うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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冒険者アプリ

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納品した品の支払いが遅れていると提督に詫びの電話を入れると、なんと今後の取引については断られてしまった。

なんでも今回のスタンピードでモンスターの恐ろしさを目の当たりにした地主さんが、サバゲフィールドにある植物ダンジョンを国に報告することを決めてしまったそうだ。

『ジャング、そういう訳なんですまんなぁ』
「ああいえ、提督が謝る必要はないですよ」

そういった事情なら致し方ない。

元々植物ダンジョンはサバゲーマーという戦闘などに強い興味を持った連中の巣みたいな場所に発生したから、今まで国に報告されなかったのだ。地主さんも提督の学生時代からの友人で、半分は好意みたいなモンでサバゲフィールドを貸してくれてたみたいだし。

「じゃあお金の方は入金があり次第そちらにも振り込みますから。ええ、はい。じゃあまた何かありましたら、それじゃあ」

電話を切り、自室の天井を仰ぎ見る。ふぅ…せっかくの貴重な収入源がなくなってしまった。

「残念やったねぇ」
「勿体ないわよね。でもあのスタンピードのあとじゃあ、仕方ないかぁ~」

うちに遊びに来ている仁菜さんも瀬来さんも、能力者特有の鋭敏化した聴力で電話の内容を聞いていた。

「ふぅむ、ただ真田薬品の田所さんも、あのダンジョンで獲れるドロップには喜んでくれてたからな~。あれが無くなるのは惜しい」

嘆いていても仕方のない事だが、惜しいものは惜しい。と、通信端末をしまおうとして、冒険者アプリにメッセージが届いてるのに気が付いた。

「なんだ?冒険者アプリがなんか受信してるぞ?」
「え、なになに?見せてェ~」

すると珍しモノ大好きの瀬来さんが、通信端末を覗きこんでくる。

解説しよう。冒険者アプリとは通称で、正式には特異迷宮入場免許取得者用グローバルDXコミュニティという、なんかとりあえず横文字つけときゃええやろっていうアホな官僚が考え付きそうなクソダサネーミングのアプリである。

これは日本政府が特異迷宮入場免許取得者に登録を義務化したアプリで、これを通信端末にインストールするとGPS信号を発信し常に居場所が日本政府にバレてしまうという非常に嫌な代物。

でもまぁダンジョン能力者による犯罪が増加してきている現状では、そうでもしてダンジョン能力者に鈴やら首輪をつけないとやってられないという事情もあるのだろう。

そしてこのアプリのベースは宅配代行企業の使っていたモノらしく、特異迷宮対策省から『〇〇公園にゴブリンいるんやけど誰か倒してくれへん?』と討伐依頼なんかが出されると『あ、俺いま近くだし倒してくるわ』なんて感じで、特異迷宮入場免許取得者が向かうというシステムも備わっている。

うん、そういった意味では実にスムーズ。まさに現代電脳冒険者ギルドといった感じだ。ただ箱だけは出来たものの、まだ法整備的な部分までは詰められていなかった筈…。

「なになに?スキル保持者によるバトルトーナメントを開催し、国民にひろく特異迷宮入場免許取得者の素晴しさを認知してもらいこれからの…ってなんだこりゃ?」
「ふ~ん、これはダンジョン免許取得者を増やそうっちゅう魂胆の広報活動やねぇ」

すると通信端末を覗きこんできた仁菜さんが即座に内容を理解。

「しかしなんでまたそんなのの申し込み要項みたいなのが、オレに送られてくるんだ?あ…」

そういや免許取得時のアンケートで、催しがあった時には参加を希望しますか的なことを訊いてる質問があったっけ。ハイに〇してたわオレ。

「へぇ~面白そう!もちろん出るんでしょ江月さん!」
「いやいや出ないよ瀬来さん。人前って苦手なんだから」

「え~でもココ見てよ。参加するだけでも50万だって。それに一勝する度に30万加算だって!」
「む!?現状でその金額は非常に魅力的だが、うむむ…」

「もし目立つの嫌なら一回戦で負けて参加賞だけもろたら?一日で50万もらえる思ったら、最高やん」

ふむ、そういう考え方もあるか。その瞬間だけ恥かいても、50万の実利があれば万々歳と。う~む、実に仁菜さんらしい考えだな。

「でもこんなに条件が良いなら、きっと応募も多いんじゃない?当たるも八卦!もう参加しちゃいなよ、えい!」
「「あ」」

ページを進め最終確認のとこまで読んでいたのだが、最後のOKボタンを瀬来さんがポチってしまった。

「もぉ何しとるんよ万智ぃ」
「ごめ~ん、手がすべってぇ~」

「いや今、おもいっきり、えい!って言ってたよね…??」

覆水ドントルックバック。いや違う、盆に返らずか。ともかくオレのスキルバトルトーナメント申し込みは、てへぺろしてる瀬来さんによって為されてしまったのだった。
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