うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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ダンジョンスタンピード第二波 報復

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憎まれっ子世に憚る!なんと不死身の政治家・大原黒太郎は、生きていた!

スーパー銭湯に担ぎ込まれ、頼みの飛張医師には匙を投げられた大原黒。だがしかし、その後に移送された病院で最新の科学医療によってメカニカルサイボーグとして復活…することはなかったが、なんとかその一命だけは取り留めたのだった。

しかし事故の代償は、あまりにも大きい。

大原黒の顔面は文字通り潰れ、右目は失明し頭蓋骨はアジア諸島の如くバラバラ。今はそれらをなんとか結びつけるために金属製のボルトが何本も顔から生え、ステーで繋げ固定がなされていた。

「ひゅ~…こふぅ~…、ひゅ~…こふぅ~…」

圧迫を避けるために顔に包帯は巻かれておらず、幾筋もの縫い傷とボルトの生えた醜い顔が透明な水差しに映っている。

そんな自身の姿に、いつもの大原黒ならば忌々しげに舌打ちをするところ。だが脳を損傷したせいでその舌も痺れてしまい、満足に口すらきけない状態になってしまっていた。

「ひゅ~…こふぅ~…、ひゅ~…こふぅ~…」

潰れた鼻腔には血膿が溜り、必然的に口呼吸になってしまう。しかしそれすらも上唇がないせいで口が締まらず、歯の隙間から息が漏れるというなんとも痛々しい姿。

イメージが大切な政治の世界でこうも醜い顔になってしまっては、来季の当選はまず無理だろう。それに自分の口で話せぬようでは、五月蠅い記者たちに皮肉の利いた冗談を返してやることも出来ないではないか。

そんな姿に、大原黒は自身の政治家生命の終わりを予感した。

(おのれ、なぜこの儂がッ…!!)

と同時にやり場のない怒りが込みあげてくる。いったい誰が悪い…。ヘボな運転をしたあの運転手か?それとも早く早く!などと急かしていた小心者のあの秘書か?

いや、彼らは大原黒が一喝すれば首を竦めて小さくなり、震え上がるだけの小物。そんな者達をいくら叩いたところで、この怒りが収まる訳がない。

大原黒は脳の損傷により朦朧とする意識のなかで、怒りを向ける矛先を必死に探した。

(ぬぅ…何が悪い!なにが間違いだった…?そうだ…ダンジョンだ!アレのせいで儂はこんな目に遭ったのだ…!お~の~れぇ~!あのバケモノどもめ~~ッ!!)

と、そこに大原黒の秘書が病室へと入ってきた。

「あ、先生!良かった!目を覚まされたんですね。で、でもなぜそんなに震えになられて…どうされたんですか?ああ、オシッコですね。いま!いま尿瓶を添えますからもうすこしだけ待ってくだギャ!?」

ブルブルと震える大原黒をみて、尿意を我慢しているものと勘違いした秘書が尿瓶を手に近づく。が、大原黒はそのネクタイをむんずと掴むとグイと引っ張り、顔を間近に近づけさせた。

「ひゅ~…こふぅ~…、ひゅ~…こふぅ~…」
「なッ?くる…し、せんせ…い」

片目になり顔から金属の生えた大原黒が、ネクタイで首のしまった秘書の顔を睨みつける。

「ぜ…ぬふ…、コ…ドへ!」
「う…ぇ!なん…です…せんせい…?」

「ぜぬふ!コドヘッ!!」
「ギャ…ッ!!」

今度は突き飛ばされて、壁際へと倒れ込んだ。だが動転しつつも、秘書はそれで主が何を求めているのかを悟ったのだった。

「ぜ、ぜんぶ…殺せとは?それは、ダンジョンのモンスターの事でございますか先生?」

歪んだ眼鏡を直しつつ秘書がそう問うと、興奮に肩を上下させている大原黒がわずかに頷いた。

「で、では先生…。それに対し先生のお力の、如何ほどを用いればよろしいのでしょうか?」
「ぜぬふ…だ、コドヘ…」

今度は片方だけ残った左目に憎悪の炎を青く揺らめかせながら、大原黒は静かに口をひらいた。

そのゾッとするような眼光に射竦められ、秘書は血の気の引いていくのを感じながらも何とか立ち上がり深々とお辞儀を返す。

「…わかりました。先生のお力を全て用いまして、ダンジョンの化け物どもを一掃するようワタクシの方で手配させて頂きます!」
「ゆへ…!」

こんな姿に成り果てようとも、今でも大原黒は現職の大臣。だがそれも重傷なのが周囲に知られてしまえば、それを理由にすぐにでも退けられよう。

それ故そうなる前に大原黒は、自分の持てるカードを全て使い切ってでもダンジョンに…、あのバケモノどもに復讐をしようと誓ったのだった。
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