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第5章 流来
第43話 名刹
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ぜひ見てもらいたいものがあると言われて、やって来た俺だ。
なんでもエルフが管理する聖なる場所だそうだ。
人間が訪れるのは初めてで、大変な名誉を賜ったってことだね。
ウェン師のおかげかな?
アノアディス大師も一緒だぜ。
ニコニコと機嫌が良さそうだ。
真っ白で巨大なバクの霊獣が引く騎獣車で連れて来てもらった。
「ノアちゃん。足元気を付けてね」
「ええ。足腰には自信があるので大丈夫ですよ」
そう言って俺はジェントルに手を差し出し、騎獣車から降りるアノアディス大師をエスコートする。
「あら。ありがとう。優しいのね」
俺はにっこりと笑顔で応える。
はい。長い物には巻かれるタイプなので。
「ノアさん。こちらです」
神秘的な真っ白な岩肌がそびえ立つ崖に精巧なレリーフが彫られている。
正面には四本の巨大な柱が掘り出され、精緻な生き物が描かれている。
西洋の巫女風の衣装の女性が入り口に控えている。
何かの神殿なのかな?
俺は案内されてその中に入る。
どこかで聞いた覚えのある笙の音。
ゆるやかなカノン進行で荘厳に響き渡る。
すると――。
手前側から奥に向かってポツポツと淡やいだ緑の光が灯って行く。
神秘的、かつ幻想的な光景だ。
その光の動きは。まるで俺にその先まで誘うようだった。
動かないエルフの男性へアノアディス大師が促す。
「――奥へ行きましょう」
「……はい。――ノアさんどうぞ」
そう言って男性が先導して行く。
――何だろね?
ほどなく最奥へ到着する。
そこにあったのは流線型の花弁を思わせる豪華な椅子だ。
洗練された人工的なデザインでリクライニングベットを思わせるほど水平で、体を包み込む形をしている。
そこを温かなスポットライトが降り注ぎ、その周囲を際立させている。
これは見る価値があったね。
なんなら、写真に切り取りたいぐらいだ。
たぶんそんなこと口に出したら失礼なんだろうな。
こんな場所に連れてきてくれてありがとう。
荘厳で感情をゆさぶる光景に、感謝を口にしようとすると。
アノアディス大師が俺に声をかけた。
「ノアちゃん。座ってみたら?」
エルフの男性が息を呑む。
――さすがにダメなヤツだ。
俺が遠慮を口にしようとするとアノアディス大師が重ねて言う。
「遠慮はいらないわ。あなたなら大丈夫よ」
逡巡のあと再度断ろうと息を吸うと、アノアディス大師がさらに進めてくる。
「ほら。若い子が何を躊躇っているの? あたしの言うことが聞けないのかしら?」
そう言って俺をドンと押す。
まぁ。そこまで言うならやってやるぜ。
その代わり後で欠けたから弁償しろとか言わないでね?
俺はその椅子に横になる。
――――リリン♪
なっ! なんだとっ! こんなところに罠がっ!
なんでもエルフが管理する聖なる場所だそうだ。
人間が訪れるのは初めてで、大変な名誉を賜ったってことだね。
ウェン師のおかげかな?
アノアディス大師も一緒だぜ。
ニコニコと機嫌が良さそうだ。
真っ白で巨大なバクの霊獣が引く騎獣車で連れて来てもらった。
「ノアちゃん。足元気を付けてね」
「ええ。足腰には自信があるので大丈夫ですよ」
そう言って俺はジェントルに手を差し出し、騎獣車から降りるアノアディス大師をエスコートする。
「あら。ありがとう。優しいのね」
俺はにっこりと笑顔で応える。
はい。長い物には巻かれるタイプなので。
「ノアさん。こちらです」
神秘的な真っ白な岩肌がそびえ立つ崖に精巧なレリーフが彫られている。
正面には四本の巨大な柱が掘り出され、精緻な生き物が描かれている。
西洋の巫女風の衣装の女性が入り口に控えている。
何かの神殿なのかな?
俺は案内されてその中に入る。
どこかで聞いた覚えのある笙の音。
ゆるやかなカノン進行で荘厳に響き渡る。
すると――。
手前側から奥に向かってポツポツと淡やいだ緑の光が灯って行く。
神秘的、かつ幻想的な光景だ。
その光の動きは。まるで俺にその先まで誘うようだった。
動かないエルフの男性へアノアディス大師が促す。
「――奥へ行きましょう」
「……はい。――ノアさんどうぞ」
そう言って男性が先導して行く。
――何だろね?
ほどなく最奥へ到着する。
そこにあったのは流線型の花弁を思わせる豪華な椅子だ。
洗練された人工的なデザインでリクライニングベットを思わせるほど水平で、体を包み込む形をしている。
そこを温かなスポットライトが降り注ぎ、その周囲を際立させている。
これは見る価値があったね。
なんなら、写真に切り取りたいぐらいだ。
たぶんそんなこと口に出したら失礼なんだろうな。
こんな場所に連れてきてくれてありがとう。
荘厳で感情をゆさぶる光景に、感謝を口にしようとすると。
アノアディス大師が俺に声をかけた。
「ノアちゃん。座ってみたら?」
エルフの男性が息を呑む。
――さすがにダメなヤツだ。
俺が遠慮を口にしようとするとアノアディス大師が重ねて言う。
「遠慮はいらないわ。あなたなら大丈夫よ」
逡巡のあと再度断ろうと息を吸うと、アノアディス大師がさらに進めてくる。
「ほら。若い子が何を躊躇っているの? あたしの言うことが聞けないのかしら?」
そう言って俺をドンと押す。
まぁ。そこまで言うならやってやるぜ。
その代わり後で欠けたから弁償しろとか言わないでね?
俺はその椅子に横になる。
――――リリン♪
なっ! なんだとっ! こんなところに罠がっ!
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