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第19話 久々のお出かけ
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どうして彼が私の家どころか寝室まで入り込んで目覚まし係をしているのか、そしてなぜ私がその身勝手な行動を許しているのか……それは握手を交わした直後の彼の一言から始まった。
私が仮初めとはいえ婚約者になったのをいいことに彼は「王宮へ出立するので身支度をしよう」と、一方的に私の意見も聞かずそう口にした。
私はすぐに「婚約者になるとは言ったが引っ越しをする気はない」と反論をしたが、彼は聞く耳もたず自分の意見を通そうとしてきた。
それからはもう押し問答が延々と続いた……数時間に及び私と彼の意見が平行線のまま決着がつかずにいた。
そこで私は彼にある提案をした。一人ずつここだけは譲れないというものを出し合って、二人が納得できる妥協点を探そうというものだ。
度重なる話し合いの結果、何とか話はまとまり私は王宮に引っ越さずともよくなった。そのおかげで私はいまもこうして慣れ親しんだ家で暮らすことができている。
私がニールに譲歩したものは三つ。彼に家の合鍵を渡すこと、朝の挨拶はかかさずに行うこと、婚約指輪を外さないこと。
逆にニールが私に譲歩したものはたったの一つ。私が自ら望まない限り王宮へ連れて行かないこと。
その朝の挨拶があの目覚まし時計というわけである。
初日は本当に焦った……私はすぐに彼をその場に正座させて、懇々としかりつけた。
怒られているのに彼がなんか嬉しそうにしていたのには、ちょっとだけイラっとした。
乙女の寝室に無断で入り込み、私の寝顔をまじまじと眺めていたのよ、婚約者だからといって、なにをしても許されるわけじゃない。
私は彼に寝室に入ってくる際の条件を新たに課した。起こしに来るのは許すが、部屋の外から声をかけて起こすこと。私が目を覚まして声をかけるまで絶対に部屋に入らないこと。
条件を拒否するかと思っていたけど、彼は迷いもなく「分かりました」と快諾した。
その潔さに私は少しだけ不安を覚えた。
合鍵没収とかにしておいた方がよかったか……とも思ったけど、あまり条件を加えすぎたら今度は彼のターンになってしまう。それだけはなにがなんでも回避しないといけない。
ニールからしてみれば、きっとその程度で済んだことに安堵していたのかもしれない。これを機会に『 朝の挨拶はかかさずに行うこと』の内容について指摘されたり変更されずに済んだからだ。そう『かかさず』とは『休まず』ということ。つまり、彼は毎日私を起こしに来ますと堂々と宣言しているわけだ。
そのことに私が気づくのはもう少しあとの話である。
魔女の制服……正装? に着替えた私は、久方ぶりの外出に心が躍っていた。それはもう心臓が口から飛び出るほどにね。
魔女会以外で樹海の外に出るなんて数十年ぶりだ。いまから向かおうとしているのは人間たちが暮らす王都。しかも、たった一人で向かうことになる。そりゃ……心拍数が上限突破しそうにもなるわよね。
私はまだ家から一歩も外に出ていないにもかかわらず、もう色んな気持ちが溢れて胸がいっぱいになっていた。
最後に戸締りチェックを完了すると、例のママチャリにまたがり王都に向かった。ペダルを漕いでいる間は、なにも考えなくてよかったのでとても気楽だった。樹海を抜けて、王都が視界に入るまで……ですけど。情緒不安定かと自分でツッコミたくなるほど、テンションの上がり下がりが凄まじかった。
王都から百メートルほど離れた位置で、ママチャリから降りずに足で地面を蹴り右往左往していると、そのことに気づいた門番が互いに顔を見合わせては、何かコソコソと話し合い始めた。
門番が時折こっちに向けてくる眼差しが、畏怖すべき魔女というよりも、不憫な子供をあやすような優しさに満ちた目をしていた。
彼らのその視線が心にグサリと突き刺さる……心が痛い……無性に気まずい。
分かってはいる、分かってはいるけど……王都に向けて進もうとすると、私の意に反して勝手にハンドルを左右に切って妨害してくるのよ。
私が仮初めとはいえ婚約者になったのをいいことに彼は「王宮へ出立するので身支度をしよう」と、一方的に私の意見も聞かずそう口にした。
私はすぐに「婚約者になるとは言ったが引っ越しをする気はない」と反論をしたが、彼は聞く耳もたず自分の意見を通そうとしてきた。
それからはもう押し問答が延々と続いた……数時間に及び私と彼の意見が平行線のまま決着がつかずにいた。
そこで私は彼にある提案をした。一人ずつここだけは譲れないというものを出し合って、二人が納得できる妥協点を探そうというものだ。
度重なる話し合いの結果、何とか話はまとまり私は王宮に引っ越さずともよくなった。そのおかげで私はいまもこうして慣れ親しんだ家で暮らすことができている。
私がニールに譲歩したものは三つ。彼に家の合鍵を渡すこと、朝の挨拶はかかさずに行うこと、婚約指輪を外さないこと。
逆にニールが私に譲歩したものはたったの一つ。私が自ら望まない限り王宮へ連れて行かないこと。
その朝の挨拶があの目覚まし時計というわけである。
初日は本当に焦った……私はすぐに彼をその場に正座させて、懇々としかりつけた。
怒られているのに彼がなんか嬉しそうにしていたのには、ちょっとだけイラっとした。
乙女の寝室に無断で入り込み、私の寝顔をまじまじと眺めていたのよ、婚約者だからといって、なにをしても許されるわけじゃない。
私は彼に寝室に入ってくる際の条件を新たに課した。起こしに来るのは許すが、部屋の外から声をかけて起こすこと。私が目を覚まして声をかけるまで絶対に部屋に入らないこと。
条件を拒否するかと思っていたけど、彼は迷いもなく「分かりました」と快諾した。
その潔さに私は少しだけ不安を覚えた。
合鍵没収とかにしておいた方がよかったか……とも思ったけど、あまり条件を加えすぎたら今度は彼のターンになってしまう。それだけはなにがなんでも回避しないといけない。
ニールからしてみれば、きっとその程度で済んだことに安堵していたのかもしれない。これを機会に『 朝の挨拶はかかさずに行うこと』の内容について指摘されたり変更されずに済んだからだ。そう『かかさず』とは『休まず』ということ。つまり、彼は毎日私を起こしに来ますと堂々と宣言しているわけだ。
そのことに私が気づくのはもう少しあとの話である。
魔女の制服……正装? に着替えた私は、久方ぶりの外出に心が躍っていた。それはもう心臓が口から飛び出るほどにね。
魔女会以外で樹海の外に出るなんて数十年ぶりだ。いまから向かおうとしているのは人間たちが暮らす王都。しかも、たった一人で向かうことになる。そりゃ……心拍数が上限突破しそうにもなるわよね。
私はまだ家から一歩も外に出ていないにもかかわらず、もう色んな気持ちが溢れて胸がいっぱいになっていた。
最後に戸締りチェックを完了すると、例のママチャリにまたがり王都に向かった。ペダルを漕いでいる間は、なにも考えなくてよかったのでとても気楽だった。樹海を抜けて、王都が視界に入るまで……ですけど。情緒不安定かと自分でツッコミたくなるほど、テンションの上がり下がりが凄まじかった。
王都から百メートルほど離れた位置で、ママチャリから降りずに足で地面を蹴り右往左往していると、そのことに気づいた門番が互いに顔を見合わせては、何かコソコソと話し合い始めた。
門番が時折こっちに向けてくる眼差しが、畏怖すべき魔女というよりも、不憫な子供をあやすような優しさに満ちた目をしていた。
彼らのその視線が心にグサリと突き刺さる……心が痛い……無性に気まずい。
分かってはいる、分かってはいるけど……王都に向けて進もうとすると、私の意に反して勝手にハンドルを左右に切って妨害してくるのよ。
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