うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ

文字の大きさ
605 / 660

Executive Meeting 2

しおりを挟む
「ところでジャング、おまえの連れてきたアブドゥルとミゲルタなんだが…」
「え、もしやあのふたりが、何か問題でも起こしたのかッ!?」

再び提督から話を振られ、そこでアブドゥルとミゲルタの名を告げられたことに、少々ドキッとしたオレ。ないとは思いたいが、昨今は外国人が色々とやらかしたというニュースには枚挙に暇がない。それにやや焦った調子で返すと、提督は苦笑いでそうじゃないと首を横に振った。

「いやな、暴れ竹のドロップで、ただの竹がドロップするのは知ってるだろう?」
「ああアレか。ハズレだがアレも竹炭にして売れば、ダンジョン産てことでそれなりに売れてたんじゃ?」

うん、下駄箱とか押入れとかに置いとく脱臭用の竹炭。ダンジョン産だけに脱臭力が違う、というなんかフワッとした説明でも、それなりに売れていたはず。

「いやいや、その竹材でだな。アブドゥルとミゲルタのふたりが竹細工の見事な民芸品を作ってみせた。まぁ、それはいいんだが、大事なのはその過程だ。魔力を操って、スイスイと竹ひごを編んでいく。しかもそれが魔力を練るいい練習になるというじゃないか?」
「なるほど。それをインストラクター事業の方でも活用できないか、という話か?」

うむ、ふたりにそういった事を教えたのは、確かにオレだ。

ジェロームたち3人から魔力を伸ばすのに何かいい方法はないかと訊かれた際、じゃあとオレが常日頃から行っているモノ作りによる魔力練成訓練法を伝授したのだ。それであれば素材加工の間、ジワジワジワジワと常に魔力を生み出し続けていなければならず、集中力と魔力練成のいい訓練になる。

「そういうことだ。もうすでに何度か、リピートに来た客もいる。しかしそうしたお客もこれ以上ココで学ぶものがないとなれば、次第に足が遠のいていくだろう。しかしそこに魔力を練る練習法といった別のアプローチもあれば、まだまだ引っ張れるだろう?」
「うむむ…、流石は提督だ。オレではその点に、まるで気がつけなかったな」

現在に至るまでに講じた、様々な試行錯誤。しかしそんなモノはちょっと考えれば誰でもすぐに思いつくだろうと、まったく執着していなかった。それを即商売に結び付けるといった着眼点は、オレには無いモノ。

「それで少し試してみたんだが、どうも巧くいかん。それをジャングに訊いてみたかったのだ」

と、そう言われ、オレにも合点がいった。

「ああ、なるほど。しかしその答えは至ってシンプル。倒した獲物の生命エナジーを浴びていないと、その素材の加工も容易ではないんだ」
「なに!?」

これは提督も知らなかったらしく、驚いた表情をみせている。

「うむ…。コレはなんというか、縁とでもいえばいいのかな。倒したモンスターの生命エナジーを浴びているかいないかで、ドロップした素材への加工にも影響が出るんだ」
「「「ええっ!?」」」

すると、その説明に疑問をもった田所さんから質問が。

「では…薬の調合にも、そういったことが影響するんでしょうか??」
「ん~、どうでしょう?化学的な反応をさせる薬剤の調合と、素材そのものに魔力を流して形を変えるといった加工法では、アプローチの仕方が違うんで」
「ふ~む、確かにそうですね」

「縁理論とでもいうか、倒したモンスターの生命エナジーを得ることで、そのドロップした素材へのアプローチもまた、容易となる。これはオレもついぞ知らなかったことなのだが、国の研究機関の方と話す機会があった。その会話のなかで知ったんだ」

そう、これは豊波チーフや研究スタッフさんとの会話から知り得た知識。

「そうか。つまり自分で倒したモンスターの素材は加工がしやすく、自分で倒したわけではないモンスター素材では、その何倍も加工が難しいということだな?」
「ああ。だからアブドゥルとミゲルタは、恐らく自分達で倒した暴れ竹からのドロップを加工していたのだろう。しかし、それをインストラクター事業で活用するとなると、暴れ竹をお客さんに倒させる必要が出てくるな…」

うん、お化けアロエを倒しても、アロエの葉やアロエの花しかドロップしない。極まれにお化けアロエのモンスターカードや植物系モンスター特有の樹血琥珀といった宝石のようなモノをドロップするが、それらはいずれも魔力での加工には不向きな素材。

そこでそういった事をココで学ばせたいなら、どうにかしてお客さんに暴れ竹を倒させる必要が出てくる。

「ふぅむ、なるほど…。そんなカラクリがあったとはな」
「それじゃあ何度試してみても、上手くいかなかったのも納得ッスね」

「でもまあ、リピーターのお客さんであれば、ある程度その人柄は分かってきているか。なら面談で、『いつもご贔屓にしてくださってありがとございます。そんなお客様には特別に…』なんて感じでコッソリ話し、魔力練成訓練法を試す為には暴れ竹を倒す必要があると説明し、それに同意し、またそれくらい実力のある者を選んで行なえばいいんじゃないか?」

「そうですね。実力のない者を地下2層へ入れるのはやはり危険ですし、またそれくらいでなければ魔力練成訓練というのを習得しても、上手くはいかないのではないでしょうか」

オレがざっと思いついた事を口にしてみると、それに田所さんも同意してくれる。

「うむ、では決まりだな。金儲けも大事だが、なにより安全が第一だ。銚子、いまジャングが言った内容をベースに、プランをいくつか考えてみてくれ」
「うッス。じゃあジャングさん、あとで少し相談に乗ってください」

「ああ、わかった」

流れるように出された指示を受け、流れるようにオレにも球を投げてくる銚子。こういうとこが、巧いんだよな。オレなら自分ひとりでどうにかしようと、考え込んじゃうもん。流石は人使いの巧い、提督といっしょにいるだけあるよ。
しおりを挟む
感想 26

あなたにおすすめの小説

無能扱いされ会社を辞めさせられ、モフモフがさみしさで命の危機に陥るが懸命なナデナデ配信によりバズる~色々あって心と音速の壁を突破するまで~

ぐうのすけ
ファンタジー
大岩翔(オオイワ カケル・20才)は部長の悪知恵により会社を辞めて家に帰った。 玄関を開けるとモフモフ用座布団の上にペットが座って待っているのだが様子がおかしい。 「きゅう、痩せたか?それに元気もない」 ペットをさみしくさせていたと反省したカケルはペットを頭に乗せて大穴(ダンジョン)へと走った。 だが、大穴に向かう途中で小麦粉の大袋を担いだJKとぶつかりそうになる。 「パンを咥えて遅刻遅刻~ではなく原材料を担ぐJKだと!」 この奇妙な出会いによりカケルはヒロイン達と心を通わせ、心に抱えた闇を超え、心と音速の壁を突破する。

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

【完結】ご都合主義で生きてます。-ストレージは最強の防御魔法。生活魔法を工夫し創生魔法で乗り切る-

ジェルミ
ファンタジー
鑑定サーチ?ストレージで防御?生活魔法を工夫し最強に!! 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 しかし授かったのは鑑定や生活魔法など戦闘向きではなかった。 しかし生きていくために生活魔法を組合せ、工夫を重ね創生魔法に進化させ成り上がっていく。 え、鑑定サーチてなに? ストレージで収納防御て? お馬鹿な男と、それを支えるヒロインになれない3人の女性達。 スキルを試行錯誤で工夫し、お馬鹿な男女が幸せを掴むまでを描く。 ※この作品は「ご都合主義で生きてます。商売の力で世界を変える」を、もしも冒険者だったら、として内容を大きく変えスキルも制限し一部文章を流用し前作を読まなくても楽しめるように書いています。 またカクヨム様にも掲載しております。

現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風
ファンタジー
御門賢一郎は過去にトラウマを抱える高校一年生。 ゴールデンウィークにソロキャンプに行き、そこで綺麗な石を拾った。 しかし、その直後雷に打たれて意識を失う。 奇跡的に助かった彼は以前の彼とは違っていた。 そんな彼が成長する為に異世界に行ったり又、現代で錬金術をしながら生活する物語。

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

処理中です...