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57.挨拶

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『まるで幼児みたい…』

殿下の父性が炸裂し私の真横に座り、甲斐甲斐しく私の食事世話をしている。

「春香。もっと小さくカットしようか?」
『大丈夫です。1人で食べれますから、殿下も食べて下さり』
「ん⁈ちゃんと食べてるよ。あっ!春香これも美味しいぞ!はい!”あ~ん”して」
『…』

終始こんな感じだ。目の前のアレックスさんの眉間の皺か再発しもうレベル3はいってる。エリックさんは苦笑いをし、マニュラ様はうっとりと見て何か妄想し忙しいそうだ。

激甘の夕食を終えると殿下のお茶に誘ってくれた。疲れたから部屋に行きたいが無下に出来ずサロンでお茶をする事になった。
でも殿下のお誘いに応じてよかった!シュナイダー家の皆さんの様子をお聞きする事が出来た。私が危険な目にあった事を知ったレイモンド様がジャン王太子に詰め寄ったらしい。

「冷静沈着なあのレイモンドが自分の立場を忘れ他国の王太子に食って掛かっているのを初めてみたよ。本当にレイモンドは春香の事を娘の様に思っているのだなぁ…」
『ありがたいです。早く帰りたいけどこのままだとまた心配させてしまう…』
「大丈夫さ。私が春香を治すからね」

なんだろう…久ぶりにあったから?殿下が逞しく見える。今失語症で弱っているから?
殿下のお顔をマジマジと見ていたら、殿下が顔を赤らめて…

「春香…嬉しいがあまり見つめられると自制が効かなくなるから程々にしてくれ」
『自制?』
「私は何時でも春香に口付けたいし触れたい。春香の了承を得れないから我慢しているんだよ」

恥ずかしくなって目線を外した。それから他愛もない話をし部屋に戻り就寝準備をして早めにベッドの入る。何度聞いても教えてくれないけど明日殿下が何処かに連れて行ってくれる。ここ来て殆どお出かけしていないから嬉しくて眠れるか心配したが、いつも通りおやすみ5秒だった。

翌朝目が覚めるとベランダに気配を感じそっと近づく。カーテンの隙間からベランダを見ると…銀色シルバーが居た。
外は未だ薄暗いからそっとベランダにでる。

『おはようございます。あっ!声が出なかったんだ…』
『春香…大丈夫!貴女の言葉は分かる』
『何かありましたか?』
『お礼を言いに来たんだよ』

シルバーがテクルスがお礼を言っていたと伝えに来てくれた。お礼はいいから失語症を治す方法が無いか聞いたみたら…

『それは春香の心の問題だから神と言えど治せない。慌てず自分と周りの人と向き合なさい。もし嫌になれば元の世界に帰ればいい』

やっぱり神様に頼んでも治せないんだ…。分かっていてけど少し落ち込む。

『春香…テクルスは貴女を見守っている。貴女の思うままに過ごせばいい。困ったらアレックスに頼りなさい。彼は貴女の為の騎士だ』
『迷惑ばかりかけていてこれ以上頼るのは…』
『彼はそんな事思っていない。彼は春香に側に居るのが喜びなのだから』
『そんな事な…』
『いずれ分かる時来るよ…焦らなくていい』

「春香!」 

遠くからアレックスさんが走ってくる。

『春香…健やかに過ごしなさい。いつも見守ってるよ』
『また会えますか?』
『春香が望めば…』

シルバーは飛び立っていった。根拠はないけどもう会う事は無いかもしれなと思った。

「春香!今のはシルバーか?」

頷くと飛び去るシルバーを見つめるアレックスさん。ベランダから下みてたら、アレックスさんはベランダを見上げて

「そんな薄着で風を引く早く部屋に入れ」

指でOKサインを出し戻ろうとしたら、

「俺は春香がこのまま話せなくても、ずっと側にいるから安心しろ」

でた!アレックスさんの無自覚の激甘セリフ。これを言ってもらった殆どの女性は鼻血ものだろうなぁ…

『ありがとう』

と手を合わせてお辞儀をした。過保護のアレックスさんに急かされ部屋に戻っる。2度寝したら起きれそうにないから少し早いけど起きよう。身支度をし簡素なワンピースを着てソファーで本を詠んでいたら、侍女さんがキレイな箱を持って入って来た。

「ローランド殿下が今日の外出はこちらをお召になる様にと…」

箱を開けるとキレイな桜色のワンピースだ。装飾が無く平民の女性が着るようなワンピース。私はこちらの女性と比べ凹凸の無い貧相な顔立ちだからこれ位シンプルな方が似合う。早速着替えて朝食に向かう。既に皆さんお揃いだ。頭を下げて遅れた事を詫びるとローランド殿下が席を立ち足早にきてワンピース姿を褒めまくります。

「春香。良く似合うよう!私の見立ては中々のもんだなぁ」
『殿下。素敵なワンピースありがとうございます。大切にします』
「気に入ってくれたのならもっと贈ろう」
『そんなに要らないです』
「春香は欲が無いなぁ!まぁいい!今度はアクセサリーを贈ろう」
『要りませんよ』

明らかに残念がる殿下。本当に要らないよ。帰る可能性もゼロではないから…

昨晩同様に殿下は私の真横に座り甲斐甲斐しく私の世話をする。正直自分のペースで食べたい…
するとアレックスさんが徐に立ち上がり、私に元に来て手を取り席を立たせて空いている席へ移動させた。

「殿下。春香嬢は子供ではない。自分にペースで食べたいはずです」

アレックスさんの気遣いが嬉しくて思わず大きく頷く。唖然とする殿下。

「春香…度が過ぎただろうか⁈」

親指と人差し指で“少し”というジェスチャーをしたら、怒られた子供みたいに肩を落とし明らかに落ち込む殿下。アレックスさんが「気にせず食べろ」とせかす。ちょっと悪い事したかなぁ…と思いながらも食事を続ける。

やっと食事も無事終わり一旦部屋に行き身支度を整えていたらアレックスさんが迎えに来た。今日は殿下の護衛があるので騎士服を着ている。

『う…ん…黙っていたら超!男前イケメンなんだけどな…』

って見ていたら微笑まれた。今までこんな事された事無いからドキッとする。
動揺を必死に隠しエントランスにアレックスさんと向かうと殿下が平民の服を着て待っていた。

『殿下…そろそろ行先を教えてくれてもいいんじゃないですか⁈』
「春香が喜ぶ所とちょっとした挨拶に行くんだ」
『結局着くまで教えてくれないんだ!』

楽しいそうに笑う殿下だが何かおかしい感じがする。いつものロイヤルスマイルじゃない!悪役ヒールの笑い方だよ。一抹の不安を感じながら馬車に殿下と一緒に乗り出発する。

アレックスさんは王宮騎士団の騎士と一緒に馬車に並走し時折目が合うと微笑んでくれる。馬車の中では殿下が色々話をしてくれて案外楽しい時間となった。

1時間ほどしたら何処かに着いた。馬車の扉を開ける降り立つと屋敷前だ。中年のご夫婦、若い夫婦?と使用人が並び一斉に礼をする

殿下の袖を引っ張り

『ここどこですか?』
「ここはコールマン領隣のデストロン男爵家屋敷だ。こちらに来たからには家臣に会いに行かないとね」

殿下の言葉は何か含んでいて怖い。まさか今日のお出かけこれだけとか言わないよね⁉︎
不安そうな顔をしていたら殿下は頬に口付け微笑む。

男爵様から挨拶を受けていたら強烈な視線を感じ、視線の元を探すと男爵のご嫡男の婚約者だ。頬を赤らめ強烈な視線をローランド殿下に送っている。
ローランド殿下は人離れした美貌の持ち主だから見入るのは分かるけど、ちょっとあからさまだし王族に対して失礼ならないか心配になって来た。

男爵様に応接室に案内され殿下の横に座り、アレックスさんが後ろに控える。ご嫡男の婚約者はイブリン様と言うそうだ。彼女イブリンは殿下の右斜め前に座り殿下とアレックスさんを交互に見ては吐息を吐く。そして殿下とアレックスさんに世話をやかれる私が気に食わないのか睨んでくる。

『女の嫉妬は怖いんだよなぁ…』

お茶が用意され社交辞令満載の会話が続く。男爵のご嫡男はテッド様と言い男前だか大人しそうな方で一生懸命に私を褒めている。

「テッド殿。春香の愛らしさらは天に日が上る様に当たり前の事で敢えて言う事ではないよ。なぁアレックス⁈」
「はい。それに謙虚でお優しい。非の打ち所がありません」

2人して私を褒めるのが胡散臭くて冷ややかな視線を送る。それよりイブリン様の睨みが全身に突き刺さり私既に瀕死に近いんですけど…
早くお暇して次行きませんか?

「イブリン嬢は付き合わせでこのレイシャルに?」
「はい!私はゴラスならからでは無くヴェルディアから参りました」
「ヴェルディアからね…通りで透きとおる様な綺麗なお方だ」

『イブリン様はヴェルディア出身なんだ。色白で肌が綺麗…それにしても殿下どぉしたんだろう⁈』

急にイブリン様に話しを振り出した殿下の意図が分からず困惑しているとアレックスさんが

「安心しろ。殿下には考えがお有りだ」

と耳打ちした。
イブリン様は殿下からの質問に嬉しそうに答えていってるけど殿下の会話は明らかに誘導尋問をしている。側で見ている男爵様とテッド様の顔色がどんどん悪くなっていっている。

「では貴女はヴェルディア宰相のアントン殿のご親戚なのか?」
「はい。姪でございます」

あ…殿下の意図がやっとわかったよ…
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