402 / 403
第7章 獄窟
第37話 福腹
しおりを挟む
マスターは執務室に併設された仮眠室のベッドに横になると、たちまち眠りに落ちた。それを見届けパオラは静かに一階の食堂へと向かった。
予定のあった商会との打ち合わせが終わったこの時間は、中途半端で空いていた。
「いらっしゃい。パオラさん。こんな時間に珍しいわね」
フロアー担当のアリーシャがいつものように朗らかに声をかけてくれる。
「あっ! いらっしゃい。パオラさん」
その声を聞き取ったのか、調理のリーダーのクラーラが厨房からひょっこり顔を出す。
「今日のメニューは?」
それにクラーラが、元気に飛び上がり答える。
「えっと! ナシゴレン。ガパオライス。あとね。醤油ラーメンだね。餃子セットもあるよ。スープは野菜とミネストローネだね」
「じゃあ。サラダは?」
「えぇっとぉ~ お通しが揚げ豆腐のサラダなんだよ」
「へぇー。美味しそう。――――じゃぁ。今日のまかないは?」
「ふっふっふっ! ノアさん新作レシピのかやくご飯! たまらんのよぉ~」
少し悩んだパオラはオーダーを決めた。
「ナシゴレンとガパオライスのMIX。ラーメン中盛り麺カタ。餃子半チャンセット。まかないもね」
「はぁーいっ!」
クラーラが元気よく返事をする。ツッコミ不在で事態は動く。
まずはお通し、手のひらサイズの器に盛られた揚げ豆腐のサラダ。彩も鮮やかで醤油をベースにした酸味の効いたドレッシングが食欲を誘う。
パオラがそれを半分程食べたところで次の料理が配膳された。
米にしっかり味を付けて炒められたナシゴレンの隣には、ガパオの挽肉がのった白いライスが同居する。良く焼いた目玉焼きは両方に二つ。通常より大皿に盛られたMIXだ。
ガパオの白飯はナシゴレンさえおかずとなりパオラの口に運ばれる。そのためそれの減りが速い。
少し汁物が欲しいなという絶妙なタイミングで中盛り麺カタのラーメンが配膳される。
鶏ガラの香りに混ざりネギの匂いを移した鶏油が食欲を掻き立てる。そして、パオラはやっとできるようになった啜りでズズズと麺を吸い込む。
麺が伸びないように半分ほど食べたら、スープをレンゲで口へ運びMIXを片付けにかかる。
味の変化で口が喜んでいる。MIXを口に運び、麺を啜り、スープを飲む。そのローテーションでMIXが無くなる頃、届けれたのは半チャンギョーザセット。
香味の強いMIXに比べるとチャーハンは安定の醤油味だ。焦げた米と卵が風味を増幅する。そして、味覚をリセットする餃子。ニンニクとニラのダブル主演だ。
チャーハンが無くなる頃にはラーメンのスープも飲み干していた。
「今日も幸せ美味しかった」
ふぅぅっ~とお腹をさするパオラ。
予定のあった商会との打ち合わせが終わったこの時間は、中途半端で空いていた。
「いらっしゃい。パオラさん。こんな時間に珍しいわね」
フロアー担当のアリーシャがいつものように朗らかに声をかけてくれる。
「あっ! いらっしゃい。パオラさん」
その声を聞き取ったのか、調理のリーダーのクラーラが厨房からひょっこり顔を出す。
「今日のメニューは?」
それにクラーラが、元気に飛び上がり答える。
「えっと! ナシゴレン。ガパオライス。あとね。醤油ラーメンだね。餃子セットもあるよ。スープは野菜とミネストローネだね」
「じゃあ。サラダは?」
「えぇっとぉ~ お通しが揚げ豆腐のサラダなんだよ」
「へぇー。美味しそう。――――じゃぁ。今日のまかないは?」
「ふっふっふっ! ノアさん新作レシピのかやくご飯! たまらんのよぉ~」
少し悩んだパオラはオーダーを決めた。
「ナシゴレンとガパオライスのMIX。ラーメン中盛り麺カタ。餃子半チャンセット。まかないもね」
「はぁーいっ!」
クラーラが元気よく返事をする。ツッコミ不在で事態は動く。
まずはお通し、手のひらサイズの器に盛られた揚げ豆腐のサラダ。彩も鮮やかで醤油をベースにした酸味の効いたドレッシングが食欲を誘う。
パオラがそれを半分程食べたところで次の料理が配膳された。
米にしっかり味を付けて炒められたナシゴレンの隣には、ガパオの挽肉がのった白いライスが同居する。良く焼いた目玉焼きは両方に二つ。通常より大皿に盛られたMIXだ。
ガパオの白飯はナシゴレンさえおかずとなりパオラの口に運ばれる。そのためそれの減りが速い。
少し汁物が欲しいなという絶妙なタイミングで中盛り麺カタのラーメンが配膳される。
鶏ガラの香りに混ざりネギの匂いを移した鶏油が食欲を掻き立てる。そして、パオラはやっとできるようになった啜りでズズズと麺を吸い込む。
麺が伸びないように半分ほど食べたら、スープをレンゲで口へ運びMIXを片付けにかかる。
味の変化で口が喜んでいる。MIXを口に運び、麺を啜り、スープを飲む。そのローテーションでMIXが無くなる頃、届けれたのは半チャンギョーザセット。
香味の強いMIXに比べるとチャーハンは安定の醤油味だ。焦げた米と卵が風味を増幅する。そして、味覚をリセットする餃子。ニンニクとニラのダブル主演だ。
チャーハンが無くなる頃にはラーメンのスープも飲み干していた。
「今日も幸せ美味しかった」
ふぅぅっ~とお腹をさするパオラ。
0
あなたにおすすめの小説
最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。
棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜
リョウ
ファンタジー
僕は十年程闘病の末、あの世に。
そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?
幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。
※画像はAI作成しました。
※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる