14 / 29
第14話 夢から覚めたら悪夢
しおりを挟む
かくんと首が落ちる衝撃で私は目を覚ました。その後、時間差で首に痛みが走ったことで、一気に眠気が吹き飛び完全に覚醒した
「……首が痛い。こんな姿勢で寝たら、首の一つや二つそら痛めるわよね」
五分程度の小休止のつもりだったけど、どうやら本気で眠ってしまっていたらしい。ここからでは振り子時計も見えないため現時刻を知ることはできないけど、太陽の位置が正面から西に沈んでいる。
たぶん一、二時間ぐらいは眠っていたのかもしれない。それと隣に座っている見知らぬ人は誰だろうか……あの髪色と顔立ちはどこか見覚えがあるような気もするんだけど……思い出せない。
恍惚な表情で息を殺し、私が起きるまでずっと寝姿を眺めてる人物……こんな変質者はカサンドラ姉さん以外にいないと思っていた。
姉さんはまだ家族だからいいとして、こいつはマジで誰なんだ……もしかして私って、いま結構ピンチだったりする? いや、どう考えてもヤバい状況な気がする。叫んで助けを求めようにも、ここには誰もいないし来れない。
あえて私はそういう場所を選んで住処にした。その選択が今頃になって私自身を脅かすことになるとは予想外。
私たち魔女は寿命が長いだけで、他に人間とほとんど変わらない。うわさに尾びれがついているだけで、特に魔法が使えたりとかもしない、見た目通りのか弱い女性なのである。
さてと……どうしたものか、策を講じようにもなんも思いつかないぞ……よし、とりあえずお茶を飲んでリラックスしよう。そうすれば、なんか思いつくはずだ。あとのことはお茶の飲んで閃いた未来の私がきっと解決してくれるはずだ。
私がそう心の中で決意して水筒に手を伸ばしたが、その計画はすぐに破綻した。私よりも先に動き出したあの変質者に水筒を奪われてしまったからだ。
私の手が空を掴むその刹那でさえも、視線をずらさずにずっとこっちを見ていた。
身体を震えが止まらない……冗談抜きで、マジでヤバイ。この樹海の魔女たる私が心の底から怯えている……まばたきも、つばを飲み込むことも、声を出すことも、なにもできない。誰か助けて……誰か……お願い。
私はこの時なぜか姉さんたちじゃなくて、あの少年の顔が浮かんだ。震える身体を必死に抑えて、わずかに残った勇気を振り絞って、彼の名を呼んだ。
「ニール……」
「はい、なんですか。アリシャ?」
その変質者はさっきまでとは別人のように穏やかな表情で、私に向かってそう言った……。
恐怖のあまり聞き間違えたと思った私は、念のためもう一度「ニール?」と彼の名を呼んでみた。すると、変質者は「はい、なんですか。アリシャ?」とまた同じ言葉を繰り返してきた。
私は隣席で笑顔を向けてくる彼の顔をじーっと眺め、記憶の片隅にいるニールと眼前にいるニールが、本当に同一人物なのか頭の中で照らし合わせてみた。
髪色、目の色ともに同じ。声と体格は全然違う。ただ笑った時の顔は……あ~、なるほど。子供の頃と一緒で全く変わってないじゃない。
確かにあの利発な少年の面影がある。たった九年で人間はこれほどまでに成長するのか……目覚めた時に感じた第一印象は案外、的を得ていたってこと? いやいや、だとしてもさすがに育ちすぎじゃない。こんなの誰だって見間違えるわよ。
「えっ、あなた。ほんとにあのニールなの?」
「はい、あなたのニール・フェクシオンです。さっきの震える真似って、僕がアリシャとはじめて会話した時の再現ですか? よく似ていましたよ。とても可愛かったです」
ニールは嬉しそうに笑みを浮かべながらそう言うと、ついさっき私から奪い取った水筒を手渡した。
私は水筒を受け取りつつ彼に「なんで水筒を奪ったの?」と口を尖らせて詰め寄った。すると、ニールは眉をひそめ頬に手を当てしばらく考え込み、私の感情を逆なでするかのように「……困ったアリシャの顔が見たかった」と言い切った。
その言葉を聞いた私は先ほどよりも少し強めの口調で言い返そうと思ったが、彼の顔を見た途端……諦めて水筒を飲むことにした。
彼があどけない表情でこっちを見据えていたからだ。
気のせいかしら……あれ、もしかして……ニールあの頃よりも精神年齢低下してない? 寝ている私を起こそうとしなかったのはなぜ? いや、そもそもどうして彼がここにいるの? もうなにがなんだが意味が分からないわ。
「……首が痛い。こんな姿勢で寝たら、首の一つや二つそら痛めるわよね」
五分程度の小休止のつもりだったけど、どうやら本気で眠ってしまっていたらしい。ここからでは振り子時計も見えないため現時刻を知ることはできないけど、太陽の位置が正面から西に沈んでいる。
たぶん一、二時間ぐらいは眠っていたのかもしれない。それと隣に座っている見知らぬ人は誰だろうか……あの髪色と顔立ちはどこか見覚えがあるような気もするんだけど……思い出せない。
恍惚な表情で息を殺し、私が起きるまでずっと寝姿を眺めてる人物……こんな変質者はカサンドラ姉さん以外にいないと思っていた。
姉さんはまだ家族だからいいとして、こいつはマジで誰なんだ……もしかして私って、いま結構ピンチだったりする? いや、どう考えてもヤバい状況な気がする。叫んで助けを求めようにも、ここには誰もいないし来れない。
あえて私はそういう場所を選んで住処にした。その選択が今頃になって私自身を脅かすことになるとは予想外。
私たち魔女は寿命が長いだけで、他に人間とほとんど変わらない。うわさに尾びれがついているだけで、特に魔法が使えたりとかもしない、見た目通りのか弱い女性なのである。
さてと……どうしたものか、策を講じようにもなんも思いつかないぞ……よし、とりあえずお茶を飲んでリラックスしよう。そうすれば、なんか思いつくはずだ。あとのことはお茶の飲んで閃いた未来の私がきっと解決してくれるはずだ。
私がそう心の中で決意して水筒に手を伸ばしたが、その計画はすぐに破綻した。私よりも先に動き出したあの変質者に水筒を奪われてしまったからだ。
私の手が空を掴むその刹那でさえも、視線をずらさずにずっとこっちを見ていた。
身体を震えが止まらない……冗談抜きで、マジでヤバイ。この樹海の魔女たる私が心の底から怯えている……まばたきも、つばを飲み込むことも、声を出すことも、なにもできない。誰か助けて……誰か……お願い。
私はこの時なぜか姉さんたちじゃなくて、あの少年の顔が浮かんだ。震える身体を必死に抑えて、わずかに残った勇気を振り絞って、彼の名を呼んだ。
「ニール……」
「はい、なんですか。アリシャ?」
その変質者はさっきまでとは別人のように穏やかな表情で、私に向かってそう言った……。
恐怖のあまり聞き間違えたと思った私は、念のためもう一度「ニール?」と彼の名を呼んでみた。すると、変質者は「はい、なんですか。アリシャ?」とまた同じ言葉を繰り返してきた。
私は隣席で笑顔を向けてくる彼の顔をじーっと眺め、記憶の片隅にいるニールと眼前にいるニールが、本当に同一人物なのか頭の中で照らし合わせてみた。
髪色、目の色ともに同じ。声と体格は全然違う。ただ笑った時の顔は……あ~、なるほど。子供の頃と一緒で全く変わってないじゃない。
確かにあの利発な少年の面影がある。たった九年で人間はこれほどまでに成長するのか……目覚めた時に感じた第一印象は案外、的を得ていたってこと? いやいや、だとしてもさすがに育ちすぎじゃない。こんなの誰だって見間違えるわよ。
「えっ、あなた。ほんとにあのニールなの?」
「はい、あなたのニール・フェクシオンです。さっきの震える真似って、僕がアリシャとはじめて会話した時の再現ですか? よく似ていましたよ。とても可愛かったです」
ニールは嬉しそうに笑みを浮かべながらそう言うと、ついさっき私から奪い取った水筒を手渡した。
私は水筒を受け取りつつ彼に「なんで水筒を奪ったの?」と口を尖らせて詰め寄った。すると、ニールは眉をひそめ頬に手を当てしばらく考え込み、私の感情を逆なでするかのように「……困ったアリシャの顔が見たかった」と言い切った。
その言葉を聞いた私は先ほどよりも少し強めの口調で言い返そうと思ったが、彼の顔を見た途端……諦めて水筒を飲むことにした。
彼があどけない表情でこっちを見据えていたからだ。
気のせいかしら……あれ、もしかして……ニールあの頃よりも精神年齢低下してない? 寝ている私を起こそうとしなかったのはなぜ? いや、そもそもどうして彼がここにいるの? もうなにがなんだが意味が分からないわ。
10
あなたにおすすめの小説
英雄の番が名乗るまで
長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。
大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。
※小説家になろうにも投稿
一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました
由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。
ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。
遠い存在になったはずの彼。
けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。
冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
助けた騎士団になつかれました。
藤 実花
恋愛
冥府を支配する国、アルハガウンの王女シルベーヌは、地上の大国ラシュカとの約束で王の妃になるためにやって来た。
しかし、シルベーヌを見た王は、彼女を『醜女』と呼び、結婚を保留して古い離宮へ行けと言う。
一方ある事情を抱えたシルベーヌは、鮮やかで美しい地上に残りたいと思う願いのため、異議を唱えず離宮へと旅立つが……。
☆本編完結しました。ありがとうございました!☆
番外編①~2020.03.11 終了
「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」
透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。
そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。
最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。
仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕!
---
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる