俺は退屈な青春からはおさらばします

臓器猫

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プロローグ

第二話 生死の境界が曖昧なあの世界(新)

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俺はギルドから出された依頼を達成し、今日も生きていられたことに安堵した。
「フェイ二ー達が心配するから早く家に帰るか……」

「ただいま」
ドアを開けると俺を待っていてくれたのか、フェイ二ー達が玄関のところで立っていた。

「おかえりなさい。ケント様!」
あぁ、癒されるな。俺はミツルギ・剣斗という名前らしい。何故こんなにも曖昧な、表現をするのかと言うと依頼の最中に記憶喪失になったのだ。記憶を失うということは、それまでに体得した剣技や経験則をすべて忘れるということになる。幸い、剣以外のスキルは名称だけ知っていれば使用できるとのことだった。技だけでも痛手だがこの上、経験則まで消えると戦闘力が弱まるのは至極当然の話だ。
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​───────​───────
それはさておき、俺はフェイ二ーの友達で、ギルド内で最強の剣士だった、そこでフェイ二ー達に変わり家のために依頼を受け、その報酬の半分を家に入れる代わりにここで生活させて貰っている。というのがフェイ二ーから聴いた話だ、だがもう強い俺はいない。消失したのだ、記憶も強さも。

「フェイ二ー達に今日話そう、俺はもう依頼に行きたくないし、この世界でも生きたくない……」
 強さを失ったということは、俺がこの家に居れる理由、そして自分の命の保障を失ったということだ。
記憶が無くなった状態の俺がそう迄して、タンポポの家ここにいる理由は無い。
俺は家、いやこの世界にもういられないし、いたくない。
死にたくない・・・穏やかな日々を送りたい。モンスターと戦いたくない。リセットしたい、全てを・・・
フェイ二ーは不死鳥の女の子だ、転生くらいなら頼めば余裕でやってみせるだろう。

「フェイ二ー、相談があるんだけど良いかな……」

「はい。ケント様何でしょうか?」

「俺はもうこの世界で生きたくない。もう戦いたくないんだ俺は……だからフェイ二ー、お願いだ俺を平和な異世界に連れていってくれ」
もう嫌だ、こんな危険な世界は……
俺は、もっと安心できる世界で生きたい。

「フェイ二ー……頼むよ。」

「そう……ですか。ケント様、わかりました。」
この時、彼女が流した涙はとても澄みきっていて、オーロラの様な輝きを放っていた。

「ケント様……こっちに帰りたくなったら、この羽を手に取って宙に放ってください。 それでは……ケント様。行ってらっしゃい」

「あぁ、行ってくるよ……」
 俺はフェイ二ー達を裏切ったんだ。もうこの世界には戻れない。フェイ二ー達に別れを告げ、光の輪の中に足を踏み入れた。
 
「ここは何処だ?」
 気がつくと見知らぬ部屋にいた。その部屋には今までに見たことの無いものがあったが、一番気になったのは、机の上に置かれた紙だった。その紙には、今まで目にしたことのない文字が綴られていた。周囲を見渡していると、誰かがベットで寝ている気づいた。

「そうか!ここは、こいつの家か・・・」

「外に出て、この世界を見に行くか。」

「建物高いな!」
 勿論すべての建物が高い訳では無いがそれでもタンポポの家の2倍くらいの高さはあり驚いてしまった
この時の俺はとても気持ちが昂っていたから気づけなかったのだ。自分がこの世界の言葉を使えないことに。

「でも文字とか読み書きは必須だよな。 これからここに住むんだから。」
 この頭を抱えると思われた問題はすぐに解決した。

「そうだ!透明状態で学舎に行けば良いじゃん!」
 俺はまだギルドカードの様な身分を証明する物を持っていないので、このままでは生活に不便だろう。その為にもまずは、言語の習得だ。

「赤色のバックを背負った子供がいる。しかも、集団で」

「良し。ついて行こう!」
 このままついていくと、周囲から危険人物だと思われかねないので、姿が透明になるスキルを使って、こっそり後ろからつけることにした。



「疲れた」
 俺は解読スキルと習得スピード上昇のスキルをフル活用してこの国の独自言語である、日本語を三時間で高校卒業レベルまで習得した。

「さて、これから何をすればいいものか……」
 そんなことを考えているとポケットが紅く光りを放った。

「何だ?何が光ってるんだ?」
 ポケットを弄ると、中からは紅く光った一本の羽が入っていた。

「この羽……」

「フェイ二ー……」
 この見蕩れてしまいそうなほど、美しい紅い羽はフェイ二ーのものだろう。何故か、元の世界での出来事は殆ど憶えていない。それでもフェイ二ーという名前が出てきたのは、羽を見た瞬間頭に浮かんだからだ。余程大切な人だったのだろう、でもそれも名前以外何も覚えていない。


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「ん….ふぁぁ」
 目が覚めると、目の前には見慣れた部屋があった。

「今、何時だ?」
 寝ぼけながらもスマホを探していた手に、何やら柔らかい物があたった。

「こんな所にボール置いていたっけ?」
 ふと、ボールの方へ目をやると其処には、美しい赤い髪の女性が横たわっていた。

「え、誰??」
その女性に見覚えは無く、女性の事を観察して気が付いたことがあった。部屋中に女性の髪と同じくらい紅い羽が落ちていて、それらが廊下には、一切無いこと、女性は怪我をしている事。

「考えるより手当てが先か……」
暫くの間、考えてから部屋に戻り怪我の状態をみようと探すが見あたらなかった。

「さっきまで身体中傷だらけだったのに……有り得ない。」
あの傷は俺の見間違いなのか?
しかし現に、傷が無くなっている俺の部屋に落ちている羽にも血が付いているからそれは無いはず……

「まさか……人間じゃないのか?」
いやいや、有り得ないだろ?ここのところ妖怪や怪異物アニメが多いからそう思ってしまうだけだ……

「落ち着け……落ち着け……俺、素数を数えて一旦落ち着こう。」
そうだこれは、アニメじゃないんだ吸血鬼に出会った少年の話でも無ければ、帳面に記された妖怪に名前をかえす少年の話でもない。

「でも、だとしたら、この女性は何なのか……」
そんな結論の出ないまま、堂々巡りして行きついた答えは、「この女性の存在は俺の常識では、結論を出ない」という平凡極まるものだった。

「ん、あちゃ~寝ちゃってたか!」
まるで宿題をやろうとして寝落ちしてしまった時の様なテンションだった。

「あの、貴女は…………誰ですか?何故……俺の部屋にいたん……ですか?」
久しぶりに声を出して他人と話したので、声が途切れ途切れになってしまった。

「剣城健人だな!アタシはフェイニーってもんだ!よろしくな!」
綺麗な外見に似つかわしくない口調だな。ってそんなことはどうでもいい。
「ごめんなさい、俺の聞き方が良くなかったね」

「フェイニーさん貴女は人間じゃないよね?何なの?」
その問いの意味を読み取ってくれたらしく、少しの思案顔のあとに微笑みが返ってきた。

「そうだな!えっとねアタシは、アンタが考えている通り、人間じゃないよ!具体的にしめすなら不死鳥フェニックスだな!」
アニメやラノベでしか、きかないその単語を俺はあっさりと受け入れてしまった。驚異的な回復力、床に散乱してる羽
、そしてこれは今気付いた事だが明らかに幼くなっている女性、むしろ逆に、否定する方が難しい状況なのは自分でも理解していた。初めに見た彼女は、25~28歳位で気品があり麗しいという表現がピタリとはまる女性だったが、今はかわいいスポーツ女子といった感じだ。人間の年齢で例えるならば17~18歳位だろうか。
そのくらいの少し幼さがのこった少女に、なっていた。

「なるほど……」

「ふーん、あんまり驚かないだね?」

「まぁな……それで?何でここに現れたの?」

「実はアンタに頼みたいことがあるんだ。」
あぁこの展開はアニメで見た事あるぞ!この後、こいつはきっと、魔王を倒してだとか世界を救ってだとか、壮大なお願いをしてくるに決まっている……
もしそうなら、変な期待をさせないよう、即座に断ろう。

「頼み事って言うのは……私たちの」

「いや、悪いけど俺……」「ATMになってください!」

「は?」
こいつ今、ATMっていったか?あっ分かった!こいつの世界でデュンエル・モンヌターズが流行ってるからそこに行ってエジプトの王様ばりの強さで勝って欲しいってことだな!しょうがねぇな~俺の十二支神龍デッキで勝利をしてやろう!

「あれ~この言葉じゃ無かったかな?ごめん言い直すね!私たちの新しい稼ぎ柱になって欲しいの!!」
 えーー折角、曲解したのにトドメを刺しにくるの?何この娘、俺に恨みでもあるのかよ……

「あの、意味わからないんだけど……」

「アタシ達は今、タンポポの家という施設で暮らしているの。そこに来る子供は親に捨てられるか、引き取り手がいない子供でね。子供達の為にはギルドでお金を稼がなきゃ行けないの、出来ることならアタシが稼ぎたい、でもアタシは戦えないの。だから……」

「……なるほど、でもだったら何で俺なんだ?それに今まで、どう過ごして来たんだよ。」
 そういやさっきの話で新しい稼ぎ柱とか言ってなかったか?ということは俺の前にも、いたのか?

「えぇ貴方の想像している通りに、貴方の前にもいました。ミツルギ・剣斗という方がタンポポの家を支えてくれていたんだ。でも、依頼中に記憶を失くしてから自信も無くしちゃったみたいでさ。こちら側に行きたいって言ったから転生させるの。そこで代わりの人を探していたら貴方が今の生活を捨てようとしてたから声をかけたの……」
いきなり口調が変わった……
 でも、確かに。俺は優衣達から距離をとり学校にもいけない俺が適任ということか。

「一つ聞いていいか?」

「うん良いよ……何でしょうか?」

「俺が向こうの世界に行った場合、こっちの世界で俺はどういう扱いになるんだ?」
 徐々に元のサイズに戻っていくにつれ、口調も戻っている。体のサイズで口調も変化するのか……とするとお年寄りになったり、赤ちゃんになるとそれに適した言葉遣いになる、そう思うとちょっと面白いな!

「変わりませんよ。剣斗様と健人さんの魂を入れ替えるだけなので転生と言うよりは転移に近いものです!」
転移、異世界、不死鳥、ギルド、ファンタジーRPGにありそうな語群だが、これらが実際に語られてしまうと、俺の知る世界はセカイの中の一部分だったのだと感じる。



「さぁ、健人様そろそろ魂の交換を行いますが、よろしいですか?」

「あぁ、良いよ。」
これでいい、護や優衣は俺の近くにいない方がいい。

「分かりました!では健人様この羽をお持ち下さい!!」

「これは?」
フェイニーから渡された羽が赤色をしている為何処かでみたような気がしていたが、思い出した。
その羽はまるで、遠い昔の小学校時代に十円を寄付して、貰える羽根にそっくりだったのだ。

「それは、私の羽です。ですが、その羽は、他の羽とは異なり翔くためのものではありません、その羽はこっち世界と、向こうの世界を繋ぐ羽です!」

「何かタイムマシンみたいだな!」
タイムマシンみたいなのがあるなんて!
ここはいつの間にか、二十二世紀になっていたのか?!

「では、健人様使い方を説明させていただきます!まずこの羽を片手で持ち、宙に置くイメージで手を離すと転移開始です!この羽は何度でも移動出来るので、困ったことがあればこちらの世界に帰ることが可能です!一番手間がかからないのは、羽を持った手の直下にもう片方の手を開いておく、やり方です!」

「あぁ分かった」

「健人様私は一足先にあちらへ行き準備致しますので、失礼します。」
 そう言い残すとフェイニーは炎となって消えた……

「よし」
 俺は父と母の仏壇に、線香を焚き準備をすませた所で、部屋に戻ることにした。

「……行こう」
 俺は右手で羽を掴み落とすと白い光に包まれ、羽の方へ視線を戻すと重力がかかっているのか、疑わしいくらいとてもゆっくりと落ちていた。

「優衣、護じゃあな……」
 俺がこの世界での最後の言葉は意外にも、腐れ縁であり、親愛なる幼馴染達への言葉だった。













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