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ダンジョンスタンピード第二波 熟成
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翌日。朝早くから冷蔵庫ダンジョンへと潜ると、なかは言わずもがなの惨状。
「うわ…、何コレひど~い!だいじな食材がバラバラのグチャグチャじゃな~い、何よもぉ!」
「いや、そうは言うけどトンデモナイ量だったし…。それに貝とカニが合体してると、コレが意外に強くて手加減できなかったんだよ」
酸鼻の極めた光景、といっても一晩経っているので柔らかい臓物などはかなりダンジョンに吸収されている。なので昨日の戦闘後よりかは、だいぶマシだ。
それでも硬い巨大カニの脚や甲羅、巨大ムール貝の破片といったモノが床一面に散らばり、筋肉質な触手鎌の長い触手もデロ~ンと伸びた状態で幾重にも重なり床に張り付いていたり…。
「え~でも…、それにしても酷くなぁい?」
そんな触手の一本をベリベリと床から剥がしてみせながら、『普通ここまでやるぅ?』といった口調で瀬来さんがオレを視返す。
「まぁ…、昨日はせっかく落ち着けると思ったところに余計なトラブルが起きてさ。それに猿たちも酷く痛めつけられてたから、それでついカッとなってしまったのは認めるよ…」
「ふ~ん…。あ、でもこういうのってシズが凄い好きかも!」
摘まみあげた触手を顔に近づけクンクンしながら、瀬来さんがそんなことを言い出した。
「えぇ!?ん~確かにまぁ、ダンジョンに吸収される過程で先に水分から抜けていくから、その触手もちょっと干したみたいな感じにはなってるけど…」
「ねぇねぇ、ちょっと匂い嗅いでみてよ!貝の良い匂いがするから。コレ、ちょっと炙って味見してみようよ!」
うむむ、こうなると瀬来さんは聞かないからな…。だが言われるまま試しにトースターで炙って味見してみると、コレがホントに美味かった。
「うわ!?なんだコレ美味いぞッ!すごく酒が欲しくなる味だ!」
「でしょ!だって凄く良い匂いがしたもん!!」
なんということだ…。昨晩オレを散々に苦しめた巨大ムール貝の触手鎌ダンジョン一夜干しは、物凄く美味い珍味だった。
「私はコレ集めとくからさ、江月さんはカニダンジョン掃除して来てよ!」
「ひどっ!」
まぁいい、オレの不始末で起こしたトラブルだもんな。オレが掃除してこよう。昨日もたくさん倒したし、もう少し倒せばレベルアップもするだろう。
…。
冷蔵庫ダンジョン地下1層。その奥まった通路の突き当りに、カニダンジョンの入り口たるポリバケツの蓋がポツンと落ちている。
「(シ~ン……)」
「すぅ~、はぁ~…」
ダンジョンの静寂な空気は、いつだってこの身と心を引き締めてくれる。
(ありがとうダンジョン!おまえが死の危険と脅威に満ちているからこそ、オレはこうして生のありがたみを強く実感できるのだ…)
そうだ。ダンジョンで戦う覚悟の上に心を据え直せば、命を失う事以外の事柄はなんでもない事と思えてくる。例えば瀬来さんに冷たくされたり文句を言われたって、自分が死んだり彼女らを失う事を考えれば、それすらも愛おしく思えてくるほど。
「うむ、これが愛か!」
オレはポツンと置かれた青いポリバケツの蓋を見詰めながら、愛を感じていた。
そうしてカニダンジョンへと足を踏み入れると、そこはザ・巨大ムール貝ワールド。地下水脈のような洞窟の岩場に、岩が視えない程それはもうビッシリと巨大ムール貝が張り付いていた。
「むぅ…!やはりガソリンで点けた出がけの炎は、消されてしまっていたのか…」
うむむ、貝って砂を吐かせる時に水を噴いたりするもんな。きっとあんな感じでピュッピュッ!と水をかけて消火してしまったのかもしれない。
そんな針山のような巨大ムール貝群生地帯を越え、インベーダーの如き合体モンスターが迫りくる。これまた惑星大戦争のような光景だ。
「これでは猿たちには難敵だったことだろう…。だが、オレの前では物の数ではないぞ!喰らえ粘液牢獄ッ!!」
『『『ずびゅりらあぁ~~ッ!』』』
生み出された粘液たちが、迫る巨大ムールガニどもに襲いかかる。
『『『べちょちょッ!ぬたぁ~~…(ぎゅち!!)』』』
「「「…ッ!?」」」
「フッ…どうだ動けまい!」
解説しよう。粘液牢獄とは、トリモチのようなベタベタ粘液で相手をまるっと包み込んでしまう静なる荒業。これをされると例えどんなに鎌や鋏が鋭かろうが、素早く振るうことも出来ず逃れることは決して適わないのだ。
「お次は岩塩刺突剣!てりゃりゃりゃりゃぁ~~ッ!!」
『シュビビビビビッ!!』
粘液牢獄で縛られ身動きの取れなくなった巨大ムールガニに対し、貝殻や甲羅の隙間を狙い無慈悲な刺突攻撃。しかも突いた端から岩塩刺突剣の切っ先をパキポキと折ってやる。こうすることでめっちゃショッパイ岩塩がその身体に残り、高塩分の毒性によって変調をきたしてしまうのだ。
『『『(ぷるぷるぷる…ぼふん!)』』』
「む…、やはり塩分の毒性についてはだいぶ耐えられるな。流石は海生生物といったところか。だがこれでは時間が掛かりすぎる。よし、ならばやはりアレを使うか!」
『ごりゅん!めごごごごご…ッ!』
次いで生み出したのは、大型岩塩盾と巨大岩塩戰槌のガチンコバトルセット。粘液ぶっかけ動きを封じ『ドッカンバッコン!』と岩塩戰槌で潰してしまう方が、岩塩刺突剣でチマチマ突くよりよっぽど早い。
そのぶん魔力も体力も大幅に消費してしまうが、どうせ自宅だ。ストレス発散の為にも、ここは思うさま暴れてやろう。どれ、ゆくぞ!!
…。
「あ、おかえり~ッ!ねぇねぇ見て!こんなに集まったよ!!」
「おお…!貝ヒモもカニの脚も、そんなにあったか!!」
二時間ほど暴れてカニダンジョン地下1層のモンスターを粗方片付けて戻ると、冷蔵庫ダンジョン前室には巨大カニの脚が山と積まれ、触手鎌が壁際に綺麗に吊るされて並んでいた。
そんな吊るされている触手鎌に、ピクシークィーンが魔法で乾いた風を送っている。なんというクィーンの贅沢使い。瀬来さんのお手伝いにと、クィーンほかピクシー数名を召喚しておいたのだ。
「ねぇねぇホラ!江月さんコレ食べてみてよ!」
「え、何それカニの脚?なんかクリーム色してるし、妙に溶けてるよ?」
瀬来さんが嬉々として差し出してきたのは巨大カニの脚の身。だがそれはダンジョンの分解吸収作用によって乾燥とトロけがいっしょくたになった感じで、じつに何とも言えない状態となっている。
「まぁまぁ、そう言わずに。まずは食べてみてよ!」
「え、もしかして瀬来さん生で食べたのコレ?ダメだよ生はさすがに。最低でも火を通さないと!」
「シズにスッポンの活き血飲ませた人が何言ってんのよ!それにダンジョンの力でここまで分解されてるんだから、もう寄生虫だっていないでしょ?」
「うむむ…」
確かに…。
地球に現れたダンジョンは地下迷宮や地下洞窟の形状をとっているが、小さい虫などはまったく見かけない。こんな環境なら普通に居そうなモノだが、そこに生息しているのはバスケットボールサイズのスライムや〇ンバサイズのゴキブリだ。
(ハッ…!もしやこの環境に適応した姿が、今のモンスター!?)
だとするとそれ以下の小さな生物は居たとしても、ダンジョンの分解吸収作用によって分解。自然淘汰されてしまうということか。
「なるほど…それも一理あるな」
「もぉ、そんなむずかしい顔してないでいいから食べてみてよ!」
「ふぅむ、そんなにオススメなのか。では頂いてみよう…」
そこでまずは、乾燥とトロけが一緒になったカニの身を指でつまんで裂いてみる。
するとカニの身なのに、裂け口から燻製にしたチーズのような良い匂いが…。そして裂けていく感触もまた面白い。モチッとしていつつもスルスルと裂けてゆく。これはまるで、とろけて裂けるチーズみたいだ。
「ね、はやく食べて…」
「あ、ああ」
急かす瀬来さんの言に一口分をプチッと千切って口の入れてみる。と、濃縮されたような美味いカニの味と共に、チーズのような香りとコクがじんわりと濃厚に広がってゆく。
「おお、コレは美味い…。なんというか熟成されていて、赤ワインとかに絶対合うヤツだ!」
「でしょう!うひひ…コレ食べたら絶対シズご機嫌になるよ。ねぇ、良かったわねェ~…江月さん!」
「う、そんな風に言わなくても…。あの時はホント悪かったって」
まぁ瀬来さんがこんな風に言うのにも訳がある。
基本、仁菜さんはほんとに機嫌の良い時にしかエッチをOKしてくれないのだ。そしてオレもジェントルメンであるからして、そんな彼女に無理強いをしたりはしない。
ただホントにどうにも治まりがつかなかった時に、代打みたいな感じで瀬来さんに頼みひどく機嫌を損ねたことがあったのだ。
「えぇ~別にぃ?ぜんぜん気にしてませんけどぉ~??」
いやいや、ソレぜったい気にしてるヤツやん!
「と、ともかくそのお詫びはまた何かのカタチで必ずするから!とにかく今は食材のほうを先に片してしまおう!」
「プッ…あはは!江月さんが焦って慌ててるぅ!やだぁ、何アレあれ恥ずかしぃ~~プププゥ!!」
「いや瀬来さん…、ほんとゴメンて…」
性格が猫タイプの瀬来さんは、ワガママ無理難題を言って相手の愛情度を測る時がある。
そうしてどれだけワガママを聞いてくれるかで、相手がどれだけ自分を愛しているかを測るのだ。だから偶にはこんな風に、ひどく煽ってくることも…。
でもそんな時には、決して怒ってはいけない。懐を大きく持って、そんなトゲごと相手を包み込む深い度量を見せねばならないのだ。
「しかしすごい量だ。万智もたくさん集めてくれて疲れたろ?あとでマッサージするよ。フワフワに蕩けて、すぐにグッスリと眠ってしまうようなマッサージを」
「ふ~ん、まぁ良いけど?それならさっさと片付けちゃいましょ」
そう提案すると若干は機嫌を持ち直してくれたのか、食材の整理をテキパキとはじめてくれる瀬来さん。いやはや、女の子と付き合うってのはなんとも気を遣うもんだ。
やっぱり男の道は、辛さを抱くで辛抱とド根性でヤンスね。
「うわ…、何コレひど~い!だいじな食材がバラバラのグチャグチャじゃな~い、何よもぉ!」
「いや、そうは言うけどトンデモナイ量だったし…。それに貝とカニが合体してると、コレが意外に強くて手加減できなかったんだよ」
酸鼻の極めた光景、といっても一晩経っているので柔らかい臓物などはかなりダンジョンに吸収されている。なので昨日の戦闘後よりかは、だいぶマシだ。
それでも硬い巨大カニの脚や甲羅、巨大ムール貝の破片といったモノが床一面に散らばり、筋肉質な触手鎌の長い触手もデロ~ンと伸びた状態で幾重にも重なり床に張り付いていたり…。
「え~でも…、それにしても酷くなぁい?」
そんな触手の一本をベリベリと床から剥がしてみせながら、『普通ここまでやるぅ?』といった口調で瀬来さんがオレを視返す。
「まぁ…、昨日はせっかく落ち着けると思ったところに余計なトラブルが起きてさ。それに猿たちも酷く痛めつけられてたから、それでついカッとなってしまったのは認めるよ…」
「ふ~ん…。あ、でもこういうのってシズが凄い好きかも!」
摘まみあげた触手を顔に近づけクンクンしながら、瀬来さんがそんなことを言い出した。
「えぇ!?ん~確かにまぁ、ダンジョンに吸収される過程で先に水分から抜けていくから、その触手もちょっと干したみたいな感じにはなってるけど…」
「ねぇねぇ、ちょっと匂い嗅いでみてよ!貝の良い匂いがするから。コレ、ちょっと炙って味見してみようよ!」
うむむ、こうなると瀬来さんは聞かないからな…。だが言われるまま試しにトースターで炙って味見してみると、コレがホントに美味かった。
「うわ!?なんだコレ美味いぞッ!すごく酒が欲しくなる味だ!」
「でしょ!だって凄く良い匂いがしたもん!!」
なんということだ…。昨晩オレを散々に苦しめた巨大ムール貝の触手鎌ダンジョン一夜干しは、物凄く美味い珍味だった。
「私はコレ集めとくからさ、江月さんはカニダンジョン掃除して来てよ!」
「ひどっ!」
まぁいい、オレの不始末で起こしたトラブルだもんな。オレが掃除してこよう。昨日もたくさん倒したし、もう少し倒せばレベルアップもするだろう。
…。
冷蔵庫ダンジョン地下1層。その奥まった通路の突き当りに、カニダンジョンの入り口たるポリバケツの蓋がポツンと落ちている。
「(シ~ン……)」
「すぅ~、はぁ~…」
ダンジョンの静寂な空気は、いつだってこの身と心を引き締めてくれる。
(ありがとうダンジョン!おまえが死の危険と脅威に満ちているからこそ、オレはこうして生のありがたみを強く実感できるのだ…)
そうだ。ダンジョンで戦う覚悟の上に心を据え直せば、命を失う事以外の事柄はなんでもない事と思えてくる。例えば瀬来さんに冷たくされたり文句を言われたって、自分が死んだり彼女らを失う事を考えれば、それすらも愛おしく思えてくるほど。
「うむ、これが愛か!」
オレはポツンと置かれた青いポリバケツの蓋を見詰めながら、愛を感じていた。
そうしてカニダンジョンへと足を踏み入れると、そこはザ・巨大ムール貝ワールド。地下水脈のような洞窟の岩場に、岩が視えない程それはもうビッシリと巨大ムール貝が張り付いていた。
「むぅ…!やはりガソリンで点けた出がけの炎は、消されてしまっていたのか…」
うむむ、貝って砂を吐かせる時に水を噴いたりするもんな。きっとあんな感じでピュッピュッ!と水をかけて消火してしまったのかもしれない。
そんな針山のような巨大ムール貝群生地帯を越え、インベーダーの如き合体モンスターが迫りくる。これまた惑星大戦争のような光景だ。
「これでは猿たちには難敵だったことだろう…。だが、オレの前では物の数ではないぞ!喰らえ粘液牢獄ッ!!」
『『『ずびゅりらあぁ~~ッ!』』』
生み出された粘液たちが、迫る巨大ムールガニどもに襲いかかる。
『『『べちょちょッ!ぬたぁ~~…(ぎゅち!!)』』』
「「「…ッ!?」」」
「フッ…どうだ動けまい!」
解説しよう。粘液牢獄とは、トリモチのようなベタベタ粘液で相手をまるっと包み込んでしまう静なる荒業。これをされると例えどんなに鎌や鋏が鋭かろうが、素早く振るうことも出来ず逃れることは決して適わないのだ。
「お次は岩塩刺突剣!てりゃりゃりゃりゃぁ~~ッ!!」
『シュビビビビビッ!!』
粘液牢獄で縛られ身動きの取れなくなった巨大ムールガニに対し、貝殻や甲羅の隙間を狙い無慈悲な刺突攻撃。しかも突いた端から岩塩刺突剣の切っ先をパキポキと折ってやる。こうすることでめっちゃショッパイ岩塩がその身体に残り、高塩分の毒性によって変調をきたしてしまうのだ。
『『『(ぷるぷるぷる…ぼふん!)』』』
「む…、やはり塩分の毒性についてはだいぶ耐えられるな。流石は海生生物といったところか。だがこれでは時間が掛かりすぎる。よし、ならばやはりアレを使うか!」
『ごりゅん!めごごごごご…ッ!』
次いで生み出したのは、大型岩塩盾と巨大岩塩戰槌のガチンコバトルセット。粘液ぶっかけ動きを封じ『ドッカンバッコン!』と岩塩戰槌で潰してしまう方が、岩塩刺突剣でチマチマ突くよりよっぽど早い。
そのぶん魔力も体力も大幅に消費してしまうが、どうせ自宅だ。ストレス発散の為にも、ここは思うさま暴れてやろう。どれ、ゆくぞ!!
…。
「あ、おかえり~ッ!ねぇねぇ見て!こんなに集まったよ!!」
「おお…!貝ヒモもカニの脚も、そんなにあったか!!」
二時間ほど暴れてカニダンジョン地下1層のモンスターを粗方片付けて戻ると、冷蔵庫ダンジョン前室には巨大カニの脚が山と積まれ、触手鎌が壁際に綺麗に吊るされて並んでいた。
そんな吊るされている触手鎌に、ピクシークィーンが魔法で乾いた風を送っている。なんというクィーンの贅沢使い。瀬来さんのお手伝いにと、クィーンほかピクシー数名を召喚しておいたのだ。
「ねぇねぇホラ!江月さんコレ食べてみてよ!」
「え、何それカニの脚?なんかクリーム色してるし、妙に溶けてるよ?」
瀬来さんが嬉々として差し出してきたのは巨大カニの脚の身。だがそれはダンジョンの分解吸収作用によって乾燥とトロけがいっしょくたになった感じで、じつに何とも言えない状態となっている。
「まぁまぁ、そう言わずに。まずは食べてみてよ!」
「え、もしかして瀬来さん生で食べたのコレ?ダメだよ生はさすがに。最低でも火を通さないと!」
「シズにスッポンの活き血飲ませた人が何言ってんのよ!それにダンジョンの力でここまで分解されてるんだから、もう寄生虫だっていないでしょ?」
「うむむ…」
確かに…。
地球に現れたダンジョンは地下迷宮や地下洞窟の形状をとっているが、小さい虫などはまったく見かけない。こんな環境なら普通に居そうなモノだが、そこに生息しているのはバスケットボールサイズのスライムや〇ンバサイズのゴキブリだ。
(ハッ…!もしやこの環境に適応した姿が、今のモンスター!?)
だとするとそれ以下の小さな生物は居たとしても、ダンジョンの分解吸収作用によって分解。自然淘汰されてしまうということか。
「なるほど…それも一理あるな」
「もぉ、そんなむずかしい顔してないでいいから食べてみてよ!」
「ふぅむ、そんなにオススメなのか。では頂いてみよう…」
そこでまずは、乾燥とトロけが一緒になったカニの身を指でつまんで裂いてみる。
するとカニの身なのに、裂け口から燻製にしたチーズのような良い匂いが…。そして裂けていく感触もまた面白い。モチッとしていつつもスルスルと裂けてゆく。これはまるで、とろけて裂けるチーズみたいだ。
「ね、はやく食べて…」
「あ、ああ」
急かす瀬来さんの言に一口分をプチッと千切って口の入れてみる。と、濃縮されたような美味いカニの味と共に、チーズのような香りとコクがじんわりと濃厚に広がってゆく。
「おお、コレは美味い…。なんというか熟成されていて、赤ワインとかに絶対合うヤツだ!」
「でしょう!うひひ…コレ食べたら絶対シズご機嫌になるよ。ねぇ、良かったわねェ~…江月さん!」
「う、そんな風に言わなくても…。あの時はホント悪かったって」
まぁ瀬来さんがこんな風に言うのにも訳がある。
基本、仁菜さんはほんとに機嫌の良い時にしかエッチをOKしてくれないのだ。そしてオレもジェントルメンであるからして、そんな彼女に無理強いをしたりはしない。
ただホントにどうにも治まりがつかなかった時に、代打みたいな感じで瀬来さんに頼みひどく機嫌を損ねたことがあったのだ。
「えぇ~別にぃ?ぜんぜん気にしてませんけどぉ~??」
いやいや、ソレぜったい気にしてるヤツやん!
「と、ともかくそのお詫びはまた何かのカタチで必ずするから!とにかく今は食材のほうを先に片してしまおう!」
「プッ…あはは!江月さんが焦って慌ててるぅ!やだぁ、何アレあれ恥ずかしぃ~~プププゥ!!」
「いや瀬来さん…、ほんとゴメンて…」
性格が猫タイプの瀬来さんは、ワガママ無理難題を言って相手の愛情度を測る時がある。
そうしてどれだけワガママを聞いてくれるかで、相手がどれだけ自分を愛しているかを測るのだ。だから偶にはこんな風に、ひどく煽ってくることも…。
でもそんな時には、決して怒ってはいけない。懐を大きく持って、そんなトゲごと相手を包み込む深い度量を見せねばならないのだ。
「しかしすごい量だ。万智もたくさん集めてくれて疲れたろ?あとでマッサージするよ。フワフワに蕩けて、すぐにグッスリと眠ってしまうようなマッサージを」
「ふ~ん、まぁ良いけど?それならさっさと片付けちゃいましょ」
そう提案すると若干は機嫌を持ち直してくれたのか、食材の整理をテキパキとはじめてくれる瀬来さん。いやはや、女の子と付き合うってのはなんとも気を遣うもんだ。
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