!!」
「シャークはやめておいた方がいいぞ?」
「エェ…!?なんでアタシだけダメなんでだよぉ!!」
「いや、だっておまえ今、傷だらけの上に汗までかいてるじゃないか。この聖塩衣はいっても塩だからな。今の状態で身に着けたりしたら、傷にめちゃくちゃ滲みるぞ?」
「うッ…!?」
そう、聖塩衣は硬く頑丈。だが組成は塩、NaCLだ。故に汗に触れれば僅かに溶け出し、傷に入ればとても滲みる。
「くそぉ…、解ったよ!じゃあもう早く行って倒そうぜ!ファイヤーワンドでバーッと焼き払ってくれよ!」
「いや、ファイヤーワンドも無いぞ。ていうかこんな山林で火炎弾なんかブッ放したらダメだろ。火事になったらどうするんだ」
「えぇ~~っ、じゃあどうするんだよ!カンフーバンブーめちゃ強だぞ!」
「カンフーバンブー?…ああ、竹の植物系モンスターのことか。まぁ武器はモンスターを確認してからで大丈夫だ。じゃ、ともかくモンスターを確認しに行くか」
「えぇ~、ホントに大丈夫かぁ~…??」
うん、シャークには普段料理に使うくらいしか、【塩】のスキルを見ていないからな。
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