うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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whisper of spirit

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地下で突然オレを襲った水のお姉さんことウンディーネ。だが彼女は塩太郎の姿を目にすると感動の涙を流し敬意を表すといった、不思議な態度をみせたのだった。

うむ、ならば…。

(よし、いいか塩太郎。この水のお姉さんは、なにか困っているみたいだ。だから、おまえが相談にのってあげなさい。そして力になれるのなら、助けてあげるといい)
(ッ…ッ、ッ…)

(うん、そうだな。優しくしてあげるんだぞ)


ウンディーネが塩太郎のことを、救いの主でも見上げるかのような熱い視線でその戦意を収めた。なのでコチラもソレを受け、黒い岩の岸壁に粘液テントで談話スペースを作ってやることに。

うむ、ウンディーネも塩太郎と話したい様子だし、ここはオレが出るより塩太郎に説得にあたってもらった方がいいだろう。

(それじゃ、頼んだぞ塩太郎…)
(ッ…!)

オレに向け手を振りつつ粘液談話スペースに入っていく塩太郎を見送ると、ウンディーネもその後にそそとついて行き粘液談話スペースに入っていった。


…。


こうして粘液談話スペースに入ったものの、なかなか出て来ない塩太郎とウンディーネ。あれからもう、2時間は経ったろう。

(う~む、長いな。なぁ、どう思うクィーン?)
(…)

(え、まだたいして経ってない?ああ、そうか。精霊や妖精の時間尺度だと、そんなモンか)

その間オレは周囲の様子をうかがったり地形を確認したり、体育座りで待機していたが、一向にふたりが出てくる気配はない。

(まぁでも、あのウンディーネもどうやら独りだったようだし、精霊同士積もる話もあるんだろうな)
(…)

それに対し、ピクシークィーンはいつものスンと澄ました様子でたいして気にしていない。

(そうか、それじゃあ気長に待つしかないな…)

精霊や妖精。彼らは悠久の自然が具現化したような存在なのか、基本すごく気が長い。そして精霊と妖精の違いは、自我≒自意識の強弱にあるように思える。

なんというかこれは体感と実体験だが、精霊の意識というのは受動的で、コチラから働きかけない限り特に反応は見せない。塩太郎は、まさにこのタイプ。

しかし一方で妖精の方はというと、けっこう主張が激しい。ピクシークィーンはこのように控え目であるものの、ピクシーなんかはそれが顕著。やれお腹が空いた遊んでくれと、聞き分けのない幼稚園児を相手にするようだ。

なのでその成長的には、精霊から妖精へと成長していくのではなかろうか。そしてそう思うのもまた、塩太郎の成長をずっと見守ってきたから。

塩太郎とは、元々はちいさな塩粒の精霊たち。その意識の集合体だ。

それらの時はけっこう主張する自我みたいなものを有している個体もいたようだが、塩太郎となった際にそれらの意識は統合され、今は赤ん坊のような状態にまで戻ってしまっている。

それが、今なお塩太郎を戦闘の前面に出さない理由。

だって、ねぇ。力があるとはいえ意識が赤ん坊のような存在を戦わせるなんて、教育上たいへん宜しくないではないか。もしそんな真似をしてバチクソ狂暴に育ってしまったら、手に負えなくなってしまううえ、あの塩の神様にも申し訳が立たなくなってしまう。

そう、オレは急に塩の神様から【塩】のスキルを与えられた一連の流れを、『おまえ塩太郎のこと頼むわ。代わりに塩の力を与えといてやるから』という、そんな風なことだと受け止めている。

なのでその成長の妨げとなるようなことは、なるだけさせないでいた。

しかし今、そんな塩太郎のことをウンディーネが頼っている。それはきっと塩太郎のことを良き存在として、ウンディーネにも認識できたからであろう。なら、オレの教育方針は間違っていなかったという事になる。

(うむ、ならば待とう。オレと共に育った塩太郎が、一体どういう結果をもたらすのか。それを保護者として、しかと見定めようではないか…)

岸壁に設けた粘液テント。あのふたりが入っていった粘液談話スペースをみつめ、オレはさらに待つことを決めた。

しかしそんな思いは空しく、ご休憩はその後も続き、どうやらそのままご宿泊へと移行したようだった。。。
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