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妙なる再会
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午後3時。整体学校の帰り道、いつもの立ち食いそば屋に寄って春菊とコロッケのかけそばで小腹を満たす。うん、今日も美味かった。
だがそうして気分よく表に出ると、思わぬ男とでくわした。
それは桂名健一、オレが以前勤めていた会社の同僚だ。
「あ」
「江月ッ…!?」
あ~、これまた嫌な顔を見てしまった。食後のいい気分が台無しだよ。
しかし桂名の姿はいつものスーツ姿ではなく、作業着姿に肩掛け鞄。そして手には、小さな脚立を持っている。そう、それはかつてオレが仕事中にしていたファッションだ。
しかも桂名はその姿を見られたことを、若干悔しそうにしている。
(はは~ん、さては…)
「あれぇ~ッ!?これは桂名センパイじゃないっスかぁ~。どうしたんスかその格好…?事業部に移ったってトコですかねぇ~?」
散々事業部のことをバカにしていた桂名。その恨みを返す為、今こそニヤけ面の煽りムーブで馬鹿にし返してやる。どうだ、シャークを弄る瀬来さんをお手本にしたこの威力。凄まじかろう。
「クッ…江月ッ!僕はおまえのせいでッ!」
「ん、なんスかその顔ぉ~?こんな事を言うのもなんだけど、オレ一人抜けたくらいどうって事無かったでしょ?懲りずに営業部がまた無茶振りでもしてなきゃ」
「ッ…!?」
そう言い返すと、桂名は怒らせていた目を泳がせて視線を外す。
え…何?もしかしてオレが抜けた後も、変わらずにあの無茶振りをし続けてたの…??マジか…、バカじゃないの?オレがいた時だって事業部の全員がオーバーワークでグロッキー状態だったんだぞ?
そのうえさらに負荷を増したら、それこそ回る訳ないジャン。
「おまえのせいで、僕まで事業部に回されたんだぞ!」
いや、それこそ自業自得。在職中にオレは散々、『契約取るにしても納期には充分余裕を持たせて下さい』ってあれほどお願いしたのに。それを寄ってたかって取るに足らない泣き言みたいに扱いやがって。
それを変えず抜けた穴も埋めずに、また後先考えずバカスカ安い契約ばっか取って来たんだろ?ほんとアホすぎる…。
「ふ~ん、そうか。ま、それでも優秀な桂名センパイなら、余裕っしょ?『受注した仕事なんかパパッと片付けて、サッサと新しい契約の方始めろよ』なんて事、よく言ってましたもんねェ~」
「ぐ…ッ!」
そうそう、ホントこんな事よく言えたもんだ。
だがその月の売り上げ欲しさに、会社全体でその風潮が蔓延していたのは事実。その為、契約を取ってくる営業部がもっとも幅を利かせていて、事業部はその尻拭いに毎日残業でヒーヒー言っていた。
でもそれが社内では当然と思われていたのだ。
ああ、もちろん急に辞めてしまったことは他の事業部の面々に悪いと思っているさ。でも、それもほんのちょっぴりだ。というのもそういった風潮になるのをオレの勤める以前から、ずっと放置し続けてきたのもまた彼らだったんだから。
て、う~む、でもどうもいかんな。
かつての職場のことを思いだすと、今でも心がささくれだってしまう。
「フン!そんなこと言って…。どうせまだ無職なんだろう?整体師になるなんて言ったって、未だにこうしてフラフラしてるんだからな!」
わお…流石。相変わらず口が減らないこと。あ~あ、オレもほんとはこんな事言いたかないよ。でも言っとこ、せっかくだし。
「うん、そうねェ。まだ通ってるよ。他にも収入あるから、別に急いでもないしな」
「ハッ…!見栄張ってハッタリかますのもいい加減みっともないぞ?嘘までついて、自分が惨めじゃないのか??」
そう顔を歪めて煽ってくる桂名。いいねぇ、その悪い顔。猫被ってないで、それ会社の女の子にも見せてやれよ。
「別におまえに信じてもらわなくてもいいって。こうしてオレが昼間からのんびりと蕎麦屋に寄っていられる金銭的余裕があっても、おまえには全く関係ないしな。あ、ちなみに今のオレの取引先は、真田薬品さんだ。知ってるだろ?おまえ契約とれなくて悔しがってたもんな」
「ナッ!?そんな事ある訳ないだろ!バカも休み休み言えっ!」
うん、『以前はすいませんでした。自分でやってみてようやく事業部の方の苦労が解りました』な~んてしおらしい事をいうヤツじゃないのは、吐きそうになる程よく知っている。
コイツは『他人の事なんてどうでもいい自分一番可愛いマン』だからな。しかも自尊心の塊のようなヤツで、ちょっとした身長差で見下ろされることすら我慢のならない性格ときてる…。ほんと、どんだけだって話だ。
「「……」」
そんな事を考えていると、ふと沈黙し真剣な表情で見つめ合う呼吸を止めた一秒…。だがそんなおねがいタッチなオレ達に、突然ガラの悪い三人組が話しかけてきた。
「あ、どうも兄貴!」
「「コンチャぁっす!」」
(む!なんだコイツ等…!?)
見知らぬ男達の登場に、心のデフコンレベルが急上昇。いつでも戦えるようにと重心をスッと下げる。が、ガラの悪い三人組はそんなオレに対して意外にも深々と頭をさげてきた。
「その節は…助けて頂いてありがとうございました!」
「「ありがとうゴザッ…したッ!!」」
(なに、助けた…?)
不審に思って桂名の方をチラと見ると、桂名は『話に割って入られた事を不快に感じつつも変な連中には絡まれたくないでゴザル』といった感じで、素知らぬ風を装っていた。
なんだよ、その解りやすい顔は…。
(しかしそうすると桂名ではなく、やっぱりオレの方か…)
「あ…あの俺達、ダンジョンで助けてもらった…」
そう言うと、リーダーっぽい男が手で髪型をオールバックしてみせた。
「ああ、あの時の!」
コイツ等アレだ、コボルドのダンジョンでレッサーゴーストたちにぴーぴー泣かされてたイキリDQN三人組じゃないか。なんだよ急に、誰かと思ったじゃないか。
…。
急に街中で話しかけてきたイキリDQN三人組。しかもなにやらやけに感激してて、なかなか解放してもらえない。
「あの、俺達二度も命を助けてもらって!」
「やっぱり優しさって大切なんだなって!」
「そう思い知ったッス!」
ああなに、そういうこと?
なにやらダンジョンで二度死にかけた事に因って、イキリDQNたちは灰汁の抜けたDQNになったらしい。
「その後ですぐモンスタースタンピードですから!」
「これはもう自分達も兄貴を見倣って!」
「人助けするしかないって思ったッス!」
え、何?じゃあ前のスタンピードでおまえら人助けなんかをしてたの?ふ~ん、これはちょっと見直したわ。オレは自分の彼女しか助けてなかったのに。
「で、助けた人のなかに運送会社の社長さんがいて!」
「いまはソコで働かせてもらってるッス!」
「自分は…。え~と、その時助けた子と所帯持ちまして…」
エッ!なにその劇的ビフォーアフターな感じのサクセスストーリー!ちょっとその話興味沸いてきたわ!
「おい…江月」
しかし焦れた桂名が話に割り込むと、DQNたちがにわかに眼を三角にして睨みつける。
「あぁん!んだテメェ!?」
「兄貴に失礼だろうが!」
うん、おまえら相変わらずガラは悪いのね、良くないよそういうの。そしてやめろよな街中で兄貴とか呼ぶの。その筋の関係者かと思われて、OLさんが足早に去っていくじゃないか。
「ああ、まぁおまえたちも元気そうで何よりだ。と、もっと話していたいがオレもこれから用事があってな」
桂名とコイツ等がケンカになってその仲裁とか、面倒な事この上ない。なのでここはオレから話を切り上げ、DQNたちに帰る素振りをみせる。
そして桂名には『さっさとこの場を離れろ』と後ろ手にハンドサイン。
「あ、そうすか?じゃ兄貴、また何かありましたら…失礼します」
「「失礼シャァス!」」
「うん、またな。せっかく拾った命だ。運転気を付けて、しっかり働けよ」
こうして、イキリDQNたちは去って行った。
う~む…正直こんなことになるとは思ってもみなかった。アイツ等を見殺しにしなかったのって、単に『生かしとけばまた馬鹿をやって、丁度いい実験台になってくれるかも』なんて思っただけだし…。あとは目の前で死なれちゃ警察に届け出たりする義務が生じるから、面倒くさいなぁって思った程度。
それがあんなにも変わるとは…。人生何が起きるか解らんもんだ。
ああ、それと桂名は助けてやったも関わらず、去り際にはまたオレをひと睨みして去って行ったよ。アイツも相変わらずなヤツだ。
しかし、知ってるか桂名よ?
大人ってのは、『自分のしでかしたとこに、自分で始末をつけられる人間』の事を言うんだぞ。おまえも大人なら、自分の始末くらい自分でつけろよな。
だがそうして気分よく表に出ると、思わぬ男とでくわした。
それは桂名健一、オレが以前勤めていた会社の同僚だ。
「あ」
「江月ッ…!?」
あ~、これまた嫌な顔を見てしまった。食後のいい気分が台無しだよ。
しかし桂名の姿はいつものスーツ姿ではなく、作業着姿に肩掛け鞄。そして手には、小さな脚立を持っている。そう、それはかつてオレが仕事中にしていたファッションだ。
しかも桂名はその姿を見られたことを、若干悔しそうにしている。
(はは~ん、さては…)
「あれぇ~ッ!?これは桂名センパイじゃないっスかぁ~。どうしたんスかその格好…?事業部に移ったってトコですかねぇ~?」
散々事業部のことをバカにしていた桂名。その恨みを返す為、今こそニヤけ面の煽りムーブで馬鹿にし返してやる。どうだ、シャークを弄る瀬来さんをお手本にしたこの威力。凄まじかろう。
「クッ…江月ッ!僕はおまえのせいでッ!」
「ん、なんスかその顔ぉ~?こんな事を言うのもなんだけど、オレ一人抜けたくらいどうって事無かったでしょ?懲りずに営業部がまた無茶振りでもしてなきゃ」
「ッ…!?」
そう言い返すと、桂名は怒らせていた目を泳がせて視線を外す。
え…何?もしかしてオレが抜けた後も、変わらずにあの無茶振りをし続けてたの…??マジか…、バカじゃないの?オレがいた時だって事業部の全員がオーバーワークでグロッキー状態だったんだぞ?
そのうえさらに負荷を増したら、それこそ回る訳ないジャン。
「おまえのせいで、僕まで事業部に回されたんだぞ!」
いや、それこそ自業自得。在職中にオレは散々、『契約取るにしても納期には充分余裕を持たせて下さい』ってあれほどお願いしたのに。それを寄ってたかって取るに足らない泣き言みたいに扱いやがって。
それを変えず抜けた穴も埋めずに、また後先考えずバカスカ安い契約ばっか取って来たんだろ?ほんとアホすぎる…。
「ふ~ん、そうか。ま、それでも優秀な桂名センパイなら、余裕っしょ?『受注した仕事なんかパパッと片付けて、サッサと新しい契約の方始めろよ』なんて事、よく言ってましたもんねェ~」
「ぐ…ッ!」
そうそう、ホントこんな事よく言えたもんだ。
だがその月の売り上げ欲しさに、会社全体でその風潮が蔓延していたのは事実。その為、契約を取ってくる営業部がもっとも幅を利かせていて、事業部はその尻拭いに毎日残業でヒーヒー言っていた。
でもそれが社内では当然と思われていたのだ。
ああ、もちろん急に辞めてしまったことは他の事業部の面々に悪いと思っているさ。でも、それもほんのちょっぴりだ。というのもそういった風潮になるのをオレの勤める以前から、ずっと放置し続けてきたのもまた彼らだったんだから。
て、う~む、でもどうもいかんな。
かつての職場のことを思いだすと、今でも心がささくれだってしまう。
「フン!そんなこと言って…。どうせまだ無職なんだろう?整体師になるなんて言ったって、未だにこうしてフラフラしてるんだからな!」
わお…流石。相変わらず口が減らないこと。あ~あ、オレもほんとはこんな事言いたかないよ。でも言っとこ、せっかくだし。
「うん、そうねェ。まだ通ってるよ。他にも収入あるから、別に急いでもないしな」
「ハッ…!見栄張ってハッタリかますのもいい加減みっともないぞ?嘘までついて、自分が惨めじゃないのか??」
そう顔を歪めて煽ってくる桂名。いいねぇ、その悪い顔。猫被ってないで、それ会社の女の子にも見せてやれよ。
「別におまえに信じてもらわなくてもいいって。こうしてオレが昼間からのんびりと蕎麦屋に寄っていられる金銭的余裕があっても、おまえには全く関係ないしな。あ、ちなみに今のオレの取引先は、真田薬品さんだ。知ってるだろ?おまえ契約とれなくて悔しがってたもんな」
「ナッ!?そんな事ある訳ないだろ!バカも休み休み言えっ!」
うん、『以前はすいませんでした。自分でやってみてようやく事業部の方の苦労が解りました』な~んてしおらしい事をいうヤツじゃないのは、吐きそうになる程よく知っている。
コイツは『他人の事なんてどうでもいい自分一番可愛いマン』だからな。しかも自尊心の塊のようなヤツで、ちょっとした身長差で見下ろされることすら我慢のならない性格ときてる…。ほんと、どんだけだって話だ。
「「……」」
そんな事を考えていると、ふと沈黙し真剣な表情で見つめ合う呼吸を止めた一秒…。だがそんなおねがいタッチなオレ達に、突然ガラの悪い三人組が話しかけてきた。
「あ、どうも兄貴!」
「「コンチャぁっす!」」
(む!なんだコイツ等…!?)
見知らぬ男達の登場に、心のデフコンレベルが急上昇。いつでも戦えるようにと重心をスッと下げる。が、ガラの悪い三人組はそんなオレに対して意外にも深々と頭をさげてきた。
「その節は…助けて頂いてありがとうございました!」
「「ありがとうゴザッ…したッ!!」」
(なに、助けた…?)
不審に思って桂名の方をチラと見ると、桂名は『話に割って入られた事を不快に感じつつも変な連中には絡まれたくないでゴザル』といった感じで、素知らぬ風を装っていた。
なんだよ、その解りやすい顔は…。
(しかしそうすると桂名ではなく、やっぱりオレの方か…)
「あ…あの俺達、ダンジョンで助けてもらった…」
そう言うと、リーダーっぽい男が手で髪型をオールバックしてみせた。
「ああ、あの時の!」
コイツ等アレだ、コボルドのダンジョンでレッサーゴーストたちにぴーぴー泣かされてたイキリDQN三人組じゃないか。なんだよ急に、誰かと思ったじゃないか。
…。
急に街中で話しかけてきたイキリDQN三人組。しかもなにやらやけに感激してて、なかなか解放してもらえない。
「あの、俺達二度も命を助けてもらって!」
「やっぱり優しさって大切なんだなって!」
「そう思い知ったッス!」
ああなに、そういうこと?
なにやらダンジョンで二度死にかけた事に因って、イキリDQNたちは灰汁の抜けたDQNになったらしい。
「その後ですぐモンスタースタンピードですから!」
「これはもう自分達も兄貴を見倣って!」
「人助けするしかないって思ったッス!」
え、何?じゃあ前のスタンピードでおまえら人助けなんかをしてたの?ふ~ん、これはちょっと見直したわ。オレは自分の彼女しか助けてなかったのに。
「で、助けた人のなかに運送会社の社長さんがいて!」
「いまはソコで働かせてもらってるッス!」
「自分は…。え~と、その時助けた子と所帯持ちまして…」
エッ!なにその劇的ビフォーアフターな感じのサクセスストーリー!ちょっとその話興味沸いてきたわ!
「おい…江月」
しかし焦れた桂名が話に割り込むと、DQNたちがにわかに眼を三角にして睨みつける。
「あぁん!んだテメェ!?」
「兄貴に失礼だろうが!」
うん、おまえら相変わらずガラは悪いのね、良くないよそういうの。そしてやめろよな街中で兄貴とか呼ぶの。その筋の関係者かと思われて、OLさんが足早に去っていくじゃないか。
「ああ、まぁおまえたちも元気そうで何よりだ。と、もっと話していたいがオレもこれから用事があってな」
桂名とコイツ等がケンカになってその仲裁とか、面倒な事この上ない。なのでここはオレから話を切り上げ、DQNたちに帰る素振りをみせる。
そして桂名には『さっさとこの場を離れろ』と後ろ手にハンドサイン。
「あ、そうすか?じゃ兄貴、また何かありましたら…失礼します」
「「失礼シャァス!」」
「うん、またな。せっかく拾った命だ。運転気を付けて、しっかり働けよ」
こうして、イキリDQNたちは去って行った。
う~む…正直こんなことになるとは思ってもみなかった。アイツ等を見殺しにしなかったのって、単に『生かしとけばまた馬鹿をやって、丁度いい実験台になってくれるかも』なんて思っただけだし…。あとは目の前で死なれちゃ警察に届け出たりする義務が生じるから、面倒くさいなぁって思った程度。
それがあんなにも変わるとは…。人生何が起きるか解らんもんだ。
ああ、それと桂名は助けてやったも関わらず、去り際にはまたオレをひと睨みして去って行ったよ。アイツも相変わらずなヤツだ。
しかし、知ってるか桂名よ?
大人ってのは、『自分のしでかしたとこに、自分で始末をつけられる人間』の事を言うんだぞ。おまえも大人なら、自分の始末くらい自分でつけろよな。
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