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第5話 『隠したかったこと』act.1
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9月6日、夜12時。
多くの店がシャッターを閉め、サンロードの通りは静まり返っていた。街灯の薄明かりだけが、道を照らし、時折歩く人の足音が遠くに響く。その静けさの中で、蒼真は約束通り古本屋の前に立っていた。
「本当にこの時間に来れば…また」
心の中で少し迷いながらも、蒼真は爺さんの言葉を思い出す。「明日の夜13時に店に来い。まだ退職金を渡してないからな」
その言葉が、やけに重く響いていた。退職金…一体何のことなのか。エリカが辞めたことと、どう繋がっているのか、蒼真には全く分からなかったが、爺さんの言葉に従って、この時間に来てみた。
「あの~」
蒼真は少し声をかけながら店内に足を踏み入れた。薄暗い店内はいつものように、古びた本が所狭しと並べられている。だが、普段の喧騒はなく、静まり返った空気が漂っていた。蒼真が店内に足を踏み入れると、レジの方から爺さんが顔を上げた。いつものように深く腰掛けて、足を組んでいる姿は変わらないが、その目つきはいつもより鋭く、どこか無言の威圧感を感じる。
「遅かったじゃねーの」
爺さんは蒼真を見上げ、無愛想に言った。その目つきはいつもより鋭く、威圧的で、店内の静けさと相まってその言葉はやけに重く響いた。
「いや、言われた通り12時きっかりですけど?」
蒼真は少し反論するように答えた。時計を見ながら、爺さんが言った通りにきっかり12時に来たはずだ。しかし、爺さんはその答えに対して目を細める。
「ん?おかしいな。わしは11時半って言ったけどな」
爺さんは涼しい顔でそう言う。けれどもその言葉は明らかに嘘だ。蒼真は心の中で呆れた。
(嘘つけ。百歩譲って時間単位はともかく、分単位は間違えるわけがない)
その思いが顔に出そうになるのをなんとか抑え、蒼真は冷静に言った。
「いや、確かに12時って言われましたよ。」
「ふーん、そうか。」
爺さんは鼻をすすりながら、あくまで淡々とした調子で言った。少しも気にしていない様子だったが、その態度が逆に不気味だ。
蒼真は一瞬、言い返すことを考えたが、どうせ爺さんは頑固で、何を言っても無駄だろうと思い、黙ってその場に立ち尽くした。まるで蒼真の反応を試すかのように、爺さんはしばらく無言でじっと蒼真を見つめていた。
「紙切れは持ってきたか?」
爺さんの目が鋭く、蒼真を見据える。彼の言葉に、蒼真はすぐに思い当たった。紅茶のシールで封をされた手紙。あの手紙だ。言われた通り、エリカからの手紙を中身を確認することなく持ってきた。
「開けてみろや」
爺さんは軽くあくびをしながら言うと、蒼真に手紙を開けさせようと促した。蒼真は一瞬ためらったものの、爺さんの冷たい視線に押されるようにして、封を開ける。手紙の端が少しだけ破れないように、慎重に封を切ると、三つ折りにされた手紙が現れた。
それを広げ、蒼真は深呼吸をしてから、手紙を読み始めた。
そこに書かれていたのは、エリカの直筆で、心からの謝罪が綴られていた。
⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻
「ごめんなさい。遊園地のデートをキャンセルしてしまって、本当にごめんなさい。あの日、どうしても行けなくなってしまって…。あなたに会うことで迷惑をかけたくない気持ちと、どうしても言い出せない自分がいたから、あのまま連絡もせずに、無視してしまったこと。本当に申し訳ないと思っています。私の不器用さが原因で、あなたに苦しい思いをさせてしまいました。」
⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻
その文を目で追ううちに、蒼真の胸の内は混乱していた。エリカがどうしてあんな風に約束を破ったのか、その理由を知りたかった。しかし、手紙の中に書かれていた言葉の一つ一つが、蒼真の心に重くのしかかり、彼女の思いが少しずつ伝わってくる。
次の部分には、さらに続けて謝罪の言葉と共に、エリカがどれだけ自分の行動に悩み、心を痛めていたかが綴られていた。
⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻
「私は、あなたと過ごした時間が本当に楽しくて、もっとあなたと一緒にいたかった。でも、どうしても怖くて、逃げたくなったんです。あなたを嫌いになったわけじゃない。むしろ、あなたを大切に思う気持ちが強いからこそ、どうしても嫌われたくなくて…。自分があなたを傷つけるようなことをしたくないって思ったから、どうしても踏み出せなかったんです。」
⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻
手紙の中でエリカは、何度も自分の気持ちと葛藤しながら、何を言うべきかを悩んでいたことが伝わってきた。彼女は、自分の不安や恐れに縛られていた。好きだからこそ、傷つけたくなかった。それが、彼女があの時逃げてしまった理由だとわかる。
⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻
「でも、今は本当に後悔しているんです。あなたに会いたい、謝りたい、もっと素直になりたい。だけど、会えないから…どうか私を許さないでください。」
矢田絵梨花
⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻ ⸻
手紙を読み終えた蒼真は、その言葉に胸がいっぱいになった。エリカの気持ちが、自分と同じように苦しんでいたことを知り、胸が締め付けられるような思いが込み上げてきた。彼女は、自分を大切に思ってくれていた。そして、その思いがすれ違ってしまったことが、どれほど辛かったのか。
蒼真は、しばらくそのまま手紙を握りしめていたが、ようやく顔を上げると、爺さんが静かに見守っていた。
「…彼女は…エリカは今どこですか!」
蒼真は心の中で押し殺していた感情が一気に湧き上がり、声に出して問いかけた。目の前の爺さんに、エリカのことを尋ねずにはいられなかった。
爺さんはしばらく沈黙を守っていたが、やがて無言で頷き、そして蒼真に向かって肩を軽くすくめた。
「さっき退職金を渡すために来てもらったんだよ。もし運が良けりゃ、公園の通りにいるんじゃねーか」
公園、吉祥寺駅近辺で公園といえば、蒼真は即座にどこかを思い浮かべた。その名前が頭を駆け巡る。井の頭公園。あそこに行けば、エリカがいるかもしれない。
考える暇もなく、蒼真は迷うことなく店を飛び出し、井の頭公園の方角へ駆け出した。足音が響く夜の街を無我夢中で走りながら、心の中でエリカを必死に探し求めていた。
蒼真は息を切らしながら、井の頭公園に向かって走り出した。商店街の細い通りを駆け抜け、灯りが点された店舗の前を無我夢中で駆け抜ける。その足元に広がるのは、昼間の喧騒を思わせる活気に満ちた場所とは裏腹に、静かな夜の顔をした街並みだ。けれども今、蒼真の頭の中にはエリカのことしかなく、その足取りは次第に速くなった。
商店街を抜けると、目の前に広がったロータリーの信号が赤に点灯した。しかし、そんなものは気にしない。蒼真は足を止めることなく、信号を無視してそのまま突っ切った。後ろにクラクションの音が響き、車のブレーキ音が遠くで聞こえたが、それでも蒼真は振り返ることなく走り続けた。
駅の構内に突入し、駅中の通路をかき分けるように進む。いつもなら気にしないはずの人々の隙間をすり抜けながら、南口のフード街に差し掛かると、そこでようやく人通りが少しだけ空いた。煌々とした看板の明かりが、夜の街を照らす中、蒼真はさらにペースを上げて走り抜ける。蒸し暑さと焦燥感が交錯する中で、エリカの姿を一心不乱に探しながら、その足音だけが響く静かな夜の街を駆け抜けた。
道を曲がり、細い路地に差し掛かると、井の頭公園はもうすぐそこだ。蒼真の心臓が激しく鼓動し、冷や汗が額を伝う。エリカがいるかもしれない、その一心で。
蒼真は井の頭公園へ向かって駆ける中、汗が額からしたたり落ち、呼吸が荒くなるのを感じた。季節外れの暑さと湿気が体にまとわりつき、空気が重くて息苦しい。胸が高鳴り、走るたびに心臓が速く打つ。
これまでのエリカとの日々が頭の中で駆け巡る。初めて出会ったあの日。ふとしたきっかけで立ち寄った古本屋で、彼女と本について語り合ったこと。小説の世界に夢中になって、気づけば時間が経っていた。その頃のエリカの笑顔が、今も鮮明に浮かんでくる。
そして、夜のカフェで過ごした時間。外の灯りがほのかに照らし、二人でお互いの好きな本を交換しながら、笑い合ったあの瞬間も。静かなカフェで、会話が途切れることなく続き、気づけば何時間も過ぎていた。
あの時のエリカは、何もかもが輝いていた。彼女が僕の前で見せた笑顔、声、全てが忘れられない。だけど、今…今はその全てが遠く感じる。エリカがいないこの時間、胸の奥にぽっかりと空いた穴が広がる。
「エリカ…!」
その名前を心の中で叫びながら、蒼真はさらに速度を上げて走り続けた。あの頃のエリカを、あの温かい時間を取り戻したくて、必死に走る。
蒼真が駆け込んだ井の頭公園は、夜の静寂に包まれていた。昼間は観光客や家族連れで賑わうこの場所も、深夜ともなると人影はまばらで、白く光る街灯だけが点々と並び、静けさの中でぼんやりと闇を照らしていた。
蒼真は息を整えながら、公園の奥へと足を踏み入れた。昼間の喧騒が嘘のように静まり返った井の頭公園は、夜になるとまるで異世界のような雰囲気を纏っていた。
街灯の光は淡く、樹々の間から月の光が差し込んで、石畳の小道や池の水面をぼんやりと照らしている。池の縁に沿って並ぶベンチや、赤い欄干の橋の影が長く伸び、まるで時間が止まったかのような錯覚を覚えるほど、静かで幻想的な空間が広がっていた。
蒼真は橋の上から周囲を見渡し、弁財天の祠へと続く道を進む。池のほとりにある東屋の近く、木々に隠れるようにして誰かが腰を掛けているのが見えた。
そして、その姿を確認した瞬間、蒼真の足が止まる。
月明かりに照らされた色白の肌。
静かな夜の光に透き通るような素肌を持つ少女が、スラリと伸ばした脚を組み、黒縁の眼鏡をかけたまま、膝の上に小さな文庫本を置いていた。
エリカだった。
彼女は、深いネイビーのロングカーディガンを羽織り、その下には白いブラウスと落ち着いた色のスカートを合わせていた。涼しげな夜風がブラウスの裾をかすかに揺らし、柔らかな髪が月光を反射して淡く輝いている。
彼女は静かに文庫本を開き、細い指先でページをめくる。その仕草はどこか儚げで、まるで時間の流れから切り離されたかのようだった。
蒼真の胸が、強く締めつけられる。
会いたかった。何度も探して、それでも見つからなかった彼女が、今ここにいる。
「エリカ——」
声にならない言葉が喉の奥で震える。
蒼真は、一歩、また一歩と足を踏み出した。足音は静寂の中に吸い込まれ、彼女までの距離が、少しずつ縮まっていく。
エリカは息を呑んだ。
夜の静寂を切り裂く足音が、確実にこちらへ向かってくる。
蒼真——。
彼の姿を目にした瞬間、エリカの手は無意識に顔の横へと伸びた。長い前髪を指先で梳き、頬の傷を隠す。
けれど、それだけでは足りない。
視線を下げる。指先に力を込め、袖口を握りしめた。布を少しでも引き伸ばし、手の甲に広がるただれた肌を覆う。
——見られたくない。
皮膚は炎症を起こし、ひりつくような痛みが走る。ところどころ乾燥し、触れるだけでピリピリとした刺激が伝わる。それでも、この手で傷を覆い隠そうとするように、エリカは両腕をぎゅっと胸の前で抱え込んだ。
だが、蒼真は止まらない。
彼の足音が、さらに近づく。
「エリカ…!」
名前を呼ばれる。彼の声は焦燥に満ち、切実だった。
——お願い、来ないで。
胸が締めつけられるほど苦しいのに、口は動かない。身体も硬直し、ただただ息を詰めて立ち尽くすことしかできない。
「エリカ、俺——」
彼がさらに一歩、距離を詰めた瞬間、エリカは条件反射のように身を引いた。
「…来ないで」
掠れた声が、ようやく喉からこぼれ落ちた。
蒼真の動きが止まる。
「エリカ…?」
戸惑うような彼の表情が、月明かりの下ではっきりと見えた。
それでもエリカは、彼に背を向けるようにして肩をすくめ、後ずさる。
「お願い…見ないで…」
震える声だった。涙が滲みそうになるのを必死で堪えながら、それでも彼にこの姿を晒したくなくて、エリカは後ろへと下がっていった。
「エリカ…どうしたんだよ?」
蒼真の声は、混乱と心配が入り混じっていた。
彼は一歩、踏み出そうとする。だが、それを拒むようにエリカはさらに距離を取った。
「本当に…来ないで」
視線を落とし、顔を伏せたまま、震える声で告げる。
「お願いだから…蒼真には、見られたくないの」
夜の風がそっと吹き抜け、静かな水面をわずかに揺らす。井の頭公園の暗がりの中、月明かりだけが彼女の輪郭を淡く照らしていた。
蒼真は、エリカの様子がただ事ではないことを悟る。
「…見られたくないって、どういう意味だよ?」
できるだけ優しい声音で問いかける。
「俺に…何か隠してるのか?」
それは、疑うような言葉ではなかった。ただ純粋に、彼女が何を抱えているのかを知りたかった。
けれどエリカは答えない。
「エリカ…俺は、お前に会いたくてここに来たんだ」
蒼真は、静かに言葉を続ける。
「手紙も読んだ。俺のことを大切に思ってくれてたんだろ?だったら…どうしてそんなふうに、俺を拒むんだよ」
その言葉に、エリカの肩がわずかに震える。
——違う、拒んでるんじゃない。
本当は、会いたかった。ずっと、蒼真のことを考えていた。
それでも、今の自分を見せるわけにはいかない。
彼にこんな姿を見られたら、どう思われるだろう?
幻滅されるかもしれない。気持ち悪いと思われるかもしれない。
——それだけは、嫌だ。
だから、言葉を紡ぐ代わりに、エリカはただ首を横に振った。
「…もう、帰って」
静かに、消え入りそうな声で囁いた。
「帰れって…そんなの納得できるわけないだろ」
蒼真は、眉をひそめたまま立ち尽くす。
エリカはまだ視線を逸らしたまま、頑なに顔を隠し、両手をぎゅっと握りしめている。その仕草が、彼女の本心を雄弁に物語っていた。
本当に突き放したいなら、もっと冷たく、無関心を装うはずだ。それなのに、彼女は声を震わせ、必死に何かを堪えているように見えた。
「なあ…俺、何かしたか?」
蒼真はそっと問いかける。しかしエリカは首を横に振るだけで、何も言わない。
「じゃあ、どうしてそんなに俺を避けるんだよ…!」
思わず声を強めると、エリカの肩がぴくりと震えた。
「…見られたくないの…っ」
かすれた声で、絞り出すように言う。
「私、こんな姿…見られたくない…!」
彼女の拳が、悔しそうに震えていた。
「…エリカ」
蒼真はそっと手を伸ばそうとする。だが、その気配に気づいたエリカが、反射的に後ずさった。
「来ないで!」
彼女の声が、夜の静寂を切り裂いた。
その瞬間、蒼真は動きを止めた。
エリカは荒い息をつきながら、目をぎゅっと閉じていた。
「…そんなに俺に見られるのが嫌なのか?」
蒼真は、できるだけ冷静に言葉を選ぶ。
エリカは、唇を噛みしめたまま動かない。
沈黙が、二人の間を満たしていく。
やがて、エリカが震える声で呟いた。
「…嫌われたくないから…」
夜風がそっと吹き抜ける。
「私は…蒼真に嫌われたくない…」
月明かりに照らされた彼女の横顔は、まるで今にも消え入りそうだった。
エリカは震える手で顔を覆ったまま、必死に距離を保とうとする。
けれど、その場を動こうとはしなかった。
蒼真の呼吸が少し荒くなる。拒まれてもなお、彼女の本心が知りたかった。
「嫌われたくないって…俺がそんなことでお前を嫌うと思うのかよ」
少し苛立ち混じりにそう言うと、エリカはびくっと肩を揺らした。
そして、ゆっくりと視線を上げる。
ほんの一瞬だった。
けれど、その一瞬で、蒼真の目に彼女の傷跡が映り込んだ。
月明かりの下、エリカの透き通るような白い肌に、赤みがかったただれた傷跡が広がっていた。
頬の端、顎の下、そして、隠しきれなかった手の甲まで。
その異様なまでの痛々しさに、蒼真の喉がひゅっと鳴る。
「……エリカ」
彼女はもう、蒼真から目を逸らせなかった。
拒みきれず、恐る恐る覗き込むように蒼真を見つめる。
その瞳には、不安と、哀しみと、諦めのようなものが滲んでいた。
夜風が静かに二人の間を通り抜ける。
言葉が出ない。
蒼真はただ、目の前の現実を受け止めようとしていた。
多くの店がシャッターを閉め、サンロードの通りは静まり返っていた。街灯の薄明かりだけが、道を照らし、時折歩く人の足音が遠くに響く。その静けさの中で、蒼真は約束通り古本屋の前に立っていた。
「本当にこの時間に来れば…また」
心の中で少し迷いながらも、蒼真は爺さんの言葉を思い出す。「明日の夜13時に店に来い。まだ退職金を渡してないからな」
その言葉が、やけに重く響いていた。退職金…一体何のことなのか。エリカが辞めたことと、どう繋がっているのか、蒼真には全く分からなかったが、爺さんの言葉に従って、この時間に来てみた。
「あの~」
蒼真は少し声をかけながら店内に足を踏み入れた。薄暗い店内はいつものように、古びた本が所狭しと並べられている。だが、普段の喧騒はなく、静まり返った空気が漂っていた。蒼真が店内に足を踏み入れると、レジの方から爺さんが顔を上げた。いつものように深く腰掛けて、足を組んでいる姿は変わらないが、その目つきはいつもより鋭く、どこか無言の威圧感を感じる。
「遅かったじゃねーの」
爺さんは蒼真を見上げ、無愛想に言った。その目つきはいつもより鋭く、威圧的で、店内の静けさと相まってその言葉はやけに重く響いた。
「いや、言われた通り12時きっかりですけど?」
蒼真は少し反論するように答えた。時計を見ながら、爺さんが言った通りにきっかり12時に来たはずだ。しかし、爺さんはその答えに対して目を細める。
「ん?おかしいな。わしは11時半って言ったけどな」
爺さんは涼しい顔でそう言う。けれどもその言葉は明らかに嘘だ。蒼真は心の中で呆れた。
(嘘つけ。百歩譲って時間単位はともかく、分単位は間違えるわけがない)
その思いが顔に出そうになるのをなんとか抑え、蒼真は冷静に言った。
「いや、確かに12時って言われましたよ。」
「ふーん、そうか。」
爺さんは鼻をすすりながら、あくまで淡々とした調子で言った。少しも気にしていない様子だったが、その態度が逆に不気味だ。
蒼真は一瞬、言い返すことを考えたが、どうせ爺さんは頑固で、何を言っても無駄だろうと思い、黙ってその場に立ち尽くした。まるで蒼真の反応を試すかのように、爺さんはしばらく無言でじっと蒼真を見つめていた。
「紙切れは持ってきたか?」
爺さんの目が鋭く、蒼真を見据える。彼の言葉に、蒼真はすぐに思い当たった。紅茶のシールで封をされた手紙。あの手紙だ。言われた通り、エリカからの手紙を中身を確認することなく持ってきた。
「開けてみろや」
爺さんは軽くあくびをしながら言うと、蒼真に手紙を開けさせようと促した。蒼真は一瞬ためらったものの、爺さんの冷たい視線に押されるようにして、封を開ける。手紙の端が少しだけ破れないように、慎重に封を切ると、三つ折りにされた手紙が現れた。
それを広げ、蒼真は深呼吸をしてから、手紙を読み始めた。
そこに書かれていたのは、エリカの直筆で、心からの謝罪が綴られていた。
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「ごめんなさい。遊園地のデートをキャンセルしてしまって、本当にごめんなさい。あの日、どうしても行けなくなってしまって…。あなたに会うことで迷惑をかけたくない気持ちと、どうしても言い出せない自分がいたから、あのまま連絡もせずに、無視してしまったこと。本当に申し訳ないと思っています。私の不器用さが原因で、あなたに苦しい思いをさせてしまいました。」
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その文を目で追ううちに、蒼真の胸の内は混乱していた。エリカがどうしてあんな風に約束を破ったのか、その理由を知りたかった。しかし、手紙の中に書かれていた言葉の一つ一つが、蒼真の心に重くのしかかり、彼女の思いが少しずつ伝わってくる。
次の部分には、さらに続けて謝罪の言葉と共に、エリカがどれだけ自分の行動に悩み、心を痛めていたかが綴られていた。
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「私は、あなたと過ごした時間が本当に楽しくて、もっとあなたと一緒にいたかった。でも、どうしても怖くて、逃げたくなったんです。あなたを嫌いになったわけじゃない。むしろ、あなたを大切に思う気持ちが強いからこそ、どうしても嫌われたくなくて…。自分があなたを傷つけるようなことをしたくないって思ったから、どうしても踏み出せなかったんです。」
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手紙の中でエリカは、何度も自分の気持ちと葛藤しながら、何を言うべきかを悩んでいたことが伝わってきた。彼女は、自分の不安や恐れに縛られていた。好きだからこそ、傷つけたくなかった。それが、彼女があの時逃げてしまった理由だとわかる。
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「でも、今は本当に後悔しているんです。あなたに会いたい、謝りたい、もっと素直になりたい。だけど、会えないから…どうか私を許さないでください。」
矢田絵梨花
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手紙を読み終えた蒼真は、その言葉に胸がいっぱいになった。エリカの気持ちが、自分と同じように苦しんでいたことを知り、胸が締め付けられるような思いが込み上げてきた。彼女は、自分を大切に思ってくれていた。そして、その思いがすれ違ってしまったことが、どれほど辛かったのか。
蒼真は、しばらくそのまま手紙を握りしめていたが、ようやく顔を上げると、爺さんが静かに見守っていた。
「…彼女は…エリカは今どこですか!」
蒼真は心の中で押し殺していた感情が一気に湧き上がり、声に出して問いかけた。目の前の爺さんに、エリカのことを尋ねずにはいられなかった。
爺さんはしばらく沈黙を守っていたが、やがて無言で頷き、そして蒼真に向かって肩を軽くすくめた。
「さっき退職金を渡すために来てもらったんだよ。もし運が良けりゃ、公園の通りにいるんじゃねーか」
公園、吉祥寺駅近辺で公園といえば、蒼真は即座にどこかを思い浮かべた。その名前が頭を駆け巡る。井の頭公園。あそこに行けば、エリカがいるかもしれない。
考える暇もなく、蒼真は迷うことなく店を飛び出し、井の頭公園の方角へ駆け出した。足音が響く夜の街を無我夢中で走りながら、心の中でエリカを必死に探し求めていた。
蒼真は息を切らしながら、井の頭公園に向かって走り出した。商店街の細い通りを駆け抜け、灯りが点された店舗の前を無我夢中で駆け抜ける。その足元に広がるのは、昼間の喧騒を思わせる活気に満ちた場所とは裏腹に、静かな夜の顔をした街並みだ。けれども今、蒼真の頭の中にはエリカのことしかなく、その足取りは次第に速くなった。
商店街を抜けると、目の前に広がったロータリーの信号が赤に点灯した。しかし、そんなものは気にしない。蒼真は足を止めることなく、信号を無視してそのまま突っ切った。後ろにクラクションの音が響き、車のブレーキ音が遠くで聞こえたが、それでも蒼真は振り返ることなく走り続けた。
駅の構内に突入し、駅中の通路をかき分けるように進む。いつもなら気にしないはずの人々の隙間をすり抜けながら、南口のフード街に差し掛かると、そこでようやく人通りが少しだけ空いた。煌々とした看板の明かりが、夜の街を照らす中、蒼真はさらにペースを上げて走り抜ける。蒸し暑さと焦燥感が交錯する中で、エリカの姿を一心不乱に探しながら、その足音だけが響く静かな夜の街を駆け抜けた。
道を曲がり、細い路地に差し掛かると、井の頭公園はもうすぐそこだ。蒼真の心臓が激しく鼓動し、冷や汗が額を伝う。エリカがいるかもしれない、その一心で。
蒼真は井の頭公園へ向かって駆ける中、汗が額からしたたり落ち、呼吸が荒くなるのを感じた。季節外れの暑さと湿気が体にまとわりつき、空気が重くて息苦しい。胸が高鳴り、走るたびに心臓が速く打つ。
これまでのエリカとの日々が頭の中で駆け巡る。初めて出会ったあの日。ふとしたきっかけで立ち寄った古本屋で、彼女と本について語り合ったこと。小説の世界に夢中になって、気づけば時間が経っていた。その頃のエリカの笑顔が、今も鮮明に浮かんでくる。
そして、夜のカフェで過ごした時間。外の灯りがほのかに照らし、二人でお互いの好きな本を交換しながら、笑い合ったあの瞬間も。静かなカフェで、会話が途切れることなく続き、気づけば何時間も過ぎていた。
あの時のエリカは、何もかもが輝いていた。彼女が僕の前で見せた笑顔、声、全てが忘れられない。だけど、今…今はその全てが遠く感じる。エリカがいないこの時間、胸の奥にぽっかりと空いた穴が広がる。
「エリカ…!」
その名前を心の中で叫びながら、蒼真はさらに速度を上げて走り続けた。あの頃のエリカを、あの温かい時間を取り戻したくて、必死に走る。
蒼真が駆け込んだ井の頭公園は、夜の静寂に包まれていた。昼間は観光客や家族連れで賑わうこの場所も、深夜ともなると人影はまばらで、白く光る街灯だけが点々と並び、静けさの中でぼんやりと闇を照らしていた。
蒼真は息を整えながら、公園の奥へと足を踏み入れた。昼間の喧騒が嘘のように静まり返った井の頭公園は、夜になるとまるで異世界のような雰囲気を纏っていた。
街灯の光は淡く、樹々の間から月の光が差し込んで、石畳の小道や池の水面をぼんやりと照らしている。池の縁に沿って並ぶベンチや、赤い欄干の橋の影が長く伸び、まるで時間が止まったかのような錯覚を覚えるほど、静かで幻想的な空間が広がっていた。
蒼真は橋の上から周囲を見渡し、弁財天の祠へと続く道を進む。池のほとりにある東屋の近く、木々に隠れるようにして誰かが腰を掛けているのが見えた。
そして、その姿を確認した瞬間、蒼真の足が止まる。
月明かりに照らされた色白の肌。
静かな夜の光に透き通るような素肌を持つ少女が、スラリと伸ばした脚を組み、黒縁の眼鏡をかけたまま、膝の上に小さな文庫本を置いていた。
エリカだった。
彼女は、深いネイビーのロングカーディガンを羽織り、その下には白いブラウスと落ち着いた色のスカートを合わせていた。涼しげな夜風がブラウスの裾をかすかに揺らし、柔らかな髪が月光を反射して淡く輝いている。
彼女は静かに文庫本を開き、細い指先でページをめくる。その仕草はどこか儚げで、まるで時間の流れから切り離されたかのようだった。
蒼真の胸が、強く締めつけられる。
会いたかった。何度も探して、それでも見つからなかった彼女が、今ここにいる。
「エリカ——」
声にならない言葉が喉の奥で震える。
蒼真は、一歩、また一歩と足を踏み出した。足音は静寂の中に吸い込まれ、彼女までの距離が、少しずつ縮まっていく。
エリカは息を呑んだ。
夜の静寂を切り裂く足音が、確実にこちらへ向かってくる。
蒼真——。
彼の姿を目にした瞬間、エリカの手は無意識に顔の横へと伸びた。長い前髪を指先で梳き、頬の傷を隠す。
けれど、それだけでは足りない。
視線を下げる。指先に力を込め、袖口を握りしめた。布を少しでも引き伸ばし、手の甲に広がるただれた肌を覆う。
——見られたくない。
皮膚は炎症を起こし、ひりつくような痛みが走る。ところどころ乾燥し、触れるだけでピリピリとした刺激が伝わる。それでも、この手で傷を覆い隠そうとするように、エリカは両腕をぎゅっと胸の前で抱え込んだ。
だが、蒼真は止まらない。
彼の足音が、さらに近づく。
「エリカ…!」
名前を呼ばれる。彼の声は焦燥に満ち、切実だった。
——お願い、来ないで。
胸が締めつけられるほど苦しいのに、口は動かない。身体も硬直し、ただただ息を詰めて立ち尽くすことしかできない。
「エリカ、俺——」
彼がさらに一歩、距離を詰めた瞬間、エリカは条件反射のように身を引いた。
「…来ないで」
掠れた声が、ようやく喉からこぼれ落ちた。
蒼真の動きが止まる。
「エリカ…?」
戸惑うような彼の表情が、月明かりの下ではっきりと見えた。
それでもエリカは、彼に背を向けるようにして肩をすくめ、後ずさる。
「お願い…見ないで…」
震える声だった。涙が滲みそうになるのを必死で堪えながら、それでも彼にこの姿を晒したくなくて、エリカは後ろへと下がっていった。
「エリカ…どうしたんだよ?」
蒼真の声は、混乱と心配が入り混じっていた。
彼は一歩、踏み出そうとする。だが、それを拒むようにエリカはさらに距離を取った。
「本当に…来ないで」
視線を落とし、顔を伏せたまま、震える声で告げる。
「お願いだから…蒼真には、見られたくないの」
夜の風がそっと吹き抜け、静かな水面をわずかに揺らす。井の頭公園の暗がりの中、月明かりだけが彼女の輪郭を淡く照らしていた。
蒼真は、エリカの様子がただ事ではないことを悟る。
「…見られたくないって、どういう意味だよ?」
できるだけ優しい声音で問いかける。
「俺に…何か隠してるのか?」
それは、疑うような言葉ではなかった。ただ純粋に、彼女が何を抱えているのかを知りたかった。
けれどエリカは答えない。
「エリカ…俺は、お前に会いたくてここに来たんだ」
蒼真は、静かに言葉を続ける。
「手紙も読んだ。俺のことを大切に思ってくれてたんだろ?だったら…どうしてそんなふうに、俺を拒むんだよ」
その言葉に、エリカの肩がわずかに震える。
——違う、拒んでるんじゃない。
本当は、会いたかった。ずっと、蒼真のことを考えていた。
それでも、今の自分を見せるわけにはいかない。
彼にこんな姿を見られたら、どう思われるだろう?
幻滅されるかもしれない。気持ち悪いと思われるかもしれない。
——それだけは、嫌だ。
だから、言葉を紡ぐ代わりに、エリカはただ首を横に振った。
「…もう、帰って」
静かに、消え入りそうな声で囁いた。
「帰れって…そんなの納得できるわけないだろ」
蒼真は、眉をひそめたまま立ち尽くす。
エリカはまだ視線を逸らしたまま、頑なに顔を隠し、両手をぎゅっと握りしめている。その仕草が、彼女の本心を雄弁に物語っていた。
本当に突き放したいなら、もっと冷たく、無関心を装うはずだ。それなのに、彼女は声を震わせ、必死に何かを堪えているように見えた。
「なあ…俺、何かしたか?」
蒼真はそっと問いかける。しかしエリカは首を横に振るだけで、何も言わない。
「じゃあ、どうしてそんなに俺を避けるんだよ…!」
思わず声を強めると、エリカの肩がぴくりと震えた。
「…見られたくないの…っ」
かすれた声で、絞り出すように言う。
「私、こんな姿…見られたくない…!」
彼女の拳が、悔しそうに震えていた。
「…エリカ」
蒼真はそっと手を伸ばそうとする。だが、その気配に気づいたエリカが、反射的に後ずさった。
「来ないで!」
彼女の声が、夜の静寂を切り裂いた。
その瞬間、蒼真は動きを止めた。
エリカは荒い息をつきながら、目をぎゅっと閉じていた。
「…そんなに俺に見られるのが嫌なのか?」
蒼真は、できるだけ冷静に言葉を選ぶ。
エリカは、唇を噛みしめたまま動かない。
沈黙が、二人の間を満たしていく。
やがて、エリカが震える声で呟いた。
「…嫌われたくないから…」
夜風がそっと吹き抜ける。
「私は…蒼真に嫌われたくない…」
月明かりに照らされた彼女の横顔は、まるで今にも消え入りそうだった。
エリカは震える手で顔を覆ったまま、必死に距離を保とうとする。
けれど、その場を動こうとはしなかった。
蒼真の呼吸が少し荒くなる。拒まれてもなお、彼女の本心が知りたかった。
「嫌われたくないって…俺がそんなことでお前を嫌うと思うのかよ」
少し苛立ち混じりにそう言うと、エリカはびくっと肩を揺らした。
そして、ゆっくりと視線を上げる。
ほんの一瞬だった。
けれど、その一瞬で、蒼真の目に彼女の傷跡が映り込んだ。
月明かりの下、エリカの透き通るような白い肌に、赤みがかったただれた傷跡が広がっていた。
頬の端、顎の下、そして、隠しきれなかった手の甲まで。
その異様なまでの痛々しさに、蒼真の喉がひゅっと鳴る。
「……エリカ」
彼女はもう、蒼真から目を逸らせなかった。
拒みきれず、恐る恐る覗き込むように蒼真を見つめる。
その瞳には、不安と、哀しみと、諦めのようなものが滲んでいた。
夜風が静かに二人の間を通り抜ける。
言葉が出ない。
蒼真はただ、目の前の現実を受け止めようとしていた。
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