がじゅまん

ponzi

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第3話彼は変わってしまった ~かつてのヒーロー~

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「ねえ、覚えてる? 薬害エイズ訴訟で一躍名を馳せた、あの参議院議員」
がじゅまんは、テレビのニュース番組を強く 指さしながら、隣に座る豪志に話しかけた。画面には、国会中継の中、真剣な表情でスピーチをする初老の男性が映っていた。
「ああ、あの人か。確か、俺と同い年くらいの世代だったよな。薬害エイズ訴訟の時は、本当に果敢な姿勢に釘付けになったもんだ。まだ国会議員を続けているのか?」
豪志は、遠い記憶を手繰り寄せるように、小さく 頷いた。当時の彼は、社会の巨悪に立ち向かう正義の味方なイメージだった。
「そうなのよ」と、がじゅまんは悲しそうに続けた。「薬害エイズ訴訟の時、彼は本当に正義感に溢れていて、私たち医療関係者の間でも『ドンキホーテだ』って言われていたの。弱い立場の人のために、あれだけリスクを冒して戦ったんだから。本当に格好良かった。」
しかし、がじゅまんの声には、切実な怒りと失望の色が滲んでいた。「なのに、今じゃ信じられない変わりようよ。議員報酬で得た莫大なお金で、取り巻き連中と毎晩のように派手な遊びを繰り返しているらしいわ。美人の奥さんをもらって、カネと名誉を手に入れたら、すっかり変わってしまった。まるで、ただの政治利権に群がる亡者よ。」
彼女は、テレビの画面を睨みつけながら、言葉を続けた。「エイズ自体も、医療技術の目覚ましい進歩で、今やほぼ完治する病気になった。彼が国会議員として訴え続けてきた薬害エイズ問題は、 すでに解決しているのよ。これ以上、国会議員を続ける理由はないんだから、いさぎよく辞めるべきだと、私は直接彼に言ったんだけど…」
豪志は、がじゅまんの言葉に深く同意した。「結局、政治利権という蜜が、あまりにも美味しすぎるんだろうな。もともと、正統な意味で政治家としての能力があった人だとは思えない。あの訴訟での活躍は、彼の正義感の表れだったのかもしれないが、利権を手にしたことで、本質が露呈してしまったんだろう。」
がじゅまんも、深く頷いた。「そうよ。彼は、こんなボロい商売、絶対に辞めないと言っているわ。利権の味を知ってしまった人間は、なかなかそこから抜け出せないものなのね。かつてのヒーローが、こんな無様な姿になってしまうなんて…本当に、世の中って皮肉よね。」
二人の間には、テレビから流れる政治家の声だけが響いていた。かつての輝きを失い、利権に溺れる男の姿は、社会の歪みと、人間の脆さを象徴しているようだった。

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