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15.新居?
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『なんだ!この煌びやかな馬車は⁉︎』
ローランド殿下が帰る時間になりお見送りに来ている。公爵家の馬車も凄いが比じゃない。
騎士が20人近くいて注目され居た堪れない。何故なら殿下が名残惜しそうに私に抱きしめている。
そう。殿下は加護持ちの為素手で女性に触れない。それが目の前で殿下が嬉しそうに女性に素手で触れている光景が信じられない様だ。
騎士の好奇の視線の中で間近で鋭い視線が私に突き刺さる。殿下至上主義のアレックスさんだ。
中々離れない私に苛ついている様だが、殿下が離れてくれないんだからね!私を悪者にしないでよ!
「殿下!そろそろ出発されないと日没までに森を抜けれませんよ!」
「大丈夫。もう少し…」
目の前にイライラしたアレックスさんで、後ろに殿下にイライラするミハイルさんとジョシュさんで板挟みだ。いかん…ちょっとムカついてきた!
「殿下!しつこいのは嫌いです。家臣の皆さんや騎士様がお待ちです。また資料室をお借りするのに登城しますから今日はお帰り下さい」
「不敬だそ!殿下に寵愛されていい気なるな!」
「アレックス!あれ程春香に失礼な発言はやめろといってあるだろう!」
「ですが、殿下はこのレイシャル王国の王子ですぞ!」
すると後に控えていたレイモンド様が
「殿下。発言をお許しいただきたい」
「いいぞ」
「春香は初めて我が領地に来たは夕暮れ。森で野獣に襲われており、夕暮れの森に恐怖を覚えております。殿下がお帰りが遅くなり殿下の身に何か起こる事を心配しての発言です。殿下の出発が遅れれば春香は心配で夜も眠れないでしょう。春香の心情を汲み取っていただきたい」
「春香…」
「ぅっげ!」
殿下の腕の力が強まり変な声が出た。く…苦しい。
殿下の背中を叩いて苦しさをアピる。
やっと緩めてくれたけど両手で頬をホールドし、めっちゃ見つめてくる。綺麗な瞳だなぁ…って思っていたら顔が近く!
「殿下!まだそこまで気を許していません!嫌です!」
「ならば頬なら…いいか?」
「……頬だけですよ」
「ありがとう!」
殿下は頬に口付けを何度もする。しつこい!手の平で殿下の口を防ぐと、手の平にも口付けてくる。
「殿下!お帰りを!」
「ごめん。次登城が決まれば知らせを寄越してくれ。予定を空ける」
「連絡はしますが予定は変更して頂かなくて結構です。ご挨拶するだけですから公務をなさって下さい」
『も!いい加減にして!』
殿下の手を取り馬車に歩いて行き、馬車前に控える騎士さんに「開けて下さい」とお願いした。
慌てて騎士さんが馬車の扉を開け殿下を逆エスコートとし馬車に乗車させて笑顔で
「殿下。今日はありがとうございました。登城日が決まりましたらお知らせいたします」
お辞儀して手を振り畳み掛けてやった。そしてアレックスさんに目線を送り口パクで『早く出発して!』と伝える。
呆気に取られてたアレックスは少し笑いながら
「今より帰城する」と言いながら私の横を通り過ぎて行った。
殿下は馬車の窓を開けて何か甘い言葉セリフを囁きますが、全く耳に入りません。とりあえず帰れ!
そして馬が嘶きやっと馬車が出発した。順次騎乗した騎士さんも出発する。すると騎乗したアレックスさんが私の横に来て照れ臭そうに
「お前の事はよく思っていないが、帰城を促してくれ礼を言う」
「はぁ…」
なんだちゃんとお礼言えるじゃん。でもはっきり嫌い宣言されましたけどね。
背後から笑い声がして振り返るとレイモンド様とアビー様が大笑いしている。ミハイルさんは駆け寄りハンカチを取り出して私の頬を拭きだす。
「春香は私の婚約者なのに!」
と怒っている。でもミハイルさん婚約はあくまで(仮)ですからね!私からしたら殿下とミハイルさんもほぼほぼ同じですから!
「皆んなよくやってくれた。私達は早く休むから、皆んなもゆっくりしなさい」
レイモンド様が家臣の皆さんを労う。私も早く休むために部屋に戻ろうとすると、ミハイルさんに手を取られ部屋まで送ると言われた。今日は勘弁して欲しい。殿下疲れでお相手する気力が無い。
そこにジョシュさんも来て、私の頭上で睨み合いが始まる。この場を納めて部屋で寝転がりたい。
2人を見上げて手招きをすると2人は屈み顔が近づく。
“ちゅっ” ”ちゅっ”
「「!!」」
2人の頬に手を添えて交互に頬にキスをした。今日はこれで解放して!
「疲れたので失礼します」
捕まらないうちに部屋に急いだ。エントランスの入口でアビー様とすれ違い挨拶すると親指を立てウィンクされた。
こんな事するキャラじゃ無いんだけど、これ位しないと解放してくれない。部屋に急ごうとするとテリーさんに会った。お互いお疲れ様の挨拶をしたら
「春香様。アレックス殿ですが誤解の無い様に願いたい。確かにこの国の男性には珍しく女性に厳しい。しかし道理的に間違った事は言っていないのです。ただ物言いがキツイのと殿下に対する忠誠心が誰よりも強いだけです」
「親しいんですか?」
「いえ、遠縁にあたりアレクが小さい頃はよく剣術を教えました」
「第一印象は良くないですね。でも護衛していただくので指示にはちゃんと従いますよ。仲良くは無理でしょうが…」
驚いた顔をして
「何故です?」
「だって!さっきハッキリ”よく思ってない”っていわれましたから!」
「…」
「どぅしましたか?」
「いゃ…アレクの対応がめずらしくて。あいつは好まない者には話すらしない。意外に春香様は気が合うのかもしれません」
「やめて下さい!私の関わらない人リストに入っているんですから!」
テリーさんは笑いながら”アレックスさんの対応が酷い時は相談下さい”と言って去って行った。
確かに間違った事は言ってないけど、決めつけが酷いく、やっぱりあの人好きくない!
やっと部屋に着いて直ぐにドレスを脱いで浴室に直行。バスタブにハーブを浮かべてリラックスする。今日ここを出る事が決まった。今から色々決めるけどまた環境が変わり精神的に負担だ。
町屋敷では屋敷の手伝いをして自分の事は自分でしよう。その方が気楽だ…
マリーさんに長湯を指摘され危うく湯あたりするところだった。たくさん水分を取ったら夕食は要らなくなり、マリーさんに夕食を断ってもらい寝室で休む。ベッドに寝転がるとすぐ眠ってしまったようで、目が覚めて時計を見たら3時前だ。何となくベランダに出て空を見上げたら、空が遠くから明るくなってきている。
「・・か…」
「ん?」
「した!」
下を見るとミハイルさんがいた。朝稽古していたのか汗まみれだ。稽古着の半袖から出た二の腕と胸元が見えている。朝から刺激が強い!
「そっちに行っていいか?」
「へ?はい?」
『ん?ここ2階だよ⁈』
ミハイルさんはベランダに近い大木に登り始め、枝伝いにベランダに来た。大柄なのに凄い身軽だ。
「疲れは残って無いか?」
「あっはぃ…」
「昨晩は夕食に来なかったから心配した」
「すみません。食欲無くて」
「朝は食べれそうか?」
「はい」
すると真っ赤な顔をして
「…いいなぁ…」
「何がですか?」
「朝の始まりに春香の顔を見れるのは」
「!」
サラッと恥ずかしい事言わないで欲しい。ミハイルさんはハグしかけて躊躇して、額にキスだけしてまた木に飛び移り下に降りた。
「春香。朝食を共にしよう。待ってるよ」
そして爽やか笑顔で去っていった。も!アニメやラノベなら胸キュンなワンシーンだけど自分がされると、どうしていいか分からない。朝から変な汗をかいてしまった。
町屋敷に移る事が決まってから数日経ち、レイモンド様が殿下に伺いをたてながら町屋敷の準備をしてくれています。レイモンド様が町屋敷のリフォームに忙しく領地の管理をミハイルさんがしている為、ここ数日彼も忙しいみたいで顔を見ていません。
ジョシュさんも王宮騎士団の体制が変わるとかやらで、登城が増え町屋敷や騎士団の宿舎で泊まる事が増えて会えていない。2人からのアプローチが無くなり気楽なはずだけど、なんと無く淋しい気もしています。贅沢ですね。
殿下の訪問があってから20日経ち町屋敷の目処が立ち、久しぶりにシュナイダー家の皆さんが集まる事になった。クロードさんに呼ばれてレイモンド様の執務室に向かいます。
「春香!」
前からミハイルさんが走ってきます。何日ぶりだろうミハイルさんの顔見るの。
「お疲れ様です。お仕事は大丈夫ですか?」
「片付けてきたよ。今日は夕食も共にできるよ」
なんかこそばい感覚に戸惑う。ふと見るとミハイルが手を差し伸べてくれている。手を重ねるとミハイルさん指が絡み所謂『恋人つなぎ』になった。
初めての『恋人つなぎ』にドキドキして見上げたら、反対の手で後頭部を支え額に口付けをされた。鼓動が激しい!今日の私は変だ…
レイモンド様の執務室に着くとレイモンド様とアビー様がテーブルの書類を見ながら話をされていた。
入室するとレイモンド様が来てミハイルさんの手を離してハグし、アビー様の横に座らせて私の横に座った。アビー様はずっと私の頭を撫でている。なんでお二人に挟まれているんだろう…
「父上、母上!春香の婚約者は私です。邪魔しないでいただきたい」
「私達も久しぶりに春香ちゃんに会えたのよ!どうせ夕食後にラウンジで逢瀬を楽しむのでしょう!今は父と母に譲りなさい」
どうやらこの屋敷にアビー様の押しに抗える人はいないらしい。レイモンド様は黒く長い筒をデスクから持って来て、筒の中から紙を出してテーブルに広げた。どうやら町屋敷の図面のようだ。
「あれ?これって…増築?」
「おぉ!春香は博識だなぁ!そう町屋敷の図面だ。朱書きしている部分が増築部とリフォーム部だ」
「ん?敷地も広がってる?」
「春香は話が分かるから早くていいよ。ゴラスの令嬢はこうはいかない。殿下が騎士の待機室と使用人の部屋を用意するように指示があり、我が町屋敷では狭いと申された。丁度隣の男爵家の町屋敷が先月から売りに出されてウチが買ったんだ。隣の境を取っ払い男爵家の屋敷をリフォームし、そこを使用人の居住区とし新たに騎士の待機室と仮眠室を増築する」
なんか凄い事になってる。単純に町屋敷に私の部屋が一屋出来て、毎日城から騎士さんが来るくらいに思っていた。図面を見ると町屋敷も増築し、1階と2階に2部屋増築される。
1階は応接室とリビング、キッチンダイニング
2階は客間が4室
3階はシュナイダー家用の寝室
増築部は
1階はミハイルさんの執務室と仮眠室
2階は私の部屋
(トイレ、浴室は各部屋に設置)
元の屋敷と増築部は階段で繋がれ上から見るとコの字型になる。図面の横には使用人の配置表があり見ていたら凄い人数!今の倍⁈
「レイモンド様?この使用人の数間違っていませんか?」
「いや。最低これくらいは必要だ。近いウチに雇うつもりだ」
料理人は1人から3人
従僕は2人から4人
メイドは3人から5人
庭師は現状通り2人
馬番が1人から2人
侍女は新たに2人
執事及び責任者を新たに1人 計10人増員
「あの…侍女さんは必要ありません。私は町屋敷では自分の身の回りは自分でするし、屋敷では手伝うつもりなので、メイドさんもこんなに必要ないです」
「春香は登城や学ぶ時間がある故、侍女や家臣の者に任せればいい」
「自分の事は自分でしたいんです。だから侍女さんは必要ありません。登城する時に少しお手伝いいただくだけでいい」
レイモンド様は引く気配は無い。でも初めにちゃんと決めとかないと!するとアビー様が
「春香ちゃんの考えは分かったわ。しかし私も町屋敷に泊まる事が増えるわ。私には侍女は必要よ。人員はこのままで、春香ちゃんは希望通り自分の事は自分でし、必要な時は侍女にて頼ればいいわ。
貴女がしたい様にすればいいの」
「すみません。我儘言って…でも私が殿下が用意した屋敷が嫌だって言ったせいで、公爵様にお金いっぱい使わせてしまっている。私返すもの何も無いのに…」
「!」レイモンド様とアビー様に両サイドから強く抱きしめられて…
「春香の国では親に施して貰ったら子は返すのか?」
「いえ…」
「私達は春香を娘だと思っている。返すなんて哀しい事言わないでくれ」
「……」
「いい子過ぎるから自分本位になりなさいって言わなかった⁈娘の我儘をきくのも親の喜びなのよ。もっと頼って親を喜ばせなさい」
なんだろう親を亡くしてから1人で何でもしてきたから頼り方とか忘れてしまった。お二人の温かさに胸が熱くなり涙が溢れた。レイモンド様が頭を撫でて、アビー様が涙を拭ってくれる。
「ありがとうございます。ではレイモンド様とアビー様にお任せします」
「急がなくていいから、いつか”お父様、お母様”と呼んでくれ」
照れ臭くて俯きながら頷いた。
ふと図面が目に入り増築部の1階が目に入った。ミハイルさんの執務室と仮眠室?
「レイモンド様。増築部の1階って…」
「あー。春香と共にミハイルも町屋敷に移る」
「へ?」
目の前のミハイルさんが凄い嬉しそうな顔をしている。これって…
『実質の新居!』
知らない間にミハイルさんとの婚姻準備に入っている!
ローランド殿下が帰る時間になりお見送りに来ている。公爵家の馬車も凄いが比じゃない。
騎士が20人近くいて注目され居た堪れない。何故なら殿下が名残惜しそうに私に抱きしめている。
そう。殿下は加護持ちの為素手で女性に触れない。それが目の前で殿下が嬉しそうに女性に素手で触れている光景が信じられない様だ。
騎士の好奇の視線の中で間近で鋭い視線が私に突き刺さる。殿下至上主義のアレックスさんだ。
中々離れない私に苛ついている様だが、殿下が離れてくれないんだからね!私を悪者にしないでよ!
「殿下!そろそろ出発されないと日没までに森を抜けれませんよ!」
「大丈夫。もう少し…」
目の前にイライラしたアレックスさんで、後ろに殿下にイライラするミハイルさんとジョシュさんで板挟みだ。いかん…ちょっとムカついてきた!
「殿下!しつこいのは嫌いです。家臣の皆さんや騎士様がお待ちです。また資料室をお借りするのに登城しますから今日はお帰り下さい」
「不敬だそ!殿下に寵愛されていい気なるな!」
「アレックス!あれ程春香に失礼な発言はやめろといってあるだろう!」
「ですが、殿下はこのレイシャル王国の王子ですぞ!」
すると後に控えていたレイモンド様が
「殿下。発言をお許しいただきたい」
「いいぞ」
「春香は初めて我が領地に来たは夕暮れ。森で野獣に襲われており、夕暮れの森に恐怖を覚えております。殿下がお帰りが遅くなり殿下の身に何か起こる事を心配しての発言です。殿下の出発が遅れれば春香は心配で夜も眠れないでしょう。春香の心情を汲み取っていただきたい」
「春香…」
「ぅっげ!」
殿下の腕の力が強まり変な声が出た。く…苦しい。
殿下の背中を叩いて苦しさをアピる。
やっと緩めてくれたけど両手で頬をホールドし、めっちゃ見つめてくる。綺麗な瞳だなぁ…って思っていたら顔が近く!
「殿下!まだそこまで気を許していません!嫌です!」
「ならば頬なら…いいか?」
「……頬だけですよ」
「ありがとう!」
殿下は頬に口付けを何度もする。しつこい!手の平で殿下の口を防ぐと、手の平にも口付けてくる。
「殿下!お帰りを!」
「ごめん。次登城が決まれば知らせを寄越してくれ。予定を空ける」
「連絡はしますが予定は変更して頂かなくて結構です。ご挨拶するだけですから公務をなさって下さい」
『も!いい加減にして!』
殿下の手を取り馬車に歩いて行き、馬車前に控える騎士さんに「開けて下さい」とお願いした。
慌てて騎士さんが馬車の扉を開け殿下を逆エスコートとし馬車に乗車させて笑顔で
「殿下。今日はありがとうございました。登城日が決まりましたらお知らせいたします」
お辞儀して手を振り畳み掛けてやった。そしてアレックスさんに目線を送り口パクで『早く出発して!』と伝える。
呆気に取られてたアレックスは少し笑いながら
「今より帰城する」と言いながら私の横を通り過ぎて行った。
殿下は馬車の窓を開けて何か甘い言葉セリフを囁きますが、全く耳に入りません。とりあえず帰れ!
そして馬が嘶きやっと馬車が出発した。順次騎乗した騎士さんも出発する。すると騎乗したアレックスさんが私の横に来て照れ臭そうに
「お前の事はよく思っていないが、帰城を促してくれ礼を言う」
「はぁ…」
なんだちゃんとお礼言えるじゃん。でもはっきり嫌い宣言されましたけどね。
背後から笑い声がして振り返るとレイモンド様とアビー様が大笑いしている。ミハイルさんは駆け寄りハンカチを取り出して私の頬を拭きだす。
「春香は私の婚約者なのに!」
と怒っている。でもミハイルさん婚約はあくまで(仮)ですからね!私からしたら殿下とミハイルさんもほぼほぼ同じですから!
「皆んなよくやってくれた。私達は早く休むから、皆んなもゆっくりしなさい」
レイモンド様が家臣の皆さんを労う。私も早く休むために部屋に戻ろうとすると、ミハイルさんに手を取られ部屋まで送ると言われた。今日は勘弁して欲しい。殿下疲れでお相手する気力が無い。
そこにジョシュさんも来て、私の頭上で睨み合いが始まる。この場を納めて部屋で寝転がりたい。
2人を見上げて手招きをすると2人は屈み顔が近づく。
“ちゅっ” ”ちゅっ”
「「!!」」
2人の頬に手を添えて交互に頬にキスをした。今日はこれで解放して!
「疲れたので失礼します」
捕まらないうちに部屋に急いだ。エントランスの入口でアビー様とすれ違い挨拶すると親指を立てウィンクされた。
こんな事するキャラじゃ無いんだけど、これ位しないと解放してくれない。部屋に急ごうとするとテリーさんに会った。お互いお疲れ様の挨拶をしたら
「春香様。アレックス殿ですが誤解の無い様に願いたい。確かにこの国の男性には珍しく女性に厳しい。しかし道理的に間違った事は言っていないのです。ただ物言いがキツイのと殿下に対する忠誠心が誰よりも強いだけです」
「親しいんですか?」
「いえ、遠縁にあたりアレクが小さい頃はよく剣術を教えました」
「第一印象は良くないですね。でも護衛していただくので指示にはちゃんと従いますよ。仲良くは無理でしょうが…」
驚いた顔をして
「何故です?」
「だって!さっきハッキリ”よく思ってない”っていわれましたから!」
「…」
「どぅしましたか?」
「いゃ…アレクの対応がめずらしくて。あいつは好まない者には話すらしない。意外に春香様は気が合うのかもしれません」
「やめて下さい!私の関わらない人リストに入っているんですから!」
テリーさんは笑いながら”アレックスさんの対応が酷い時は相談下さい”と言って去って行った。
確かに間違った事は言ってないけど、決めつけが酷いく、やっぱりあの人好きくない!
やっと部屋に着いて直ぐにドレスを脱いで浴室に直行。バスタブにハーブを浮かべてリラックスする。今日ここを出る事が決まった。今から色々決めるけどまた環境が変わり精神的に負担だ。
町屋敷では屋敷の手伝いをして自分の事は自分でしよう。その方が気楽だ…
マリーさんに長湯を指摘され危うく湯あたりするところだった。たくさん水分を取ったら夕食は要らなくなり、マリーさんに夕食を断ってもらい寝室で休む。ベッドに寝転がるとすぐ眠ってしまったようで、目が覚めて時計を見たら3時前だ。何となくベランダに出て空を見上げたら、空が遠くから明るくなってきている。
「・・か…」
「ん?」
「した!」
下を見るとミハイルさんがいた。朝稽古していたのか汗まみれだ。稽古着の半袖から出た二の腕と胸元が見えている。朝から刺激が強い!
「そっちに行っていいか?」
「へ?はい?」
『ん?ここ2階だよ⁈』
ミハイルさんはベランダに近い大木に登り始め、枝伝いにベランダに来た。大柄なのに凄い身軽だ。
「疲れは残って無いか?」
「あっはぃ…」
「昨晩は夕食に来なかったから心配した」
「すみません。食欲無くて」
「朝は食べれそうか?」
「はい」
すると真っ赤な顔をして
「…いいなぁ…」
「何がですか?」
「朝の始まりに春香の顔を見れるのは」
「!」
サラッと恥ずかしい事言わないで欲しい。ミハイルさんはハグしかけて躊躇して、額にキスだけしてまた木に飛び移り下に降りた。
「春香。朝食を共にしよう。待ってるよ」
そして爽やか笑顔で去っていった。も!アニメやラノベなら胸キュンなワンシーンだけど自分がされると、どうしていいか分からない。朝から変な汗をかいてしまった。
町屋敷に移る事が決まってから数日経ち、レイモンド様が殿下に伺いをたてながら町屋敷の準備をしてくれています。レイモンド様が町屋敷のリフォームに忙しく領地の管理をミハイルさんがしている為、ここ数日彼も忙しいみたいで顔を見ていません。
ジョシュさんも王宮騎士団の体制が変わるとかやらで、登城が増え町屋敷や騎士団の宿舎で泊まる事が増えて会えていない。2人からのアプローチが無くなり気楽なはずだけど、なんと無く淋しい気もしています。贅沢ですね。
殿下の訪問があってから20日経ち町屋敷の目処が立ち、久しぶりにシュナイダー家の皆さんが集まる事になった。クロードさんに呼ばれてレイモンド様の執務室に向かいます。
「春香!」
前からミハイルさんが走ってきます。何日ぶりだろうミハイルさんの顔見るの。
「お疲れ様です。お仕事は大丈夫ですか?」
「片付けてきたよ。今日は夕食も共にできるよ」
なんかこそばい感覚に戸惑う。ふと見るとミハイルが手を差し伸べてくれている。手を重ねるとミハイルさん指が絡み所謂『恋人つなぎ』になった。
初めての『恋人つなぎ』にドキドキして見上げたら、反対の手で後頭部を支え額に口付けをされた。鼓動が激しい!今日の私は変だ…
レイモンド様の執務室に着くとレイモンド様とアビー様がテーブルの書類を見ながら話をされていた。
入室するとレイモンド様が来てミハイルさんの手を離してハグし、アビー様の横に座らせて私の横に座った。アビー様はずっと私の頭を撫でている。なんでお二人に挟まれているんだろう…
「父上、母上!春香の婚約者は私です。邪魔しないでいただきたい」
「私達も久しぶりに春香ちゃんに会えたのよ!どうせ夕食後にラウンジで逢瀬を楽しむのでしょう!今は父と母に譲りなさい」
どうやらこの屋敷にアビー様の押しに抗える人はいないらしい。レイモンド様は黒く長い筒をデスクから持って来て、筒の中から紙を出してテーブルに広げた。どうやら町屋敷の図面のようだ。
「あれ?これって…増築?」
「おぉ!春香は博識だなぁ!そう町屋敷の図面だ。朱書きしている部分が増築部とリフォーム部だ」
「ん?敷地も広がってる?」
「春香は話が分かるから早くていいよ。ゴラスの令嬢はこうはいかない。殿下が騎士の待機室と使用人の部屋を用意するように指示があり、我が町屋敷では狭いと申された。丁度隣の男爵家の町屋敷が先月から売りに出されてウチが買ったんだ。隣の境を取っ払い男爵家の屋敷をリフォームし、そこを使用人の居住区とし新たに騎士の待機室と仮眠室を増築する」
なんか凄い事になってる。単純に町屋敷に私の部屋が一屋出来て、毎日城から騎士さんが来るくらいに思っていた。図面を見ると町屋敷も増築し、1階と2階に2部屋増築される。
1階は応接室とリビング、キッチンダイニング
2階は客間が4室
3階はシュナイダー家用の寝室
増築部は
1階はミハイルさんの執務室と仮眠室
2階は私の部屋
(トイレ、浴室は各部屋に設置)
元の屋敷と増築部は階段で繋がれ上から見るとコの字型になる。図面の横には使用人の配置表があり見ていたら凄い人数!今の倍⁈
「レイモンド様?この使用人の数間違っていませんか?」
「いや。最低これくらいは必要だ。近いウチに雇うつもりだ」
料理人は1人から3人
従僕は2人から4人
メイドは3人から5人
庭師は現状通り2人
馬番が1人から2人
侍女は新たに2人
執事及び責任者を新たに1人 計10人増員
「あの…侍女さんは必要ありません。私は町屋敷では自分の身の回りは自分でするし、屋敷では手伝うつもりなので、メイドさんもこんなに必要ないです」
「春香は登城や学ぶ時間がある故、侍女や家臣の者に任せればいい」
「自分の事は自分でしたいんです。だから侍女さんは必要ありません。登城する時に少しお手伝いいただくだけでいい」
レイモンド様は引く気配は無い。でも初めにちゃんと決めとかないと!するとアビー様が
「春香ちゃんの考えは分かったわ。しかし私も町屋敷に泊まる事が増えるわ。私には侍女は必要よ。人員はこのままで、春香ちゃんは希望通り自分の事は自分でし、必要な時は侍女にて頼ればいいわ。
貴女がしたい様にすればいいの」
「すみません。我儘言って…でも私が殿下が用意した屋敷が嫌だって言ったせいで、公爵様にお金いっぱい使わせてしまっている。私返すもの何も無いのに…」
「!」レイモンド様とアビー様に両サイドから強く抱きしめられて…
「春香の国では親に施して貰ったら子は返すのか?」
「いえ…」
「私達は春香を娘だと思っている。返すなんて哀しい事言わないでくれ」
「……」
「いい子過ぎるから自分本位になりなさいって言わなかった⁈娘の我儘をきくのも親の喜びなのよ。もっと頼って親を喜ばせなさい」
なんだろう親を亡くしてから1人で何でもしてきたから頼り方とか忘れてしまった。お二人の温かさに胸が熱くなり涙が溢れた。レイモンド様が頭を撫でて、アビー様が涙を拭ってくれる。
「ありがとうございます。ではレイモンド様とアビー様にお任せします」
「急がなくていいから、いつか”お父様、お母様”と呼んでくれ」
照れ臭くて俯きながら頷いた。
ふと図面が目に入り増築部の1階が目に入った。ミハイルさんの執務室と仮眠室?
「レイモンド様。増築部の1階って…」
「あー。春香と共にミハイルも町屋敷に移る」
「へ?」
目の前のミハイルさんが凄い嬉しそうな顔をしている。これって…
『実質の新居!』
知らない間にミハイルさんとの婚姻準備に入っている!
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聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
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