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妖怪嫁とカニダンジョン地下2層
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「「養ってくれ」」
そう妖怪娘たちは、オレに言った。
そもそもこのふたり、むか~しむかしは近隣にその名を轟かせた凶悪妖怪だったそうな。ま、当人達が言うにはだけど。
そして縄張りを巡って日々激しく争った間柄だったという。しかしある時、『今日こそ目に物見せてくれる!』とばかりに本気で決着をつけようとした結果、みごとにダブルノックダウン。しかもそこを偶々通りかかった旅の高僧に、ふたりまとめて封じられてしまったのだとか。
ま、要約するとそんな感じ。う~ん、アホやん…。
「で、それがまたなんでオレのとこへなんか?」
「赤大根!すごく精ついた!」
「ぐ、それをこの狼ッ子が喰うてしもうたせいで…!」
(え…、ああ!もしかしてあの祠!?)
妖怪娘たちの会話からピンときた。
そういえば初めて植物ダンジョンに行った日の帰り道、トイレ休憩に公園に寄ったのだった。その時オレは、物珍しさからずっと高霊人参を手で弄んでいた。しかしちょっと弄り過ぎたせいか高霊人参から変な汁が出てしまい、なんか嫌だったので丁度その辺にあった祠にお供えする態で置いて来たんだった。
それがなんと、この妖怪娘らの封印されていた祠だったらしい。
(ふ~ん、へぇ~…)
まぁダンジョンとかがあってモンスターもいるし、なら妖怪がいたっておかしかないけどさ。また随分と意外な方向からボールが飛んできたな。
「で、赤大根だっけ…?高霊人参をお供えした縁を辿って、オレにコンタクトしてきたって訳か」
そう問うと、コクリと頷く妖怪娘たち。
さらに縁というチャンネルを使って、鬼っ娘はオレに攻撃も仕掛けたという。う~ん、今流行のサイバー攻撃みたいだな。それが旅館に泊まっていた時にオレが視た夢だったらしい。
だが結果は返り討ちに遭い、妖力の大半を失った挙句手籠めにされたと。
しかしそれでも妖怪ルール的には夫婦の関係が成立するらしく、『契ったのだから養ってもらおう!』と、房総半島からここまでテクテク旅をしてきたそうな。
「え、なに?じゃあふたりともオレの嫁ってことなの!?」
そう訊ねると、再びコクリと頷く妖怪娘たち。そういえば最後はエッチなことまでしたんだった。夢だと思ってハッスルしすぎちゃったよ…。
う~ん、新たなる新事実。知らぬ間に妖怪の夫になっていたオレ。
「ん~…まぁいいよ。養うって、高霊人参とかなんちゃって燻製肉あげればいいの?」
オレは妖怪の嫁たちを受け入れた。
うん、今もずっとモテなかった頃のコンプレックスは引き摺っているし。
だからモテるなら、人外だろうとウェルカムだ。それに、妖怪嫁は普通の人には視えない模様。瑠羽とかが知ったらビックリするかもしれないけど、妖怪嫁は戸籍や財産が欲しいって訳じゃないから問題ないだろう。
まぁどんどんと人の常識やら感覚からかけ離れていっているという自覚もあるが、そんなモノを大事にしたからといってそれで幸せになれてた訳でもない。だから、どうだっていいだろう。
「ヨシ、そうと決まれば可愛い嫁たちよ、もっとおあがり。そうだ、残ってる高霊人参も煮付にしてあげよう」
そうそう、昔話でも化生の類と夫婦になる話はたんとある。
しかもその場合、ただの平凡な男でも最初の頃は幸せに暮らすんだ。雪女とか、二口女とか、蛇女とかさ。まぁ後者のふたりは養うのに、ものすごく食費が掛かりそうだけど。
そして重要なポイントがひとつ。妖怪嫁と幸せに暮らすには、約束事がとっても大事。うん、これはきちんと確認をしておかねば。
「で、ふたりは何か決められた妖怪ルール、約束事とかがあるのかな…?ほら、たとえば『正体がばれたら、山に還らなきゃいけない~』みたいな」
そう訊くとなんちゃって燻製肉やカニをもぐもぐしながらも、特にないといった感じで首を左右に振るニホンオオカミ娘に鬼っ娘。
そんな事よりも、今は目の前のご馳走に夢中の様子。ふむ、ただこうして養ってほしいというのが、彼女らの望むことらしい。
ふ~ん、そうか…。まぁそれなら楽でいいや。オレもついうっかりで地雷を踏む心配がないのなら、安心だし。
…。
と、そうしてひとしきり彼女らが満足するまで食事をさせていると、そこでパチリと目が覚めた。おや…?どうやら今までのこともまた、全て夢だったようだ。
起き上がってみて、沼に嵌ってたり泥饅頭を喰わされていなかったことにホッとしつつも玄関を確認しに行ってみる。
と、扉の前には苔むした石がポツリと置いてあった。
(もしや、これはあの祠の一部…?)
それを拾上げて辺りを見回してみるも、当然の如くニホンオオカミ娘や鬼っ娘の姿はない。
(でもこんなモノがここに落ちているという事は、夢の内容が現実だったという証か?う~ん、こういうのをなんというのだったか…ドリームパラドックス??)
その後、食料を確認してみたところ妖怪嫁らに喰わせた分がしっかり減っていた。なので確かに、彼女たちがオレを訊ねて来ていたのだと理解した。
……。
期せずして妖怪娘と夫婦になったオレ。
しかし彼女らはダンジョンモンスターのようにビンビンギンギンに存在できる力はないらしく、縁のチャンネルを通じて夢に現れてくるのがやっとの状態らしい。
そんな彼女らの宿っているであろう苔むした祠の欠片は、ダンジョン前室に置いて水をお供えしておいた。ここならば魔素といったモノもあるだろうし、回復が早まるんじゃないかな。早く夢だけでなく、実際に会ってみたいものである。
まぁそれはそれとして、今日はカニダンジョンの地下2層へと足を踏み入れた。
あの地下1層にびっしりと生えた圧倒的な数の巨大ムール貝は、アシッドスメルで貝を閉じさせてスルー。そう、巨大ムール貝には病鼠たちと同じ方法が通じたのだ。
そうして降りたカニダンジョン地下2層は、一面がだだっ広い泥湿地。
そのドーム球場のような広さの洞窟が、ムツゴロウみたいな魚のモンスターで溢れかえっていた。サイズは例によって大きい、まるでゴマアザラシの赤ちゃんのよう。そして口には、サメかピラニアのような鋭い歯がビッシリ。
「なりほど、こいつらがダンジョンから出てこなかったのは、居心地のいい生息域から出るのを嫌ったためか」
そんな巨大ムツゴロウの攻撃法は、瞬発力を活かしたジャンピング嚙り付き。しかしその手の攻撃は巨大カマドウマで散々に慣れているので、増設アームを振り回して容易く弾き返す。
そうして何匹かはこの場で倒してドロップを確認し、何匹かは粘液で拘束し連れ帰る。コイツも食料としての利用が可能か、確認する予定だ。
「おっと、やっぱりカニダンジョンのモンスターは強いな。地下2層でも、冷蔵庫地下4層の巨大ナメクジと同じくらいの強さがあるんじゃないか?」
地下1層の巨大ムール貝でも、総合力は冷蔵庫地下3層の病鼠に匹敵するだろう。
とするとダンジョンランク的なモノがあるとするなら、冷蔵庫ダンジョンよりカニダンジョンの方が高難度ということになる。
(ムッ、剣がドロップしたのかと思ったら、なんだただの骨か…)
金テコでぶっ叩いて屠った巨大ムツゴロウは煙となって消え、後には魔石と『魚の骨』が残った。魚の骨って…、ダシを取るくらいしか使い道が思い浮かばないぞ。
(するとカニは地下3層以下から、テクテク歩いて這い出てくる訳か。けっこう大変だな)
巨大ムツゴロウの合間には、見慣れた巨大カニの歩く姿。
感じとしては地下3層が巨大カニのテリトリーのようだが、そこまで潜るにはこの泥湿地を進んでいかなければならないので、それは御免蒙る。
うん、自分が【粘液】なんてスキルを使うようになったから、泥に嵌って動けなくなることの恐ろしさを身に滲みて感じる。なにせそうして毎度毎度、モンスターを屠っているのだから。何も抗うことが出来ず殺されていくような死に方だけは、したくない。
…。
こうしてカニダンジョンから拘束し連れ出した巨大ムツゴロウを仕留めると、猿・カエル・ナメクジの3体にお仕事の報酬として与えてみる。すると3体は、喜んでそれを食べはじめた。
「ふむ…白身魚か、煮付かフライにするのが美味しそうだな」
ガツガツと巨大ムツゴロウを喰らう3体のモンスターを眺めながら、そんなことを思う。すっかりダンジョンのモンスターを食すのにも、慣れたもんだ。
そして、拾って良かったカニダンジョン。コイツのおかげで新鮮な魚介が、食べ放題じゃないか。
……。
「なになに…ダンジョン能力者、体力測定検査協力のご案内?」
ダンジョンを出てポストに溜った投函物を整理していると、そんなハガキを見つけた。その差出元は厚生労働省になっている。
記載内容を読んでみると、このハガキは試験運用されていた開放ダンジョンに潜ったことのある者に対して送られているようで、体力測定検査を受けて情報収集にご協力くださいとなっていた。
「ふ~ん…、そんなことよりまたダンジョンを一般解放すればいいのに」
時間を使ってまでこんなものに出向いて、わざわざ自身の手の内を晒すような真似はしたくない。そう考えて、このハガキはポイとゴミ箱行き。
ま、個人としてはソレで良くても、国としてはそうもいかないのだろうけど。
ダンジョン関係の法整備が遅れに遅れている理由には、その所有権に関して揉めに揉めているから。ダンジョンがただ災厄だけを齎す存在なら、ダンジョンが現れた土地を誰しもが手放したいと思うだろう。
しかしダンジョンに潜って生還すれば、人は超人になれる。
単にそれひとつだけをとっても、ダンジョンの恩恵は計り知れない。さらに現在は、そこに資源鉱山としての付加価値も加わった。インドが開発に成功したという円運動の抽出できる魔法陣の動力は、ダンジョンで手に入る魔石だ。
そんな訳でモンスターの溢れ出てくるというデメリットとそれらのメリットがせめぎ合い、ダンジョンの管理をどうするかで強い意見の対立が政府内でも起きている。
国が一括でダンジョンを管理するといっても、もはや国内に把握できない程のダンジョンが発生しており、その全てを管理する事など事実上不可能。
そして所有する土地にダンジョンが発生した地主たちは、将来そこから得られるであろう利益を当て込んで頑なに土地を売るのを拒んでいる。といっても何か問題があれば全て国に責任を押し付ける腹づもりなのだから、これまた始末が悪い。
と、なんのかんのと言ったところでオレもダンジョンを秘匿し、私物化しているので余り人の事は言えないな。
ウチの冷蔵庫ダンジョンがモンスタースタンピードを起こして人を殺めてしまったなら、その責任はオレにあるということになるのだから。
故にしっかりと間引きを行なって、適切に管理しよう。
幸いカード化したモンスターとダンジョンモンスターを戦わせることは可能なので、すべてをオレ独りで相手にする必要はない。今日も猿・カエル・ナメクジが元気にスライムを狩ってくれているし。
そういえばあの猿とカエルとナメクジ。
意外とがんばってくれてて助かってるよ。時々勝手にカニ食っちゃってるけど、そこはまぁ大目にみよう。
そう妖怪娘たちは、オレに言った。
そもそもこのふたり、むか~しむかしは近隣にその名を轟かせた凶悪妖怪だったそうな。ま、当人達が言うにはだけど。
そして縄張りを巡って日々激しく争った間柄だったという。しかしある時、『今日こそ目に物見せてくれる!』とばかりに本気で決着をつけようとした結果、みごとにダブルノックダウン。しかもそこを偶々通りかかった旅の高僧に、ふたりまとめて封じられてしまったのだとか。
ま、要約するとそんな感じ。う~ん、アホやん…。
「で、それがまたなんでオレのとこへなんか?」
「赤大根!すごく精ついた!」
「ぐ、それをこの狼ッ子が喰うてしもうたせいで…!」
(え…、ああ!もしかしてあの祠!?)
妖怪娘たちの会話からピンときた。
そういえば初めて植物ダンジョンに行った日の帰り道、トイレ休憩に公園に寄ったのだった。その時オレは、物珍しさからずっと高霊人参を手で弄んでいた。しかしちょっと弄り過ぎたせいか高霊人参から変な汁が出てしまい、なんか嫌だったので丁度その辺にあった祠にお供えする態で置いて来たんだった。
それがなんと、この妖怪娘らの封印されていた祠だったらしい。
(ふ~ん、へぇ~…)
まぁダンジョンとかがあってモンスターもいるし、なら妖怪がいたっておかしかないけどさ。また随分と意外な方向からボールが飛んできたな。
「で、赤大根だっけ…?高霊人参をお供えした縁を辿って、オレにコンタクトしてきたって訳か」
そう問うと、コクリと頷く妖怪娘たち。
さらに縁というチャンネルを使って、鬼っ娘はオレに攻撃も仕掛けたという。う~ん、今流行のサイバー攻撃みたいだな。それが旅館に泊まっていた時にオレが視た夢だったらしい。
だが結果は返り討ちに遭い、妖力の大半を失った挙句手籠めにされたと。
しかしそれでも妖怪ルール的には夫婦の関係が成立するらしく、『契ったのだから養ってもらおう!』と、房総半島からここまでテクテク旅をしてきたそうな。
「え、なに?じゃあふたりともオレの嫁ってことなの!?」
そう訊ねると、再びコクリと頷く妖怪娘たち。そういえば最後はエッチなことまでしたんだった。夢だと思ってハッスルしすぎちゃったよ…。
う~ん、新たなる新事実。知らぬ間に妖怪の夫になっていたオレ。
「ん~…まぁいいよ。養うって、高霊人参とかなんちゃって燻製肉あげればいいの?」
オレは妖怪の嫁たちを受け入れた。
うん、今もずっとモテなかった頃のコンプレックスは引き摺っているし。
だからモテるなら、人外だろうとウェルカムだ。それに、妖怪嫁は普通の人には視えない模様。瑠羽とかが知ったらビックリするかもしれないけど、妖怪嫁は戸籍や財産が欲しいって訳じゃないから問題ないだろう。
まぁどんどんと人の常識やら感覚からかけ離れていっているという自覚もあるが、そんなモノを大事にしたからといってそれで幸せになれてた訳でもない。だから、どうだっていいだろう。
「ヨシ、そうと決まれば可愛い嫁たちよ、もっとおあがり。そうだ、残ってる高霊人参も煮付にしてあげよう」
そうそう、昔話でも化生の類と夫婦になる話はたんとある。
しかもその場合、ただの平凡な男でも最初の頃は幸せに暮らすんだ。雪女とか、二口女とか、蛇女とかさ。まぁ後者のふたりは養うのに、ものすごく食費が掛かりそうだけど。
そして重要なポイントがひとつ。妖怪嫁と幸せに暮らすには、約束事がとっても大事。うん、これはきちんと確認をしておかねば。
「で、ふたりは何か決められた妖怪ルール、約束事とかがあるのかな…?ほら、たとえば『正体がばれたら、山に還らなきゃいけない~』みたいな」
そう訊くとなんちゃって燻製肉やカニをもぐもぐしながらも、特にないといった感じで首を左右に振るニホンオオカミ娘に鬼っ娘。
そんな事よりも、今は目の前のご馳走に夢中の様子。ふむ、ただこうして養ってほしいというのが、彼女らの望むことらしい。
ふ~ん、そうか…。まぁそれなら楽でいいや。オレもついうっかりで地雷を踏む心配がないのなら、安心だし。
…。
と、そうしてひとしきり彼女らが満足するまで食事をさせていると、そこでパチリと目が覚めた。おや…?どうやら今までのこともまた、全て夢だったようだ。
起き上がってみて、沼に嵌ってたり泥饅頭を喰わされていなかったことにホッとしつつも玄関を確認しに行ってみる。
と、扉の前には苔むした石がポツリと置いてあった。
(もしや、これはあの祠の一部…?)
それを拾上げて辺りを見回してみるも、当然の如くニホンオオカミ娘や鬼っ娘の姿はない。
(でもこんなモノがここに落ちているという事は、夢の内容が現実だったという証か?う~ん、こういうのをなんというのだったか…ドリームパラドックス??)
その後、食料を確認してみたところ妖怪嫁らに喰わせた分がしっかり減っていた。なので確かに、彼女たちがオレを訊ねて来ていたのだと理解した。
……。
期せずして妖怪娘と夫婦になったオレ。
しかし彼女らはダンジョンモンスターのようにビンビンギンギンに存在できる力はないらしく、縁のチャンネルを通じて夢に現れてくるのがやっとの状態らしい。
そんな彼女らの宿っているであろう苔むした祠の欠片は、ダンジョン前室に置いて水をお供えしておいた。ここならば魔素といったモノもあるだろうし、回復が早まるんじゃないかな。早く夢だけでなく、実際に会ってみたいものである。
まぁそれはそれとして、今日はカニダンジョンの地下2層へと足を踏み入れた。
あの地下1層にびっしりと生えた圧倒的な数の巨大ムール貝は、アシッドスメルで貝を閉じさせてスルー。そう、巨大ムール貝には病鼠たちと同じ方法が通じたのだ。
そうして降りたカニダンジョン地下2層は、一面がだだっ広い泥湿地。
そのドーム球場のような広さの洞窟が、ムツゴロウみたいな魚のモンスターで溢れかえっていた。サイズは例によって大きい、まるでゴマアザラシの赤ちゃんのよう。そして口には、サメかピラニアのような鋭い歯がビッシリ。
「なりほど、こいつらがダンジョンから出てこなかったのは、居心地のいい生息域から出るのを嫌ったためか」
そんな巨大ムツゴロウの攻撃法は、瞬発力を活かしたジャンピング嚙り付き。しかしその手の攻撃は巨大カマドウマで散々に慣れているので、増設アームを振り回して容易く弾き返す。
そうして何匹かはこの場で倒してドロップを確認し、何匹かは粘液で拘束し連れ帰る。コイツも食料としての利用が可能か、確認する予定だ。
「おっと、やっぱりカニダンジョンのモンスターは強いな。地下2層でも、冷蔵庫地下4層の巨大ナメクジと同じくらいの強さがあるんじゃないか?」
地下1層の巨大ムール貝でも、総合力は冷蔵庫地下3層の病鼠に匹敵するだろう。
とするとダンジョンランク的なモノがあるとするなら、冷蔵庫ダンジョンよりカニダンジョンの方が高難度ということになる。
(ムッ、剣がドロップしたのかと思ったら、なんだただの骨か…)
金テコでぶっ叩いて屠った巨大ムツゴロウは煙となって消え、後には魔石と『魚の骨』が残った。魚の骨って…、ダシを取るくらいしか使い道が思い浮かばないぞ。
(するとカニは地下3層以下から、テクテク歩いて這い出てくる訳か。けっこう大変だな)
巨大ムツゴロウの合間には、見慣れた巨大カニの歩く姿。
感じとしては地下3層が巨大カニのテリトリーのようだが、そこまで潜るにはこの泥湿地を進んでいかなければならないので、それは御免蒙る。
うん、自分が【粘液】なんてスキルを使うようになったから、泥に嵌って動けなくなることの恐ろしさを身に滲みて感じる。なにせそうして毎度毎度、モンスターを屠っているのだから。何も抗うことが出来ず殺されていくような死に方だけは、したくない。
…。
こうしてカニダンジョンから拘束し連れ出した巨大ムツゴロウを仕留めると、猿・カエル・ナメクジの3体にお仕事の報酬として与えてみる。すると3体は、喜んでそれを食べはじめた。
「ふむ…白身魚か、煮付かフライにするのが美味しそうだな」
ガツガツと巨大ムツゴロウを喰らう3体のモンスターを眺めながら、そんなことを思う。すっかりダンジョンのモンスターを食すのにも、慣れたもんだ。
そして、拾って良かったカニダンジョン。コイツのおかげで新鮮な魚介が、食べ放題じゃないか。
……。
「なになに…ダンジョン能力者、体力測定検査協力のご案内?」
ダンジョンを出てポストに溜った投函物を整理していると、そんなハガキを見つけた。その差出元は厚生労働省になっている。
記載内容を読んでみると、このハガキは試験運用されていた開放ダンジョンに潜ったことのある者に対して送られているようで、体力測定検査を受けて情報収集にご協力くださいとなっていた。
「ふ~ん…、そんなことよりまたダンジョンを一般解放すればいいのに」
時間を使ってまでこんなものに出向いて、わざわざ自身の手の内を晒すような真似はしたくない。そう考えて、このハガキはポイとゴミ箱行き。
ま、個人としてはソレで良くても、国としてはそうもいかないのだろうけど。
ダンジョン関係の法整備が遅れに遅れている理由には、その所有権に関して揉めに揉めているから。ダンジョンがただ災厄だけを齎す存在なら、ダンジョンが現れた土地を誰しもが手放したいと思うだろう。
しかしダンジョンに潜って生還すれば、人は超人になれる。
単にそれひとつだけをとっても、ダンジョンの恩恵は計り知れない。さらに現在は、そこに資源鉱山としての付加価値も加わった。インドが開発に成功したという円運動の抽出できる魔法陣の動力は、ダンジョンで手に入る魔石だ。
そんな訳でモンスターの溢れ出てくるというデメリットとそれらのメリットがせめぎ合い、ダンジョンの管理をどうするかで強い意見の対立が政府内でも起きている。
国が一括でダンジョンを管理するといっても、もはや国内に把握できない程のダンジョンが発生しており、その全てを管理する事など事実上不可能。
そして所有する土地にダンジョンが発生した地主たちは、将来そこから得られるであろう利益を当て込んで頑なに土地を売るのを拒んでいる。といっても何か問題があれば全て国に責任を押し付ける腹づもりなのだから、これまた始末が悪い。
と、なんのかんのと言ったところでオレもダンジョンを秘匿し、私物化しているので余り人の事は言えないな。
ウチの冷蔵庫ダンジョンがモンスタースタンピードを起こして人を殺めてしまったなら、その責任はオレにあるということになるのだから。
故にしっかりと間引きを行なって、適切に管理しよう。
幸いカード化したモンスターとダンジョンモンスターを戦わせることは可能なので、すべてをオレ独りで相手にする必要はない。今日も猿・カエル・ナメクジが元気にスライムを狩ってくれているし。
そういえばあの猿とカエルとナメクジ。
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