うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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ダンジョンスタンピード第二波 誤解

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「ヒトフタマルサン、現着げんちゃく。状況開始ッ!」
「「状況開始!」」

「む、とってもこれでは中に入れんか。よし、俺が行ってこよう。二人ついて来てくれ」
「「ハッ!」」

正門前で停止した自衛隊の車両群。

しかしバリケードのうず高く積まれ、工事用の重機がガッチリと防備を固めている学校の正門を装甲車の小さな窓から見やり、路亜九郎はこの場の避難者たちと話す為に外へと降りた。

ここ、シャーク女子高へと物資を届けに来た部隊は市ヶ谷に駐屯していた補給部隊であり、指揮官の他に対モンスターのスーパーバイザ―として路亜九郎じあ くろうが加わっていた。

「救援物資をお届けにあがりました!責任者の方に目通り願えますか?」

正門前で声を張ってそう告げるとなかで歓声があがり、すぐに真っ直ぐなハシゴとなった脚立が降ろされたのだった。

……。

そして、それが前日の事。


「化け物なんてぇ串刺しだぁ!」
「「「化け物なんてぇ串刺しだぁ!」」」

「涙の前にぃ武器を取れぇ!」
「「「涙の前にぃ武器を取れぇ!」」」

「Stand or Die!」
「「「Stand or Die!」」」

「Stand or Die!」
「「「Stand or Die!」」」

『『『ザッザッザッザッザッザッ…!』』』

(な、なんだ…?これはいったい…?)

部下たちへの指示やここの責任者の方たちとの打ち合わせを終え外の空気を吸いに出た路亜の前を、なぜか米軍式に歌いながら走り込みを行なっている女子高生たちが通り過ぎていく。


「「「いっせぇ~の…ヤァっ!!」」」
『『『すびしゅッ!!』』』
「みびゅううぅ~~ッ!?」

また別の場所では、学校を囲う鉄柵のすぐ傍まで接近していたヤスデのようなモンスターに対し、手製の槍を持った女子高生らが一斉に突きを入れ、その息の根を止めていた。

(何っ!?ただの高校生が…しかもあんな女の子達が?どうしてこれほどまでに出来る!?)

鉄の柵越しにモンスターを仕留めた女子高生たち。

そしてモンスターの侵入を阻む鉄柵の上には、車輪が互い違いになるよう重ね合わせた自転車が詰まれている。生徒たちが通学に使っていた自転車だろう。だがただ鉄柵の上に飛び出た突起にひっかけてあるだけなので、これでは簡単に動いてしまう。

しかし、それが胆だった。

風くらいでは動くことはないものの、モンスターが柵を越えようとすれば容易く崩れて鳴子の役目。と同時に容易には侵入させないための鼠返しの役目も担っていた。

(まったく、よく考えたモノだ…)

この学校は災害時の避難場所にも指定されている為、地面にも盛り土をして他より高く建てられている。つまり外の道路と学校の敷地とでは、大人の腰程も高くなっているのだ。

そんな鉄柵の根元にも、石垣の如く学校の机が並べられていた。これにより周囲からの視界を遮ると同時に、防御力も増し守りが固められているのである。

偵察部隊からも『しっかりとした守りの学校だった』との報告があがっていたが、実際それを目のあたりにすると想像以上の堅牢さである。

昨日は我々の到着に、この学校に避難されていた方たちも安堵の息をつき明るい雰囲気に包まれていた。しかしそうなると、今度は今まで昂ぶっていた緊張が緩んだ反動が出てしまうのか、多くの被災者たちはダラけたように何も行動しなくなってしまう。

それが今までに路亜が視てきた光景だった。

(だというのに、ここではどうだ…!?)

自衛隊の到着に沸いていた女子高生たちであったが、翌日にはそれでもなお『自分の身は自分で守るのだ』と言わんばかりに訓練に励んでいる。

そんな女子高生たちが再びモンスターに槍を突きいれるのを視て、路亜は過去に学んだ銃殺刑のやり方をふと思い出していた。

銃殺には複数人が銃を持ち、空包と実包を混ぜあわせ一斉に撃つ。

誰が殺したのかを解らなくする為だ。これにより銃殺刑を行なう兵士たちの精神的負担を減らすために考案された方法だが、ここの女子高生たちが一斉にモンスターに槍を突きいれるのも、モンスターとはいえ生物を殺すことへの忌避感を大勢で共有することで薄めたいのだろうと容易に推測できた。

しかしこれにはそういった精神的負担の軽減と共に、火力を集中し一撃で相手を沈黙させるという戦術的にも非常に優れた面も備えていた。

これには自衛官である路亜も内心で舌を巻いた。


だが、昨日この学校を今まで守っていたという者達たちを紹介された時には、さほど興味を覚えなかった。

一般人でありながらモンスターから人々を守った。立派な方たちだ。

しかしモンスターと戦い続けた路亜の眼から見れば、彼らは道路工事の関係者らしく重機の扱いには長けてはいたものの、個々人の戦闘能力がそう高くない事はひと目で解った。さらに重機の扱いに長けた者なら隊内にも大勢いるし、それが本職であれば当然でありなんら不思議な事でもないと感じた為であった。

だがそれよりも…、年端もいかぬ女の子達がこんな危機的状況下でありながらも、かように士気旺盛でいることの方が、路亜には不思議でならなかった。

学校の教頭は『以前のスタンピードで、この学校の子達は大人がいざという時にはまったく頼りにならないという事を知ってしまいましたから…』などと話していたが、にしても意識の差が違いすぎる。

そんな思案に暮れている路亜の前を、この学校を守っていたという重機の使い手たちがたまたま通りがかった。

「いやぁ~、大事に食べてたのに、アッという間に無くなっちまったな~」
「そりゃお前が食べ過ぎるからだろ。ああでも、また黄金虫のあんちゃんが美味い肴を持って来てくれないもんかな~」

「んッ…!?ちょっと、あなたがた今コガネムシと…?それにあんちゃんとは!?」

路亜に呼び止められた年配男性ふたりは、『あちゃ~!いまの聞いてたのかよ!?』といった態で顔をしかめる。その瞬間、金色の昆虫のような格好をしたある男の姿が脳裏をよぎる。

(そうか…そうだったのか!あの男がここにいたんだ。なるほど、それならば納得がいく。化け物あふれる被災した街を、ハロウィン作戦でモンスターに化け縦断した豪胆な男…。そんな男が、これほどまでに若者の指揮にも長けていたとはッ!!)

「い、いやぁ『自衛隊さんが来てくれなきゃ、そのうち虫も食べなきゃならないところだった!』って…、そう話してたんですよ!」
「そ、そうそう!いやぁほんとにありがたい!良く来てくれました!自衛隊万歳!」

しかしそんな声はもう路亜の耳には届かず、頭の中に思い描いた人物について思いを馳せるのであった。
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