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第5章 流来
第20話 聴聞
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――――エイルミィ西門
閉ざされていた落とし扉が、ゆっくりと吊り上げられ、両開きの大きな西門が開かられる。
そこからダンジョンの状況を確認する為に斥候が慌ただしく飛び出して行った。
それを見送ったエステラが門を潜ると、同時に大歓声が巻き上がる。
この騒ぎの原因が何かあるのかと、エステラは後ろを振り返り、何もない事を確認すると騒ぐ冒険者達の邪魔にならない様に端に寄った。
すると冒険者がエステラを取り囲もうとする。
彼女は慌ててその囲みから逃れようと身を翻した。
(――何なの?)
「お前ら勝手に近づくなっ! ――エステラ君。こちらに来てくれ」
そう言ってギルド長のユストゥスがエステラをエスコートする。
冒険者達が『閃蒼! 閃蒼!』と騒いでいるが、エステラは何を騒いでいるのか分からない。
いつもバルサタールと二人きりで攻略していた彼女は、自分が閃蒼と呼ばれている事を知らないからだ。
だから、いつものように平坦な表情で、ただ騒がしいなとだけ感じていた。
ユスティスに誘われ合同会館の作戦室へ通されると、スタンピードの状況を確認する質問が始まる。
エイルミィのモンスターを知らず、一方的に殲滅したエステラに規模を確認されても答えられない。
赤い毛むくじゃらとか空トカゲがと、見た目の印象で魔物を伝えた。
聞き取りする方に想像力を必要としたやり取りだが、誰も急かさずにゆっくりと進められる。
――――赤い甲冑の奴。
――――大きな真っ黒な楯と斧みたいな槍を持っていた。
そうエステラが答えたとき。
――会議室の全員が息を呑んだ。
最深のゲートキーパー。
凶悪な防御力を誇り近年は誰も挑まなくなったモンスター。
赤の暴君――ペルスヴァルが出現した脅威。
そして――エステラによってペルスヴァルが討伐された事実が衝撃と共に伝わる。
(さすが、絶界の弟子。閃蒼のエステラ。最後に空に現れた彗星が、その攻撃だったのだろう)
そうユストゥスは想像し、冒険者の仁義に則り攻撃法の詮索を故意に避けた。
切り札を聞くのは冒険者の流儀に反する機嫌を損ねかねない行為だからだ。
ユストゥスは領主からかけられた彼女への質問をいなして、ペルスヴァルを倒した方法への問いをやんわりと諫めた。
「――もういいですか? 行きたいところがあるんです」
エステラは文字通りノルトライブへ飛んで行きたかった。
そう言うエステラを領主は引き留める。
そして、領主は皆の前で宣言する。
新たに誕生した英雄を褒めたたえ歓待を約束すると。
(早く――師匠のところに行きたいな)
だが、エステラのその願いは叶わない。
閉ざされていた落とし扉が、ゆっくりと吊り上げられ、両開きの大きな西門が開かられる。
そこからダンジョンの状況を確認する為に斥候が慌ただしく飛び出して行った。
それを見送ったエステラが門を潜ると、同時に大歓声が巻き上がる。
この騒ぎの原因が何かあるのかと、エステラは後ろを振り返り、何もない事を確認すると騒ぐ冒険者達の邪魔にならない様に端に寄った。
すると冒険者がエステラを取り囲もうとする。
彼女は慌ててその囲みから逃れようと身を翻した。
(――何なの?)
「お前ら勝手に近づくなっ! ――エステラ君。こちらに来てくれ」
そう言ってギルド長のユストゥスがエステラをエスコートする。
冒険者達が『閃蒼! 閃蒼!』と騒いでいるが、エステラは何を騒いでいるのか分からない。
いつもバルサタールと二人きりで攻略していた彼女は、自分が閃蒼と呼ばれている事を知らないからだ。
だから、いつものように平坦な表情で、ただ騒がしいなとだけ感じていた。
ユスティスに誘われ合同会館の作戦室へ通されると、スタンピードの状況を確認する質問が始まる。
エイルミィのモンスターを知らず、一方的に殲滅したエステラに規模を確認されても答えられない。
赤い毛むくじゃらとか空トカゲがと、見た目の印象で魔物を伝えた。
聞き取りする方に想像力を必要としたやり取りだが、誰も急かさずにゆっくりと進められる。
――――赤い甲冑の奴。
――――大きな真っ黒な楯と斧みたいな槍を持っていた。
そうエステラが答えたとき。
――会議室の全員が息を呑んだ。
最深のゲートキーパー。
凶悪な防御力を誇り近年は誰も挑まなくなったモンスター。
赤の暴君――ペルスヴァルが出現した脅威。
そして――エステラによってペルスヴァルが討伐された事実が衝撃と共に伝わる。
(さすが、絶界の弟子。閃蒼のエステラ。最後に空に現れた彗星が、その攻撃だったのだろう)
そうユストゥスは想像し、冒険者の仁義に則り攻撃法の詮索を故意に避けた。
切り札を聞くのは冒険者の流儀に反する機嫌を損ねかねない行為だからだ。
ユストゥスは領主からかけられた彼女への質問をいなして、ペルスヴァルを倒した方法への問いをやんわりと諫めた。
「――もういいですか? 行きたいところがあるんです」
エステラは文字通りノルトライブへ飛んで行きたかった。
そう言うエステラを領主は引き留める。
そして、領主は皆の前で宣言する。
新たに誕生した英雄を褒めたたえ歓待を約束すると。
(早く――師匠のところに行きたいな)
だが、エステラのその願いは叶わない。
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