上 下
243 / 403
第5章  流来

第78話  秘剣

しおりを挟む
 せめて、じょうがあれば、もう少しましに戦えるのにな。

 俺の剣が通じないのは理解した。

 剣を鞘におさめ、格闘で戦ったほうが、一縷の望みがつながるか?

 蹴りには剣を合わされ、パンツもズタボロだ。

 ――俺は、笑う。

 死ぬまであがけ。そう決めただろ?

 頭をフル回転させる。

 その間もおっさんは攻撃をしてくる。

 それを躱し熱湯を出現させて目潰しにする。

 おっさんは、それで間合いを外した。

 剣は師匠のおっさんに教わったが、俺の武の師匠はじーさまだ。

 俺にはじーさまから教わった剣術が一つだけあった。

 事ここに至り、戯れに、だが真剣に訓練したその技術をモヤが晴れるように思い出した。

 だが、この剣じゃあな。

 そう思うと、――剣が光り出す。

 そして、形を変えて現れたのは太刀だった。

 鞘は朱色へと変わり先端のこじりには美しい装飾が施されている。

 それを見て俺は意を決する。

 納刀すると、腰だめに構える。

 格好が良いからと散々練習した居合の構えだ。

 この世界では初めてだが。。。

 俺は何も、ズタボロになるまでサンドバッグだったわけじゃない。

 こんな成りになるまで、生き延びられたのは、目の前のこいつが、師匠のおっさんじゃないからだ。

 おっさんだったら、たま取られていただろうね。

 だから、こいつはおっさんに似た人形だ。

 戦いながらの実験で分かったが、こいつは初見の攻撃を見極める癖がある。

 初めての攻撃には、ほんの半拍の間があるのだ。

 その一筋の光に賭けよう。

 ジリジリとにじり寄る、今から仕掛ける居合は初見だ。

 俺が居合いを抜く瞬間、そいつは、後ろに飛びのく。

 だが、それを邪魔するように、俺が生み出した魔法の壁がある。

 それを、こいつは剣で切り崩す。

 知っているよ。あんたの剣が変態なのは、それは想定済みだ。

 それで、一手使わせた。

 俺の抜刀が迫る。

 間合いを外そうとする、こいつの背後に炎魔法を発動させる。

 こいつは、それを避ける為に踏み込み、俺の剣を受け、返す刃で上段から切りかかって来た。

 俺は、たいをさばいて、それを躱し、太刀で突き。――そのまま手を放した。

 突きの速度で太刀は飛びそいつに向かう。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

一条物語

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

魔法使いアルル

児童書・童話 / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:2,648

私の夫が未亡人に懸想しているので、離婚してあげようと思います

恋愛 / 完結 24h.ポイント:48,123pt お気に入り:2,060

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:134pt お気に入り:4,866

公爵家の末っ子娘は嘲笑う

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,448pt お気に入り:4,822

【R18】平凡Ω?いいや、俺は嫌すぎΩだ!

BL / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:266

すれ違う恋の行方〈中学編〉

青春 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

処理中です...