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第5章  流来

第24話  出発

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 今催されている宴会の主役はベルント。俺はおまけかな? 

 ベルントは始まりの農業者達五人の内で二番目に多才だった青年だ。

 彼には菌床キノコ栽培ユニットを成功させる任務がある。

 俺が得意の丸投げだ。

 だってさ、俺がやると動くキノコとかが出来る気がして、手が出せないんだよね。

 実際にモルトが作った薬草は、薬効が倍になっていた。

 一事が万事、器用で得する反面、何か貧乏だ余計な特典が付いて回るのが俺だ。

 今日の料理はベルントを称えてキノコ尽くしだ。

 キノコのアヒージョにキノコのパスタ。

 マッシュルームのポタージュにシイタケの肉詰め。

 エリンギの肉挟み揚げにキクラゲの野菜炒め。

 本シメジの素焼きにブナシメジがふんだんに入った鍋。

 更に肉料理をドーンと用意した。

「ノアさん。明日出発するのですね。――寂しいです」

 イェルダさんがそう言ってくる。

「数か月のお別れでまた戻ってきますよ」

「もう少し先延ばしは出来ませんか?」

(エステラさんがもうすぐ来るはずなんですよ。――引き留めは難しいですかね)

「手がけていた事も片付いて、ちょうど切りが良いんです。今が頃合いかと」

 なにより、早く恩人へ報いたい。

 だから俺はエルフの里へどうしても行かなければならない。

 ――命の恩を返すために。




 ――――翌日

 都市の外で俺はロボトラを取り出す。

「ノア君。――それって?」

 茶色髪の真面目でお人よしのベルントが聞いてくる。

「――王都の最新式だ。伝手で手に入れたんだぞ。凄いだろ?」

 シルバーと黒で構成され、流線と凹凸が混じり合った迫力ボディ-のトラクターだ。

 トラクターにキャンピングトレーラーを取り付け牽引する。

「この車に乗ってくれ、用があるときはこれを押しながら話せば俺に聞こえる」

 ベルントへ無線の使い方を説明しておく。

「それじゃあ。行ってきます」

 見送りにあいさつをしてトラクターへ乗り込む。

「ノアさん。何故か、時間がずれているようです。――それと人間を乗せての牽引は法令違反です」

 女性の声で俺に話しかけてくるのがトラクターのAIだ。

 アイテムボックス内に収納すると時間が止まるから、出すたびに時間のずれを指摘される。

「今は朝の8:10だ。――牽引しての走行は、法令で許可が下りただろ?」

「時間調整完了。曜日も大幅にずれています。太陽の傾斜角度に差異が認められます。先ほどのお言葉ですが、牽引は農業作業機のみ許可が認可されました。人は法令違反です」

「はいはい。五月の二八日だ。――信頼あトラステッドる管理インストーラー者権限プリヴィレジ。――人間の牽引を許可する」

「――受理。指示をどうぞ」

「じゃあ。道なりに出発!」

 エルフの里へ向けて旅が始まる。
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