星剣使いの剣聖は旅を終えない

猫又 ロイ

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第1章 〈地下世界〉編

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 ――カラン、という音だけを残し、城の主は空気に溶けるように消えていった。
 辺りから禍々まがまがしい気配が完全に消えたのを確認して、ウォルトもがくりと膝をついた。何とか身体を支えようとすると、もはや剣にすがりつく余力もなく、荒れた床へと倒れ込む。

 その身体には至る所に傷があり、絶えず血を流し続けている。特に右肩から左脇へと斜めに切り裂かれた傷と、腹部に開いた刺し傷は致命傷に近い。
 流れ出る血と共に薄れそうになる意識を、ウォルトは何とか繋ぎ止めた。

 周囲は先の激闘で荒れ果て、元の絢爛けんらん豪奢ごうしゃであった城は見るも無残な残骸となっている。
 謁見えっけんの間であったこの場所は壁が一部無くなっており、そこから見える棟や塔は半壊していた。

 そして、そこかしこに転がる無数の死体。ウォルトが斬り伏せてきた魔族たちは、全て一太刀の下にほふられていた。

 謁見の間までほぼ無傷で辿り着いたウォルトであったが、さすがに城の主であり、世界の敵である魔王との闘いは苛烈かれつなものとなった。
 一挙手一投足、一呼吸のタイミングすら違えれば死ぬような闘い。
 数多の傷を負いながらも、ウォルトは魔王に勝利してみせたのだ。

 その結果、半死の状態になったウォルトだったが、目の前に転がる魔王の剣に薄っすらと笑みを浮かべた。

「――あぁ、終わってますね」

 そこへ、1人の男の声が侵入した。

 もう首を動かす力もないウォルトは、視線だけを謁見の間の入口へと向ける。
 足取り軽く近寄ってくるのは、ウォルトの良く知る男だ。

 大陸3大大国の1つである王国の王子であり、聖剣に選ばれた
 見目麗しく、慈悲じひ深く、いさましい。
 まさに女神に愛された存在であると、多くの民から支持されている。

 そんな男が、怪我一つ汚れ一つ汗一つない姿で、ウォルトのかたわらに立った。
 世の多くの女性が見惚れるであろう美しい顔で、床に倒れる男を見下ろす。

 白い手袋に覆われた手を伸ばすと、魔王の剣を取り上げた。
 剣をしげしげと眺めた男は、それが魔王の剣であると確証すると、満足気に頷いた。

「まさしく、魔王の剣ですね。やれやれ、随分と手間がかかったものです」

 そのまま剣を腰帯にかけると、ウォルトのことを見向きもせずきびすを返す。
 そして謁見の間の入口で立ち止まると、ちらりと視線を向けた。

 端麗な顔に笑みを浮かべると、優雅に一礼する。

「それでは、ウォルトリアム。ごきげんよう」
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