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第6章  罪咎

第104話  終章Ⅸ ~種は移る~

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 シルビニオンは治療を学ぶ事を望んだ。

 この世界は傷の治療が容易いが、先天的なハンディキャップは対処法が確立されていない。また、病気に対しても、それの原因を具体的に理解しないと治癒魔法が効果を及ぼさない。

 一人の貴族の少女がいた。彼女は先天的に眼が見えず。メイドの読み聞かせで閑暇を紛らせ過ごしていた。

 彼女の職業は錬金術師。自分の住むノルトライブに王民事業体イーディセルが立ち上がり。その様子を風の噂には聞き及んでいた。

 ある日。その事業体で医療部門の立ち上げの計画を耳にする。詳しく尋ねると自分のように眼の見えない者や耳の聞こえない者へと光をもたらす取り組みだという。

 縋る思いで親のコネすら使いその責任者に会いに行った。

 穏やかな声のまだ若そうな青年はその日彼女に光を与えた。その時の感動を。止めどない涙を忘れたことはない。

 彼女は、はしたなくも生まれて初めて走った。自分の生み出した風がこんなにも心地良いなんて。世界がこんなにも彩に溢れているなんて。

 彼女は青年から錬金を学ぶことを決意する。基礎は既に学んでいたが古代真聖語だという紋を一から学んだ。その理念に感銘を受けた彼女は苦も無くそれを修めてゆく。

 彼の青年はそれに留まらない。古代真聖紀から発掘されたというエルフの書物の写本。彼によって寄贈された医学書と書かれた人体と病気のその教本により、治癒師は新たな路を進む。そして、不治と呼ばれていた病すら克服する。

 王国最先端の医療はノルトライブで発足した。逆輸入する形で王都へ移管する目前にくだんの青年から一報が入る。

 東の街。グエディンで最高峰の医療部門を発足させたい。準備はしておく。

 職業が医工錬金術師になった少女は薫陶を受けた恩を返すべくそこを目指した。

 ノアが去って数か月。引きも切らずに馬車が街にやって来る。医療に関しては最先端の設備を整えた立派な学術研究病棟。街の中央に建設さていた。

 その入り口には壮麗な立像がある。
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