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第5章  流来

第70話  急報

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 血路を切り開き、市民を守るギルト長のマティアスの元に、徐々に情報が集まり出す。

「街の北部で青い発光現象? 南部では緑? ……どういう事だ?」

 そこへギルドの警備兵が、追加の報告を持って来る。

「ギルマス。――風颶鳥を見かけたと言う者達が、複数現れました」

「なんだとっ! ……まさか」

 そう言うとギルド長のマティアスは、顎に手を当てて考え込む。

(城楯都市ドゥブロベルクのスタンピード。その時の報告に似ている。……ダンテス公爵家の切り札か? こんな、タイミングで……)

 目立ちたくないノアの意思を汲んで、レオカディオは、最低限の報告をドゥブロベルクの領主へと伝えた。

 城楯都市ドゥブロベルクのスタンピードは、公爵家に所縁のある者が対処した。

 ギルドへもそう伝わっている。

 二万五千に及ぶモンスターを、その形跡を残さず殲滅する集団。

 憶測も含めて、多くの与太話がギルド上層部で吹き荒れた。

 曰く、エルフと取引がなされ、精霊が遣わされた。

 曰く、新たな兵器が開発された。

 曰く、スタンピード対策特務機関が投入された。

 もはや、妄想の様な議論が、本気で取り交わされたのだ。

 さらに都市では、謎の光る板が市民も冒険者も守るように、現れては消える。

 マティアスに続けざまに報告が届いた。

「ギルマス。銀色の巨大な箱が、市民を救出して、シェルターへ導いているようです」

「……なんだ。そりゃ?」

 理解が及ばず聞き返すマティアスに、男は伝える。

「――市民を守る。白い光の板を統べる者のようです。光の守護者と呼ばれ始めています」

「……光の? 守護者?」

 状況が掴めずに、マティアスは混乱する。

(ドゥブロベルクのダジルの事を笑えねぇな。これだけ、意味不明だと判断に困る)

「東側へは、オリヴェルが向かったから、心配あるまい。おいっ! 誰か、ノアの坊主を見た奴はいねぇかっ!」

 誰からも良い返事は返ってこない。

「オリヴェルというと。慈愛の『護傘ごさん』ですか?」

「そうだ。二の打ち要らずが、動き回っていることだろう」

「名誉よりも、他人の人生を護ると傷に誓った英雄ですか」

「あぁ。あいつが居たのは救いだな」

(まったく。うちの最高傑作はどこ行った? 世に名前を轟かせる機会だっていうのに)

 マティアスは、胸の中で現れないノアに悪態をつく。

 城壁を確保したギルド職員が、大声を上げる。

「大変ですっ! 都市から溢れたモンスターが、農業特区へ向かっています」

 ノアがノルトライブに来て五年が経ち、開墾した圃場は順調に作付けされている。

 新たに家が建てられ、村が出来上がり特区と呼ばれていた。

 一五〇世帯。六一〇人が暮らす村だ。
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