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28. 探す男

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 ユーゴの肌は、日に日に健康的に輝いていく。枝のようだった手足も、はつらつとした少年のそれになっていく。
 クロエも日を追うごとに大きくなってくるようで、ほぼ聞けなかった声もよく出るようになってきた。
 引き受けていたオープニングセレモニーも無事に盛況のうちに完了し、その後はカフェの開店の構想を練りながら穏やかな日を過ごしていた。

 ひと月が過ぎようとしていたある日。
 それは突然訪れた。



「……赤ちゃんを探している男がいました」
 いつもより早く帰宅したテオドールは、帰ってくるなりそう言うと、椅子に座って考え込むように目を伏せた。
「赤ちゃんがいなくなってしまった、ということ?」
「それだったら話は簡単なんですが、……」
 どう説明したらよいかと悩むように、言葉を探すようにゆっくりと瞬きをして、クロエを寝かしているゆりかごを見つめる。

「探し人の情報が出ている、ということではないのが怪しいんです」
「個人的に探しているということかしら」
 そうですね、とテオドールは頷く。
「しかも、男の子か女の子かということを言わないんです」
「どういうこと? 赤ちゃんを探しているのなら、それが一番の重要な情報よね」
「はい。……生まれて半年くらいの赤ちゃんを探している、としか言わないんだそうです」

 聞いたところによると、その男は30歳くらい。北の方の訛りのある中肉中背の男で、やつれたような顔をして探し回っているようであり、店で尋ねていることもあれば、行き交う人をじっと見つめていることもあるとのこと。

「この町の住民ではなさそうで、保安官も注意して見ているとのことですが」
「……クロエを探している、のかしら」

 生後半年、クロエはちょうどそのくらいだ。
 首も座り、だんだん一人で座れるようにもなってきた。……まだころんころん転がっているけれど。

 どきんどきん、と胸が鳴る。
 その男に会わなければいけないような、会いたくないような、複雑な気持ちで胸が騒ぐ。
 ポーリーンの様子を見て、テオドールは「でも」と穏やかに言った。

「まだ何とも言えません。違うともそうだとも。赤ちゃんの性別を言わない、ということは、その男も性別を知らないのかもしれない。それに、ユーゴ……少年を探しているということもなさそうなので」
「そうよね、……」

 ユーゴとクロエが一緒のところから逃げ出してきたのであれば、少なくとも「少年と赤ちゃん」とセットで探すだろう。少年のほうが、うろうろしていたら目につきやすい。二人を探すのであれば、少年に対する目撃情報を得る方が確実だ。


 心配そうにそばに来たユーゴを抱きしめる。
 なんにしても、外を怪しい男がうろついているということに変わりはない。気を付けるに越したことはない。

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