うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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Undine

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一難去って、ワンモア・アクシデント。

ホワイト鰐頭海竜もろとも鉄砲水に流されたと思ったら、今度は怒れる水のお姉さんに襲われたオレ。

(だが知ってるぞ。それにこの気配…!)

相手の特徴、そしてスキルトーナメントでムケーレのおっさんと対峙した時にも感じたこの感覚。

(…間違いない。相手は水の精霊、ウンディーネだ!)

そう、かつてオレは、スーパー銭湯の塩サウナで瞑想し、塩の精霊とのチャネリングに成功した。

その後はそれをキッカケに塩の精霊・塩太郎と魂の共有化まで果たしている。なのでそういった精霊の持つ独特の波長というか気配に関しては、よく感じ取れるのだ。

そしてウンディーネとは水の精霊、水を司る精霊だ。なら、戦う必要なんてない。塩の精霊と解り合えたように、彼女ともきっと解かり合えるはず。

だが相手はそんなオレの感情には気付かず、再度攻撃の構えをみせる。

「フーッ!」

ここが何処かは分からない。が、間違いなくダンジョンではない。なら攻撃してくるウンディーネも、ダンジョンに意識を支配されている訳ではない筈。そこで声に魔力をのせ発してみる。

「待て、やめろ!オレ達が戦う必要なんてないんだッ!」

それで肺に入れた酸素を吐き出し若干地下の空気も吸ってしまったが、意外にもキツイ臭いや息苦しさはなかった。

(空気が澱んでいない…!?いや、今はそれよりもッ!)

しかしそれでも思いは通じず、相手はひどくご立腹の様子。

そのうえ再び荒ぶるウンディーネから放たれた水弾が鋭い矢のように飛んできたので、両手のひらに生み出した岩塩の板―即席極小岩塩盾でそれらをギキンと受け流す。

「…ッ!?」

(ふっ、どうだ見たか。入射角に対し、もっとも綺麗な角度で受け流してやったぞ)

一見すれば、ただの小さく薄い岩塩板。しかしそう見えても、オレの見切りと傾斜装甲の理を組み合わせれば、コレこの通り。弾かれた水弾は弾道が逸らされ後方の岩壁でドドン!と大きな音を立て炸裂している。

が、ふふん、こちらはまったくの無傷よ。

ちなみに傾斜装甲の理とは、たとえばこの極小岩塩盾の厚さが2cm程度でも、斜めにした分だけその厚さは厚くなるから、それだけ頑丈になるよねって話。つまり当たった弾に対し、実圧装甲は増すという理屈だ。

そして垂直にぶつかった訳でもないので、その弾道はそれにより大きく逸れてしまうという訳。

A=a÷cosθ (実圧装甲=装甲厚÷cos 装甲板の角度)

式にするとこんな感じだが、特異産業に行った際に戦争うんちくを語る提督の話にも耳を傾けよく覚えていたオレに、隙は無かった。

「ッ…ッ!?」

そして自身の魔法をものの見事に逸らされたウンディーネは大きく眼を見開き、まだ驚愕の表情を浮かべている。

(え、なに?まだそんなに驚いてくれるの?いや、照れるなぁ…)

これは魔力を使いすぎて疲弊しないよう、ちょっとしたライフハックを披露したつもりだった。けど攻撃してきたウンディーネは、ソレを見て思いのほか驚いてくれている。

(でもま、自分の得意技がまったく通じなかったら、そりゃ驚くか)

しかしこれは戦闘をやめるには実にいいタイミング。なので交戦の意志はないと示すため、腕をあげ手のひらをウンディーネに向けてみる。

「ほら、もうやめよう…」
「ッッ…!!」

すると、見開いた眼をさらに大きくし、そろそろと近づいて来るウンディーネ。そしてオレの手のひらをガン見したままの状態で動かなくなってしまう…。

(あ、そういえば手の平に岩塩つけたままだった)

そこで交戦の意志無しと分かるよう極小岩塩盾を消してみせると、途端にガッカリとした表情もみせる。

(え、なにその反応…?もしや塩に興味が?)

そこで再び右手に極小岩塩盾を生み出し、両手を広げてみせる。

すると今度は何もない左手には見向きもせず、食い入るように右手の岩塩盾だけを見詰めるウンディーネ。その視線は大好きなオヤツを見せられた時の猫のように、瞬きもせずまっしぐらだ。

(…ハッ、そうか!そういうことか!)

オレの生み出す塩は、魂の共有化をした塩太郎ともリンクしている。それ故に強力な聖属性なんかも有しているのだろう。

そしてウンディーネとは水の精霊。するとその生活サイクルもまた、水と同じような経緯を辿るのではなかろうか。

海から蒸発した水は水蒸気となって上空の気流に乗り、そののち山や低気圧とぶつかり雨となって大地に降り注ぐ。それらが集まったら今度は川となって流れ、やがてはまた海に還っていく。

(すると彼女らにとって、海とは文字通り母なる海。そして海が海たる要素に、塩は必須。なら塩の精霊である塩太郎は、いうなれば水の精霊界に於いてはプリンス的存在なのでは…??)

そう推論付けると、試しにウンディーネにむけ姿を見せてもらうよう塩太郎に頼んでみる。

(なぁ塩太郎、彼女におまえの姿を見せてやってくれないか?)

それを受け、いつものように胸からひょっこり生える塩太郎。

『(ぴょこ)』
「ッッッ…!!!」

するとその推論が正しかったことを裏付けるかのように、水のお姉さんことウンディーネは塩太郎の姿を見て感涙。そのまま水に沈み低い姿勢となると、両手を組んで懇願するような眼差しを塩太郎に向けたのだった。
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