うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

文字の大きさ
436 / 660

dead & reverse

しおりを挟む
目に滲みる太陽の光。そして、頬を撫ぜる涼しげな風。

「ヒィーヨ!ヒィーヨ!チチチチ…」
「あぁ、鳥の鳴き声…。音が、聞こえ…。そうか、生き返れたのかオレは…ごほっ!?ごえっふ!えっふッ!」

真っ白に燃え尽きることもなく、馬糞で足を滑らせ死亡したオレ。

しかしどうやら塩太郎とピクシークィーンの助けにより、無事復活ができたようだ。

(でも、視界が悪い…。それに身体も動かない??)

ただ眼はしっかりと開いているはずなのに、景色が映らずなにかの影が視界の大半を占めている。それに起き上がろうにも手足に痺れが走り、思ったように動かせない。

(ああ、そうか…)

どうも馬に蹴られたせいで、身体の方も脳内出血を起こしたりと色々不味い状態らしい。

だがそんな手も覚束無いオレに代わり、義足から這い出てきたレッドスライムが万能回復薬を口元にそえてくれる。ああ、いざという時の為にと、レッドスライムに預けていた万能回復薬が早速役に立ってくれた。

(スマン…。助かるよレッドスライム)

塩太郎とピクシークィーンだけでなく、まさに手足なって働いてくれるレッドスライムにも大感謝。

そうしてレッドスライムの介護を受け、回復薬を飲み下す。すると甘い液体が喉を通り過ぎ、胃の腑に落ちて待つこと5分…。視界を覆っていた影は次第に薄くなって消え、痺れていた手足にも力が戻ってきた。

「ハァ…。よし、どうやらもう大丈夫のようだな…」

ゆっくりと肘をついて状態を起こしてみても、カラダに痛みもないし視界がグラつくこともない。脳内に起きていた出血にも、万能回復薬がしっかりと効いてくれたようだ。

「おまえ、よくもやってくれたな」
「ブルル…」

オレのことをおもいきり蹴とばしてくれた黒い馬。

ソイツの尻を見上げつつも、身を転がしてエスケープ。また蹴られては堪らないので、蹴りの攻撃範囲からは逃れておく。で、そこからようやく起き上がろうとしていると、不平混じりにオレを呼ぶシャークの声が聞こえた。

「お~い!なにやってんだよジャングぅ、もう仔馬生まれちまったぞ~?」
「ああ、スマン。コイツの馬糞で滑って、転んでしまったんだ」

さすがについさっきまで馬に蹴られて死んでました、などとは言えない。うん、死因としてはとっても恥ずかしいし。そこで顔についてた血は手で拭って隠し、軽くおどけて誤魔化した。

「うわ、きったねェ!なんだよジャング、糞まみれじゃねぇか!」
「む…?あぁ、参ったなこりゃ…」

馬糞で転倒した上に盥の水をぶちまけ、さらにその上を転がったのだ。おもいっきりウンコまみれになってしまった。まぁでも、コレは致し方ないだろう。

そうだ。オレはたった今、ウンコマンとして復活したのだ。

「うへへ、ウンコマンだぞぉ~~」
「ぎゃ~~~ッ!おいばかっ!ふざけんな!糞まみれで近づいてくんなよッ!」

そうして緑美しい牧場に、シャークの汚い悲鳴が木霊したのだった。


……。


と、なんだかんだと色々あったが、仔馬は無事生まれオレはウンコマンとして復活した。

シャーク達の話によれば、お爺さんは途中で詰まってしまった仔馬をもう一度母馬の腹に押し込め、出産のやり直しをさせたそうな。うむむ、なんという荒業。でも道理で難産だという話だったのに、あっさり生まれた訳だ。

しかしそれも、人生経験豊富なお爺さんなればこそ。他の者ではこうはいかなかったろう。

帰りの車中でもシャークと結月ちゃんは、その様子を興奮気味に語っていた。ふたりも女性だけあって、出産については思う事があったのだろう。そんなふたりがいい経験のできたのなら、幸いだ。

で、ウンコマンとして復活したオレはというと、ステータスに変化があった。

    現在   前回
レベル  19    19
種族:  人間??
職業:教師    教師

能力値
筋力:   740  740
体力:   753  753
知力:   671  671
精神力:  702  702 
敏捷性:  638  638 
運:    712  712 
やるせなさ:234  234

加護:
【塩精霊】奇御霊・【小妖精女王】幸御霊・【赤粘性生物】準奇御霊・【空間猿】眷属・【格闘蛙】眷属・【大蛞蝓(オオナメクジ)】眷属

技能:
【強酸】2・【俊敏】2・【病耐性】7・【簒奪】・【粘液】7・【空間】6・【強運】1.4・【足捌】・【瞑想】・【塩】5・【図工】・【蛆】2・【女】・【格闘】6・【麻痺】4・【跳躍】9・【頑健】8・【魅惑】

称号:
【蟲王】・【ソルトメイト】・【しょっぱい男】・【蟲女王】・【女殺し】・【ムシムシフレンズ】・【ダンジョンクリアマン】


レベルはアップもダウンもしていないので、能力値的な変化はない。

ゲームのようなデスペナルティによる弱体化は、起きなかったようだ。ただ日々のバイオリズムなんかで微妙な上下動はあるのだろうけど、能力値のカウントはレベルに変化があった時だけのよう。なのでホントのところはまた数値が変化するまで解らない。そして同様に加護や技能なんかも変化なし。

だが、どういう訳か種族が『半妖人間』となっている。

半分怪しい、と書いて半妖…。

そういう意味なのだろうが、これ如何に??オレは、人間をやめてしまったのだろうか?それとも人間とついてるから、まだ辛うじて人間なのだろうか?

(う~む、解らん…)

ウンコまみれになった汚れは川に飛び込み流してきたが、まだ匂うとのことで一番最後にまわされた風呂に浸かり、独り考えてみる。

五右衛門風呂に浸かった身体にはなんら変化は無く、別に角や尻尾も生えていない。ジッと動かぬことで静めた湯に映る顔も、口が裂けたり目玉が増えたりもしていない。

「ふ~む。どっからどう見ても、変化はない…よな?」

種族名が変わったことには、面喰った。が、これならば女性化した時の方が、よほど衝撃的だった。

(ということはアレか。この変化は縁的なことが要因か?)

まずもってオレは、塩の精霊である塩太郎や妖精であるピクシークィーンと魂の共有化をしている。な感じで互いに魂を分け合いっこをしてるので、そういった意味ではオレもまた精霊であり妖精ともいえる。

さらにいえば、妖怪である鬼婆娘やニホンオオカミ娘がオレの嫁であるため、同じ一族になったという意味でいえば、オレも妖怪的な方面に籍があってもおかしくはない。

「ふ~む…、そういったアレコレが総じた結果、今のオレを表現するにふさわしいのが半妖人間という種族名なのか?」

ただ、復活した時はダメージを負っていたからよく解らなかったが、こうして落ち着いてみるとなんとなく変化は感じる。

それは大きな変化ではないものの、わずかではあるが視界がクリアでスッキリとした感じ。それは眼鏡を新調した時のような気分にも、どこか似ている。

「うむむ…。どうもスッキリしないが、気分はすごくスッキリしてるんだよな~。なんだろうコレ…」

ま、以前よりも、より塩太郎とピクシークィーンの感情の波がハッキリと感じられる。

だから、コレはきっといい事なのだと前向きに受け止めておこう。うん、とりあえずそれ以外には、どうしようもないもんな。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

処理中です...