うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

文字の大きさ
352 / 660

ツチノコ

しおりを挟む
「ともかくその辺の事も含めて相談するのに、一度休憩いれへん?」
「そうだな、そうしようか」

仁菜さんが良いタイミングで休憩を提案してくれたので、それにのって血の匂いのしない風上に移動。死体の処分はレッドスライムに頼み、水筒に入れてきたまだあったかいお茶で一息入れる。

「ゴブリンの大繁殖かぁ。ほんと頭痛くなっちゃうような問題よね」
「ああ」

ゴブリン。ヨーロッパの神話や伝承では悪い妖精、邪妖精と分類されるモンスター。

あまりおおっぴらにはされていないが、スタンピードによって地上に溢れ出たモンスターは各国の政府が捕縛し研究されているという。それによると、やはりゴブリンは繁殖力の高い生物だそうな。

「どうしよう…、ねぇどうしたらいいと思う江月さん?」
「う~む、理想は山をウロついてるゴブリンを根絶し、発生源になっているダンジョンを潰せればいいんだろうけど。果たしてそれがオレ達にできるかどうか…」

「せやねぇ、うちらの手に負えるかどうか。そこが問題やね」
「そんなぁ~」

ダンジョンモンスター地上で繁殖しちゃうかも問題。これは今までにも様々なメディアで取りざたされている問題だ。身近で有名なところでは、狂暴な獣鼠。

コイツはすでに、地上での繁殖が確認されてしまっている。

だがいかんせん。生息地として地下の下水道深くに潜まれてしまっているので、手の出しようがないのが現状。都内でも各自治体で生息領域になっていそうな場所に毒餌を置いて対処しているが、あまり芳しくないようだ。

他にも水の中やこういった山奥など人が容易に干渉できない場所は、モンスターの温床になってしまう可能性が非常に高い。

現に都内を流れる川でもモンスターの目撃情報は頻発し、多摩川はタマゾン川。荒川や江戸川もアラル川やエドル川なんて呼ばれる始末。なによりオレが江戸川で巨大鰐に襲われた当事者なので、あんなのが殖えでもしたらホントにたまったもんじゃないと思う。

うん、外来生物の問題は以前から度々取りざたされてきたが、相手がモンスターではその脅威度は段違いだ。

「…でもさ。ここまですっごく順調だったじゃない?きっと私たちだけでも大丈夫だよ。もう鬼でもツチノコでも、出てきなさいってもんよ!!」

いや、瀬来さん。鬼はともかく、ツチノコって強いの…?

「でもそないなモンスターも、ホンマにおるんやろか?名前だけは有名やけど」

そうだな、あまり深刻な話になり過ぎても気疲れするだけ。ココは少し、気分転換に別の話をしよう。

「うむ、ゴブリンなんてモンスターが実在する以上、そういったモンスターのいる可能性も高まったね。でもダンジョンが発生する以前に存在してたって話は、ほとんどが人の誤認だったんじゃないかな」
「へ~、そうなの?」

ま、そう言ってるオレが、今やなぜか鬼婆娘やニホンオオカミ娘なんて不可思議な存在と婚姻関係にあるわけだが。

「う~ん、そうだな~。たとえばツチノコでいえば、濡れた猫誤認説というのを有力候補として推したいな」
「え、ネコ?蛇とネコを見間違うの??」

ツチノコ=猫という説をあげると、瀬来さんは大きく首を傾げる。

「そうさ。猫も蛇も、どちらも闇夜を見通すにの縦に細くなる瞳孔を持っているだろ?だから目だけを見ればそっくりだ。そしてツチノコの特徴というのを、よく思い出してごらん?」
「え~、そんなの覚えてないよ」

「ほんなら、ウチが調べたるよ。…えとな、体長は30センチメートル~80センチメートル位で、体色は黒褐色に焦げ茶色、黒、灰色。腹部は黄色で背部に斑点有りって…、なんや結構こまかいなぁ」

通信端末を取り出した仁菜さんが、ツチノコに関する情報を読み上げてくれる。意外と仁菜さんも、こういうことに興味を持つようだ。それとも気分転換に付き合ってくれてるのかな。

「ありがとう仁菜さん。でもそれ、猫の特徴にも当てはまるよね?」
「あ、そう言われればそうやね」

「でもほら!ビール瓶くらいの胴から、三角形の頭がちょこんと出ているって書いてあるよ。それにイビキもかくんだって!」

興味をひかれた瀬来さんも仁菜さんと並んで座り、通信端末に表示された情報を読み上げる。

「瀬来さん。濡れた猫が寒くて箱座りしてたら、ちょうどそんな体型になると思わない?それに猫がグルグル咽喉を鳴らすのだって、聞きようによっては鼾にも聞こえるよ?威嚇の鳴き声もシャー!って、蛇の威嚇を模したものだといわれてるしね」
「えぇ~…!でもネコと蛇なんて、見た目がぜんぜん違うじゃない!」


「ハハハ、だから濡れた猫なんだよ。ずぶ濡れになった猫は、かなり見た時の印象が変わるから」
「そういえばそうやね。シャンプーで身体洗われとる猫とか、別の生き物みたいやもんなぁ」

「そうだな、例えばこんな山奥で独りでいた時に、雨や夜露に濡れた猫を見たとする。その毛は濡れて、ペッタリと身体に張り付いている。それが見様によっては、艶のある鱗に見えなくもない。なによりこんな山奥に猫なんている訳がないという先入観が、猫を猫として正しく認識できなくなってしまう原因になるんじゃないかな?」
「う~ん、まぁそう言われると…」

「そもそもそういった目撃情報というのが、一瞬チラッと姿が視えたというのがほとんどだよ。コレが捕まえて5分も10分もじっくり観察できました~なんてケースなら、そんな見間違いまず起きないはずだろ?」
「せやなぁ。それだけ時間があったんなら、どないな生き物なのかよく観察できるもんな。それやったら、蛇か猫かの区別くらいつくやろ」

「そういうことだね。背の高い草の中で濡れた猫が飛び跳ねたのなら、脚がよく視えずにツチノコが跳ねたようにも見えたろうし。斜面を駆け下りていった濡れた猫を視ても、ツチノコが転がり落ちて行ったように見えてしまったのかもしれない。なによりこんな山奥に猫なんかいないという先入観が、おおきく認識を阻害する原因になってしまう。ま、あくまでも可能性のひとつとしてだけどね」
「ふふ…、幽霊の正体みたり枯れススキやね」


「お、おもしろい言葉を知ってるね仁菜さん」
「小さい子がお店の手伝いしとったら、面白がって歳のいったオッチャンらによく声掛けられてたんよ。きっとそないな時に聞いたんやろね」

なるほど、そういうことか。そういった両親以外の大人と小さい時から接していたから、仁菜さんは年齢の割に大人びてみえるのだろうな。

「コォチ、なんや今うちの歳のこととか考えへんかった…?」
「え、ああいやッ!瑠羽も瀬来さんもみんな同じ歳だろ?それなのに知識が深いな~って感心してたんだよ」

「そう?そんならええんやけど?」

う~む、今日の仁菜さん。怖いくらいに鋭いな…。でもソレ、ススキでも柳でもなくて、枯れ尾花だからね。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

処理中です...