うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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不安な平穏

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未曽有の大災害に襲われてしまった日本。

だが政府はここにきて急に「今週中にもダンジョンスタンピードを終結させる」と宣言し、自衛隊に無茶をさせ続けた。その結果、約束の日からさらに3日遅れで、ダンジョンスタンピード第二波の終結が改めて宣言されたのだった。

これにより一応の終息をみたわけだが、話はそれで終わらない。

スタンピードが終わったからといって亡くなってしまった人が帰ってくる訳ではないし、破壊されたインフラが即座に復旧するわけでもない。

そしてダンジョンスタンピード第二波に襲われたのは、なにも日本だけという訳ではなかった。

当然の如く世界中で起こったダンジョンスタンピードにより多くの混乱が生じ、日本には輸入で賄っていた物資のほとんどが入って来なくなってしまったのだ。

そうなると疲弊した人々を次いで襲うのは、インフレの波。物資が欠乏したことで、物の値段がどんどんと上昇していってしまうという事態が待っていたのだ。

テレビの報道番組では定番である災害時の悲喜こもごもと共に、今後の生活がより厳しくなることについてを言及していた。

『ええ、ニューヨークにあるこちらの港では港湾関係者の多くがスタンピードによって被災し、その人手不足によって荷物の積み下ろしがほぼ出来ないといった状況に陥っています』
『富山さん、画面の後ろに映っている貨物船の多くが、入港できずに順番待ちをしている船とみてよろしいのでしょうか?』

『はい、そうです。このようにですね、入港できない船が周辺に停泊して順番を待っている。といった状態が続いています』
『そうですか、ありがとうございました』

…。

『きゅ(スコォ…)』

「コーチ、まだ断水なおりませんね」
「ふぅむ、修理の為の断水だといいのだけどな~」

キッチンの蛇口をひねり、まだ断水が続いている事を確認した瑠羽が部屋へと戻ってくる。そう、オレは瑠羽を連れアパートに戻ってきていた。

糧品宅には無事瑠羽パパも戻って来たので、あとを仁菜さんと瀬来さんに任せ冷蔵庫ダンジョンの状態を確認しに戻って来たのだ。

ま、日々しっかりと間引きを行ない地下5層と10層のボス級モンスターを退治した冷蔵庫ダンジョンは、ダンジョンスタンピードの影響はほとんどなかったようだけど。

「スタンピードの時も食べるものが無かったのに、終わっても食べるものがないなんて…。大変ですね」
「そうだな。幸いオレ達には食べられるモンスター食材があるからいいけど、普通の人達はたいへんだ」

食糧確保のためにカニダンジョンは糧品宅に残る仁菜さんに預けてきた。うむ、仁菜さんならばちゃんと考えて管理してくれるだろう。

「それでさっき万智ちゃんから連絡のあったお店に、食材を届けに行くんですね」
「まぁ、そういうことだな」

アイシャドウの良く似合う居酒屋紫の大将と、コミュ能力つよつよの瀬来さんはいつの間にか連絡先を交換していたのだ。ま、瀬来さんのことだから仁菜さんを連れてまた飲みに行こうとでも思ってたんだろう。

だがそんな瀬来さんの通信端末に、大将から『食材が手に入らなくて困ってるの。だからまたアレを分けてくれない?』と連絡があったそうな。

まぁアレとは言わずもがなの、モンスター食材。

そんなモノを金を払う客に出していいのかと思わなくもないが、オレ達もいろんなとこでいろんな人に食わせちゃってるから、まぁ今更だな。

「ま、行く時はいっしょに出かけよう。と、その前にオレも取引先に連絡を入れてみないと…」

そしてオレの取引先とは真田薬品さんの事。「こんな大手と個人で取引できるなんて、ダンジョンさまさまだな」なんて個人的には思ってしまう日本の大企業だ。

だがスタンピードの影響か、以前に納品した分のお金が未だに入金されていない。

まぁ大企業であれば大勢人も抱えているだろうから、その分混乱も大きいのだろう。そう思ってずっと待っていたのだが、さすがに心配になってきたので知り合いへの安否確認といった態で連絡を入れてみることにした。

『はい田所です。あ、江月さんですか!いやぁ無事だったんですね!まぁ、ダンジョンに潜れる江月さんがどうにかなっちゃうとは、私も思いませんでしたけど』
「はいおかげさまで。田所さんも無事のようでなによりです」

『いえ、私も今日ようやっと出社したんですよ。はい、いままではずっと避難所におりまして。いやぁ、あの生活は厳しかったぁ~…』
(ふむむ、あの礼儀正しい田所さんがここまで態度を崩すなんて。それはさぞ避難所生活が大変だったんだろうな)

『娘の通っていた学校に家族で避難していたのですけどね。そこの生徒に、またとんでもない子がおりまして。ええ、避難してる人達がウルサイとかで、避難所になっている場所にバケモノの首を投げ込んだりするのですよ』
「ブフッ!?」

『いやほんとに、生きた心地がしませんでした。あ、だいじょうぶですか江月さん?』
「ゴホッ、ゴホッ…!ああいや、なんでもありません大丈夫です。それはまた、災難でしたね…」

(ていうか田所さん、シャーク女子高にいたんかい!もう、そうと知ってればカニチーズグラタンとか真っ先に持ってってあげたのに)

『私は慣れない生活に体調を崩してしまい、ずっと体育館のなかで寝ていたのですけどね。娘はこのたいへんな時に妖精がどうとか言ってハシャいでいまして、本当にもう恥ずかしくてたまりませんでしたよ…』
「はぁ、それはまたご苦労をされたようで、なんとも大変でしたね…」

ごめんなさい、それはたぶんオレのせいです。

『あ、そうそう!それでですね、申し訳ないのですがまた至急で素材の方を都合して頂けますか?』
(ふむ…。植物ダンジョンのドロップは無理だけど、スライムのドロップなら前室に猿たちが集めてくれたのがあるか…)

「え~、ではスライムのドロップであれば直ぐにでも都合がつきますが?」
『そうですか!では至急おねがいします。実はここだけの話にしておいてほしいのですが、自衛官の方々がここにきて大勢負傷してるらしいのです』

「なんと、それは本当ですか?」
『はい。そして我が社の回復薬は、一日一本が使用限度。なので深手を負った方には毎日服用していただき、その傷を治す必要があります。ですので数がまったく足りていないのですよ』

「なるほど、では至急届けるようにいたします」
『それは助かります。ではお待ちしてますのでどうぞよろしく』

むむむ…。なんと、そんなことになっていたのか。
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