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おまけ 2人のその後
お土産はくるみのクッキーとマカロンです
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ほどなくして、イケメンさんは一枚のメモを持って出てきた。
「お待たせしました」と言って渡されたメモには、やはりというべきか期待を裏切らない美しい字でコツが書き綴られていた。
全てが丁寧で、非の打ち所がない。
私はすっかり恐縮して、何度も頭を下げた。
イケメンさんは、とろけるように優しい笑顔を浮かべて、「今度は喜んでもらえるといいですね」と激励までしてくれた。
さすが、看板イケメンは違うなあ、と感嘆のため息が零れる。
こんなに素敵な笑顔を振りまいていたら、女の子の心は確実に攫っているだろう。
料金をとってもいい程の笑顔だ。
「スマイルください」な人が現れないか疑問である。
ところがそんなことを頼まないでも勝手にスマイルを提供してくれるのだからお得だ。
「この後はどちらへ?」
イケメンさんは、0円スマイルを保ったままそう聞いた。
お客さんとのコミュニケーションも営業のうち、という感じなのだろうか。
営業って大変だ。
「何かお菓子を買って、それから、まだ余力があれば適当にお店を見て回ろうと思っています」
そう答えると、イケメンさんはお菓子のお土産におすすめのお店をすぐに二、三個教えてくれた。
この辺のお店のことは考えるまでもなく頭に入っているらしい。
看板イケメンは、お店の商品のことだけでなく、ここら一帯の情報まで押さえていなければならないのか。
やっぱり、大変だ。
私は心のうちに尊敬の念を抱きつつ、お礼を述べるとぺこぺこしながら店を出た。
「またおこしください」の言葉には、どうでしょうかと内心で首を傾げた。
彼がハンドマッサージを今度こそ気に入ってくれれば、クリームが切れた頃にまた行くかもしれない。
その後は、イケメンさんに教えられた通りにおすすめのお菓子屋さんへ行き、くるみのクッキーを買った。透明の袋に丸い形のクッキーがたくさん入っていて、その丸い形というのが綺麗な円ではなくすべてがどことなく歪で整っていなくって、その手作り感がたまらなかった。
しかしお店の人に聞いてみると、あまり売り上げはよろしくないのだという。
「買ってくれた人、あなたが久しぶりよ」と人の好さそうなお婆さんが言っていて、少し複雑な気持ちになる。
今はもっと、綺麗な丸のクッキーが流行っているのだろうか。
くるみのクッキーを眺める。
甘さ控えめで健康的だと売り文句にされていたそれは、本当に素朴な甘さで、美味しいのだろう。袋越しでも美味しさを既に感じている。(お腹が空いているせいだろうか。)
彼は、あまり甘いものが得意ではないから、このくらいがちょうどいいだろう。
でも私は、がっつり甘いものでもいい……。いや、むしろ甘いものが食べたいような気がする。
「ダイエット」の五文字が頭をよぎる。
なんだかお腹をぽんぽん撫でられるのが習慣化してきている今、あまり彼に食べていることがバレるのは恥ずかしい。
でも、甘いもの。
ぽんぽん。
甘いもの。
ぽんぽん。
あまぽん。
私は悩みぬいて思考が明後日に向かって行った末に、結局マカロンを買うことにした。
一つの箱に八つも入っていて、シトロン、フランボワーズ、キャラメル、抹茶の味がそれぞれ二つずつ入っている。
二人で四つずつ半分こにすれば、彼も同じく食べているのだから私が食べることを咎めることも馬鹿にすることも出来まい。
私は得意な気持ちでレジに向かった。
レジに向かうのは二度目だったのでそこは恥ずかしかったけれど、お婆さんが「こっちのマカロンはとっても売り上げがいいの」と笑って教えてくれた。
私はご機嫌で店を出た。
来た道を戻って帰っていると、イケメンさんが店頭に立ってお客の呼び込みをしていた。
イケメンさんの前には既に二人の女性がいて、熱心に何事かを話している様子だった。
イケメンパワー、恐るべし。
そう思っていると、不意にイケメンさんがこちらを見た。
次いで、必殺0円スマイルを頂いた。
私は、買ったばかりのお菓子の袋を胸の前に掲げて、お礼の意を込めてぺこりと一つお辞儀をした。
イケメンさんがひらりと手を振るのを見て、私はまた歩き出した。
たった二回店に来ただけのお客さんにあれだけ出来れば、それはお店も繁盛するに決まっている。
しかも、二回目なんてハンドマッサージのコツを聞いただけの、ある意味では迷惑な客にも関わらず、だ。
イケメンさんには天賦の才を感じざるを得ない。
私もイケメンさんを見習って、彼に喜んでもらえるようなことがしたいものだ。
彼のことを思い浮かべると、心が弾んだ。
ハンドマッサージをする、だなんて当たり前のように言っているけれど、それってつまり彼の手を触り放題ということでもある。
考えるだけでなんだか緊張するような、嬉しいような。
それに、イケメンさんをイケメンイケメンと連呼していてイケメンがゲシュタルト崩壊してしまいそうだが、正直言って彼とは比べるまでもない。
彼はイケメンというよりはひたすらに綺麗な、ある種芸術的な魅力さえ感じる精巧な顔立ちだ。
そもそもの土俵が違う。
ジャニーズと彫刻を比べようとしているようなものだ。
私は、圧倒的に彼に魅力を感じる……というよりかは、いくらイケメンだからといって彼以外に魅力を感じられない。
彼以外の男の人なんて、顔が下でも並みでも上でも私にとってはさほど変わらない。
彼と、それ以外の人。
それだけだ。
早く、彼に会いたいと、そう思う。
「お待たせしました」と言って渡されたメモには、やはりというべきか期待を裏切らない美しい字でコツが書き綴られていた。
全てが丁寧で、非の打ち所がない。
私はすっかり恐縮して、何度も頭を下げた。
イケメンさんは、とろけるように優しい笑顔を浮かべて、「今度は喜んでもらえるといいですね」と激励までしてくれた。
さすが、看板イケメンは違うなあ、と感嘆のため息が零れる。
こんなに素敵な笑顔を振りまいていたら、女の子の心は確実に攫っているだろう。
料金をとってもいい程の笑顔だ。
「スマイルください」な人が現れないか疑問である。
ところがそんなことを頼まないでも勝手にスマイルを提供してくれるのだからお得だ。
「この後はどちらへ?」
イケメンさんは、0円スマイルを保ったままそう聞いた。
お客さんとのコミュニケーションも営業のうち、という感じなのだろうか。
営業って大変だ。
「何かお菓子を買って、それから、まだ余力があれば適当にお店を見て回ろうと思っています」
そう答えると、イケメンさんはお菓子のお土産におすすめのお店をすぐに二、三個教えてくれた。
この辺のお店のことは考えるまでもなく頭に入っているらしい。
看板イケメンは、お店の商品のことだけでなく、ここら一帯の情報まで押さえていなければならないのか。
やっぱり、大変だ。
私は心のうちに尊敬の念を抱きつつ、お礼を述べるとぺこぺこしながら店を出た。
「またおこしください」の言葉には、どうでしょうかと内心で首を傾げた。
彼がハンドマッサージを今度こそ気に入ってくれれば、クリームが切れた頃にまた行くかもしれない。
その後は、イケメンさんに教えられた通りにおすすめのお菓子屋さんへ行き、くるみのクッキーを買った。透明の袋に丸い形のクッキーがたくさん入っていて、その丸い形というのが綺麗な円ではなくすべてがどことなく歪で整っていなくって、その手作り感がたまらなかった。
しかしお店の人に聞いてみると、あまり売り上げはよろしくないのだという。
「買ってくれた人、あなたが久しぶりよ」と人の好さそうなお婆さんが言っていて、少し複雑な気持ちになる。
今はもっと、綺麗な丸のクッキーが流行っているのだろうか。
くるみのクッキーを眺める。
甘さ控えめで健康的だと売り文句にされていたそれは、本当に素朴な甘さで、美味しいのだろう。袋越しでも美味しさを既に感じている。(お腹が空いているせいだろうか。)
彼は、あまり甘いものが得意ではないから、このくらいがちょうどいいだろう。
でも私は、がっつり甘いものでもいい……。いや、むしろ甘いものが食べたいような気がする。
「ダイエット」の五文字が頭をよぎる。
なんだかお腹をぽんぽん撫でられるのが習慣化してきている今、あまり彼に食べていることがバレるのは恥ずかしい。
でも、甘いもの。
ぽんぽん。
甘いもの。
ぽんぽん。
あまぽん。
私は悩みぬいて思考が明後日に向かって行った末に、結局マカロンを買うことにした。
一つの箱に八つも入っていて、シトロン、フランボワーズ、キャラメル、抹茶の味がそれぞれ二つずつ入っている。
二人で四つずつ半分こにすれば、彼も同じく食べているのだから私が食べることを咎めることも馬鹿にすることも出来まい。
私は得意な気持ちでレジに向かった。
レジに向かうのは二度目だったのでそこは恥ずかしかったけれど、お婆さんが「こっちのマカロンはとっても売り上げがいいの」と笑って教えてくれた。
私はご機嫌で店を出た。
来た道を戻って帰っていると、イケメンさんが店頭に立ってお客の呼び込みをしていた。
イケメンさんの前には既に二人の女性がいて、熱心に何事かを話している様子だった。
イケメンパワー、恐るべし。
そう思っていると、不意にイケメンさんがこちらを見た。
次いで、必殺0円スマイルを頂いた。
私は、買ったばかりのお菓子の袋を胸の前に掲げて、お礼の意を込めてぺこりと一つお辞儀をした。
イケメンさんがひらりと手を振るのを見て、私はまた歩き出した。
たった二回店に来ただけのお客さんにあれだけ出来れば、それはお店も繁盛するに決まっている。
しかも、二回目なんてハンドマッサージのコツを聞いただけの、ある意味では迷惑な客にも関わらず、だ。
イケメンさんには天賦の才を感じざるを得ない。
私もイケメンさんを見習って、彼に喜んでもらえるようなことがしたいものだ。
彼のことを思い浮かべると、心が弾んだ。
ハンドマッサージをする、だなんて当たり前のように言っているけれど、それってつまり彼の手を触り放題ということでもある。
考えるだけでなんだか緊張するような、嬉しいような。
それに、イケメンさんをイケメンイケメンと連呼していてイケメンがゲシュタルト崩壊してしまいそうだが、正直言って彼とは比べるまでもない。
彼はイケメンというよりはひたすらに綺麗な、ある種芸術的な魅力さえ感じる精巧な顔立ちだ。
そもそもの土俵が違う。
ジャニーズと彫刻を比べようとしているようなものだ。
私は、圧倒的に彼に魅力を感じる……というよりかは、いくらイケメンだからといって彼以外に魅力を感じられない。
彼以外の男の人なんて、顔が下でも並みでも上でも私にとってはさほど変わらない。
彼と、それ以外の人。
それだけだ。
早く、彼に会いたいと、そう思う。
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