1 / 8
第1章 〈地下世界〉編
1
しおりを挟む
――カラン、という音だけを残し、城の主は空気に溶けるように消えていった。
辺りから禍々しい気配が完全に消えたのを確認して、ウォルトもがくりと膝をついた。何とか身体を支えようとすると、もはや剣にすがりつく余力もなく、荒れた床へと倒れ込む。
その身体には至る所に傷があり、絶えず血を流し続けている。特に右肩から左脇へと斜めに切り裂かれた傷と、腹部に開いた刺し傷は致命傷に近い。
流れ出る血と共に薄れそうになる意識を、ウォルトは何とか繋ぎ止めた。
周囲は先の激闘で荒れ果て、元の絢爛で豪奢であった城は見るも無残な残骸となっている。
謁見の間であったこの場所は壁が一部無くなっており、そこから見える棟や塔は半壊していた。
そして、そこかしこに転がる無数の死体。ウォルトが斬り伏せてきた魔族たちは、全て一太刀の下に屠られていた。
謁見の間までほぼ無傷で辿り着いたウォルトであったが、さすがに城の主であり、世界の敵である魔王との闘いは苛烈なものとなった。
一挙手一投足、一呼吸のタイミングすら違えれば死ぬような闘い。
数多の傷を負いながらも、ウォルトは魔王に勝利してみせたのだ。
その結果、半死の状態になったウォルトだったが、目の前に転がる魔王の剣に薄っすらと笑みを浮かべた。
「――あぁ、終わってますね」
そこへ、1人の男の声が侵入した。
もう首を動かす力もないウォルトは、視線だけを謁見の間の入口へと向ける。
足取り軽く近寄ってくるのは、ウォルトの良く知る男だ。
大陸3大大国の1つである王国の王子であり、聖剣に選ばれた勇者。
見目麗しく、慈悲深く、勇ましい。
まさに女神に愛された存在であると、多くの民から支持されている。
そんな男が、怪我一つ汚れ一つ汗一つない姿で、ウォルトの傍らに立った。
世の多くの女性が見惚れるであろう美しい顔で、床に倒れる男を見下ろす。
白い手袋に覆われた手を伸ばすと、魔王の剣を取り上げた。
剣をしげしげと眺めた男は、それが魔王の剣であると確証すると、満足気に頷いた。
「まさしく、魔王の剣ですね。やれやれ、随分と手間がかかったものです」
そのまま剣を腰帯にかけると、ウォルトのことを見向きもせず踵を返す。
そして謁見の間の入口で立ち止まると、ちらりと視線を向けた。
端麗な顔に笑みを浮かべると、優雅に一礼する。
「それでは、ウォルトリアム。ごきげんよう」
辺りから禍々しい気配が完全に消えたのを確認して、ウォルトもがくりと膝をついた。何とか身体を支えようとすると、もはや剣にすがりつく余力もなく、荒れた床へと倒れ込む。
その身体には至る所に傷があり、絶えず血を流し続けている。特に右肩から左脇へと斜めに切り裂かれた傷と、腹部に開いた刺し傷は致命傷に近い。
流れ出る血と共に薄れそうになる意識を、ウォルトは何とか繋ぎ止めた。
周囲は先の激闘で荒れ果て、元の絢爛で豪奢であった城は見るも無残な残骸となっている。
謁見の間であったこの場所は壁が一部無くなっており、そこから見える棟や塔は半壊していた。
そして、そこかしこに転がる無数の死体。ウォルトが斬り伏せてきた魔族たちは、全て一太刀の下に屠られていた。
謁見の間までほぼ無傷で辿り着いたウォルトであったが、さすがに城の主であり、世界の敵である魔王との闘いは苛烈なものとなった。
一挙手一投足、一呼吸のタイミングすら違えれば死ぬような闘い。
数多の傷を負いながらも、ウォルトは魔王に勝利してみせたのだ。
その結果、半死の状態になったウォルトだったが、目の前に転がる魔王の剣に薄っすらと笑みを浮かべた。
「――あぁ、終わってますね」
そこへ、1人の男の声が侵入した。
もう首を動かす力もないウォルトは、視線だけを謁見の間の入口へと向ける。
足取り軽く近寄ってくるのは、ウォルトの良く知る男だ。
大陸3大大国の1つである王国の王子であり、聖剣に選ばれた勇者。
見目麗しく、慈悲深く、勇ましい。
まさに女神に愛された存在であると、多くの民から支持されている。
そんな男が、怪我一つ汚れ一つ汗一つない姿で、ウォルトの傍らに立った。
世の多くの女性が見惚れるであろう美しい顔で、床に倒れる男を見下ろす。
白い手袋に覆われた手を伸ばすと、魔王の剣を取り上げた。
剣をしげしげと眺めた男は、それが魔王の剣であると確証すると、満足気に頷いた。
「まさしく、魔王の剣ですね。やれやれ、随分と手間がかかったものです」
そのまま剣を腰帯にかけると、ウォルトのことを見向きもせず踵を返す。
そして謁見の間の入口で立ち止まると、ちらりと視線を向けた。
端麗な顔に笑みを浮かべると、優雅に一礼する。
「それでは、ウォルトリアム。ごきげんよう」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる