うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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電撃鼠

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山ダンジョンの地下5層におりると、そこには電撃鼠スタンラットがウロついていた。

まぁ上の地下4層にいたのと同じヤツ。というかここにいたのが地下4層までのぼって行ったのだろう。ちなみに感電を英語で表記するとelectric shockになるが、コレだと呼び方が長くなるしショックラットというのもピンとこない。

なのでスタンガンにちなんで、スタンラットと呼ぶことに落ち着いた。

「へぇ、あんな淡い色合いのもいるんだ」
「冬なら首に巻くのに、あったかそうで丁度良さそうやなぁ」

うん、瀬来さん達が言うようにその特徴はなんといってもカールした長い毛。

ふわふわのもこもこに埋まっているため目も耳も視えず、遠目にはどっちを向いてるのかすらわからない。そんなバスケットボール大のおおきな毛玉が、電撃鼠というわけだ。

色味は野生動物にありがちな鼠色と雉柄もいれば、白や淡いパステル調でパープルやピンクなんて個体までいて色鮮やか。

「ふ~む、確かにゴワゴワでトゲトゲした剛毛の超巨大猪の毛皮より、コッチの方が需要がありそうだな」
「う~ん、そうね。猪の毛皮は冬場おしりの下に敷くには丁度良さそうだけどねェ。母屋の方は造りが古い分やっぱり冷えるから」

サンプルとして空間庫に持っていた超巨大猪と今さっき倒した電撃鼠の毛皮を比べてみても、明らかに電撃鼠の毛皮の方が手触りが良い。

「お、またきたようだな。よし、では今度は捕まえて、もうすこし詳しく観察してみよう」

白い毛色をした電撃鼠が跳ねながら近づいてきたので、構えをとって待ち受ける。

「ギュヂィ!」
「おっとそうはいくか。おまえの電撃などオレ達には効かんぞ」

下腹部めがけ飛び込んできた電撃鼠を両手でガッチリキャッチ。

その際に感電させようとパチパチ放電する音が聞こえるが、電気はスーツの表面を伝ってダンジョンの地面に流れてしまっている模様。なのでいくらパチパチしたところで、すこしもビリビリ感電しない。

で、捕まえた電撃鼠をひっり返してみる

「…なるほど。足先はカンガルーみたいに長いな。これじゃ分かりにくい筈だ。ネズミはネズミでも、コイツはトビネズミ系のモンスターのようだ」
「はぁ…それで区別がつき難かったんやね。あ、尻尾もけっこう長いんやねェ。いまも一生懸命地面に尻尾伸ばしとるとこみると、尻尾をアースか何かにしとるんやろか??」

「どうやらそのようだね。それにホラ、このカールしてる長い毛は、電気を蓄えるのにも適しているようだぞ」
「普通の衣類でも、冬場は静電気が起きるもんやしね。このネズミちゃんはスキルの他にも、電気を扱うのに適したカラダを持っとるんやねェ」

なるほど。スキルと肉体構造の相乗効果があって、はじめて威力のある感電攻撃となるわけか。どうりでマサルの電撃がたいしたことないわけだ。だってアイツ、全身に毛は生えてるけど帯電する程長くはないもんな。

ただこれだと、脅威度的にはうちの冷蔵庫ダンジョン地下3層にいる病鼠の方が数段恐ろしい。

アイツに噛まれたら、いったいどんな酷い病気をうつされるかわかったもんじゃないし。アイツらはホント病気が怖いから、ほとんど調べてないんだよな。


……。


結局、その後の探索は地下5層までで止め地上に戻ってきた。

理由は地下5層にはボス級が潜んでいる可能性があったので慎重に探索して時間をくったのと、なんだかんだ電撃鼠からのスキルオーブドロップを狙って、仁菜さん瀬来さんもそっちに気が向いてしまった為。

ボスには出遭わなかったけど、注意力散漫な時には思わぬ事故に繋がってしまうかもしれない。

そう判断して地上に戻ってきたけど、外はまた夕焼け前といった頃合いだったので良い時間に帰ってこれたろう。別に急ぐことはないので、じっくり攻略していけばいい。

…。

その後、山を下りてから車で私服に着替えると、ホームセンターへ買い物へ。

お爺さんに肥料の買い物も頼まれてたし。そうしてホームセンターに着きトイレで用を足し戻ってくると、例によってまた息をするかの如くふたりがナンパされていた。

「キミら、この辺じゃ見ない子達じゃん」
「どっからきたの~?ねぇ東京?」

(ありゃりゃ、またか…)

自販機の据えられている前のベンチで休憩している仁菜さんと瀬来さんに、若い男の二人連れがアタックしている。

ダンジョンから出て脱力し、今はのんびりとした雰囲気の美女ふたりを見かけ、これはハンターチャンス!とでも思ってしまったのだろうか。

(う~む。まぁでも、悪いことは言わないからやめておきなさい。獲物とみればモンスターの首すら素手でねじ切ることの出来るふたりだよ?とてもキミらの手に負える子達じゃないからね)

と、そんな事を考えながらゆっくり近づいていったのだが、オレより先に別の若い男が血相かえてその場に駆け込んでいった。

「おい、おまえらよせ!そのひと音夢さんの恋人だぞ!」

「え、あのミチコじゃなくて?てことは前に、音夢さんがフラれたっていう噂の?」
「馬鹿っ!そんなこと言ったら音夢さんに睨まれるぞおまえ!」

「マジかよ、さいきん音夢さん機嫌悪かったのって、この女のせいかよ」
「……」

あ、マズイ。この女呼ばわりは良くないな。

傍目には解らなくても、仁菜さんのスマイルがたったいま、氷の微笑に変化したぞ。そして音夢くんの名前が出た途端、瀬来さんの顔からは表情が消え、サバクスナギツネのように…。

(あ~キミたち、もうそこは危険区域なったから、今すぐ避難しなさい)

にしても音夢くん。顔が広いのかそれとも仲間が多いのか。ちょくちょくその名を耳にするな。
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