うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

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Executive Meeting 1

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今日は特異産業の役員会議。そんな訳で役員であるオレもビジネスな方のスーツ姿でビシッと決め、ソレに臨んでいた。



場所はプレハブ建ての社屋1階、スライド式の入り口から入り右手奥にある会議室。ここが一番奥の部屋なので、社長デスクの前を通らねばこの会議室には入れない。

会議のメンバーは、まず特異産業の代表取締役である提督。

この人を除いては話が始まらない。サバゲサークル・トライデントの運営から模型店の経営までこなすうえ、人の使い方から商才まである皆のリーダーだ。

続いて温厚な人柄でそばにいる人を自然と和ませる、田所さん。

言わずと知れた大手製薬会社・真田薬品に勤める営業マンで、特異産業と真田薬品さんとの図太いパイプ役。以前に「真田薬品さんて、副業とかOKなんですか?」と訊いたら、「ダンジョン産素材確保の為だと説明したら、二つ返事でOKでしたよ」とのこと。これにより実に円滑な取引が可能となっている。

そして3人目は、オレ。

金色に輝く蟲王スーツに身を包み、植物ダンジョンの間引きをしたり海にいるモンスター怪魚を退治したりと、役員なのに駆除専門。とはいえそれにより従業員たちは安心してドロップ回収に励めるし、漁師さん達も大喜び。あ~ウン、あとは大統領でもブン殴ってみせらぁ!でも…飛行機だけは勘弁な。とでも言っておくか。

最後の4人目は、田丸水産の社長でもある田所さんのお兄さん。

ではあるものの、この役員会議には不参加。まぁいても「うちの人間もっと使ってヨォ」としか言わないので、提督が運営に関わる会議からは締め出した。それでもオレの仕留めたモンスター怪魚を竹輪にしたりカマボコにしたところソレの売り上げが好調らしく、最近は機嫌がいいらしい。

「うッス、それじゃあ役員会議を始めたいと思います」

では真の4人目は誰なのかというと、このたび晴れてあの銚子くんが、特異産業の役員へと就任した。

その持前の明るさと人懐っこさから、調整役をやらせるとピカイチな彼。また様々な発明にも携わっていて、ダンジョン熟成黒ニンニクは我社の隠れたヒット商品。さらには稼いだ給料で自社株を買い増すなど意欲を見せていた為、「ならもう役員になっちゃおうぜ!」ってな感じで役員就任の運びとなった。

「よし銚子、説明は任せた」
「うッス」

うん、ホントに提督はいぶし銀な提督っぽいし、銚子くんは銚子くんで気の利く若手副官てな感じなので、見ていて実に安心感がある。

こうしてプリントが配られると、それには貸借対照表やら決算報告書などの数字が並んでおり、ザッと視た感じではどれも大きなプラス。

「ほぉ、これはすごい売上だな。こんなにドロップが売れてたのか?」
「はい。社員もドンドン強くなってますし、田丸社長さんがフォークリフトをダンジョン内に持ち込んだんで。それによって暴れ竹の処理時間が、大幅に短縮されてるっス」

元は経営不振からくるストレス発散の為だったらしいが、これもまた大きく業績に貢献してくれたらしい。それに田所さんが補足を加えてくれる。

「今は個人のダンジョン探索者も増えてますから、そちらでもナオルゲン-Zの売り上げが急激に伸びています。なのでいくら材料をかき集めても、足りないくらいですよ」
「なるほど」

ナオルゲン-Zとは、真田薬品さんで出している回復薬の名前。一日一回の服用で、ちょっとした怪我なら瞬時に治してくれる。ただこの上にナオルゲン-Zαやナオルゲン-Z皇帝液といったバリエーションもあるので、ちょっと分かり辛い。

まぁそれでも薬局行ってポーションくださいと言えば、薬剤師がダメージの度合いによって適当に見繕ってくれるくらいには、一般に普及している。

「ところでジャング、ジャングの方で問題はないか?」

と、ここで提督が口を開いてオレに話がふられた。

「ああ、大丈夫だ提督。浅層での駆除がしっかりされているから、下に潜ってもモンスターの数が増えているといった変化はない。植物ダンジョンは安定しているよ」

「そうか、それならいいんだが」
「ともあれ流出の起きぬよう、間引きには念を入れておく」

「ああ、それはおまえにしか出来んからな。引き続き頼む」
「うむ、任せてくれ」

そうしてオレと提督との会話に一区切りがつくと、再び銚子が口を開く。

「え~では、次は指導部門の説明に移りたいと思います。インストラクター事業の指導部門も引き続き好調で、およそ半数以上の利用者がリピートを希望しています。やはり植物系モンスターの方が倒すのに抵抗感がないようで、それを理由に再度ウチを利用するケースが多いようです」

「ハハハ、これにはバイトをしてくれているシャークと雛形ちゃんの貢献も、キチンと付け加えてやらんといかんな」
「ええ、確かにそうッスね」

植物ダンジョンでのインストラクター事業は、大当たりだ。

ウン、日本人て基本、農耕民族。だからダンジョンモンスターとはいえ生き物を殺すことに強い抵抗感を抱く人も、決して少なくはない。これが狩猟民族であればそうでもないのだろうが、日本人は虫の鳴き声すらただのノイズには感じられず、そこに侘び寂びや感情の趣まで勝手に感じ取ってしまう。

しかし相手が植物モンスターとなれば、話は別。

故に赤い血を見ることもなく雑草の草むしり感覚で挑める植物ダンジョンは、まさに初心者向け。そんな初心者向けプラス、ダンジョン能力者な強い現役女子高生からの戦闘指導というのがウケにウケ、特異産業で行なっているダンジョンインストラクター事業は大いに人気を博している。

これには指導員が現役女子高生という、年若い女性というのがミソ。

幼くて女性といえば、社会通念的には弱者。しかしそんな年若い現役女子高生が自分達よりもバチクソに強ければ、『ああ!頑張ればボク達私達もあんな風に!』と、指導を受ける者達の向上心をコレでもかと刺激してくれる。だって大抵の受講者はシャークや結月ちゃんより年上。だからこんな子供たちにも出来るならばと、大いに発奮してくれるのだ。

「ふふふ。ふたりもいい小遣い稼ぎになってると、喜んでますよ」

それにシャークも結月ちゃんも、ダンジョンスタンピードの際には学校で生き残るための戦闘指導を行っていた。つまりは生死のかかった戦いを経験している、ガチな子達。

そんな真剣さは自然と受講者たちにも伝わり、チャンバラ剣で頭をパカリとやられても熱心に指導してくれたと却って感謝されている。いやはやそれらもまた、彼女たちの人徳であろう。

それはオレもまた彼女たちを指導している身として、おおいに鼻の高くなる気分である。
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