うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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research facility2

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大好きなアニメ作品の監督ソックリな豊波チーフの姿に、すっかり舞い上がってしまったオレ。

それゆえ渡した蟲王スーツがバラバラの状態で耐圧試験や耐衝撃試験を受けている内容もすっかり上の空で、操作パネルの前に立つ豊波チーフのことばかり見ていた。

「―月さん、江月さん?」
「あ!?はい、なんでしょう?」

そこへオレのことを何度も呼んでいたらしい枝葉志主任に顔を覗きこまれ、ハッとする。

「いえ、ボ~ッとしてたようですが、大丈夫ですか?」
「あ、はい、なんとも。なんかスゴイなって、感動してました」

「あはは、そうでしたか。それでこの…、蟲王スーツですか、よく作りましたね。非常に完成度が高いですよ。これはどうやって作ったんです?」
「え、どうやってって、普通に魔力を馴染ませてですね」

「ほぅ。ちょっとそれを、ココで見せてもらえますか?」
「はい、わかりました」

そこで枝葉志主任が研究員に指示をだすと、すぐにモンスター素材を持ってこられた。

「はい、ではコレを使って見せてください」
「わかりました」

こんな風にしてるとなんだか面接の時を思い出すが、テーブルに置かれた金属トレイの上には5センチほどの灰色の革。それをなんとなくアルマジロっぽいな~などと思いつつ手にとると、魔力を注ぐ。

だが…灰色の革に魔力を流そうとしてみても、酷く通りが悪い。

(あれ…なんだ?随分と魔力の通りが悪いな…)

そこで少し出力する魔力を高めてみると、今度は形は変わらぬのに端の方から色が茶色く変わってしまう。と同時にその変色した部分から、どういうわけかポロポロと崩れだしてしまった。

「えぇ!?おかしいな…。コレって、何か特殊な素材なんですか?」

そこで不審に思いトレーを持ってきた研究員に問うてみるも、ごく普通のモンスター素材だと返された。

(いったいなんでなんだ?)

しかしそう首を捻っていると、今度はまた別のトレーに黒い革が持ってこられた。

「江月さん、では今度はコレで試してみてください」
「わかりました…」

う~む、いったいどうして上手く行かなかったのだろう。素材の加工なら、普段から魔力練成訓練で行なっている。だというのに今日に限って失敗するなんて。というかオレが素材の加工を失敗したのって、コレが初めてだぞ。

そこでより慎重に魔力を注いでみると、今度はモノの数秒でクルリと変形。厚手で平らだった黒い皮が、綺麗な筒状になった。

その結果を受け、枝葉志主任と豊波チーフをはじめとした研究員が顔を近づけ専門用語の応酬で議論をはじめる。

「あの短時間で在り得ない変形をしたぞ?普通なら細胞皮質が耐えられんはず…」
「ですが一度目は失敗でした。素材の耐久を超えた魔力を浴び、自壊が起きてしまったのでは…」
「なんか炙った竹ひごみたいに簡単に曲がりましたよね…」

そんな漏れ聞こえてくる内容でオレが理解できたのは、炙った竹ひごくらいのもの。そこで疑問に感じたことを、質問してみた。

「あの、さっきの素材って、いったい何が違ったんです?」

すると議論の輪から抜けた枝葉志主任が答えてくれる。

「ああ、あれはですね。二回目の実験に使用した革は、江月さんが倒したあの鰐の革だったんですよ」
「あ~。…って、それじゃあ!」

「はい、そうですね。魔力による素材への形状変化は、対象を仕留めその因子、ライフエナジーを獲得していることが条件となるようです」
「なるほど!」

そうか、それでオレが仕留めた訳じゃない革の方は、失敗してしまったのか。

「へぇ~、そうだったんですね。初めて知りましたよ」

…。

耐圧や耐衝撃の試験ですっかり穴が空いたり凹んだりしてしまった蟲王スーツのパーツを、テーブルをその場で借り直す。その様子を幾人かの研究員が、物珍しそうに見物していた。

そしてテーブルの向かいには、珈琲ブレイクの枝葉志主任と豊波チーフ。

「我々も勉強になりましたよ。特異生物を倒す実働部隊と素材研究では、まったく畑違いでそういった方法はまだ試されていませんでしたから」
「え、そうだったんですか?」

そこへ珈琲に口をつけた枝葉志主任に代わり、豊波チーフが答えてくれる

「まぁ、そうだな。化学的な検査で、地球上にはまだない新たな成分を発見する方が優先されてるよ。防具だなんだは、別に化け物の革を使わなくても作れるしの」
「なるほど…」

確かに。ただの革より防刃ベスト。ただの外殻より樹脂製アーマーの方が、使い勝手は上かも知れない。するとそういったモノが注目されるのは、この先もっと物資欠乏が進んでからといったとこだろうか。

「あとは特異迷宮から発見される…、それこそ魔法の武器といったモノに注目がいってますからね」
「ふむむ…」

枝葉志主任と豊波チーフの話でも、モンスター素材を用いた防具というのはあまり人気がないらしい。それでも一部ダンジョンに潜ってる自衛官の間では、自分達で倒したモンスター素材を装備に張ったりして補強などをしているとのこと。

「そうかぁ~。自分で倒したモンスターでないと、加工は難しいのか…」
「ま、江月さんは【図工】なんて変わったスキルをお持ちですからね。それもあって、今まで当然のことと思っていたんでしょう」

ふ~む、そう言われれば。

にしてもモンスター素材とは自分で倒し生命エナジーを獲得してないと、その加工が難しいのだな。初めて知ったよ。
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