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第5章  流来

第87話  業疫

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 光の路。それは、襲い来るモンスターを跳ね除け、安全にギルドへと誘導する。

 ドワーフの男はノルトライブで、そのような出鱈目な事をする人間を一人しか想像できない。

 エルフの庇護を受けた錬金術師だ。

 男はため息をそっと吐くと、切り替えてシェルターへ向かった。


§


「おいっ! オリヴェルはまだ来ねぇのかっ!」

 ギルド長のマティアスが叫ぶ。

 真祖がモンスターを粗方片付け終わった。

 次の挙動がどうなるかを城壁の上から見守る。

「へぃへぃ。呼ばれて来たてやったぜ。叔父貴」

 剣を担いだオリヴェルが面倒くさそうに城壁を登って来る。

「おせぇぞっ! 信号弾が見えなかったのか?」

「目の前に助けを待っている市民が居たからね。――後回しだ」

 マティアスは、大きく息を吐く。

「――それで、S級に上がれなかったのに……懲りないヤツだな」

「アホは死んでも治らんよ?」

「まぁ。いい。あのデカブツがこっちへ来たら、一緒に行くぞ。準備しておけ」

「――あれはっ? 何者だ? モンスターなのか?」

「分からん。だが、耐久が高く。動きは遅いが攻撃も強力だ」

 真祖が最後のザザンをメイスで討ち取った。

 マティアスの見つめる中、真祖はゆっくりとメイスを体の正面に下ろすと、その柄に両手をのせた。

 敵から畑を守る番兵の様な姿だ。

 動きが止まると鳥達がいずこからともなく集まり、その肩に止まる、そして、実った豆をついばみ出した。

「……動きが、止まったな?」

「なんだよっ! 大丈夫なら、俺は行くぜ? なんかあったら呼んでくれ」

 そう言って、オリヴェルは城壁を跳び下りて駆けだした。

 その後、数十分まんじりともしない真祖の巨人。

 ――と。真祖は一度身じろぎして、鳥を離れさせると光の粒子となって消えて行った。

「光? 黒煙で無いなら、モンスターでは無いのか?」

 マティアスはそう小さく呟いた。





 のぅわぁ~っ! バングルが勝手に動くとは聞いていないぞ。

 俺の右腕が漆黒のヌクレオ迷宮核に触れる。

 ダンジョンが鳴動する。

 そして、正三角形を八つ集めた菱形の立体からなるヌクレオ迷宮核の下部から、剥がれ落ちるように白い蝶が現れ白く燃えてゆく。

 それはハラハラと広がり、漆黒が徐々に元の青紫へと変わって行く。

 『カルマ免疫発動中』頭に浮かんだのは、点滅するその説明だ。

 ストはいつの間にか終わったらしい。アイテムボックスから外套を取り出し身に纏う。

 ヌクレオ迷宮核を俺とサイネさん、アネリアさんの三人が見つめる。
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