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おまけ 2人のその後
友人の告白 友人視点 前
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こんにちは、私は転生者です。
そんな挨拶から始まると、よっぽど愉快な人間に聞こえるだろうか。
頭のおかしな奴だと思われても仕方ないかもしれない。
けれど、私は事実、転生したのだ。
前世の記憶、なるものは、私にとって足枷でしかなかった。
といっても、記憶は曖昧なものも多く、全てをはっきりと思い出せているわけではないのだけれど。
私は、ここにいる人たちとは、何か、決定的に、違うのだ、という違和感。
同じ人種でも、髪の色でも、目の色でも、家族でさえも、私とは違う。
世界から、弾き出されたような疎外感。
前世の記憶なんて、この新しい世界では、ただただ孤独を揺さぶるだけだった。
私は、本来、この世界に住む人間ではない。
私の、容姿が違う。声が違う。私は、今世の私が受け入れがたかった。
何をしても、満たされない。
だって私は、この世界で何かしたところで、意味がないから。
そう、漠然と、何をしても無意味に感じていた。
この、ひとりぼっちの世界で、私が生きる理由は何?
前世の記憶を持ったまま、疎外感を感じながら生きる必要はあるの?
誰か、この孤独を共有してくれる人は――私と同じ、転生者は、いないの?
どうか、誰か、私を掬い上げて、この世界に入れて!
そうでないなら、私と同じ、世界から弾き出されて、私をひとりぼっちから変えて!
もしかしたら、私は多少中二病なるものを患っていたかもしれない、とは思う。
しかし、中学生という多感な時期に(前世の分も合わせれば中学生でもないのだけれど)、自分は前世の記憶があるとか、そういう何か特別なことがあれば、私が生きることに特別の意味を求めてしまうものだろうし、どこか孤独を感じても変ではない。
むしろ普通のことのように思う。
そうした孤独や、不安が、私と生まれた瞬間からずっと、私の胸の内に巣食っていた。
私は、そんな漠然としない黒いもやもやとしたものを、私自身の中に組み込んできたのだ。
この世界で年齢を重ねても、ずっと一緒に私の中に在った想いは薄れない。
誰か、私の存在意義を教えてくれ!
その瞬間は、私がこの世界とは何たるかを思い出し、理解する瞬間は、彼女に出会った、その時だった。
高校の入学式で、彼女を一目見た瞬間、ぶわあと、記憶が、弾けた。
――彼女が、主人公だ。
ヤンデレ乙女ゲー主人公の。
では、私は?
主人公の、クラスメイト?友人?
私はまた、思い出した。
主人公のクラスメイトも、友人も、顔すら出ないような存在だったことを。
私は、主人公と全く関わることなく生きていくことも、有り得るのだ。
だって主人公は受け身で、大人しい性格だから、自分から他人に話しかけることなんて、まずないだろうし。
私が、前世の記憶を持ってこの世界に生まれてしまったことなんて、何も、意味がなかったのだ。
私の存在なんて、主人公を中心に回るこの世界では、必要とされていない。
私には、この漠然とした不安を吹き飛ばしてくれるような、特別な何かが、あるものだと思っていたのに。
私は、その場に蹲った。
もう、いい。
どうだって、いいのだ。
こんな世界に私が生きる意味なんてない。
「大丈夫ですか」
私の足元に、影が落ちた。
耳に優しい、囁くような小さな薄い声は、荒んだ私の心に、するりと入り込んだ。
顔を、上げる。
主人公が、そこに、いた。
遠慮がちに、心配そうな顔をして、私の顔を覗き込んでいる。
その瞬間、私の頭の中でファンファーレが鳴り響いた。
主人公が、私に声をかけた。
私のことを見ている。
私は、私は、きっと選ばれたのだ!
顔のないモブだとしても、構わない。
主人公自ら声をかけたキャラクターなんてきっと初めてだ。
私は、がばりと顔を上げると、自分でも何を言っているか分からないレベルで主人公に何事かを捲し立て、詰め寄った。
記憶が定かではないのではっきりとは言えないが、恐らく、「私を選んでくれてありがとう」とか、「あなたが主人公だ」だとか、主人公からすれば、意味不明なことばかり言っていたに違いない、と思う。
主人公は、怯えたような顔をしていたが、私を刺激することを恐れてか、大人しく私の話を聞いてくれていた。
主人公のその態度は、私を受け入れてくれているかのようで、また私を舞い上がらせた。
そして、私は、主人公にこの質問をしたことだけは、明確に、鮮やかに覚えている。
「あなたは、転生者?」
そして、主人公の、困ったように首を傾げて、申し訳なさそうな顔をされたことも、よく覚えている。
「違うと、思います」
私は、結局、この世界にひとりぼっちなのか。
そう落胆した私を、主人公の可愛らしい声が、拾い上げた。
「でも、時々、既視感を感じたりとかって、ありますよ」
それは、目に見えてがっかりした私を不憫に思って出た言葉かもしれないし、本当かどうかは分からなかった。
それでも、その言葉に私は、生きる希望を見出さずにはいられなかった。
既視感、ということは、主人公はこれから、思い出すのかもしれない。
主人公も、転生者であるけれど、まだ思い出していないだけなのでは。
主人公の存在は、私が前世が云々と言っている頭のおかしな奴というわけではない、ということの証明だった。
主人公は、私をこの世界に引き入れてくれる唯一の橋だった。
もし、主人公が転生者であれば、私は、この疎外された世界に、仲間を見つけられる。
私は、主人公の眠っているかもしれない記憶を呼び起こさせるために、攻略対象を主人公に引き合わせるように、幾度も工作した。
私が工作しなくたって、主人公と攻略対象は勝手に出会ったりするのだが、主人公は、恋に落ちることもなければ、記憶を思い出すこともなかった。
攻略対象は、主人公に好意を持つことも多かったけれど、主人公の記憶が戻らないのに張り付かれて、他の攻略対象に会って主人公の記憶が戻る可能性を邪魔されると迷惑なので、私が積極的に排除した。
攻略対象の数は、やたらと多い。
シーズン3まで出た人気ゲームだったので、仕方ないが。
早く、主人公の記憶が戻ればいいのに。
しかし、高校で三年間の時を過ごしても、主人公は誰とも恋に落ちなかったし、記憶も戻らなかった。
少なくとも、私はそう、思っていた。
主人公の恋愛事情なんて、把握しているつもりでいたのだ。
だから、私が、主人公に「高校卒業したらどうするの」と聞いた時に帰って来た答えには、心底驚いた。
「か、彼氏の家にいきます」
そう、頬を赤らめて小さな声で言う主人公は、これぞ乙女ゲーム、と言った感じの乙女らしさ全開だった。
「彼氏、いたの?!いつから?!!」
そう声が大きくなってしまった私に、主人公は人差し指を唇に持っていって、「しー」のポーズをした。
「高校、二年生の時から、です」
聞けば、相手はもう社会人として働いているのだという。
それはもしかしてロリコンというやつではないか?犯罪だ。
油断していた。
私はてっきり、主人公は学内で恋を育むものだろうと思っていた。
外で恋愛していたのか。
しかも相手は社会人だなんて。
「言ってくれればよかったのに」
そう言って口を尖らせると、主人公は慌てていた。
「ううん、あの、だって、私が高校生で、相手は社会人だから、あんまり言うの、良くないって……その、彼も言ってたし」
それは確かに、おおっぴらには言い辛いことかもしれない。
「本当は、卒業するまで言うつもりなかったんですけど……特別に、教えました」
秘密ですよ、と恥ずかしそうにはにかんでみせる主人公の表情を、きっと私しかしらない。
主人公は、特に問題なく人間関係を築いてはいるが、私程に心を許している相手はいない、ように思う。
この世界の中心にいる主人公に、私は、心を許されている。
私は、彼女と一緒にいると、この世界に生まれたことを許されたような、そんな気分になる。
そんな挨拶から始まると、よっぽど愉快な人間に聞こえるだろうか。
頭のおかしな奴だと思われても仕方ないかもしれない。
けれど、私は事実、転生したのだ。
前世の記憶、なるものは、私にとって足枷でしかなかった。
といっても、記憶は曖昧なものも多く、全てをはっきりと思い出せているわけではないのだけれど。
私は、ここにいる人たちとは、何か、決定的に、違うのだ、という違和感。
同じ人種でも、髪の色でも、目の色でも、家族でさえも、私とは違う。
世界から、弾き出されたような疎外感。
前世の記憶なんて、この新しい世界では、ただただ孤独を揺さぶるだけだった。
私は、本来、この世界に住む人間ではない。
私の、容姿が違う。声が違う。私は、今世の私が受け入れがたかった。
何をしても、満たされない。
だって私は、この世界で何かしたところで、意味がないから。
そう、漠然と、何をしても無意味に感じていた。
この、ひとりぼっちの世界で、私が生きる理由は何?
前世の記憶を持ったまま、疎外感を感じながら生きる必要はあるの?
誰か、この孤独を共有してくれる人は――私と同じ、転生者は、いないの?
どうか、誰か、私を掬い上げて、この世界に入れて!
そうでないなら、私と同じ、世界から弾き出されて、私をひとりぼっちから変えて!
もしかしたら、私は多少中二病なるものを患っていたかもしれない、とは思う。
しかし、中学生という多感な時期に(前世の分も合わせれば中学生でもないのだけれど)、自分は前世の記憶があるとか、そういう何か特別なことがあれば、私が生きることに特別の意味を求めてしまうものだろうし、どこか孤独を感じても変ではない。
むしろ普通のことのように思う。
そうした孤独や、不安が、私と生まれた瞬間からずっと、私の胸の内に巣食っていた。
私は、そんな漠然としない黒いもやもやとしたものを、私自身の中に組み込んできたのだ。
この世界で年齢を重ねても、ずっと一緒に私の中に在った想いは薄れない。
誰か、私の存在意義を教えてくれ!
その瞬間は、私がこの世界とは何たるかを思い出し、理解する瞬間は、彼女に出会った、その時だった。
高校の入学式で、彼女を一目見た瞬間、ぶわあと、記憶が、弾けた。
――彼女が、主人公だ。
ヤンデレ乙女ゲー主人公の。
では、私は?
主人公の、クラスメイト?友人?
私はまた、思い出した。
主人公のクラスメイトも、友人も、顔すら出ないような存在だったことを。
私は、主人公と全く関わることなく生きていくことも、有り得るのだ。
だって主人公は受け身で、大人しい性格だから、自分から他人に話しかけることなんて、まずないだろうし。
私が、前世の記憶を持ってこの世界に生まれてしまったことなんて、何も、意味がなかったのだ。
私の存在なんて、主人公を中心に回るこの世界では、必要とされていない。
私には、この漠然とした不安を吹き飛ばしてくれるような、特別な何かが、あるものだと思っていたのに。
私は、その場に蹲った。
もう、いい。
どうだって、いいのだ。
こんな世界に私が生きる意味なんてない。
「大丈夫ですか」
私の足元に、影が落ちた。
耳に優しい、囁くような小さな薄い声は、荒んだ私の心に、するりと入り込んだ。
顔を、上げる。
主人公が、そこに、いた。
遠慮がちに、心配そうな顔をして、私の顔を覗き込んでいる。
その瞬間、私の頭の中でファンファーレが鳴り響いた。
主人公が、私に声をかけた。
私のことを見ている。
私は、私は、きっと選ばれたのだ!
顔のないモブだとしても、構わない。
主人公自ら声をかけたキャラクターなんてきっと初めてだ。
私は、がばりと顔を上げると、自分でも何を言っているか分からないレベルで主人公に何事かを捲し立て、詰め寄った。
記憶が定かではないのではっきりとは言えないが、恐らく、「私を選んでくれてありがとう」とか、「あなたが主人公だ」だとか、主人公からすれば、意味不明なことばかり言っていたに違いない、と思う。
主人公は、怯えたような顔をしていたが、私を刺激することを恐れてか、大人しく私の話を聞いてくれていた。
主人公のその態度は、私を受け入れてくれているかのようで、また私を舞い上がらせた。
そして、私は、主人公にこの質問をしたことだけは、明確に、鮮やかに覚えている。
「あなたは、転生者?」
そして、主人公の、困ったように首を傾げて、申し訳なさそうな顔をされたことも、よく覚えている。
「違うと、思います」
私は、結局、この世界にひとりぼっちなのか。
そう落胆した私を、主人公の可愛らしい声が、拾い上げた。
「でも、時々、既視感を感じたりとかって、ありますよ」
それは、目に見えてがっかりした私を不憫に思って出た言葉かもしれないし、本当かどうかは分からなかった。
それでも、その言葉に私は、生きる希望を見出さずにはいられなかった。
既視感、ということは、主人公はこれから、思い出すのかもしれない。
主人公も、転生者であるけれど、まだ思い出していないだけなのでは。
主人公の存在は、私が前世が云々と言っている頭のおかしな奴というわけではない、ということの証明だった。
主人公は、私をこの世界に引き入れてくれる唯一の橋だった。
もし、主人公が転生者であれば、私は、この疎外された世界に、仲間を見つけられる。
私は、主人公の眠っているかもしれない記憶を呼び起こさせるために、攻略対象を主人公に引き合わせるように、幾度も工作した。
私が工作しなくたって、主人公と攻略対象は勝手に出会ったりするのだが、主人公は、恋に落ちることもなければ、記憶を思い出すこともなかった。
攻略対象は、主人公に好意を持つことも多かったけれど、主人公の記憶が戻らないのに張り付かれて、他の攻略対象に会って主人公の記憶が戻る可能性を邪魔されると迷惑なので、私が積極的に排除した。
攻略対象の数は、やたらと多い。
シーズン3まで出た人気ゲームだったので、仕方ないが。
早く、主人公の記憶が戻ればいいのに。
しかし、高校で三年間の時を過ごしても、主人公は誰とも恋に落ちなかったし、記憶も戻らなかった。
少なくとも、私はそう、思っていた。
主人公の恋愛事情なんて、把握しているつもりでいたのだ。
だから、私が、主人公に「高校卒業したらどうするの」と聞いた時に帰って来た答えには、心底驚いた。
「か、彼氏の家にいきます」
そう、頬を赤らめて小さな声で言う主人公は、これぞ乙女ゲーム、と言った感じの乙女らしさ全開だった。
「彼氏、いたの?!いつから?!!」
そう声が大きくなってしまった私に、主人公は人差し指を唇に持っていって、「しー」のポーズをした。
「高校、二年生の時から、です」
聞けば、相手はもう社会人として働いているのだという。
それはもしかしてロリコンというやつではないか?犯罪だ。
油断していた。
私はてっきり、主人公は学内で恋を育むものだろうと思っていた。
外で恋愛していたのか。
しかも相手は社会人だなんて。
「言ってくれればよかったのに」
そう言って口を尖らせると、主人公は慌てていた。
「ううん、あの、だって、私が高校生で、相手は社会人だから、あんまり言うの、良くないって……その、彼も言ってたし」
それは確かに、おおっぴらには言い辛いことかもしれない。
「本当は、卒業するまで言うつもりなかったんですけど……特別に、教えました」
秘密ですよ、と恥ずかしそうにはにかんでみせる主人公の表情を、きっと私しかしらない。
主人公は、特に問題なく人間関係を築いてはいるが、私程に心を許している相手はいない、ように思う。
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