うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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発動

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念のため一度階段付近までさがると、粘液による防御陣地を構築。そう、ダンジョンではほんのわずかな油断でも、命取りになりかねないのだ。

「ふぅ、アッツ~イ。今のうちに潤滑液の交換しとこ~っと」
「せやねぇ、動いてすこし暑ぅなったしなぁ」

瀬来さんと仁菜さんは休憩を取るべくマスクを解放して顔を空気に晒すと、足元に設けてある粘液排出口から温度の高くなってしまった潤滑粘液を排出する。これは魔力によって生み出した粘液の温度を変更させるより、冷たい粘液を新たに生み出した方が魔力効率がいいためだ。

「ほらほらダメだよ。ふたりとも粘液膜が張られたからって油断しない。休憩する時は陣盾の陰に入ってからね」
「「は~い」」


ずっと移動を続けていたから、ふたりとも少しスーツに熱がこもっていたようだ。

防御力が高く酸にも強いモンスターの素材性スーツ。でも気密性も高いため熱がこもってしまうのが難点でもある。それを潤滑粘液の交換により、熱排出しているわけだ。

そしてさて、オレがダンジョンに潜り始めた時から出来るだけ構築するべく心掛けている防御陣地。

コレのあったおかげで助かったことは一度や二度ではない。なので防鳥ネットや物干し竿で構築していたモノも今ではスキルを用い、粘液により通路をすっかり塞ぐ膜と岩塩や赤蠍外殻で出来た陣盾で構築している。

ま、雰囲気としては戦国時代の陣幕げな感じか。

「さてと、どれマサル。ここなら安全が確保できたから、【電気】のスキルオーブを使ってみようじゃないか」

腹部に粘液で貼りつけておいた岩塩盾の腹巻を一度外してやり、マサルにスキルオーブの使用を促してみる。ま、慣れてないと粘液でふやけちゃったりするからな。

「ホラ、ちゃんと持てよ?そう、それで力の解放を念じてみるんだ」
「ぶっふふん…」

「ああ違うって。おい、どこ行くんだ?」

せっかくオーブを持たせてやったのに、マサルはそれを放り出し休憩する仁菜さん達の方へ跳ねていってしまう。

「やだ、なにマサル?あなたも喉が渇いたの?もぉしょうがないわねぇ」

放り出されたスキルオーブを拾いあげると、こちらを見ていた仁菜さんと目があい苦笑される。

「ふふ、なんや喉が渇いとったみたいやねぇ」
「どうやらそのようだ。もとは乾燥した地域に住んでる動物だろうから、渇きには強いはずなんだがなぁ」

マサルはそんなことなどお構いなしで、瀬来さんにペットボトルから器に注いでもらった水をぐびぐび飲んでいる。

「よしよし、もういいか?なに、今度は腹が減ったって??ん~…野営の準備はしといたけど、おまえがついてくる前提で用意してないからな~。キャベツやレタスくらいしかないぞ?」
「ぶっふふんッ…!」

空間庫から玉のキャベツを取り出すと、オレからむしりとるように奪ってバリボリと食いだすマサル。

「ひゃぁ~、豪快やねぇ」
「う~む。CMでも貰えそうな食いっぷりだが、ボロボロこぼしすぎだぞ。お爺さんが丹精込めて作った作物なんだから、もっとキレイに食べなさい」

そうして結構な大きさのキャベツひと玉をぺろりと平らげたマサルに、改めて【電気】のスキルオーブを渡してやる。

「ホラ、もう一度だ。しっかり持ってな。なんかこうエイッ!て感じでやってみろ」
「……」

「…て、おまえ。なんでそんなやる気なさそうな顔するんだよ?」

またも興味なさそうにポイしようとする前足に、スキルオーブをギュッと握らせてやる。

(ほら、はやく使えって。瀬来さん仁菜さんにも渡さずに、守ってやったんだぞ)

だってねェ。相手がなんのことかちゃんと理解してないからって、ソレをいいようにしちゃうってのはやっぱり違うと思うわけよ。

そう、それはたとえるならば「失くさないように預かってあげる」と言われたまま、一度目にしただけで右から左に消えていってしまったあの幼き日のお年玉のように…。

そんな思いが通じたのか。マサルはしばらくスキルオーブを持ったままぴすぴすと鼻を近づけ匂いを嗅いでいたりしたが、遂にパクリと丸飲みにした。

「たべちゃった!」

そんな瀬来さんの声が響くなか、喉を通過し胃に降りていくスキルオーブがマサルの身体の中で輝きだす。

『(きゅわ~、ぱわわ~!)』

その姿は下からライトアップされて、食いしん坊カンガルーなのにどこか神々しい。人間だったなら「こ、この力は…!?」的な演出さながらだ。

うん、驚いた。そんな発動法もあるんだね…。動物がどんな風にスキルオーブの力を解放するのか興味あったけど、ちょっとビックリだよ。
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