【完結】夜に駆けた一夏/春巡る縁

夢見 鯛

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第5話 『隠したかったこと』act.1

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9月6日、夜12時。

 多くの店がシャッターを閉め、サンロードの通りは静まり返っていた。街灯の薄明かりだけが、道を照らし、時折歩く人の足音が遠くに響く。その静けさの中で、蒼真は約束通り古本屋の前に立っていた。

「本当にこの時間に来れば…また」

 心の中で少し迷いながらも、蒼真は爺さんの言葉を思い出す。「明日の夜13時に店に来い。まだ退職金を渡してないからな」

 その言葉が、やけに重く響いていた。退職金…一体何のことなのか。エリカが辞めたことと、どう繋がっているのか、蒼真には全く分からなかったが、爺さんの言葉に従って、この時間に来てみた。

「あの~」

 蒼真は少し声をかけながら店内に足を踏み入れた。薄暗い店内はいつものように、古びた本が所狭しと並べられている。だが、普段の喧騒はなく、静まり返った空気が漂っていた。蒼真が店内に足を踏み入れると、レジの方から爺さんが顔を上げた。いつものように深く腰掛けて、足を組んでいる姿は変わらないが、その目つきはいつもより鋭く、どこか無言の威圧感を感じる。

「遅かったじゃねーの」

 爺さんは蒼真を見上げ、無愛想に言った。その目つきはいつもより鋭く、威圧的で、店内の静けさと相まってその言葉はやけに重く響いた。

「いや、言われた通り12時きっかりですけど?」

 蒼真は少し反論するように答えた。時計を見ながら、爺さんが言った通りにきっかり12時に来たはずだ。しかし、爺さんはその答えに対して目を細める。

「ん?おかしいな。わしは11時半って言ったけどな」

 爺さんは涼しい顔でそう言う。けれどもその言葉は明らかに嘘だ。蒼真は心の中で呆れた。

 (嘘つけ。百歩譲って時間単位はともかく、分単位は間違えるわけがない)
 その思いが顔に出そうになるのをなんとか抑え、蒼真は冷静に言った。

「いや、確かに12時って言われましたよ。」
「ふーん、そうか。」

 爺さんは鼻をすすりながら、あくまで淡々とした調子で言った。少しも気にしていない様子だったが、その態度が逆に不気味だ。

 蒼真は一瞬、言い返すことを考えたが、どうせ爺さんは頑固で、何を言っても無駄だろうと思い、黙ってその場に立ち尽くした。まるで蒼真の反応を試すかのように、爺さんはしばらく無言でじっと蒼真を見つめていた。

「紙切れは持ってきたか?」

 爺さんの目が鋭く、蒼真を見据える。彼の言葉に、蒼真はすぐに思い当たった。紅茶のシールで封をされた手紙。あの手紙だ。言われた通り、エリカからの手紙を中身を確認することなく持ってきた。

「開けてみろや」

 爺さんは軽くあくびをしながら言うと、蒼真に手紙を開けさせようと促した。蒼真は一瞬ためらったものの、爺さんの冷たい視線に押されるようにして、封を開ける。手紙の端が少しだけ破れないように、慎重に封を切ると、三つ折りにされた手紙が現れた。

 それを広げ、蒼真は深呼吸をしてから、手紙を読み始めた。

 そこに書かれていたのは、エリカの直筆で、心からの謝罪が綴られていた。

⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻

「ごめんなさい。遊園地のデートをキャンセルしてしまって、本当にごめんなさい。あの日、どうしても行けなくなってしまって…。あなたに会うことで迷惑をかけたくない気持ちと、どうしても言い出せない自分がいたから、あのまま連絡もせずに、無視してしまったこと。本当に申し訳ないと思っています。私の不器用さが原因で、あなたに苦しい思いをさせてしまいました。」

⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻

 その文を目で追ううちに、蒼真の胸の内は混乱していた。エリカがどうしてあんな風に約束を破ったのか、その理由を知りたかった。しかし、手紙の中に書かれていた言葉の一つ一つが、蒼真の心に重くのしかかり、彼女の思いが少しずつ伝わってくる。

 次の部分には、さらに続けて謝罪の言葉と共に、エリカがどれだけ自分の行動に悩み、心を痛めていたかが綴られていた。

⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻

「私は、あなたと過ごした時間が本当に楽しくて、もっとあなたと一緒にいたかった。でも、どうしても怖くて、逃げたくなったんです。あなたを嫌いになったわけじゃない。むしろ、あなたを大切に思う気持ちが強いからこそ、どうしても嫌われたくなくて…。自分があなたを傷つけるようなことをしたくないって思ったから、どうしても踏み出せなかったんです。」

⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻

 手紙の中でエリカは、何度も自分の気持ちと葛藤しながら、何を言うべきかを悩んでいたことが伝わってきた。彼女は、自分の不安や恐れに縛られていた。好きだからこそ、傷つけたくなかった。それが、彼女があの時逃げてしまった理由だとわかる。

⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻

「でも、今は本当に後悔しているんです。あなたに会いたい、謝りたい、もっと素直になりたい。だけど、会えないから…どうか私を許さないでください。」

               矢田絵梨花

⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻

 手紙を読み終えた蒼真は、その言葉に胸がいっぱいになった。エリカの気持ちが、自分と同じように苦しんでいたことを知り、胸が締め付けられるような思いが込み上げてきた。彼女は、自分を大切に思ってくれていた。そして、その思いがすれ違ってしまったことが、どれほど辛かったのか。

 蒼真は、しばらくそのまま手紙を握りしめていたが、ようやく顔を上げると、爺さんが静かに見守っていた。

「…彼女は…エリカは今どこですか!」

 蒼真は心の中で押し殺していた感情が一気に湧き上がり、声に出して問いかけた。目の前の爺さんに、エリカのことを尋ねずにはいられなかった。

 爺さんはしばらく沈黙を守っていたが、やがて無言で頷き、そして蒼真に向かって肩を軽くすくめた。

「さっき退職金を渡すために来てもらったんだよ。もし運が良けりゃ、公園の通りにいるんじゃねーか」

 公園、吉祥寺駅近辺で公園といえば、蒼真は即座にどこかを思い浮かべた。その名前が頭を駆け巡る。井の頭公園。あそこに行けば、エリカがいるかもしれない。

 考える暇もなく、蒼真は迷うことなく店を飛び出し、井の頭公園の方角へ駆け出した。足音が響く夜の街を無我夢中で走りながら、心の中でエリカを必死に探し求めていた。

 蒼真は息を切らしながら、井の頭公園に向かって走り出した。商店街の細い通りを駆け抜け、灯りが点された店舗の前を無我夢中で駆け抜ける。その足元に広がるのは、昼間の喧騒を思わせる活気に満ちた場所とは裏腹に、静かな夜の顔をした街並みだ。けれども今、蒼真の頭の中にはエリカのことしかなく、その足取りは次第に速くなった。

 商店街を抜けると、目の前に広がったロータリーの信号が赤に点灯した。しかし、そんなものは気にしない。蒼真は足を止めることなく、信号を無視してそのまま突っ切った。後ろにクラクションの音が響き、車のブレーキ音が遠くで聞こえたが、それでも蒼真は振り返ることなく走り続けた。

 駅の構内に突入し、駅中の通路をかき分けるように進む。いつもなら気にしないはずの人々の隙間をすり抜けながら、南口のフード街に差し掛かると、そこでようやく人通りが少しだけ空いた。煌々とした看板の明かりが、夜の街を照らす中、蒼真はさらにペースを上げて走り抜ける。蒸し暑さと焦燥感が交錯する中で、エリカの姿を一心不乱に探しながら、その足音だけが響く静かな夜の街を駆け抜けた。

 道を曲がり、細い路地に差し掛かると、井の頭公園はもうすぐそこだ。蒼真の心臓が激しく鼓動し、冷や汗が額を伝う。エリカがいるかもしれない、その一心で。

 蒼真は井の頭公園へ向かって駆ける中、汗が額からしたたり落ち、呼吸が荒くなるのを感じた。季節外れの暑さと湿気が体にまとわりつき、空気が重くて息苦しい。胸が高鳴り、走るたびに心臓が速く打つ。

 これまでのエリカとの日々が頭の中で駆け巡る。初めて出会ったあの日。ふとしたきっかけで立ち寄った古本屋で、彼女と本について語り合ったこと。小説の世界に夢中になって、気づけば時間が経っていた。その頃のエリカの笑顔が、今も鮮明に浮かんでくる。

 そして、夜のカフェで過ごした時間。外の灯りがほのかに照らし、二人でお互いの好きな本を交換しながら、笑い合ったあの瞬間も。静かなカフェで、会話が途切れることなく続き、気づけば何時間も過ぎていた。

 あの時のエリカは、何もかもが輝いていた。彼女が僕の前で見せた笑顔、声、全てが忘れられない。だけど、今…今はその全てが遠く感じる。エリカがいないこの時間、胸の奥にぽっかりと空いた穴が広がる。

「エリカ…!」

 その名前を心の中で叫びながら、蒼真はさらに速度を上げて走り続けた。あの頃のエリカを、あの温かい時間を取り戻したくて、必死に走る。

 蒼真が駆け込んだ井の頭公園は、夜の静寂に包まれていた。昼間は観光客や家族連れで賑わうこの場所も、深夜ともなると人影はまばらで、白く光る街灯だけが点々と並び、静けさの中でぼんやりと闇を照らしていた。

 蒼真は息を整えながら、公園の奥へと足を踏み入れた。昼間の喧騒が嘘のように静まり返った井の頭公園は、夜になるとまるで異世界のような雰囲気を纏っていた。

 街灯の光は淡く、樹々の間から月の光が差し込んで、石畳の小道や池の水面をぼんやりと照らしている。池の縁に沿って並ぶベンチや、赤い欄干の橋の影が長く伸び、まるで時間が止まったかのような錯覚を覚えるほど、静かで幻想的な空間が広がっていた。

 蒼真は橋の上から周囲を見渡し、弁財天の祠へと続く道を進む。池のほとりにある東屋の近く、木々に隠れるようにして誰かが腰を掛けているのが見えた。

 そして、その姿を確認した瞬間、蒼真の足が止まる。

 月明かりに照らされた色白の肌。
 静かな夜の光に透き通るような素肌を持つ少女が、スラリと伸ばした脚を組み、黒縁の眼鏡をかけたまま、膝の上に小さな文庫本を置いていた。

 エリカだった。

 彼女は、深いネイビーのロングカーディガンを羽織り、その下には白いブラウスと落ち着いた色のスカートを合わせていた。涼しげな夜風がブラウスの裾をかすかに揺らし、柔らかな髪が月光を反射して淡く輝いている。

 彼女は静かに文庫本を開き、細い指先でページをめくる。その仕草はどこか儚げで、まるで時間の流れから切り離されたかのようだった。

 蒼真の胸が、強く締めつけられる。

 会いたかった。何度も探して、それでも見つからなかった彼女が、今ここにいる。

「エリカ——」

 声にならない言葉が喉の奥で震える。

 蒼真は、一歩、また一歩と足を踏み出した。足音は静寂の中に吸い込まれ、彼女までの距離が、少しずつ縮まっていく。

 エリカは息を呑んだ。

 夜の静寂を切り裂く足音が、確実にこちらへ向かってくる。

蒼真——。

 彼の姿を目にした瞬間、エリカの手は無意識に顔の横へと伸びた。長い前髪を指先で梳き、頬の傷を隠す。

 けれど、それだけでは足りない。

 視線を下げる。指先に力を込め、袖口を握りしめた。布を少しでも引き伸ばし、手の甲に広がるただれた肌を覆う。

——見られたくない。

 皮膚は炎症を起こし、ひりつくような痛みが走る。ところどころ乾燥し、触れるだけでピリピリとした刺激が伝わる。それでも、この手で傷を覆い隠そうとするように、エリカは両腕をぎゅっと胸の前で抱え込んだ。

 だが、蒼真は止まらない。

 彼の足音が、さらに近づく。

「エリカ…!」

 名前を呼ばれる。彼の声は焦燥に満ち、切実だった。

——お願い、来ないで。

 胸が締めつけられるほど苦しいのに、口は動かない。身体も硬直し、ただただ息を詰めて立ち尽くすことしかできない。

「エリカ、俺——」

 彼がさらに一歩、距離を詰めた瞬間、エリカは条件反射のように身を引いた。

「…来ないで」

 掠れた声が、ようやく喉からこぼれ落ちた。

 蒼真の動きが止まる。

「エリカ…?」

 戸惑うような彼の表情が、月明かりの下ではっきりと見えた。

 それでもエリカは、彼に背を向けるようにして肩をすくめ、後ずさる。

「お願い…見ないで…」

 震える声だった。涙が滲みそうになるのを必死で堪えながら、それでも彼にこの姿を晒したくなくて、エリカは後ろへと下がっていった。

「エリカ…どうしたんだよ?」

 蒼真の声は、混乱と心配が入り混じっていた。

彼は一歩、踏み出そうとする。だが、それを拒むようにエリカはさらに距離を取った。

「本当に…来ないで」

 視線を落とし、顔を伏せたまま、震える声で告げる。

「お願いだから…蒼真には、見られたくないの」

 夜の風がそっと吹き抜け、静かな水面をわずかに揺らす。井の頭公園の暗がりの中、月明かりだけが彼女の輪郭を淡く照らしていた。

 蒼真は、エリカの様子がただ事ではないことを悟る。

「…見られたくないって、どういう意味だよ?」

 できるだけ優しい声音で問いかける。

「俺に…何か隠してるのか?」

 それは、疑うような言葉ではなかった。ただ純粋に、彼女が何を抱えているのかを知りたかった。

 けれどエリカは答えない。

「エリカ…俺は、お前に会いたくてここに来たんだ」

 蒼真は、静かに言葉を続ける。

「手紙も読んだ。俺のことを大切に思ってくれてたんだろ?だったら…どうしてそんなふうに、俺を拒むんだよ」

 その言葉に、エリカの肩がわずかに震える。

——違う、拒んでるんじゃない。

 本当は、会いたかった。ずっと、蒼真のことを考えていた。

 それでも、今の自分を見せるわけにはいかない。

 彼にこんな姿を見られたら、どう思われるだろう?

 幻滅されるかもしれない。気持ち悪いと思われるかもしれない。

——それだけは、嫌だ。

 だから、言葉を紡ぐ代わりに、エリカはただ首を横に振った。

「…もう、帰って」

 静かに、消え入りそうな声で囁いた。

「帰れって…そんなの納得できるわけないだろ」

 蒼真は、眉をひそめたまま立ち尽くす。

 エリカはまだ視線を逸らしたまま、頑なに顔を隠し、両手をぎゅっと握りしめている。その仕草が、彼女の本心を雄弁に物語っていた。

 本当に突き放したいなら、もっと冷たく、無関心を装うはずだ。それなのに、彼女は声を震わせ、必死に何かを堪えているように見えた。

「なあ…俺、何かしたか?」

 蒼真はそっと問いかける。しかしエリカは首を横に振るだけで、何も言わない。

「じゃあ、どうしてそんなに俺を避けるんだよ…!」

 思わず声を強めると、エリカの肩がぴくりと震えた。

「…見られたくないの…っ」

 かすれた声で、絞り出すように言う。

「私、こんな姿…見られたくない…!」

 彼女の拳が、悔しそうに震えていた。

「…エリカ」

 蒼真はそっと手を伸ばそうとする。だが、その気配に気づいたエリカが、反射的に後ずさった。

「来ないで!」

 彼女の声が、夜の静寂を切り裂いた。

 その瞬間、蒼真は動きを止めた。

 エリカは荒い息をつきながら、目をぎゅっと閉じていた。

「…そんなに俺に見られるのが嫌なのか?」

 蒼真は、できるだけ冷静に言葉を選ぶ。

 エリカは、唇を噛みしめたまま動かない。

 沈黙が、二人の間を満たしていく。

 やがて、エリカが震える声で呟いた。

「…嫌われたくないから…」

 夜風がそっと吹き抜ける。

「私は…蒼真に嫌われたくない…」

 月明かりに照らされた彼女の横顔は、まるで今にも消え入りそうだった。

 エリカは震える手で顔を覆ったまま、必死に距離を保とうとする。

 けれど、その場を動こうとはしなかった。

 蒼真の呼吸が少し荒くなる。拒まれてもなお、彼女の本心が知りたかった。

「嫌われたくないって…俺がそんなことでお前を嫌うと思うのかよ」

 少し苛立ち混じりにそう言うと、エリカはびくっと肩を揺らした。

 そして、ゆっくりと視線を上げる。

 ほんの一瞬だった。

 けれど、その一瞬で、蒼真の目に彼女の傷跡が映り込んだ。

 月明かりの下、エリカの透き通るような白い肌に、赤みがかったただれた傷跡が広がっていた。

 頬の端、顎の下、そして、隠しきれなかった手の甲まで。

 その異様なまでの痛々しさに、蒼真の喉がひゅっと鳴る。

「……エリカ」

 彼女はもう、蒼真から目を逸らせなかった。

 拒みきれず、恐る恐る覗き込むように蒼真を見つめる。

 その瞳には、不安と、哀しみと、諦めのようなものが滲んでいた。

 夜風が静かに二人の間を通り抜ける。

 言葉が出ない。

 蒼真はただ、目の前の現実を受け止めようとしていた。


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