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第5章  流来

第21話  連鎖

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 ノアの元へ。エステラの二年越しの願いは領主の思惑により先送りにされた。

 エステラは、何故なにゆえ、ノアが頑なに貴族や領主と関わりを持たないようにしていたのか、その意味を知る。

 領主からの度重なる士官の勧誘と、エイルミィへの引き留め工作。

 領地を治める彼の者はスタンピードが起こったばかりの領土が安定するまで、エステラを手放したくないのだ。

 エステラにとっては迷惑だが、領主にしごく当然の対策だ。

 ギルド長のユストゥスもとりなしてはいるが、領主と同じで暫くは滞在してもらいたいという本音が透けてみえる。

 ユストゥスは何よりもエステラが戦う姿を見てみたい。

 自身が憧れた絶界ぜっかいの弟子の力をその目で。

 これから音に聞こえるであろう英雄の勇姿。

 その機会を逃したくないのだ。

 ノアなら切りの良いところで手を打って出て行っただろうが、気の良いエステラはそれが出来ない。

 ずるずると領主邸で歓待を受け、日にちだけが過ぎてゆく。

 ストレス発散に料理をしようと厨房に顔を出せば、エイルミィから出向して王都で講習を受けていた料理長がおり、エステラを先生と呼ぶ。

 ぜひと乞われて、ニョッキのジェノベーゼ。

 デザートのクレープシュゼットを教えて、薫り付けのグラン・マニエは王都から取り寄せを薦めた。

 新たな料理は領主一家から絶賛され、エステラが噂のネスリングスのメンバーだと知られる。

 これにより領主からの勧誘の強度が増した。

 ネスリングスが生み出した魅惑の料理。

 その噂は新たな料理法と共に貴族に広まっていた。

 王都ではエルフの影響力とレオカディオの庇護のもと不自由なく過ごすネスリングスだが、王都から離れれば事情は変わる。

 エステラの旅立ちに、レオカディオかパオラが関わっていれば、ノアのように貴族への対策がなされただろう。

 だが、エステラはどちらかと言えば、放任主義のバルサタールと人間の世事に疎いウェンによって送り出された。

 ウェンはエステラへ全てを跳ね除ける力を授け満足し、バルサタールは何事も自分で解決するようにエステラを指導した。

 レオカディオとパオラはウェンのエステラへの可愛がりようを見て、手を出すことを遠慮したのだ。

 二週間が経ち、さすがにエステラも辟易しだした頃。

 その凶報がもたらされる。

 ――新たなスタンピードの予兆。


 ――――負の連鎖は続く。





 ――――ノルトライブ

 今日は週の始まり、お決まりの卵の譲渡会だ。

 俺が指定した種類と数をいつものように頂く。

「私もそろそろエルフの里に行こうと思っています。出かけたら数ヶ月は戻れないと思いますので卵の受け取りは今回が最後という事にしたいのですが」
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