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プロローグ
第一話 退屈なこの世界(現)
しおりを挟むカーテンの隙間から光が射しているのか瞼の外側が明るい気がする。ゆっくりと目を開く、するとデジタル時計には五月二十七日の午前十時と表示されていた。辺りを見回すと、予想していたよりカーテンが開いていた、というか全開だった。
「嘘だろ……誰だよ俺の安眠を妨げたのは!!」とツッコミを1人きりの部屋に響かせ、不意に机の上に紙が置いてあることに気づき目を向けた。
「健ちゃんへ、もぅ~起きるの遅いよ!!私もう行くけど、健ちゃん今日こそ学校に来るんだよ!!」と書かれていた。
こんな物を残す奴はアイツしかいない。
中鶴優衣、黒髪の清楚なタイプの少女だ。こいつは俺の幼なじみで、俺と中鶴は幼稚園から続く仲で所謂、腐れ縁というやつだ。そんな長い付き合いなのでお互いの親も仲が良く、特にこいつは何故か俺の母親から気に入られている。そして俺には、優衣の他にもう一人幼なじみがいるのだがそれを語るのは控えておく。っと幼なじみについての長々とした解説はこの辺にして話を進めることにする……
俺がこんな手紙を残されているのも、学校へ登校していない事が原因だが、登校拒否という結論に至るまでの過程を語るには、中学時代から語らねばならない。
これまでの出来事を想起しながら語っていこう。
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二年前の四月七日
「ねぇ、健ちゃん中学校で入る部活もう決めた?」
こいつは 離破 護俺のもう一人の幼なじみで性格を一言で現すなら本物の優男だ、自分の事より他人の事を第一に考える、そんな性格を知っているからこそ、こいつの将来が若干心配にもなる。
「いや、まだ決めてないな。護は剣道部に入るのか?」
「まぁそうなるかな、僕の家が家・・・だからね」
「あぁそうだったな・・・」
そういえば護の家は両親ともに有名な剣道家で離破といえば、剣術の名家だった。そんな家柄の一人息子、周囲から注目、期待、重圧を少なからず感じているのだろう。
護からの投げかけられたその質問に、俺は少しも考慮することなく返答をする。
「俺は部活、入らなくていいかな。」
俺は何をやっても出来てしまう。
ことわざに商いは三年という言葉がある、意味は三年は耐えろよってことなのだが、俺には無理だ。三年も同じことが続いた試しがないし、何より飽きる、根本的に部活に向いていないのだ。
「健ちゃんは勉強もスポーツも出来るから良いなぁ~、あっそうだ!ねぇ、特に決まって無いなら剣道部に一緒入ろう!」
剣道か、そう言えばまだやったことなかったなこれまでは色々な部活、クラブに属してきたがそのどれもが到達するのに3日もかからず、周りからは疎まれ続けるという地獄しか味わってこなかったし、三年間続ける自信無いしな。
「いや、護 俺は….」
自分自身でこんな表現をするのは少し自惚れている感があるが、俺みたいに、天才性を発揮するキャラは、人よりも不幸を呼び込みやすいのでは無いかと感じる。俺の異常な天才性も、周りからの妬み、嫉みを受ける対象になる。そんな俺のそばに護がいては迷惑をかけるかも知れない。ならば……
「いや、やっぱり……」
「そう、でもね僕は健ちゃんから離れないよ!例えどんな状況になっても僕は健ちゃんの傍にいる!!それは優衣も同じだよ!」
護は見抜いていた、俺の思考を……
やれやれ、やはり護にはかなわないな。
「……わかった。入るよ剣道部一緒にな。」
「やった!健ちゃんこれから一緒に頑張ろうね!!」
そして、入部から一ヶ月が経過し部の生徒を全員倒せるようになった頃から、先輩方は度々俺を、殴るために道場裏に呼び出される事が多くなった。そんな事もあり、一年生終わりには部活を辞めていた。
高校で剣道を続ける気は無かったが、護から誘われたのでなし崩し的に入ってしまった。
四月七日
「はぁ……やっぱり入らなければ良かったかな。」
入部初日、先程の決断を悔いつつ、道場へ向う、すると先輩の柄本武志が笑顔で俺に話しかけてきた。
「君の事や中学校の時のことは離破君から聞いているよ!大変だったね……ここの部員はそう簡単には、そこそこ強いからそう簡単には負けないよ!安心して本気を出してね!」
そして、柄本は今まで俺に向けてきた笑顔とは別の笑みになり、今までより小さな声で俺に語りかけた。
「まぁ僕は、君レベルに負けるつもりは微塵も無いけど!」
どうやら俺は柄本から目を付けられてしまったらしい。
入部から二週間がたった放課後、日課ように武道場に行き扉を開けると自分に視線が集中しているのがわかる。そんな中、開口一番に話しかけてきたのは護だった。
「健ちゃん今日の試合は一緒に頑張ろうね!健ちゃんは大丈夫だけど、僕なんかはメンバーに選ばれるか不安で心臓ドキドキだよ!!」
そう今日は、大会メンバーの選出をする為の模擬試合を行う日だ。
「お前は落ち着けば勝てるよ。焦ると左足に体重が乗りすぎるから、その癖昔から治らないな!」と笑いながら、教えた。
「健ちゃんは何でも分かっちゃうんだね、それに引き換え僕は……」
護の表情に一瞬、陰が見えた気がした。
護の試合も終わり、俺の対戦相手が、柄本になり試合に面倒くさいと感じはじめたところで、柄本が俺の前まできて他の部員から見えない角度で呟いた。
「今日こそはっきりと決着つけてる!!」
「部員の前でボコボコに負かして俺のパシリにしてやるよ!……あぁそれと、中鶴優衣だっけ?アイツいい身体してるよなぁ?顔も悪くねぇしな、この試合の後、僕に紹介してくれよぉ。さっさと落としてヤりたいからさぁ~」と下卑た声と表情で囁いた。
「柄本ぉ!!ぶっ殺す!!!!!」
試合開始のブザーと共に始まった試合中の記憶はなく気がついた時には、柄本が床に倒れた状態で俺の竹刀は柄本の突き垂れに向けていた。
結果、俺と護は試合に勝利したが俺がメンバーになることはできなかった。
「先鋒 天草薙莉、次鋒 青虎徹太、
中堅 離破護、副将 中宗正一、大将 柄本武志、以上計7名を大会メンバーとする。解散!!」
俺はというと顧問に呼ばれて、試合中に柄本を倒れるまで叩きのめした事情を教員室で聴取されていた。
「剣城~、今回の試合で勝ったのはお前だが、審判の『止め』を無視して柄本を叩きのめしたお前を大会へ選ぶことは出来ない!!」
「わかったらもう帰れ」
先生からの説教も終わりしぶしぶ校門へ向かうと校門前で優衣と護が立っていた。
「健ちゃん!!遅いよ~、じゃあ皆で一緒に帰ろう!!」
満面の笑みを浮かべている優衣を見て、おっ、これは平和に帰れるか?と考えながら歩いていると、突然優衣が切り出した。
「ところで健ちゃんはメンバーに選ばれたの?」
あまりにも、自然に優衣から聞かれたのでうっかり、選ばれなかった理由も一緒に話してしまった。
「……なんでよ、健ちゃん悪くないじゃん。」
「柄本、アイツ絶対に許さない……健ちゃんを悪者にしやがって……モウニドト…………ケンチャンガ、コンナオモイヲシナイヨウニ……シナキャ」
「…………モウニドト、ケンチャンニチカヅカナイヨウニ……」
普段の、優衣からは想像つかない雰囲気で何かを呟いていた。
さて、俺の回想もそろそろ終わりに差し掛かってきたので、少しまきでいくか。
俺はその後、柄本をボコボコにした事で後ろ指を指され続けた。
まぁ事情知らない人がみたら、リーダー格で優しい、柄本が昨日今日来たヤツに、試合で気絶するまでボコボコにされたら無理もないんだけど・・・
そんな流れで俺は部活での居場所が無くなって友達が消えいくのを眺めていた。そんな時、教室に柄本入り俺の席の前まで歩いてきた。
「剣城君、ちょっと良いかな?」
柄本は仮面の様な爽やかな笑顔を向けてきた。
「はぁ・・・わかった」
柄本の背後をついて行くと体育倉庫の前で立ち止まった。
「なぁ!柄本、殴るなら早くしてくれよ!帰りたいから!!」
柄本に言うと予想通りの返答が来た。
「わかった、いよーし、お前らやるぞー!」
合図と共に数人の男が声を張り上げ決起していた。同時に目を瞑り次に来るであろう衝撃に備えた。
「まだ?帰りたいんだけど!」
目を開けると、さっきまで閉まっていた倉庫の扉が開いていた。
「おい、まさか……」
何故か嫌な予感がしたので倉庫の中に急いだ。
「柄本ぉ何してんだよ!!やるなら、早くゃ……」
目の前に広がる光景に絶句してしまった。
「健ちゃん……来ちゃダメだ……」
「ふぇんふぁん!ふぁふぉふふんふぉ、ふぁふふぇふぇ~」
そこに居たのは俺の幼なじみ達だった。護は、縛られている優衣を庇ってフラフラになりながら、柄本達からの暴力をうけ続けている。遅まきながら現状を理解することができた。
「おぉ~やっと来たか僕の大切な後輩君!」
「柄本ぉ何のつもりだ!!」
「やだな~そんな怖い顔しなくても良いじゃん!僕達はね、優衣ちゃんに話があったのに、離破君が割って入って来たんだよ~君達は親友らしいから剣城君から離破君に言ってくれないかなぁ~」
「柄本、お前は優衣に話があると言っていたが、縄で口を塞がれ、手を縛られた状態で何をするつもりだったんだ、お前の返答次第では許さない」
俺は許すつもりなど毛頭無かった、何故なら、現状を観て理解したからだ。柄本と男が数人、そして縛られ制服の一部が破られ、涙を流す優衣。
「どうなんだ柄本、何か言ってみろよ!」
「アッハハハハハハハァーアいや~最高だったぜ!こいつらの絶望した顔はよう!揃いも揃って健ちゃん、健ちゃんってよぉ~離破が邪魔して優衣ちゃんを犯れ無かったがな!」
「そうか..」
そこから先は余り覚えていないが、柄本とその取り巻きとの殴り合いになったらしい。
俺は柄本の顔から血が流れるまで殴っていたそうだ、そして体育倉庫の戸締りに来た先生に見つかり、止められた。
次の日の放課後、職員室で柄本と俺が別々に呼ばれ一人ずつ事情聴取されることが朝練の終わりに伝えられた。
ーーーーーーーー
ーーーーーーーー
「さて、行くか」
職員室へ足を向け、扉をノックすると気怠い様な声の返答が帰ってきた。
「来たか、じゃあまずそこに座って」
「はい」
「じゃあ……何があった?」
「俺が柄本を呼び出して殴りました。」
「……そうか。」
「柄本からもそう聞いたが、それが事実なんだな?」
「……はい。それが事実です」
「なら、お前はどうする」
先生はこちらにきく形を取っているが求めてる答えは一つだ。
「剣道部を辞めます」
揉め事を収めるにはどちらか或いは双方が退く必要がある。
柄本はあれでも、大企業の御曹司、親からいろいろな費用を出資して貰っているから、柄本は切れない。
必然的に俺を切るしかないからこそ、先生は、待っていたと言わんばかりの表情が会話の節々に見え隠れするのだ。
「わかった……戻りたくなったらいつでも言えよ」
「失礼します」
後日、スーツ姿で爽やかな男性が校門前で車を停め待っていた。
「剣城健人君かな、少し話があるんだがいいかな?良ければ……」
男性の言う通りに車に乗り込むと、その男性はどうやら柄本父親だとわかった
「健人君、申し訳なかった。私の愚息が君や君の幼なじみに迷惑をかけてしまって。これは、せめてもの気持ちだ。受け取って欲しい……」
包みから見えたものは、お札の束だった所謂、帯と呼ばれるものだろう。
「いえ、こんなもの頂けません。俺たちが欲しいのはお金より謝罪です、貴方からではなく本人からの謝罪を求めます。」当然だ、柄本は俺だけでなく護や優衣のことも傷つけた。俺への悪感情を優衣達に、向けたのだこんなもので赦してはならない。
「何か思い違いをさせているようで悪いがそのお金は謝意のお金ではなく口止め料だ。君らが例え裁判をおこしてもこちらは罪に問われないし負けることも有り得ない、がお互いにダメージを負うより結果より、今そのお金を受け取った方が、余程プラスになるのではないかね?」
訳が分からなかったが一つわかったことがあるあの親あってこの子有り、という言葉があるのはこの親子の為だと理解した。
「分かりました。もういいですこれ以上は不快なので失礼します」
この人これより先を話していたら殴ってしまいそうだったので話をきりあげることにした。
今回の件で確信したことがある。俺がいることで傷つく人がいるという事実。
そして、大切な人を守るには、俺が距離を置くことが守ることに繋がる現実。
さて、これが今までの全てで、俺が引き篭もっている原因だ、今は学校へ行ってないし、することと言えば、ラノベを読んだりパソコンで遊ぶ程度になっている。
「なんか腹減ったな。今日は親も居ないしコンビニ行くか~」
「何でもいいか、適当に弁当と水分を買えば……」
家に戻ると、すぐに買ってきた弁当を、温め二階に上がった。そして食べ終わる頃には、猛烈な睡魔が襲ってきたので、昼寝をすることにした。
「少し、寝るか。ここのところ眠くなりやすいな」
俺はこんな自堕落な生活をして死んでいくのか。かといって彼処に戻る訳にはいかない。
「こんな退屈な世界より、俺はラノベのような非日常が当たり前の世界に行きたい……」
俺はそう呟くと瞼をとじて眠りについた。
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